エデンから落とされてもう幾日経ったのだろうか…  
 彼女は望まなかったが修道会に向かって足を進めている。  
 彼女の衰弱は相当酷く感じ、出来うる限り体を休ませながら移動して行く。  
 しかしここ数日間は谷越えだったため、野宿となり十分な休息を取ることが出来なかった。  
 
「マグダレーナ宿屋があったよ。今日は早めに休もう。」  
 やっとで谷を越え小さな宿屋を見つけた。  
 早く彼女の体を休ませてあげたかったので  
 まだ日は高かったが部屋を借りベッドに横たえてやる。  
「ゆっくり休んで。僕は外にいるから。何かあったら呼んで。」  
「はい。ありがとう。でも平気ですからそんなに気を使わないでください。」  
 無理に笑っているのがわかる。相当疲れが溜まっているのだろう。顔色も悪い。  
 廊下に出てドアの前の座り込み  
(後何日位かかるのだろうか…)  
 などと色々な事に思いを巡らしていると、そのまま眠りに落ちてしまった。  
 
 …ロ…ノ…  
 
 微かに耳に届く声で目が覚めた。もう外は日が落ち暗くなっている。  
(しまった…寝てた…)  
「クロノ?寝てしまったのですか?」  
 部屋の中から心配そうな声が聞こえてくる。  
(ああ。この声で目が覚めたのか…)  
「いや。ちょっと、うとうとしてしまっただけだから。」  
 ドアが開き夜着姿の彼女が顔を覗かせ  
「あ、あの…少しお話してもよろしいですか?」  
 と遠慮がちに問う。  
「ああ。別に構わないよ。」  
「あの、ここでは何ですので入って下さい。」  
 確かにここでは話し辛いな。と  
 促がされるまま部屋のベットに腰を下ろす。  
 彼女が横に腰掛けるとフワリと何ともいえない香りが鼻をくすぐる。  
 …彼女の香り…  
「笑わないで下さいね。」  
 はにかみながら言葉を紡ぐ。  
「ああ。笑わないよ。」  
 彼女が動くたびに夜着越しに整った体のラインが映り意識してしまう。  
 …目のやり場に困る…  
 
「実は…私、怖いんです。目が覚めて誰もいなかったらと思うと。  
実は今もあなたの姿が見えなくて…怖かったんです。子供みたいでしょ?」  
 子リスのように首を傾け僕の顔を覗き込む。その仕草が可愛らしい。  
「いや。そんなことは無いよ。」  
 安心させるようにゆっくりと答えてあげた。  
「それに…このまま目が覚めずに…自分が自分ではなくなっていたら…と思うと不安で…」  
 ビックリした。いつも気丈に振る舞い不安をみせなかった彼女が  
 今ポツリ ポツリと弱音を吐いている…  
 凄くマグダレーナが小さく見えた。体が小さく震えているのもわかる。  
 守ってあげたい。彼女を守ってあげなくては。  
 
 気が付くと彼女を抱きしめていた。  
 彼女も僕を抱きしめてくれている。  
「くふ」  
 彼女の小さな声で我に返り体をゆっくり離し  
「大丈夫?ごめん。苦しかった?」  
「いえ。平気です。嬉しかったです。」  
 そのまま見つめ合う。  
 彼女の潤んだ瞳に僕が映しだされている。  
 僕は今どんな顔をしているのだろう…凄く変な顔をしているんじゃ  
無いだろうか…  
 目を逸らし逃げるようにベッドから腰を上げてしまう。  
 このままいたら自分はどうにかなってしまいそうだから。  
「クロノ…こちらを向いてください。」  
 不意にかけられた言葉に慌てて反応してしまい声のほうに顔を向けてしまう。  
 彼女の顔が目の前にあって心臓が跳ね上がるのがわかった。  
 いきなり腕を僕の首に回し背伸びをするカッコになり…  
 慌てた僕の声は裏返っていたと思う…  
 
「マグ…んっ」  
 名前を呼ぼうとした口が彼女の唇によって塞がれてしまった。  
 自分の唇を彼女の舌がなぞる。  
 そしてそのまま唇と歯を割って口の中に侵入してくる。  
(嘘だ。彼女がこんな事…)  
 彼女はゆっくりと優しく口の中を犯してゆく…  
「クチュ…ん…チュ…んっ」  
 唾液が混ざり合っていく音が耳に響く。一体何が起こっているのだろうか…  
 彼女の為すままに体を任せてしまう自分…頭の芯が溶けてしまうような  
そんな甘い時間…  
 
「お願いです、クロノ。今だけでいい。  
全てを忘れさせてください。不安を消してください。  
貴方だけを…感じさせて下さい。」  
 と言うとスルスルと夜着が肌を滑り下に落ちた。  
「だ、駄目だマグダレーナ。いけない…そんな事…」  
 そこには美しい彼女の裸体…  
 僕は動けないままその体に釘付けにされてしまった。  
「クロノ…貴方は私の事を何一つ知らないといいました。知りたいと言ってくれました。  
私も同じです。貴方をもっと知しりたい。貴方の全てを知りたいんです。  
そして私の全てを知ってもらいたいんです。」  
 慌てて目を逸らしたのだが、その美しい裸体は目を離れないでいた。  
 
