「社長、どうぞ」  
「あ、ああ・・・ありがとう」  
 
再び場面は7月7日。  
陽菜と、半ば強引に彼女を送らされることになった我聞は、  
とっくに工具楽屋の寮であるアパートへと辿り着き、今は二人、陽菜の部屋でお茶などしていた。  
陽菜の積極的すぎる“ご奉仕”に多少気疲れしていた我聞は内心早めに帰りたかったのだが、  
どうしても―――と迫る陽菜の誘いを断ることが出来なかったのだ。  
とは言え、ここなら少なくとも友人や妹達の視線がない分、我聞としても多少はリラックスすることが出来る。  
 
「なんだか今日は色々驚いたけど、國生さんにはすっかり世話になっちまったな。  
 この借りはいずれ・・・そうだな、國生さんの誕生日にでも、しっかり返させてもらうとするよ」  
 
陽菜の淹れてくれた紅茶を飲みながら、さっきまでよりは随分落ち着いた口調で話す彼に、  
 
「はい、それは楽しみですね・・・期待してますよ?」  
「うむ、まかせておくがいい!」  
 
我聞の自信あり気な態度が、その実、何の根拠も無いものであるのは陽菜にはよくわかっているが、  
それもまた彼らしいと思うとそれはそれで微笑ましく・・・  
 
「國生・・・さん?」  
 
頬を微かに緩ませて微笑む陽菜に、何故か妖しげな・・・ドキリとするような艶を感じ、  
我聞は思わずまじまじと彼女を見つめてしまう。  
 
「社長・・・どうかしましたか?」  
「い、いや! なんでもない!」  
 
慌てて目を逸らす我聞の様子に再びくすり、と微笑する。  
 
「そ、そうだ、プレゼントといえば!」  
「はい?」  
「國生さん、新しい作業服、ありがとうな! 今のヤツ、結構傷んできてたから、すごく助かるよ!  
 有難く大切に使わせてもらうからな!」  
 
動揺を誤魔化そうというのも勿論あるのだが、  
我聞が丁度欲しいと思っていたものを選んでくれた陽菜にちゃんと感謝の気持ちを伝えねば、とも思っていたのだ。  
 
「ふふ、よかった・・・喜んで頂けて何よりです」  
 
陽菜も嬉しそうに答えると、ふっと俯いてしまう。  
面と向かって礼を言われて恥ずかしがっているのだろうか―――くらいに我聞は思うが、  
顔を伏せた陽菜の表情は緊張したように微かに強張っていて、そして、すぐに意を決したように顔を上げ―――  
 
「ですが社長」  
「ん?」  
 
我聞から見れば、普段と変わらない表情の片隅に、僅かに決意と覚悟の色を浮かべ・・・  
 
「実は・・・もうひとつ、社長にプレゼントがあるんです・・・」  
「え、そうなの? いや、別にそんな気を使ってくれなくてもいいのに」  
 
先に貰ったプレゼントも十分に嬉しかったし、  
更にはメイドの格好までして行き過ぎな位に世話を焼いて貰っているのだ。  
我聞は形だけの遠慮ではなく、本心からそう言うのだが、  
陽菜にはその申し出を受け入れる気は毛頭無い。  
何故なら・・・その、もうひとつのプレゼントこそが、  
陽菜が何よりも我聞に渡したい・・・捧げたいものなのだから。  
 
我聞の言葉に答えることなく陽菜はすっ、と立ち上がると、  
テーブルを回り込んで我聞の横を通り過ぎ・・・ることなく、  
エプロンドレスの裾をふわりと揺らしながら、彼の傍に腰を下ろす。  
 
「こ、こ、國生さん!?」  
 
ほとんど身体が触れそうなくらい近くに寄り添われ、我聞は思わず後ずさってしまうが、  
我聞が離れれば陽菜はその分だけ身体を乗り出して、恥ずかしさで真っ赤な顔を上目遣いにじっと見つめてくる。  
 
「社長・・・」  
 
それだけにとどまらず、陽菜の手が我聞の脚に触れて・・・  
 
「もうひとつのプレゼントは・・・わたし・・・です」  
「・・・・・・え・・・?」  
 
取り乱しつつあった我聞の思考が、今度は停止する。  
しばらく唖然として、それから“冗談だよな?”と引きつった笑みを彼女に向けてみるが、  
陽菜は全くその表情を変えることなく、じっ、と我聞を見つめたまま。  
 
「あ、あーと・・・ど、どういうことかな、は、はは・・・」  
「文字通り、そのままです」  
「そのまま・・・って、すまん、その・・・具体的には・・・」  
「身も心も・・・私の全てを、社長に捧げる・・・ということです」  
 
それは昨夕、陽菜が優と果歩の二人と交わした問答の焼き直しに近かったが、違うところがあるとすれば、  
問いかける我聞だけでなく答える陽菜もまた、真っ赤に頬を染めているところか。  
だが、それだけ恥ずかしいことを口にしていると自覚しながらも尚、  
陽菜は視線を逸らすことなく我聞の目を見つめている。  
 
「社長が望むことでしら、どんなことでも・・・どんな・・・恥ずかしいこだって・・・」  
 
我聞の脚・・・太股の、付け根に近いところに置いた手にぎゅっと力をかけて、  
陽菜は我聞に更に身体を寄せる。  
それで、もともと触れる寸前まで迫っていた陽菜の身体は・・・  
 
「こ、こく・・・っ! か、身体が、あたっ・・・」  
「お嫌ですか・・・?」  
「い、いや、その・・・!」  
 
陽菜の豊かとは言えない胸が我聞の腕に押し付けられ、  
自然と彼女の顔も、その吐息を直に感じてしまうほどに我聞の顔の側に迫っている。  
 
「う・・・ちょ、ちょっと、こ、こく・・・っ」  
 
仕事においては無類の勇敢さを発揮する我聞が、  
今は真っ赤な顔で呂律すら怪しくなるほどに恥ずかしがり、緊張しきっている。  
陽菜とて顔から火が出そうなくらいに恥ずかしいのを懸命に堪えているのだが、  
我聞の―――特別な想いを自覚してしまった相手の彼らしからぬ姿が、  
彼女に少しだけ余裕と、同じく少しだけ・・・意地悪な気分を呼び起こす。  
 
