「うわー遅くなったね」
「裕次郎、お前がさっさと片付けないからだろうが」
部活も終わり片付け当番の紅、石黒を鹿内が手伝ってようやく帰るところだった。
「それじゃまた明日ねー。あっ…諒ちゃん、モモコちゃんと小指つないで帰っていいよ、今日は他に誰
もいないから」
「な、なにいってんだ、こら待て裕次郎」
石黒はきゃほーいと笑いながら走って逃げる紅を追いかけたが途中であきらめ、校門の所まで戻った。
鹿内の前に立つと少しテレながら声を掛けた。
「悪かったな片付け手伝ってもらって」
「ううん、いいよ」
「暗くなったから家まで送るよ 」
「…うん、ありがとう 」
お互い顔を赤くしながら歩き始めると緊張の所為か無口になってしまい、二人とも話すきっかけを失っ
てしまっていた。
(そうだ、あいつらがいない今日こそチャンスじゃねえか)
5分ほど歩いたところで石黒は足を止め、鹿内を顔を真っ赤にして見つめた。
「鹿内、あの…その…」
暗がりの道ばた、石黒は気付いていなかったが、このすぐ近くに恋人同士に有名な公園があった。
(えっ…まさか…石黒君…)
突然のことに鹿内も顔を真っ赤にして少し俯きながら、これから何をするのか不安と期待とが入り交じ
った気持ちで感情を高ぶらせていた。
「か、鹿内…て、手握っていいか……(よーし!言えたー)」
石黒が必死の思いで言った言葉の内容に、鹿内は目を丸くした。
「………うん、いいよ」
何をするのかいろんな妄想を膨らましていた鹿内は一瞬何を言われたのか解らなかったが、顔を上げる
と緊張して手を出す石黒の姿に、にっこりとほほえんで頷いた。
(うふふ、キスくらいされるかと思った…ちょっと残念かな?)
手をつないで帰りながら『石黒君って奥手だから今度は自分の方から少し誘って見ようかな』などと考
える鹿内でした。
数日後に続く………といいな。