お婆さまの手紙が届いてから、2週間が過ぎました。  
あれから、試作品を元にいくつかのバリエーションを作り、一応ブランドとしての体裁を整える事は出来たと思います。  
そして、今日という日がやってきました。  
今日――それは、新しい十曲家の出発の日。  
繊維工場の敷地内に構えた小さな店。ここが始まりの場所となるのです。  
記念すべき日が雨なのはちょっと残念ですけど……それでも、今日が晴れの日なのは変わりありません。  
さあ、頑張って行きましょう!  
 
「……って、きゃっ!」  
 
回想に没頭しすぎて、足元がおろそかになっていたようです。  
うっかり裾を踏んでしまい、私はバランスを崩して転んでしまいました。  
 
「いたた……」  
 
久しぶりに着るとはいえ、こんなお約束な事をするなんて……  
うう、なんてドジなんだろう、私。  
バカで、しかもドジなんて、存在理由あるんでしょうか……  
……っと、いけないいけない。暗くなっちゃダメです。  
せっかくの晴れの日。辛気臭い顔をしていたら、台無しですから。  
 
「千紘くーん、まだかーい?」  
「あ、はい、今いきます!」  
 
ドアの外からかけられる、催促の言葉。  
私は急いで着替えると、最後の仕上げとして鏡の前で確認作業。  
……よし。久しぶりですけど、上手く着れたようです。  
 
「……うふふ」  
 
なんとなく、鏡の前で一回転してみたり。  
……って、こんな事している場合ではないのです。  
早く店の準備をしないと。  
慌ててドアを開けると、私は勢いよく廊下に飛び出しました。  
……一応、弁解しておきますけど、ここって一番奥の部屋なんです。  
私しか使っていない、というか、私の部屋なので当たり前なんですけど、私以外の人が来る事はほとんど無いのです。  
なので、まさか人がいるなんて全くの想定外でして……  
 
「ふみゅ!」  
 
ドアの前に立っていた人物に、顔面から突っ込んでしまったのです。  
……うう、思いっきり鼻ぶつけちゃいました……  
 
「いたたた……」  
 
け、けど、これは私のせいじゃないですよね……多分。  
まあ、確認もしないで飛び出した私もちょっとは悪いかなって思いますけど……不可抗力です、うん。  
というか……私は誰にぶつかったんでしょう?  
そして私は痛む鼻を押さえながら、ゆっくりと視線を上げました。  
そこに見えたのは、大柄な男性の姿。  
 
「……大丈夫か、高瀬くん?」  
 
そこにはスーツ姿の山岡さんが、いつものように無表情で立っていました。  
 
「山岡さん……? どうしたんですか、こんな所で?」  
 
ちょっと赤くなった鼻をさすりながら、私は山岡さんへと問いかけました。  
山岡さんの部屋はまったく逆の方向にあるので、ここに来たって事は何か用事があるんでしょうか?  
 
「ああ、若様に高瀬くんを呼んできてくれと頼まれてな」  
 
って、私の為ですか。  
……すいません、とろくて……  
 
「い、いや、別に高瀬くんが落ち込む必要はない。私も高瀬くんに用があったしな」  
「用……ですか?」  
 
はて? 私、何かしましたっけ?  
最近はお皿も割ってませんし、塩と砂糖も間違えていませんし……  
 
「用というか……これは私の興味なんだが……」  
 
そう言いいながら、山岡さんは言い辛そうに私から視線を外しました。  
表情は先ほどと変わりなく無表情なのですが、どこか躊躇っている雰囲気もします。  
何なんでしょう? そんなに聞きにくい事なんでしょうか?  
 
「あー、その、なんだ……高瀬くんは……若さまの事をどう思っているのかね?」  
「……はい?」  
 
どう思っている……えーと、どういう意味なんでしょう?  
 
「若様の事は……天才だと思ってますけど?」  
 
若様自身はご自分の事を天才と言わなくなりましたけど、それでも私は若様は本当の天才だと信じています。  
……って、これが山岡さんの聞きたいことなんでしょうか?  
 
「いや、そうではなくて……」  
 
山岡さんは困ったように頭を抱えました。  
……こんなリアクションを取る山岡さんを初めて見ました。  
 
「えーと、その、つまりだ……使用人としてではなく……高瀬千紘という一人の女として、  
十曲才蔵という一人の男をどう思っているか、という事なんだが……どう思っているのかね?」  
 
一人の女として。一人の男を。  
高瀬千紘として。十曲才蔵を。  
 
「な、何を言ってるんですか、山岡さん……」  
 
そ、そんな事、考えた事も無いです。考えられないです。  
私は若様にお仕えできれば、それでいいんです。  
側にいられるだけで、十分なんです。  
 
「わ、私は……」  
 
そう、今のままでいいんです。  
それ以上を望んじゃいけないんです。  
私は……若様の使用人なんですから。  
 
「わたし、は……」  
 
――だけど、そう思う心とは裏腹に、私の口から言葉が紡がれる事はありませんでした。  
いいはずなのに……十分なはずなのに……  
 
「……高瀬くん?」  
 
心配そうな山岡さんの声。  
そして私は、ふと我に帰りました。  
や、やだ、私は何を真面目に考えているんでしょう。  
きっとこれは、山岡さんなりのジョークなんです。  
だから、笑わないと……笑って、軽く受け流さないと……  
 
「い、いやですよ、山岡さん……そ、そんな冗談をいきなり……」  
 
震える唇から声を絞り出して、引きつる頬を吊り上げて、私は山岡さんに笑いかけました。  
うまく笑えてないのは自分でも分かります。  
それでも、私は笑わないといけないんです。  
だって、私は……私は――  
 