「なんですか? 社長・・・?」  
「うく・・・! い、いや・・・」  
 
ごくり、と唾を飲み込む我聞の仕草を紅い、そして微かに妖しい笑顔で見つめ、  
更に・・・ちょっとした拍子に唇が触れてしまうのではないかと我聞が危惧してしまうくらいに、  
陽菜の顔が、唇が迫ってくる。  
 
―――こ、こ、國生さん・・・な、なんのつもりなんだ・・・  
 
我聞は確かに陽菜を異性として意識しているし、彼女に対して好意と呼べる感情を抱いてもいる。  
だが、それはまだ恋や、ましてや愛などといった明確なものではない。  
・・・少なくとも、そういった自覚はまだ無い。  
しかし今の状況は、そんな我聞の自覚とか、意思とか、理性とか・・・  
そんなものを完全にさしおいて、陽菜の存在そのものが彼の“男性”に訴えかけてくる。  
 
陽菜の整った顔が、ツヤのある唇が・・・  
頬にかかる、温かくこそばゆい吐息が・・・  
薄いながらもエプロンドレスの生地越しに確かな存在を感じさせる乳房が・・・  
陽菜の“女性”と、己の“男性”を、かつて無い強さで意識させられてしまう。  
そんな状況で、18才になったばかりの健康な少年に男性特有の生理現象が起きてしまったとしても、  
それはまさに不可抗力という他は無く、そのことで誰も我聞を責めることは出来ないだろう。  
 
・・・だが、どんな理由が有ろうが無かろうが、今の彼にはのっぴきならぬ事情がある。  
彼の、主の意思などお構い無しに存在を主張する男性そのもののすぐ側に・・・陽菜の手が置かれたままなのだ。  
 
―――やばい。  
―――これだけは、絶対に気付かれてはならない・・・社長として、いや、男として!  
 
・・・と、決意だけは固いのだが、今の我聞は後ずされるだけ後ずさりきって、  
既に壁際に追い詰められているのだった。  
そして彼の焦燥などお構いなしに、陽菜は密着させた身体をさらに押し付けてきている。  
 
「こ・・・國生さん・・・そ、その・・・」  
「なんでしょう・・・なんなりと・・・」  
 
陽菜が言葉を紡ぐと彼女の吐息が頬をくすぐる様に不規則に揺れ、  
それだけで我聞の身体はゾクゾクと震え・・・  
 
「あ・・・社長」  
 
その拍子に陽菜が反応したものだから、我聞は  
 
“気付かれてしまったか―――!?”  
 
と、心臓が止まる思いだったが・・・  
 
「社長、すごい汗・・・」  
「・・・え!? あ、ああ! 暑いからな、はははつ!」  
 
今は既に午後9時を過ぎ、当然、陽菜の部屋には冷房が効いている。  
それは我聞程では無いにせよ恥ずかしいのを懸命に隠している陽菜にも簡単に気付ける程の、  
ある意味我聞らしい芸のない誤魔化しであったが・・・  
 
「ふふ、そうですね・・・では社長、シャワーでも浴びて来られては如何ですか?」  
「そ、そうだな! そうさせてもらうよ!」  
 
今はただ陽菜から距離を置くことだけを考えていた我聞は、好機とばかりに弾けるように立ち上がり・・・  
 
「浴室はお手洗いの奥ですから・・・タオルは置いてあるものをお使い下さいね」  
「ああ、わかった! サンキュ!」  
 
答えながら逃げるようにして、ほとんど駆け足で浴室へと突っ込んでいくのだった。  
その様子を陽菜は微笑みながら見送り、そのまま軽くうつむいて・・・  
悩ましげな、なにかを決意しかねるような、逡巡の表情を浮かべていたが―――  
やがて浴室からシャワーの水音が聞こえてくると、  
先程の我聞のように喉を鳴らして唾を飲み込み・・・意を決したようにゆっくりと立ち上がった。  
 
「・・・俺はいったい、何をやっているんだ・・・?」  
 
茹だった頭と熱を持ってしまった一部の器官を冷やすべく冷水のシャワーを浴びながら、  
我聞は声に出して自問する。  
その言葉は自責でも自虐でもなく、純粋に戸惑いからのものだった。  
 
陽菜がメイドの格好をして出迎えてくれて、  
誕生日だということで彼女に並々ならぬ世話を焼いてもらい、  
その礼に彼女を部屋まで送り、  
そのまま部屋に招かれてお茶をご馳走になって・・・  
 
そこまではいい。  
普段からすればかなりの非日常っぷりではあるが、まだ容認出来る範囲内の出来事だ。  
だが、そのあと・・・  
 
陽菜から彼女自身をプレゼントすると言われ、  
身体をぴったりと押し付けられ、  
息がかかるほどに顔と唇を寄せられて、  
それで自分のモノは浅ましく膨らんで固くなって・・・  
 
そこまで考えて、我聞は頭をぶんぶんと振って思考を止める。  
この状況がいかに異常であるかを認識するだけなら、そこまでで十分だった。  
 
「・・・帰ろう」  
 
陽菜の様子がおかしいのは気にかかるが、自分まで巻き込まれるのは非常にまずい。  
それに、自分がいなくなれば陽菜だってこれ以上おかしく成りようが無いハズだ。  
 
「よし・・・!」  
 
そう、決意したまさにその時。  
 
がらららっ  
 
蛇口を捻ってシャワーと止めようとしていた手が、ぴたりと止まる。  
水音に混じって、有り得ない音が聞こえた気がした。  
 
ぴちゃ・・・ぴちゃっ・・・  
 
今度は、気のせいなどではなく・・・確実に聞こえた。  
水音に混じって、一歩、二歩と“誰か”が歩み寄ってくるような・・・  
そんな、絶対にありえないはずの音がして・・・  
 
「社長・・・」  
 
絶対にありえない、あってはならないはずの事態が起きていた。  
もはや確かめるまでも無く、その声は陽菜のもの。  
そしてここは浴室で、背を向けているとは言え・・・我聞は全裸だった。  
背後にいる彼女がどんな格好なのかはわからないが、  
自分を隠すものを何一つ持たない我聞は振り返って確かめることは出来ないし、  
それに・・・振り返ってはいけない、見てはいけないと・・・ほぼ確信に近い予感があった。  
 
