「黒姫、少し休まないか…?」
一行が大和を発って約半日…。急ぐ黒姫を先頭に一真、鬼丸があとに続いていた。
阿修羅と合流してから、彼女の持つ魔神としての力を使って空から進行をはかっていたのだが
不意に阿修羅が疲労を訴え、やむなく陸の道を行くことになったのだった。
「いつもはお前の方が急かしているのに。悪魔でも、これくらいの徒歩で疲れることがあるのかよ?」
黒姫は振り向いて最後尾を見る。すると普段はどんな状況でも冷や汗一つ流さない阿修羅が
眉間にしわを寄せて口をとがらせ、いかにも気分が悪そうな顔をしている。
「大丈夫ですか、顔色が優れませんが…」
本気で心配した一真が阿修羅の顔を覗き込むと、阿修羅は以前山の神と戦い負傷したときのように
片手を腹部にあてがい苦しそうに息を切らしていた。
そこで、目をぱちくりさせた鬼丸が「我慢は良くないで〜」と言ったが、この言葉の意味を正確に把握した者はいなかっただろう。
「ったく…そんなんじゃもし天使に見つかったらまず……っておい!」
黒姫がそう言いかけている間に阿修羅がよろめいたかと思えば
膝をつき、そのまま派手に前のめりに倒れてしまった。
黒姫が急いで駆け寄り上体を起こさせようと阿修羅の体に触れると
あまりの熱さに手が焼けるような感覚を覚え、手を離してしまった。
「あっちぃいい!?…何だよこれ!火の魔神の力の暴走か?」
一真と鬼丸も駆け寄って様子を見る。しかし、高熱とはいえ普通の人間が相手ではない。
どうすれば良いのかわからない三者は顔を見合わせ絶句した。
「とにかく、川辺に行けば水がある…冷やして良いのかわからないけど仕方ないだろこの場合。
おい阿修羅、すぐそこに河原がある…肩貸してやるから、立てるか?」
「ん、あぁ…」
「黒姫、彼女を運ぶなら私も…」
「これくらいなんでもないっつーの、あちち…」
黒姫の気丈な態度に言葉を詰まらせた一真に鬼丸が小さく口出しした。
「口ではきつう言うたって仲間思いなんや、無意識やろうけど
零が黒姫を助けたときみたいに…黒姫も阿修羅が心配なんやろなぁ」
川辺に阿修羅を運ぶと阿修羅も黒姫もへなへなとその場に倒れ込んだ。
「あーっ重てぇ!このまま川に沈めてやろうか…」
川辺の石の上で大の字に転がる黒姫。
肝心の阿修羅はというと無言で体をよじらせて転がっている。
なんせ短い丈の衣装で脚や腰をよじらせるのに加え、顔が赤く火照っているので
一真や鬼丸は思わず息を呑み、目のやり場に困ってしまうのである。
「…てめぇら、ぼさっと突っ立ってんじゃねぇ!
暇だったら俺様のために食いもん探して来い!!!」
「は、はい!黒姫、あとは任せます!」
黒姫の一喝に驚いた一真は慌てて背後の森へと駆け出した。
黒姫と一真をキョロキョロと見た鬼丸も黒姫が刺すようなジト目で見ていることを察し
さて、ワイも…などとごまかしながら飛ぶように一真の後を追いかけて行った。
「待ってぇな〜!!」
「まったく…気の効かねえやつらだ。おい阿修羅…お前かなり熱出てるみたいだけど大丈夫なのか?
