夏の思い出……  (石黒*鹿内)  
 
「あっここだね」  
「思ったより、ちょっと遠かったな」  
石黒と鹿内は、3年生の夏休み、二人で旅行に来ていた。  
「でも海も綺麗だしいいところね」  
「ああ…」  
(日帰りだけど旅行にきてよかった……)  
「石黒くん、浜辺に行こうか……」  
「あ……う、うん」  
二人は海岸沿いを砂浜の方に歩いていった。  
 
今年の1年生が5人入ったため、何とか部としての存続出来ることになり、石黒達は3年生の一学期で 
卓球部を引退していた。  
(去年の夏休みは、せっかく泊まりの旅行だったのにな………)  
2年の時は、みんなに内緒で旅行を計画したが、色々な偶然が重なり卓球部の合宿になってしまったの 
だった。  
(だがしかし、今年はもう誰にも邪魔はさせない!)  
石黒は思わず、心の中で力こぶを作ったポーズを決めていた。  
「おまたせ……」  
「あ、いい…よ……」  
鹿内の声に我に返ると、石黒はそのまま固まってしまった。  
「ちょっと大胆にしてみたんだけど……あの…これ…似合わないかな……」  
石黒の視線の先には薄い桜色したビキニを着た鹿内が恥ずかしそうに頬を染めてたたずんでいた。  
「ううん、すごく綺麗だ……」  
思わず見とれてしまい、無意識に出た言葉であったが、鹿内は嬉しそうに微笑んだ。  
 
「……ありがとう。でもそんなに見つめられると恥ずかしいよ………」  
(く〜、鹿内がオレのために………神様ありがとうございます。)  
少し身体を隠すようにした鹿内を見ながら、石黒は心の中で感涙を流しながら神に感謝していた。  
「泳ごうか……」  
石黒は鹿内の手を握ると砂浜に降りていった。  
隠れた穴場であるこの砂浜は、施設などは何も無いが遊ぶ人も少なく、半貸し切り状態で楽しめた。  
二人で海に入って遊んだ後、荷物を置いた木陰で鹿内の作ってきたお弁当で昼食をとった。  
「お弁当おいしいよ」  
うまそうにおにぎりを食べる石黒を見て、鹿内は嬉しそうな顔でポットのお茶を取り出した。  
「はい、お茶」  
「ああ、ありがとう」  
おにぎりを食べ終えた石黒が、お茶を受け取り一気に飲み干すと、ほっぺたに米粒がついていた。  
(あっご飯粒があんな所に……)  
鹿内はそっと手を伸ばすと、無意識の行動で石黒の頬に付いた米粒をとってそのまま自分の口に入れた。  
驚いたような石黒の表情に、改めて自分がとった行動を思い起こして顔が真っ赤になった。  
「あっごめんなさい、つい………」  
「え……あの……ありがとう……」  
二人とも照れたような形で、顔を赤くして見つめ合うとお互いに小さく吹き出して笑った。  
 
昼食も終わり、二人で海を眺めながらのんびりと話していると、突然冷たい風が吹いてきた。  
「あれっ、今変な風が吹いたね……」  
「あ、あそこに雲が……」  
鹿内は木に隠れていた方角を指さすと少し焦ったような声を出した。  
指さす方向には気づかないうちに大きな入道雲が発生していて真っ黒な雨雲がこちらに向かっていた。  
「まずいな、雨が降る前に着替えて帰ろう」  
「うん」  
荷物をまとめると、来たとき水着に着替えた岩陰に向かった。  
「オレここで見張っているから鹿内先に着替えろよ」  
「私は一緒に着替えても……」  
「いいから早く……」  
「うん……わかった……」  
鹿内が着替えに行くと「一緒にいいよ」という言葉が石黒の頭に繰り返しよぎった。  
(オレがよくないことになってしまう……)  
着替えを想像しただけで思わず高ぶってしまいそうになり、必死に気持ちを押さえた。  
「いいよ……」  
鹿内が戻ってくると、すぐさま交代して一気に着替えた。  
そして荷物を持つと道路に出て、バス停まで海岸線を歩いていった。  
 
「あっ、バスさっき出たばかりで、次は夕方私たちが乗る予定のまで無いわ……」  
「えっ、困ったなどうしよう………この辺から駅まで結構遠かったからな……」  
「タクシーか何か通るまで待ちましょう……」  
「そうだな……」  
二人でバス停の椅子に座ると空を気にしながら車を待った。  
しかし、十分もすると空は真っ黒な雲に覆われ、ぽつぽつと雨が降ってきた。  
「あっそういえば、ここから少し行ったところに古びたホテルみたいなところが有ったからそこで雨宿 
りしましょう。  
 もしかしたら傘も有るかもしれないし……」  
「うん…そうするしかないか……」  
二人は建物の有った方に早足で歩き始めると、一気に雨が強くなり全身ずぶ濡れになった。  
「あった、あそこの建物。やっぱりホテルみたい……」  
鹿内の指さした建物はホテルはホテルでもラブホテルだった。  
(どうしよう………)  
石黒はラブホテルだと気づくと、思わず足が止まり考え込んでしまった。  
「くちゅん」  
小さなくしゃみに振り向くと雨に濡れた鹿内の身体が小さく震えていた。  
(このままだと鹿内が風邪を引いてしまう……、オレがしっかりしないと……)  
「入って服を乾かそう、身体を暖めないと。大丈夫オレを信じて……何もしないから……」  
石黒は鹿内の手をとるとホテルに入り、緊張しながら一番地味な部屋を選ぶと中に入った。  
 
部屋の中を見回してバスルームを見つけると、お湯が出るのを確認してバスタオルや備え付けのバスロ 
ーブを鹿内に渡した。  
「先に入って身体を暖めるといい…」  
「うん、ありがとう……」  
鹿内がバスルームに入ったのを確認すると自分も濡れた服を脱ぎ、ハンガーにかけた。  
シャワーの音がする方に思わず目を向けると湯気で曇った磨りガラスにぼんやりと鹿内の裸体が浮かん 
でいた。  
スレンダーながら柔らかな曲線を描いている肌色のシルエットに、ビキニ姿の鹿内が重なって胸が高鳴 
るのを覚えた。  
 

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