「こ、國生さんっ! 何してるのかわかってるのか!?  
 いくらなんでもこんなこと、おかしいと―――」  
 
強い口調で、叱るように話す言葉は、だが・・・  
ぴと、と彼女の手が背中に触れる感触で、敢え無く立ち消えてしまう。  
 
「社長・・・お背中、お流し致します・・・」  
「こ・・・こ・・・っ」  
 
声が、近い。  
あくまで一般的なアパートの浴室が、もともとそんなに広い訳が無い。  
その洗い場に人が二人も入れば・・・そして、二人目が一人目に二歩も近寄れば・・・  
当然ながら、二人の距離は限りなくゼロに近づく。  
 
こんなこと、すぐに止めさせなくてはならない―――  
そう思いつつも、我聞は声を出せないでいる。  
それくらい緊張している自分が情けないとは思うのだが、  
真後ろにいる陽菜がどんな姿をしているのかと想像すると・・・  
 
「―――――――――っ!」  
 
冷たいシャワーを浴びている甲斐もなく頭は茹だち、腰のモノがもそり、と自己主張の兆しを見せる。  
そんな持ち主の意思に従ってくれない身体の一部をなんとか従わせようと焦っていると、  
すっ、と陽菜の手が背中から離れる。  
彼女の気配そのものは背後から消えることはなく、なにやらもぞもぞと動いている様子だが、  
少なくとも触れられることで情けないくらいにバクバクと跳ねる鼓動を気どられる心配は消えて、  
我聞は内心、少しだけ安心する。  
だが、それはそのまま心の隙となり、後に続く衝撃を完全に無防備な状態で受け入れる羽目になる。  
 
・・・ぬるり、と。  
不意に我聞の両肩より少し下がった背中に、陽菜の両手が触れる。  
 
―――石鹸?  
 
先程より滑らかな肌触りは、石鹸か、ボディーソープを手に取ったのか・・・  
等と、状況を忘れ気を取られたその直後―――  
 
「っぅわぁあああっ!?」  
 
にゅる、と。  
我聞の背中から腰、尻の辺りまでの一帯に、柔らかく、温かく、ぬるぬるした感触が押し当てられる。  
 
「こ、ここっ! こ・・・こここ・・・!?」  
 
背中に密着する生々し過ぎる感触と、当たっているモノの起伏、そして背中越しに伝わってくる鼓動・・・  
見えなくとも、動転していても、ナニをされているのかは一瞬で理解できた。  
理解はできたが・・・  
 
「こっ! こくっ! こ、國生さんっ!? お、おおお、おっ・・・」  
 
理解できたところで・・・いや、むしろ理解してしまったからこそ、どうにもならなかった。  
己の裸の背中に、陽菜の裸の身体が・・・胸が・・・おっぱいが、押し当てられている・・・!  
その事実に、我聞の理性はぐらぐらと揺れ、  
さっきまで必死に抑えようと念じていた下半身のモノは、呆気なく手のつけられない様相を呈している。  
だというのに―――  
 
「しゃ・・・社長、お背中・・・お、お洗い・・・します・・・」  
「え・・・・・・っうわぁあっ! ちょ、ちょっと、ちょ、ま、國生さ、ちょ―――っ!」  
 
にゅる、むにゅ、と・・・  
あろうことか、陽菜はボディーソープを塗りつけたのであろう彼女の身体を我聞の背中に擦りつけてくる。  
陽菜のきめ細かい、そして柔らかい肌の感触が、  
小ぶりながら適度な柔らかさと適度な弾力を兼ね備えた二つの膨らみが、  
そしてその頂点でつん、と尖っている二つの蕾が・・・  
背中に押し付けられ、泡立ちぬめるボディーソープを塗りたくるように我聞の素肌を這い回る。  
 
―――こ、國生さんの、胸が・・・お、おっぱいが、それに、これは・・・ち、ち・・・ちく・・・!  
 
それだけでも、我聞の決意や理性の類は既に亀裂が入っているというのに、更に―――  
 
「っふぁ・・・はぁ・・・しゃ・・・ちょお・・・っ、いかが、でしょうか・・・はぁ・・・っ、あ・・・  
 きもち、いい・・・ですか・・・ぁ・・・は・・・っ、はぁ・・・あは・・・ぁ・・・」  
 
背後から聞こえてくる陽菜の声も、言葉の合間に洩れる荒い吐息も、蕩けたように艶がかかり、  
その響きはまるで・・・  
 
―――國生さん・・・すご、い・・・えっちな、声・・・國生さんも、もしかして・・・感じて、いるのか・・・?  
 
ぞくり、と・・・我聞の身体の奥で、新しい衝動が鎌首をもたげる。  
陽菜の意図はわからない。  
彼女の言う通り、あくまでも誕生日プレゼントの一環として、  
少し大胆に奉仕して、自分を気持ちよくさせたい・・・というだけなのかもしれない。  
だが・・・陽菜自身が感じているなら・・・  
誕生日とかプレゼントとか関係無く、もしも、彼女が、自分を求めているというなら―――!  
 
そう思うと、既に陽菜の肉体の感触でギチギチに硬くそそり立ってしまっていたモノが、  
更にぎゅっと硬さを増すが・・・  
 
「あ・・・ふっ・・・しゃ・・・社長・・・っ、あの・・・気持ち、よく・・・ありませんか・・・?」  
「え・・・え!? あ、いや! いや、すごく! 物凄く気持ちいいよ! うん!」  
 
陽菜の声が纏う淫らな響きにばかり気を取られて、問い掛けられた内容など完全に意識の外だった我聞は、  
ほとんど条件反射で答えてしまう。  
 
「本当ですか・・・よかった・・・では、あの・・・ま、前の、方も・・・」  
「ま、前・・・って・・・」  
 
背中に触れていた陽菜の両手が腕を回りこんで我聞の鎖骨に触れ、そこから胸、腹、と、  
泡を塗りたくりながら少しずつ下方へ滑ってゆく。  
 
「あの・・・もし、その・・・お恥ずかしく、ないようでしたら・・・こちらに、向いて頂ければ・・・  
 背中と同じように、社長のお身体も、私の、その・・・身体で、お綺麗に致しますが・・・」  
 