水が苦手っつっても飲むくらいはできるだろう…」
阿修羅は少しは落ち着いてきたのか、さっきより熱もひいているように見えた。
そして、小さくパクパク口を動かせている。
「何て言ってんだか聞こえねえ…ん?」
黒姫が耳を近づけると阿修羅はこう言った。
「その…な。私もわからないんだ…何となくおかしいと思って
気づいてからまだ時間も経ってないんだが…な…」
「あぁ?何が言いたいんだよ?」
「……」
阿修羅は続く言葉が考えつかないのか、再び顔を赤くして目を泳がせている。
「…黒姫、悪いが…私の服を脱がせてくれないか?」
「はぁ?水浴びでもするつもりかよ」
「良いからっ…!!」
阿修羅は大声を上げ、口を真一文字にして黒姫の目を見つめる。
ただならない様子を感じた黒姫は理由が理解できなくても仕方なく従うけとにした。
まず阿修羅の細い体を縛っている帯を解く。
それから、体にフィットした薄手の衣を剥ぐと
前にも一度見たことがある、黒いビキニのような衣装が露わになった。
多少汗をかいてはいるが傷口が残っているわけでもないし特別変わったところはない。
暑いから脱がせるよう言ったのだろうと思った黒姫は着物を完全に脱がせようと
着物の前を大きく開かせた。すると、チラッと視界の端に写ったものに違和感を覚えた。
「おい阿修羅、体起こし………!?」
見間違えかと思い思わず目をこすったが、明らかにそこには
阿修羅の体に不釣り合いな凹凸が下着ごしに浮かび上がっている。
「阿修羅、これか!?これでお前へばってたのかよ!」
一目見てそれがナニなのかわからなくはなかったが、それがどういう原因で体調不良に結びつくのかまではわかるわけがない。
「大声で言わないでくれっ…!
私もわけがわかってないんだから…」
困惑のあまり阿修羅は寝そべったまま腕を目の上に乗せて視界を閉ざす。
「失敗だった…迂闊だった、本来悪魔に性別はないのだが
…人間に変体して…どこか器官を間違えてしまい代謝が上手くいかないようだ…
それに今まで気づかなかったなんて…」
「気づかなかったってお前…ってことはこっちがたまりすぎてて
それで体にキテるってことなのかよ?」
「し…仕方ないだろ!だいたいたまるって何だ?
わ…私は原因も、こんな場合の対処方法も知らないんだ」
理由がわかったにしても、まさかこんな単純かつ難解な問題だとは…と黒姫も腕を組んで悩む。
処理方法はもちろん知らないわけがない、しかし阿修羅に説明すべきなのか、
説明したところで阿修羅自身が未知のことに何とか対処できるのかと
不安因子はつきないのである。ポリポリと頬をかいた。
「…参ったな」
「黒姫でもどうしょうもないのか…!?
…困った…こんな状況で天使に見つかればひとたまりも…」
阿修羅の声は弱々しくなっていく。どうやら本気で参ってきているのだろう。
「仕方ない…一度だけなんとかしてやるけど次はねぇぞ!
自分でヌクか、変体の方法考え直せ!」
黒姫は阿修羅の否応なしに阿修羅のパンツを引きずりおろした。
解放を待ちわびていたかのように、ソレは勢いよくブルッといきり立って天を仰いだ。
「ええっ!?ちょっ……」
黒姫に向けて伸ばした手を止め、阿修羅は目を丸くする。
「何を参考にしたのか知らねーけど…ごつすぎるんじゃねぇ?
こんなに我慢してたらそりゃあしんどいな…」
「な…今までこんな…」
阿修羅は、男性器があること自体は疑問に思ってはいなかったようだが
ここまで肥大化していたのは予想の範疇ではなかったようだ。
「良いか?こういう場合はこうやって…だな?」
阿修羅に説明を促し、わかりやすいように見せながら
黒姫は阿修羅の隣脇から彼女の性器を軽く両手で包み、上下にしごいた。
「くぅっ!あぁっ!!」
その瞬間、脳天を突き抜けるような快感におそわれた阿修羅は
背を反らして膝を浮かし、思わず黒姫の腕を掴んだ。
「やめてくれ黒姫っ…おかしくなってしまう」
「何言ってんだ。こうしないと直らねえんだぞ?」
腕をつかまれていてもお構いなしに黒姫は手を揺らし続ける。
「だ、駄目ぇ!黒姫っ!黒姫!あああっ!」
