「いいよ。ポルコになら」  
 
目の前のポニーテールの少女は顔色ひとつ変えずに  
さらっと言いのけた。  
ポルコの眼鏡がずれ、咥えていたヤニが  
手の甲に落ちた。  
「あぢっ!!」  
慌ててポルコはそれを払いのける。  
「あー、もう。なにやってんの?」  
少女は設計室の椅子に腰掛けたポルコに  
近寄り、下から顔を覗き込むようにして言った。  
「…お嬢ちゃん。てめぇの言動には十分注意しな?  
身を滅ぼすことになるぜ」  
そう言いながらも動揺を隠せないポルコは思わず、  
覗き込む少女から顔を背けてしまう。  
「別に滅ぼすような言動はしてないつもりだけど?」  
少女はそのままポルコの太腿に手を掛け、  
頬杖をつく様なかたちで微笑んだ。  
「だってポルコ、今の姿になってからしてないでしょ?  
ひとりでさみしくなかった?」  
「……。そんないらねぇ心配はしてくれなくていいから…。  
まったく、何を言い出すかと思ったら……」  
「えぇっ!?じゃあ、この姿でもジーナさんと?!」  
ポルコは椅子からひっくり返りそうになるのを  
必死でこらえた。  
そんなことをしたら目の前の少女も巻添えを食ってしまう。  
 
「やってねぇよ!」  
顔を真っ赤にしてポルコは潔白を怒鳴った。  
「……、そうだよね!よかったぁ。もし、してたらどうしようかと思ってたの」  
「や、やってようがやってまいがお前さんにはどーだっていいことだろ?!」  
目の前でニコニコと笑う少女にポルコは慌てて言葉を付け足した。  
「でも、してないんでしょ?」  
少女は動じない。  
「あたし、ジーナさんの代わりでもいいよ。あ、とゆーか、ジーナさんみたい  
にスタイルとかは良くないけど…。でも、きっとポルコのこと満足させるから!」  
「フィオ……。そんなことを言うな。人間は誰かの代わりなんてできっこねぇんだからよ。  
そして、俺はブタだぜ?自分を大事にしておけ。第一、お前さんに手でも足でも出しちまったら、  
俺が社長にミンチにされちまう」  
ポルコの声はもう冷静だ。  
少女の頭を優しくなでる。  
まるで親が子を諭すかのように。  
「…あたしにだって、代わりになれないことぐらいわかってるよ。  
でも、お願い、ポルコ。あたしと……」  
見上げる少女の瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。  
 
だが、ポルコはブタにしては良識のある男だった。  
「ダメだ。さ、お子様はクマのぬいぐるみでも抱いてさっさとおねんねしな」  
「…いーもん!ポルコがあたしのこと抱いてくんないなら、  
マンマユートの頭に抱かれちゃうんだから!!そのあと、みんなに順番に……いだっ!」  
ポルコが少女の頬をつねった。  
「ばっ、ばかやろ!何を言い出すかと思えば、この娘は……っ!」  
そんなことされたら、あのバカのいい据え膳じゃねぇか。  
ポルコの脳裏で厭な想像が膨れ上がった。  
「別にカーチスでもいいのよ。カーチス、優しくしてくれそうだし…って、  
いたーい!何度もつねんないでよ!!」  
「くっだんねーことばっか言う悪い口はこの口かぁ?  
冗談でもあんな胸くそ悪い男となんかなんて言うな……ッ!!」  
不意に唇を舐められた。  
「じゃあ、ポルコが王子さまになってお姫さまを守って。ね?」  
少女は舌を出して笑う。  
とびきり上等の笑顔で。  
だが、彼女の指はポルコのベルトの外しにかかっていた。  
そんな積極的なお姫さまがいてたまるか、とポルコは心の中で呟いた。  
 
少女が目の前で膝まづいて、スラックスから自分のものを両手で丁寧に取り出した。  
―なんだ、このおかしな状況は…―  
なるべく、少女の方を見ないように天井を向く。  
煙草の火は危ないので消した。  
意識しないようにはしていても、膨張してゆく自分の破廉恥さに嫌気がさす。  
どうしても少女の細い指が艶めかしく動くのに反応してしまうのだ。  
「っ!!フィオ!おまえっ……」  
ポルコは天井から己の下肢に視線を急いで移せば、少女はあろうことか自分のものに小さな舌をあてている。  
「?何?どうかしたの?」  
両手で、まるでお人形さんかのように少女はチュっと口付けた。  
勿論、ポルコははじめてではない。  
今までも奉仕してくれる美しい女たちはいた。それに抵抗はなかった。  
でも、この少女には……。  
「…ポルコ。気持ちよくないの?そんなにあたし下手?」  
罪の意識にうなだれれば、少女は心配そうに見上げてくる。  
そんな顔を自分に向けないで欲しい。  
栗色の髪を手櫛で梳かす。  
少女は擽ったそうに瞳を細める。  
今なら引き返せるのだろうか?  
少女はチェックの青いシャツで唇を拭ってから、もう一度ポルコの唇にくちづけた。  
もう、引き返せないらしい…。  
 
少女をそのまま持ち上げ、太股に跨がらせる。  
深く口付ければ、小さな舌が奥へと引っ込んでしまう。  
後頭部に手を支えさせて、それを逃さない。  
時折、苦しそうに息継ぎする少女にやはり罪悪感でいっぱいになる。  
「……ポルコ…っ」  
そんな声で呼んでくれるな。  
唇から首筋へと口付けをずらしてゆけば、くすぐったいような甘い声が漏れた。  
少女の伏せる睫の長さに驚く。  
思わず、目蓋を舐めた。  
「あは、なあに?ポルコ?」  
顔を近付け、耳に指をのばす。  
ブタの耳だ。  
大きく、垂れた、人でない耳。  
少女は躊躇することなく、それにくちづける。  
微笑みながら。  
少女を後ろに倒れないように左手で支えながら右の手でシャツの釦を外そうとする。  
が、片手でうまく外れてくれない。  
何度も太い指を小さな釦の上で滑らせていると少女が上から手を添える。  
「いいよ。自分で外す。」  
そう言って、二つ目の釦から順に丁寧に外してゆく。  
シャツから覗く、白い肌着に何故か自分が恥ずかしくなる。  
 
 

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