ぞくり、と。  
またしても、我聞の奥深くで先程の衝動が膨れ上がるのを感じる。  
身体の前面も、背中と同じように陽菜の“身体”で綺麗にする、ということは、  
つまり裸の自分と裸の彼女が向き合って、触れ合って・・・身体を押し付けあって・・・  
それはもう、抱き合うのと同じ・・・いや、抱き合う、どころではない。  
ほとんど性行為そのモノであり、そう考えると我聞のモノは自分でも唖然とするくらいに、  
膨張し、硬く充血し・・・  
そして、それを意識した次の刹那にハッとして―――  
 
「こここ國生さんストップ!」  
「あ・・・」  
 
陽菜の泡にまみれた手が、腹から下腹部へ、  
そして今まさに、ギチギチに硬く天を衝くそれに触れようとしたその直前に、  
我聞は彼女の手を掴んでいた。  
 
「ま、ま、前は自分で洗えるから! ってーかもう洗ったから!  
 だ、だから、こ、こ、國生さんはっ! さ、先に、あがっていてくれ!」  
「あ・・・はい・・・」  
 
搾り出すように言う我聞に対し、表情が見えなくてもわかる残念そうな声を残すと、  
陽菜は手を離し・・・素直に、がらら・・・と戸を開けて出て行くのだった。  
 
背後で戸が閉まる音を聞いた後も、我聞は冷たいシャワーの下で呆然と立ち尽くしている。  
 
「あ・・・危なかった・・・」  
 
もしもあのまま陽菜の手が己のソレに触れていたら、一体どうなっていたかと思うと、  
何はともあれ今はただ、事なきを得たことに安堵と・・・そして、少しだけ残念だとも思いかけて、  
慌てて頭を振ってその考えを消す。  
結局理由は不明のままだが、今夜の陽菜は我聞の考えの及びもつかぬ執着というか、何か強い思いの元に、  
我聞との接触・・・スキンシップを求めてきているのだけはわかる。  
しかも、彼女らしからぬ強引さで。  
ここで引き下がった以上、それも終わりなんじゃないかとは思うのだが、  
何せ我聞の理解を完全に超えた出来事である、我聞の予想など、彼自身が全く当てにしていない。  
だから・・・  
 
「これは・・・何とかせんといかんよな・・・」  
 
シャワーを浴びながら、俯いた我聞の目に入るのは、  
未だに全く衰える気配を見せない、彼自身のいきり立った“モノ”。  
何せ陽菜の肌、胸・・・そして乳首の感触まではっきりわかるくらいに、  
直に背中に押し当てられ、擦り付けられたのだ。  
事ある毎に朴念仁扱いされる純朴な少年には刺激が強すぎて、  
その感触は今も全く劣化することなく、その気になればいつでも頭の中で再現できる程で・・・  
 
「い、いかんっ! お、おちっ、おちつけ俺!」  
 
ちょっと思い出すだけでソレは敏感に反応して更に硬くなり、慌てて他のことを考える。  
だが、どれだけ冷水を浴びようがソレは一向に衰えず、  
 
「・・・この際・・・ここで、一度出しちまった方がいいんだろうか・・・」  
 
かなり本気で“最終手段”について考える。  
他人の家、しかも女の子の部屋でそれをするのにはかなりの抵抗があるが、  
このままでは服を着ても、自分の下半身がどんな状態かはひと目で看破されてしまうのは明らかだ。  
それなら、幸いにもシャワーを浴びている今のうちに、一度処理を・・・  
 
「い、いや! 馬鹿なことを考えるな! こ、ここは國生さんちだぞ・・・」  
 
だが結局、こんな状況においても社長として、男としての矜持が、その行為を否定する。  
そのまま数分間冷水を浴びつづけてみたが・・・状況は変わらない。  
それで、我聞は仙術使いとしての未熟さ等を感じたりしながら、もはや己の一部を抑え込むことを諦めて・・・  
 
「帰ろう・・・今度こそ・・・」  
 
陽菜にコレのことを気取られるより前に、とにかくこの部屋を出ようと決める。  
服を着たら一声かけて、速攻で部屋を出るのだ。  
言うことを聞かないコレの始末は、家でゆっくりとつければいい。  
・・・どうせ、今夜は陽菜のあの感触を忘れられそうにないのだ、始末する材料には事欠かないだろう。  
 
そうと心を決めて蛇口を締めて浴室から出ると、  
洗面を兼ねた脱衣室には一目でわかるように新しいタオルが置かれていた。  
色々悩ましいのは相変わらずだが、一応の行動指針を立てたことで吹っ切れたのか、  
さっぱりした表情の我聞は陽菜の言葉通りにそれを借りて身体を拭い・・・  
その表情が、再びこわばる。  
 
服が・・・ない。  
そして・・・自分が浴室に入る前は確実に止まっていたはずの洗濯機が、  
今はごうん、ごうん・・・と音を立てているのであった。  
 
「あの・・・國生さん?」  
「なんでしょう、社長」  
 
扉越しにも届く様にと大きめの声で呼び掛けると、  
返事は扉のすぐ反対側から聞こえてくる。  
声をかけられることを予想して、そこにいたのだろう。  
 
「ああ、あのさ・・・俺の服なんだが・・・」  
「はい、すっかり汗が染みていましたので、洗濯させて頂きました」  
「んな―――!?」  
 
さも当然、とばかりにさらり、と言い放つ。  
だが、我聞にとっては一難去った後のまた一難というか、  
また一歩、確実に追い詰められているとしか思えない状況。  
 
「え、ええと、じゃあ・・・代わりの服なんかは・・・」  
「申し訳ありませんが、流石に社長に合う服はうちにはありません・・・」  
「じゃ、じゃあ、どうしろと・・・」  
「そちらにタオルがありますので、取り敢えずはそれを腰に・・・」  
「い、いや! その格好で帰るのはさすがにマズイって!」  
 
いくらすぐ近くだからって、たまたま巡回中の警官と出くわす可能性だって無くは無い。  
法律上はまだ少年と言えども、流石に18才の男が夜中にタオル一つで歩いていたら、  
いくらなんでも問題だろう。  
 