ぴちゃん、という音が阿修羅の耳に届く。
途端に、遠くなった気が戻ってきたので黒姫の方へ視線を促すと
黒姫はさっきまでソレを握っていた手で顔を拭っている。
顎の先から、不透明な液体が垂れ落ちているのがわかった。
「…な、何が…一体…」
「ちったぁ楽になったか?こりゃかなり濃いしよ…きつかっただろ」
阿修羅は虚ろな目をしながら、己の人差し指を唇にはわす黒姫を呆然と見ていた。
男を魅了してやまない黒姫だとは知っていたが、
今までにそれが気になったことはなかったというのに
頭が少しずつ晴れるに従って、黒姫のその仕草がどうしても艶っぽく見えてしまった。
「…こ、これで大丈夫なのかもう…」
恥を忍ぶ気持ちで、もやもやとした気持ちを晴らすために阿修羅が問いかける。
「多分、一発済ませたら楽には……って、おい…」
再び阿修羅も股間に目をやると、先ほどとまったく変化のない…
いや、先ほどよりますます大きくなってしまったそれを目の当たりにしてしまった。
「全然直ってないぞ…」
「知るかっての!」
「た…頼む黒姫、もう私は黒姫に頼るしかない……」
「ケッ!こういうときだけしおらしくなりやがって!面倒見きれねえよ」
理由が理由だけに呆れた黒姫はぷいとそっぽを向いてしまった。
阿修羅は上体を起こし黒姫に手を伸ばすが、やり場のないその手は黒姫に触れることなく止まる。
「そうだな…今はこんなことよりも玄武様の解放が大切だしな…
すまない、一真たちが戻って来たら…出よう」
一つ大きく息を吐き出し、阿修羅は遠くの空に目をやった。
太陽はすでに赤くなって周りの雲を照らしながら山の向こうに沈もうとしていた。
夕日の光を顔に受け、しばらく何か考えこんでいた黒姫だったが、突然すっくと立ち上がり
阿修羅の方を見下ろしたかと思うと、まだ萎えぬ性器を露わにしたまま衣装をはだけさせていた阿修羅を担ぎ上げて
そのまま川の浅いところへと放り投げた。
バシャーン、と豪快な音を立てて水辺に沈む阿修羅。
「なっ……何をするんだ!?わ、私は水には…弱っ…がぶっ…」
座っただけでも腰から上が水面から出る浅瀬で慌てふためく阿修羅。
「ちったぁ冷やせばマシにならぁ!それに、こんなにぶっかけられたままじゃ
一真や鬼丸に何かと思われるだろ、洗い流すぞ!」
「うむ…それもそうだな…」
黒姫にそう言われたにも関わらず、阿修羅のソレは落ち着きを見せようとしない。
その原因は、先ほど黒姫が自分の身が汚れるのにも構わずしてくれたことに
阿修羅自身が変な興奮を抱いてしまっていたことにあるとうっすら感づいていた。
「時間は惜しいが今日はここで一泊する、だから阿修羅…
それまでに完全に何とかしてやるよ」
黒姫の声が一瞬くぐもり、阿修羅が黒姫の方を見やると黒姫はバサッと帯を解き
爺さんからもらい受けた白い着物と、中に着込んだ桃色の下着を脱ぎ捨てて、
顔つきの割には熟成した肉体をさらけ出してきた。
「く、黒姫?」
黒姫は着ていたものを濡れない場所に散らすと阿修羅の方へ向かって歩いてきた。
「洗顔兼ねた水遊びだよ」
川縁に立つと勢いよく川の中に飛び込む。
「わぷっ!黒姫!もっと静かに飛び込め!顔に水がかかる!」
飛びかかる水しぶきを必死に手で防いで主張するも、黒姫はまったく聞く耳持たない様子だ。
「あれ?黒姫?」
一瞬視界を遮ったときに、水面に浮かんでいた黒姫の陰影を見失う。
「まさか溺れるなんてことはないと思うが…」
「ばーっ!!!」
「ひーっ!!!!!」
いきなり、深い場所に姿を隠していた黒姫が飛び出てきたので
阿修羅は仰天して派手に背後に倒れ込んでしまった。
バシャーン、ごぶっ…
顔に水がかかった阿修羅は急いで両肘で頭を浮かせる。
「やめてくれ、黒姫ぇ…っ」
「何とかしてくれったのは…阿修羅だろ?」
「え…」
阿修羅が顔を振るって正面を見据えると黒姫は阿修羅の両足の間に割って入り
なおもいきり立ったままの性器に顔を近づけにんまりとほほえんだ。
「あんまり近くで見ないでくれ…恥ずかしい…」
「目ぇ伏せてろよ。水に浸かってたらどうなってるかなんてわかんねえだろ?
