あれから何度となくこの季節を迎え、そしてまた今年も夏がやってきた。  
この季節が来ると思い出す、懐かしい日々。  
蒼い海と透き通る空、冒険、そしてあの赤い飛行艇。  
 
 
私はあの夏が終わる頃から、本格的におじいちゃんのもとで設計の仕事を始めた。  
時には外国へ行って多くの事を学び、新しいものを開発し、充実した日々を送っていた。  
その間にはもちろん恋人も出来たし、時にはおしゃれをしてパーティーに行き、年相応  
の遊びをする事もあった。  
 
けれど。  
夏が来るたびに思い出さずにはいられない、あの冒険の日々。  
そしてあの初めてのキスを。  
 
 
初夏の風がさわやかに吹く頃、私は恋人にプロポーズをされた。  
まだまだやりたい事があったし、家を守る役目をするより、まだ自由でいたかった。  
正直にそれを話すと、恋人はそれを受け止め、待ち続けると言ってくれた。  
彼の気持ちは嬉しかった。  
 
しかし彼のプロポーズを受けている時、私の心に浮かび上がってきたのは、魔法に  
かかったあの人の姿だった。  
思い出は思い出だったはずなのに。  
 
 
だから、私はこの夏に、もう一度冒険に出る事を決めた。  
もう一度あの人に会いに行く。  
私にかかった魔法を解けるのはあなたしかいない。  
 
待っていて、ポルコ ―――――――――  
 

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