「あ、その点でしたら心配ありません、果歩さんには私から連絡を入れさせて頂きましたから」  
「お、そ、そうか・・・いや、気が効いてるな、助かるよ!」  
 
今までの流れからすれば、やや不自然な気がしなくもないが、  
こんな風に細かいところまで気が届くところこそ、普段の陽菜らしいと言えばその通りでもある。  
きっと、気の迷いから目を醒ましてくれたのだろう、と思うことにして、  
さて、果歩が着替えを持ってくるまではこのままここに―――  
 
「はい、社長は今夜はうちにお泊まりになられますから、ご心配なさらずに、と」  
「なんですと―――――――――!?」  
 
今更ながら、自分は既に陽菜の掌の上だったということ、  
そして逃げ道は断たれていることを認識させられる我聞であった。  
 
 
「・・・社長、いつまでそちらに篭っていらっしゃるおつもりですか?」  
「ああ・・・洗濯が済むまで待つよ」  
「待ってどうされるのです?」  
「着て、帰るよ」  
「干さないと生乾きですよ?」  
「大丈夫、家に帰る間だけだ、我慢できるさ」  
「そうですか・・・ところで、その洗濯機、私の下着も一緒に入っているのですが・・・お開けになりますか?」  
「ぶっ!」  
 
我聞のささやかな抵抗は、またしても本当にささやかなまま幕を閉じる。  
 
「さあ、ずっと水のシャワーを浴びられて、その格好のままではいくら社長でも風邪を引いてしまいます  
 温かいお茶を用意しましたから、どうか出てきてください」  
「い、いやだが! 出ても結局、この格好しかできないワケだし・・・」  
 
この格好の何が不味いかと言えば、今の陽菜の前にタオル一丁という姿が無防備過ぎるというのもあるが、  
やはり一番の懸念は腰のモノなのだ。  
想像を絶する成り行きに唖然としていたせいか、今はやっとそれなりに落ち着いてはくれているのだが、  
下手に陽菜に近づけば、それだけで簡単に膨れ上がりタオルなど呆気なくはね除けてしまう可能性すらある。  
・・・という以前に、陽菜のことを考えただけでまたしても我聞のモノはムクムクと勃ち上がってしまい、  
 
「う・・・こりゃ、ますます出られん―――」  
 
がちゃ。  
 
「社長、そろそろ・・・って・・・」  
 
モノが硬くなってしまうとタオルが途端に窮屈になり、一旦外したところで不意に扉が開き・・・  
陽菜は、男の象徴を反り返らせて立ち尽くす全裸の我聞と正面から向かい合う。  
 
「え・・・あ・・・うわぁああっ!?」  
 
完全に動転した我聞は、辛うじて股間をタオルで隠し、あとは後ろを向くことすら忘れ、  
がたんと背中に浴室の扉が当たるまで後退し、それ以上動けずにいる。  
 
「こ、こここ、こくっ・・・」  
 
対する陽菜は息を飲んで顔を真っ赤に染めながらも決して目を逸らさず、  
我聞がタオルで覆った後も彼の腰に視線を注いだままで、やがて微かに妖しく笑みを浮かべ・・・  
 
「社長・・・もう、いいですよね?」  
「え・・・な、何を・・・」  
「もう私・・・社長のこと、前も後ろも・・・全部、見ちゃいました・・・」  
「っく・・・!」  
「ですから、今更恥ずかしがられることなんて、ありませんよね?」  
「い、いや、だがそれは・・・!」  
「どうしたんですか? 社長らしくも無い・・・怖気つかれましたか?」  
「んな・・・!?」  
 
陽菜の妖しい、艶交じりの笑みはいつの間にか顔中に広がり、蕩けるような瞳で我聞を見据えている。  
その表情は、ぞくりとする程に美しく・・・混乱しきった我聞の心に、簡単に浸食してくる。  
 
「そ、そんな馬鹿な! 俺が怖気づくなど!」  
「ふふ・・・では、居間にお茶を用意していますから・・・おいでください、ね?」  
 
くるり、とスカートの裾を舞わせて踵を返すと、陽菜はつかつかと歩いて行ってしまう。  
我聞は、彼女に挑発されたからか・・・それとも、彼女らしからぬ妖しい笑みに魅了されてしまったのか・・・  
反り返ったままの腰のモノをそのままに、大雑把にタオルを腰に巻きつけると、  
逡巡することなく陽菜の後を追い、洗面所を後にした。  
 
「どうぞ」  
 
居間に戻り、先程と同じクッションに我聞が腰を下ろすと、  
陽菜はポットを手にテーブルを回り込み、  
こぽぽ・・・と、彼の前に置かれたカップに熱い紅茶を注ぐ。  
だが、我聞はそれに手をつけようとせず、陽菜もまた注いでしまった後は興味がないとばかりに、  
ポットをテーブルに置くとそのまま我聞の隣に座り、じっと彼の顔を見つめる。  
 
「國生さん・・・」  
「はい、社長」  
 
我聞も開き直ったのか、照れこそ残るものの後ずさったりはせず、彼女の目を見て・・・  
 
「どうして、こんなことを・・・?」  
「・・・わかりませんか?」  
 
くす、と小さく笑って、少しだけ寂しそうな顔を見せる。  
 
「社長・・・」  
 
す、と陽菜の顔が近寄って来るが、我聞は動かない。  
 
「私のこと・・・嫌いですか?」  
 
我聞を試すような、からかうような・・・  
それでいて、隠しきれない不安の色を帯びた表情で、陽菜が問いかける。  
 
「そんなことない! そんなワケ、ない・・・」  
 
我聞の即答に、陽菜は無言のまま心底嬉しそうに顔を綻ばせ・・・  
 
「では、もう一つ・・・」  
 
口許は綻ばせたまま・・・だが更に迫ってきた目は、何処までも真剣に―――  
 
「社長は・・・私のこと・・・好き、ですか?」  
 
今度は、即答できなかった。  
秘書として、同級生として、家族として・・・  
陽菜に対する“好き”の気持ちなら、幾らでも挙げられる。  
だが・・・今、彼女に求められているのは・・・  
 