…明日には絶対辿り着かないといけないしな、そんためだ」
聞きもしないのに黒姫は阿修羅に言い訳を話した。
阿修羅の反論を遮るように、黒姫は舌なめずりをして阿修羅の性器に口づけた。
「黒ひ……っ、ひぁあああっ!!!」
いくら丁寧だとしても手での奉仕とはまったく桁の違う快楽が阿修羅を襲う。
一度しか解放を知らない阿修羅にとっては気が狂うかと思うほどの悦楽だった。
「くっ、くろっ…!やめっ!なんなんだこれはっ!助けてくれ!」
黒姫はというと、阿修羅の制止をものともせず丹念に性器を舐めあげている。
先端を唇でいじったり、筋に舌を沿わせたり、
時折指先で、阿修羅の女の部分である箇所を攻めたり。
「くっ…うう…」
また何かが飛び出しそうな衝動を阿修羅は直前に堪えた。
「…どうした?楽になりたいんじゃなかったのか?」
「はぁ…はぁ……。黒姫…お前はどうしてそこまでしようとするんだ?」
「言ったろ、案内役がいつまでもへばってちゃ困るからだよ」
「…私は人間の感情なんか、わからない…お前はお前の言うとおり
早く出発したいがために私の世話をやいてくれているのだと、思ってもいい…が…」
「黙ってろよ」
「なぁ…もしかしてお前は、私の体の異変に…
何かしら零と同じようなものを感じているのではないのか…?」
「………」
黒姫は手と口の動きを止めた。
何も言わず阿修羅を睨みつけるが、阿修羅には黒姫の瞳からは言葉にできない悔しさが感じ取れた。「んなことねぇよ、考えすぎだ」
「でもな…いつもの黒姫なら、厄介なことは簡単に済まして解決させようとするんだよ。
今の黒姫は…私のためにやっているというよりは…
自分の胸の穴を埋めるために、寂しさをごまかすためにやっているように見えたぞ…」
「馬鹿言うなよ!…んなわけ…」
黒姫はまたもぷいと横を向いたが、すかさず起き上がった阿修羅に両頬をつかまれた。
「…黒姫が私のこれを何とかしてくれたのなら、私も少しはお前の寂しさを何とかできないのか?」
しばしの沈黙が流れた。
遠くで鳥が巣に帰ろうと鳴く声が何重にもなって聞こえる。
止まらない川のせせらぎが時間を延々とループさせているように感じた。
「…零は、もういない…。あぁ、確かにな。
私は…叶えられなかった気持ちを勝手に阿修羅にぶつけていたさ!」
勢いよく水面に手のひらを叩きつける黒姫。
川底の石を掴み、力を込めると体がふるふるとふるえ出す。
「最低だろ、私は……いくら零を忘れたくないからって…んんっ!」
黒姫の言葉を遮ったのは、阿修羅の唇だった。
行為の云々を知ってのことか、知らずと行っていることなのか
阿修羅の舌は黒姫の唇をこじ開けて、黒姫の口の中へ侵食してくる。
「あ…あしゅ…?」
黒姫の顔を掴んだまま阿修羅は顔を離すと、唇同士の間に唾液の糸が伝った。
「…自分を責めるな。隠れて泣くな。
私が…お前に、忘れられなくさせてやる。今だけでも、私を零と思え」
阿修羅は黒姫の体を強く抱きしめる。
すると黒姫はそれに応えるかのように、阿修羅の背に手を回した。
「零……零…んんっ…」
黒姫は敏感になった胸を阿修羅に押し付けると、阿修羅の熱い体温に
まるで零に包み込まれているような錯覚を覚えさせられた。
「や…あっ、零…」
阿修羅はこんな場合、どうすれば良いのかなんてわからない。
しかし、黒姫が自分にしたことをすれば同じく黒姫にも良いことだろうと思い
黒姫の体を浅いところに倒して脚を割らせた。
黒姫の秘所が水面から姿を現すと、明らかにただの水滴とは思えない
少し粘り気のある液体がじわじわと沸いて出ていた。
「これは…私の体から出た白い液体とは違うようだが…もしやこれを隠すために」
「…放っておいてくれ」
「相変わらずの意地っ張りだな…?まぁ、私が下手しても大目に見てくれよ?」