 カチャ…カチャ…  
 ハッとおもうと彼女は僕のズボンを下ろし、  
「貴方の体は正直ですよ。」  
 と馴れた手つきで僕の熱くなりかけているそれに手をかける。  
「くぅ…」  
 細い指で優しく包み込むようにして根元からゆっくり撫で上げていく  
たったそれだけの仕草で体の力が抜けていき、そのまま押されベッドに戻されてしまった。  
「我慢しなくてもいいんですよ。」  
「駄目だよ…マグダ……」  
「じっとしていて下さい。気持ちよくしてあげますから。」  
 言うなり自分の半ば立ちかかっているそれに舌を添えねっとりと舐めらてしまい  
くらくらしてしまった。  
(う、嘘だ…これは…夢だ…)  
 ピチャペチャといやらしい音を立てながら彼女はそれを口に含み  
器用に舌と指を使って僕を狂わせてゆく。  
 柔らかい舌が僕のそれを這いずり回る。あの可愛らしい小さな口一杯に  
 僕を咥え優しく歯を立て愛撫してゆく。  
「くああぁ…」  
 完全に立ち上がってしまったが…  
 まだ保たれている理性でなんとか彼女を引き離そうと頭に手を添え  
「お…願いだ。止めて…」  
 と何とか言葉にすることが出来た。  
 
 上目遣いで見上げられそのまま  
チュプン…  
 名残惜しそうに口が離れる。そこから唾液が糸を引き凄くいやらしくみえる。  
「女性に恥をかかせるのですか?私に恥をかかせないで下さい…」  
 彼女から離れようと無意識にベッドの奥に体を下げると  
そのまま押し倒されてしまった。  
「私が嫌いですか?」  
「それとこれとは別だよ…」  
「お願いです。動かないで下さい。じっとしていてください。」  
 いきなり彼女は僕の上に跨り僕のいきり立つそれに腰を落とし始めた。  
 彼女の秘部から愛液が流れ出ているのがここからでもハッキリ見えてしまい  
これから何が起こるのか分っているのに、まだ信じられない。  
 …ヌプ…  
「うあっ…」  
 先端に彼女の熱を、感触を感じて…そこで現実味をおびる。  
(なんて…なんて事を…)  
 彼女の顔に汗が光る。そして表情は苦痛の為か目を閉じ口を引き結んでいる。  
 
「駄目だ…いけない。君は聖女マグダレーナだ…。」  
「いえ。私は…ただの女です。普通の…女…なの…ん…です。」  
 ヌプヌプ…  
 言いながらゆっくりと腰を下ろしてゆき、  
「あ…あん…」  
 そして彼女は全てを飲み込んでしまった。  
 僕のものは彼女の中で脈打ち大きさを更に増していくような気がして、  
 彼女を壊してしまうのではないかと心配になってくる。  
「マグ…ダ…」  
「ふう…大丈夫です。少し動きますね。」  
 僕を安心させる為か微笑みながら、僕のお腹に手を添え力を入れる。  
 ヌチュ…ヌチュ…  
 水音を立てながら上下に動き始める。  
「ああん…ぃ…ぃ…ん…」  
 少しずつ動きが速くなって、動くたびに彼女が絡みついて僕を締め上げる。  
 僕の頭はその快感でおかしくなってきてしまっているのだろう。  
「ああっ…ん…す、素敵です。私が思っていたよりも…クロノォ…  
貴方が…1番素敵です…!」  
 それでも最後の理性が働くのは彼女の体の衰弱の事があるから…  
「あっ…く…だ、駄目だよ…我慢できない…お願いだ…離れて…」  
 彼女から解放されたくて腰に手を持っていくと、腰の動きを止め  
その手を形の良い胸に誘導されてしまった。  
「こちらを…触っていてください…あんっ。」  
 手にぴったり張り付く、とても触りごこちの良い胸…  
その上に触れる傷は…  
 
「ええ…これは貴方と私を結ぶ印です。」  
 そう言い終えるとピストン運動を開始した。  
 動くたびにサラサラと美しい金髪が、首からこぼれるように落ちてくる。  
 胸に添えていた手にもそれがかかり何とも言えぬ感触を与えられる。  
 もういつ爆発してもおかしくない状態まで僕は上りつめている…  
「…出てしまう…お願いだ…マグダレーナ…もう…」  
「いや。嫌です。出してください…クロノの…ああっ…全てを感…じたいの…です。  
貴方で…いっぱいにして…ください…」  
「だ、駄目だ…君を…壊してしまう…」  
「いいんです…滅茶苦茶にして…ください。クロノにだったら…壊されても…いい。  
私は…貴方のものです…」  
 その途端僕の頭は真っ白になってしまった  
 彼女の中に僕の熱を叩き込んでしまったのだ…  
「あああ…いい…凄く…すごく。…クロノ…貴方でいっぱいです…ああ…」  
 その感覚に体を震わせ、彼女は僕の全てを飲みこもうとヒクヒクと締め付けてくる…  
 僕はそれに答えるかのようにドクドクと最後まで流し込んでしまった。  
 それと一緒に残った理性までも吸い尽くされてしまったようだ…  
(ああ…もう…駄目だ…)  
 
 邪魔な上着を脱ぎ捨て荒々しく彼女を押さえ込み唇を奪う…  
 そのまま激情にまかせ何度も熱をぶつけてしまった。  
 そんな僕を彼女は優しく受け止めてくれていた。  
 
 気が付くと僕は天使に抱かれて目を覚ます。  
「ごめん…僕は…」  
「謝らないで下さい。これは…私が最初からそう決めていた事なのです。  
貴方が最後の人…と。私大好きなデザートは最後に食べる方なんですよ。クス。」  
 その微笑が子悪魔的に見えたのは僕の気の錯覚か…  
 
 50年後…ロゼットと一緒に修道会にきて…ここで彼女が  
性女マグダレーナと呼ばれていたのを知った。  
 
 あの時の言葉、微笑みの意味を今ようやく理解したのだった…  
 
         終  
 

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