「わ・・・わからない・・・スマン」  
 
誤魔化しでもはぐらかしでもなく、正直に・・・自分の気持ちが、まだわからない。  
陽菜は我聞にとって、妹を除けば最も身近な異性であり、しかも間違いなく魅力的な異性である。  
だが、・・・  
 
「國生さんとは、その・・・一緒にいると、なんていうか・・・落ち着くし、楽しいし・・・  
 ずっと、一緒に居られたらいいと思ってる・・・だが・・・いや、だから・・・むぅ・・・」  
 
その感情は陽菜自身が昨日まで抱いていたものと同じ。  
同年代の少年少女が口にする“恋”なんかより、余程強い信頼と、絆。  
横から誰が口出ししようが、手出ししようが、何もされなかろうが・・・  
いつかその感情は昇華して、“愛”という二人の共通認識になるであろう、そんな想いの、卵。  
 
だが二人とも、まだそんな想いの意味に気付く事は出来ない。  
だから我聞は“わからない”としか答えられないし、  
陽菜はもっとはっきりとした行為で、それを確かめたい、確かにしたい・・・という思いに駆られるのだ。  
 
「すまん・・・今はまだ、わからん・・・」  
 
済まなそうに言う我聞に、陽菜は微笑みながら、  
 
「そうですか」  
 
と言い、そしてうっすらと目を細め・・・  
 
「私は社長のこと・・・好き、ですよ?」  
 
顔を赤らめこそしながらも、さらりと言い、我聞に身体を寄せる。  
 
「そ、そうか、その・・・あ、ありがとう・・・・・・だが・・・」  
 
面と向かって、憎からず思っている少女から告白された以上、  
男として露骨に後ずさる訳には行かない。  
避けているとか、拒絶している等とは思われたくない、というのもある。  
そうやって逃れることの出来ない我聞は、陽菜にされるがままに迫られ・・・抱きつかれて・・・  
 
「ちょ、ちょっ・・・! こ、國生さん!?」  
 
陽菜はシャワーから出た後もエプロンドレス姿だが、我聞は腰にタオル一枚だけのほとんど全裸みたいなもの。  
そんな素肌に腕を絡められ、すがりついて来る陽菜の身体の感触を身体の前面で受け止めて・・・  
 
「や、やばいって! 國生さんっ! は、離れ・・・!」  
 
むくり、と鎌首をもたげた我聞のソレは、隠すことも誤魔化すこともままならず、  
スカートの生地に包まれた陽菜の太腿に自らを擦り付ける形となり・・・  
 
「あ・・・ふふ・・・社長、私の身体で・・・興奮して下さってるんですね・・・?」  
「い、いや、これはその! お、男として、不可抗力というかだな! ええと、だから・・・!」  
「・・・嬉しい・・・」  
「え、こ、こく・・・って!? ちょ、ちょっと待て! 國生さんっ!? や、やめ・・・!」  
 
するり、と。  
我聞の背中に絡めていた腕が外れ、彼の肌を滑り降りて・・・  
解けかけたタオルを押し上げるように自己を主張して止まない我聞のモノを、  
両手で包み込む様にして触れる。  
 
「っく!? や、やめっ! ちょ、ちょっと國生さんっ! そ、それは、ヤバいから! いやマジでっ!」  
 
我聞の切羽詰った声をうっとりした表情で聞き流しながら、  
 
「凄い・・・社長の、こんなに熱くて・・・かたい・・・です・・・」  
 
する・・・しゅる、と・・・  
固くそそり立ったモノを愛でるように、  
陽菜はソレを柔らかな手付きでタオル越しに撫で、摩る。  
 
「ぅあ・・・あく・・・っ!」  
 
手の中でびく、びくん、と脈打つ感触や、  
これまでに聞いたことも無いような我聞の切なげな声が陽菜をゾクゾクと奮い立たせ、  
すっかり紅潮し情欲に蕩けかけた顔を、我聞のやはり紅潮した切なげな顔に近付けて・・・  
 
「ね・・・社長・・・?」  
「っく、國しょ・・・え? こく―――」  
 
初めて他人の・・・それも、陽菜の手に己のモノを触られ、  
優しく弄られる凶悪な快感に耐えるのに必死なあまりに、  
我聞は彼女の顔が迫っていることにすら気付いていなかった。  
故に声をかけられて初めてその近すぎる唇に驚き、  
そのまま、何の反応もできないままに・・・唇を奪われていた。  
 
「ん・・・ちゅ・・・っ」  
 
驚きで目を見開いた我聞の唇を、陽菜の唇が塞ぐ。  
表面が触れるだけの軽い、乾いた感触のキスから始まり、  
徐々に唇を強く押し付けるようにして、唇の内側の粘膜と粘膜を触れ合わせ、擦り合わせ、  
そして少しずつ滑り込ませた舌で舐め、唇に這わせる。  
 
「んぷ・・・んんぅ・・・」  
 
陽菜が少しずつ積極的に、貪欲に我聞の唇を貪る一方で、  
我聞はただ呆然と、彼女にされるがままになっている。  
性器への愛撫、次いでキス・・・と、不意打ちの連続で、  
このまま頭から煙を噴いて倒れてしまいそうな程の混乱具合なのだが、  
そんな乱れきった頭にも、  
肉茎を擦る陽菜の指や、唇に吸い付く彼女の唇、そして舌の感触の温かさ、そして生々しさは余りにも鮮烈すぎて、  
意識を飛ばすことなど出来ようハズもなかった。  
そして彼の意思では何一つ出来なくとも、陽菜の感触に身体は正直に、自動的に反応を示し・・・  
 
「ん・・・ぷ・・・ぁ、っふぁ・・・や、ん・・・しゃちょお・・・の、これ、凄い・・・また、硬く・・・」  
 
ちゅっ、と湿った音を立てて唇を離すと、手の中でますます硬くそそり立つソレの感触を嬉しそうに確かめて、  
する、とタオルの下に手を滑らせて・・・熱く脈打つ男性の象徴に直接、触れる。  
 
「ぅく・・・あ・・・っ!」  
 
タオル越しでも過剰なくらいに刺激的だった陽菜の愛撫・・・  
なのに、今度はその白い手が、細い指が・・・己の敏感なモノを直に触り・・・撫でている。  
その優しく、遠慮がちな刺激だけでも肌が粟立つ程の快感で、  
神経が侵されているかのような錯覚すら抱いてしまう。  
 
―――國生さんの指が・・・俺のを、触って、撫でて・・・握ってる・・・  
 
それが・・・その凶悪なまでに甘美な感覚が、  
いつも生真面目で厳しい陽菜によって与えられているのだと思うと、  
快感は電流となって脊髄を遡り、脳髄を焼き焦がす。  
 
「うぁ・・・! こ、國生さんっ! ダメだ、これ以上は・・・!」  
 
我聞の切実な訴えは、だが全く聞き入れられることはなく・・・  
 
「社長・・・こんなに硬くして・・・辛そう・・・待って下さいね、今すぐ・・・楽にして差し上げますから・・・」  
 
そう言って一旦身体を離すと陽菜は屈み込むようにして身を縮め、  
四つん這いのような格好で我聞の腰に顔を近づける。  
 
「うく・・・っな!? な、何をする気だ、國生さん!?」  
「楽にして・・・力を抜いてください・・・  
 不慣れではありますが、社長に気持ちよくなって頂けるように・・・頑張りますから・・・」  
 
そう言って、既に眼前に迫った我聞の肉茎を羞恥と、緊張と、怯えと、  
そして淫蕩さの入り混じった眼差しで見つめ・・・  
 
 
「い、いや、待て! こ、こ、國生さんっ! そ、そんなことしなくても――――――」  
 
我聞の切羽詰った声が却って陽菜を興奮させ、積極的にさせていることなど彼が知る由も無い。  
ただ、既に限界間近のモノと、それに息がかかるほどに接近した陽菜の顔の組み合わせに、  
彼女が次にやろうとしていることを嫌でも予想させられてしまう。  
そして・・・そんなことをされたら、程無く自分が決壊してしまうこともわかっている。  
だが、わかっていようがいまいが、もはや彼女を跳ね除ける訳にも行かず、  
我聞が焦燥と、そして僅かな期待を滲ませた目を向けるその先で、  
陽菜は先程のキスで濡らした唇と、その間から覗く舌を、はちきれそうな肉茎に近づけて・・・  
 
「では・・・失礼します」  
「や、やめ――――――」  
 
ぴちゃ。  
 
「――――――っくぅ!」  
 
背筋に電流が流れたように、我聞はびくっと背を仰け反らせる。  
反り返った肉茎の根元付近に、生温かくねっとりと湿った、柔らかなもの・・・陽菜の舌が触れて、  
ゆっくりと、触れたままの舌先を微妙に震わせながら、それが先端の方へと這い上がってくる。  
 
「っあ・・・やめ・・・っく、こくしょ・・・さんっ!」  
 
その動きにつられて下腹部に溜まり、滾り続けている熱い衝動が先端へと遡りそうになるのを、  
我聞は必死で堪えるが・・・  
 
「んむ・・・あ・・・ふぁ・・・社長・・・我慢、しないで・・・」  
 
舌に絡ませた唾液を我聞のモノに擦り込むようにしながら、  
そそり立つ我聞の肉茎の裏筋を根元から先端まで舐め上げる。  
その間も上目遣いで彼の表情から目を離さず、  
必死で耐える辛そうな様子と、  
そうまでして耐えねばならないくらいに“感じて”しまっているのを見て取ると、  
もう一度・・・いや、繰り返し何度も何度も、下から上へと・・・まるでアイスでも舐めるかのように、  
執拗に愛撫を加える。  
 
初めこそ恥ずかしくて真っ赤だった陽菜だが、  
我聞の必死で耐える表情を見ているうちに自分の完全な優位を認識し、やがて嗜虐的な衝動が生まれ、  
彼を早く気持ちよくさせてやりたい、という想いと、  
耐えつづける彼を決壊させてしまいたい、という欲求が入り混じり・・・  
 
「んぷ・・・むぁ・・・っふ・・・しゃちょ・・・まだ、我慢・・・されるのですね・・・」  
「っく! そ、それは・・・この、ままじゃ・・・國生さんに、オレ・・・っ!」  
「お気に、なさらないで・・・ください・・・はむ・・・ん・・・ぅ  
 社長に、気持ちよくなって・・・欲しいのですから・・・」  
「うぁ・・・だ、だが・・・!」  
「ふふ・・・ん・・・っ、では・・・これなら・・・」  
「え・・・ちょ、ちょ・・・っ! やめ、うぁ――――――」  
 
一旦舌を離し、愛撫を始めたときより更にギチギチに硬く、赤黒く膨れ上がったソレを見て密かに息を呑み、  
だがすぐに覚悟を決めて、  
 
「社長・・・本当に・・・我慢、しないで・・・そのまま、私に・・・出して下さって・・・構いませんから・・・」  
 
それだけ言うと涎でべとべとになった唇を大きく開き・・・  
 
「あ・・・む・・・ん・・・っ」  
「―――――――――っ!」  
 
決して大きくない口を精一杯に開いて、我聞の肉茎の先端―――亀頭を口に含む。  
それだけで、はちきれんばかりの肉茎の脈動が、鈴口から漏れる先走りの苦味が口中に広がり、伝わり、  
呼び起こされる淫らな感覚が陽菜の心を覆い尽くす。  
我聞のように明確な決壊の恐れこそなかったが、陽菜の身体もまた既に熱く蕩けかけ、  
スカートに隠れたふとももは切なげに擦り合わされ、奥から滲み出た蜜でじっとりと濡れていた。  
 
―――社長・・・お願いです・・・もう、我慢しないで・・・早く・・・出して・・・  
―――そうしたら、今度は私自身で・・・私の、身体で・・・  
 
陽菜の想いが、そして想いの故に生まれてしまった渇望が、  
生まれて初めての、昨晩までは想像すらしたことのなかった淫らな行為へと、彼女を駆り立てる。  
 
「あむ・・・んっ、んふ・・・んぅう・・・んぷ・・・っぷぁ、は・・・ぅ・・・ん」  
 
ちゅ、ぷ・・・っ、ちゅぱ、くちゅっ・・・ちゅぷ・・・ちゃぷ・・・  
 
陽菜の荒い息遣いと彼女の口から漏れ出す水音が、部屋を酷く淫靡な雰囲気で満たしてゆく。  
だが当の我聞には、既にそんな音は聞こえていない。  
陽菜が自分の、決して綺麗とは言えないモノを咥え・・・頬張って、愛撫してくれているという事実と、  
己のモノに絡みつき、這い回る熱い舌の感触に、彼の耐えようとする意思は刻々と削られ続け・・・  
 
「う・・・ぐっ! やめ、っくうう! こく、しょう・・・さんっ! やめ・・・!」  
 
陽菜に咥えられた亀頭と彼女の舌の粘膜同士が唾液という潤滑液を介して擦れ合う感触は、  
初めて体験する我聞には余りにも生々しく、そして甘く・・・耐えるには鮮烈過ぎた。  
 
「だ、ダメだ! もう、こく、國生さんっ! 離してくれ! でないと、本当に・・・っくぁあ!」  
 
一方の陽菜は、口中を満たす我聞の感覚に酔い痴れながらも、目も、耳も、その機能を失っていない。  
むしろ、我聞の必死に耐える表情や呻き声すら愛おしい―――とばかりに、全ての意識を彼に注いでいた。  
だからこそ、我聞の限界が間近であることを彼自身と同じくらい理解していたし、  
キツく目を瞑って必死に耐える彼を早く楽にさせたくて、その顔をじっと見上げながら、ひたすら舌を蠢かせる。  
 
「やめ、やめてくれ! 離して・・・くれっ! もう、もうダメだっ、だから―――」  
 
今や我聞の腰はガクガクと震え、限界を迎えようとしていた。  
だが、せめてこのまま陽菜の口の中で果てるのだけは避けねばと、  
半ば力づくで彼女を引き剥がすつもりで、目を開けてその姿を確認しようとして―――  
 
「―――――――――っ!」  
 
上目遣いで―――いつかの合宿の時とは違う、背筋がぞくりと震えるくらいに魅惑的な目で自分を見つめる、  
そんな陽菜と目が合ってしまい―――  
 
「――――――っく! うぁ! だ・・・で、出るっ! っく! ぅううううぅうっ!」  
 
びゅる―――っ  
 
「んむ!? んんんっ!? んぶっ! んんんんんんんんんっ!」  
 
びゅくっ! びゅるっ! びゅぶぶっ! びゅくびゅるびゅるびゅくびゅぶ―――――――!  
 
陽菜の目に魅入られてしまった我聞は、その一瞬、耐えることを放棄してしまい、  
蕩け、切なげな表情の彼女へと・・・その口腔へと、滾りに滾った熱い衝動を吐き出した。  
 
「んんんっ! んく・・・んぐっ! んぶ、んっ! んんんっ! んぶ、ぷぁっ!?」  
 
抑えつづけた反動で激しく口腔へと注ぎ込まれる精液は、陽菜の口をすぐに満たしてしまう。  
それでも我聞のものを全て受け止めたい一心で、注ぎ込まれるものを苦い、生臭いと思いながらも、  
必死で嚥下しようとする。  
だが、それを飲み込んでいるさなかも我聞の射精は全く治まることなく、開いた喉にも精は注ぎ込まれ―――  
 
「んぶぅ!? っげほっ!? げほごほっ! かはっ! けほ、ごほごほっ! かふっ! かはぁ! あ、あ・・・」  
 
喉に直接、精液を注ぎ込まれ、陽菜は思わずむせ返り我聞のモノを離してしまう。  
受け止める器を失った肉茎はそれでも精を放ち続け、  
陽菜の髪に、顔に、エプロンドレスに白濁した粘液が降り注ぎ、苦しげにせき込む彼女を汚してゆくのだった。  
 
「―――っはぁ・・・はーっ、はぁ・・・っ、は・・・ぁ・・・っ」  
 
やがて射精を終えた我聞は、半ば呆然としながら己の精液でどろどろに穢れた陽菜を眺める。  
口の中へ精液を注ぎ込み、飲み込ませ・・・それだけでは飽き足らず、  
陽菜の美しい黒髪や、整った顔までべっとりと汚してしまったというのに・・・何故か罪悪感が湧いてこない。  
一度始まってしまった射精は自分の意志で止められるような勢いではなかったし、  
そこへ導いたのは陽菜だ。  
それに、何より・・・己のもので穢れた陽菜の姿に、我聞は心を奪われていた。  
 
「か・・・はっ、社長、すみません・・・こんなに、出して頂いたのに、ほとんど・・・こぼしてしまいました・・・」  
 
涙目で咳き込みながら、陽菜はやはり上目遣いで我聞に謝罪する。  
そして、せめてものお詫びとばかりに、口中に残った粘液を懸命に飲み下そうとしているようだった。  
 
「あ・・・ああ・・・」  
 
そんないじらしい仕草や、彼女の顔や髪を垂れ流れる白濁液が黒い髪や紅潮した頬に映えて、  
ぞくりとする程の淫靡な魅力を醸し出す。  
これだけは避けねば―――と思っていたはずの事態なのに、  
陽菜の姿は余りにも扇情的で、淫らに過ぎて―――  
 
「はぁ・・・っ、あ、社長・・・こんなに、出したのに・・・まだ・・・」  
 
たった今、大量に精を放ち陽菜を汚したばかりだというのに、  
我聞のソレは先程と遜色無いくらいに硬く反り返っていた。  
 
「ああ・・・國生さんの・・・顔、みていたら・・・また・・・」  
 
陽菜の口を、顔を己の精液で汚したことを詫びることすら忘れ、  
我聞は自制を失いつつある声で答える。  
 
「社長・・・」  
 
先程までとは明らかに違う彼の声の調子に、陽菜は一瞬だけ怯んだように眉をひそめ、  
そして再び蕩けたような淫らな笑みを浮かべると―――  
 
「では、今度はちゃんと・・・こぼさないところで、社長のもの・・・受け止めてあげますね・・・」  
 
そう言って、陽菜はスカートの裾をつまむと、我聞の眼前でゆっくりと引き上げるのだった。  
 
 
 
 

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