「……すまない。君を困らせるつもりはなかった」  
 
ポン、と山岡さんは私の頭に手をおくと、優しい声音でそう呟きました。  
その顔はいつもの様に無表情でしたけど……よく見ると、ちょっとだけ笑っているようにも見えました。  
 
「時間を取らせてしまったな。早くいかないと若様が待ちくたびれてしまう」  
「は、はい……じゃあ、山岡さんも一緒に……」  
「それが、店の蛍光灯が切れてしまって……今から買いに行くから、店の準備は任せる」  
 
そして山岡さんは、私の返事も聞かずにさっさと歩き出しました。  
店とは反対方向に歩く山岡さん。  
その後姿を見送る私。  
……一体、山岡さんは何を言いたかったのでしょうか……  
いまだにざわめく胸を押さえて、そう思ったその時。  
山岡さんが急に立ち止まったのです。  
 
「ああ、そうだ。これは言い忘れてたが……」  
 
思わず、緊張する私。  
そんな私には気付かずに、山岡さんは背中を見せたまま言葉を続けます。  
 
「君は、君が思っている以上に魅力的な女性だ……もっと自信を持っていい」  
 
そして山岡さんは、今度こそ立ち止まらずに、歩き去って行きました。  
私の心に、新たなざわめきだけを残して……  
 
 
 
「すいません、遅れました!」  
 
山岡さんと別れた後、しばらくその場に立ち竦んでいた私ですが、さすがにいつまでもそのままというわけにはいきません。  
我に返った私は、急いで若様の下へと向かいました。  
正直な話、あんな会話の後で若様と会うのは少しだけ躊躇いました。  
今までのように若様に接する自信が無かったからです。  
それでも、今日は新しい十曲家の出発の日。  
こんな大事に日に、そんな事は言ってられません。  
そして私は、若様が待つ部屋へ慌てて駆け込んだのです。  
 
「遅れすぎだよ、千紘くん。もう、ほとんど準備は終わってしまったよ」  
「す、すいません……」  
 
若様はこちらに背中を向けたまま、お店の準備を続けながら私に言いました。  
責めるような若様の台詞でしたが、その口調にそんな気配は無く、むしろ楽しんでいるような雰囲気さえありました。  
実際、自分の店を持つことができて、すごく楽しいのでしょう。  
チリ一つ落ちていない床に、くもり一つ無いガラス。そして、綺麗に並べられたディスプレイ。  
これら全てを、お一人でしてしまわれる位なのですから。  
 
「さて、これで全部かな……おや、その服は……」  
 
手をパンパンと払いながら、若様はこちらへと振り向きました。  
そして、私が着ている服に気付いたようです。  
私が着ている服、それは……  
 
「懐かしいな……あの時の着物だね」  
 
若様は覚えてくれていました。  
そう、これは若様が家を出た時に私が着ていた着物。  
若様についていくと決めた時の、若様にずっとお仕えすると決めた時の着物です。  
そう。私はあの時、若様にお仕えすると決めたのです。  
だから……これ以上を望む事はありません。  
若様の側で、若様が幸せになる事をお手伝いできれば、もう、これ以上は……  
 
「千紘くん、ちょっといいかな」  
 
若様の声に顔をあげると、目の前には若様の顔がありました。  
 
「え、な、何ですか!?」  
 
至近距離にある若様の顔に驚く私。  
しかし若様は、そんな私にはお構いなく、どんどんと顔を近づけてきます。  
 
『高瀬千紘という一人の女として、十曲才蔵という一人の男をどう思っているのか?』  
 
ふと、山岡さんの言葉が私の脳裏に浮かびました。  
な、なんで急に思い出すんですか、私!?  
わ、私は若様の使用人です。そう決めたんです!  
――だけど、そう思う私の心とは逆に、若様の顔はどんどんと近づいてきて、そして――  
 
「うん、これでいい」  
 
……若様は私の襟元へと手を伸ばすと、裏返っていた襟を元へと戻しました。  
多分、急いでここに来るために走った時に、裏返ってしまったのでしょう。  
なんだ、そういう事だったんですね……  
 
「ん、どうかしたかい? 顔が赤いけど……」  
「な、なんでもないです!」  
 
な、なんでがっかりしてるんですか、私は!  
これ以上は望まないと思ったばかりなのに……  
 
「それなら、いいが……そういえば、山岡くんはどうしたんだい? 姿が見えないが?」  
「山岡さんなら、先ほど蛍光灯を買いに行くと出かけましたけど……」  
「蛍光灯?」  
「ええ、店の蛍光灯が切れたと言っていましたけど」  
「? 変だな。その蛍光灯ならさっき、山岡くん自身が変えていたのだが」  
「え……」  
 
ど、どういう事なんでしょう。  
つ、つまり、買いに行くというのは嘘だったんでしょうか?  
だとしたら、なんで……  
そ、それより、今更気付いたのですけど、この状況って、つまり……若様と二人っきりって事ですよね……  
 
『君は、君が思っている以上に魅力的な女性だ……もっと自信を持っていい』  
 
って、なんで、また思い出すんですか、私は!  
き、きっとこれは、山岡さんがうっかりしていただけです! そうに決まってます!  
だから……私が何か期待するような事はないんです。  
あってはいけないんです。  
私は使用人として若様にお仕えしているんです。  
私は――使用人としてしか、若様のお側にいられないんです――  
――若様と呼び続けることだけが、私がここにいていい理由なんです――  
 
「千紘くん?」  
 
いきなりかけられた、若様の声。  
私はびくりと身を震わせて、恐る恐る顔をあげました。  
 
「どうかしたのかい? さっきから様子がおかしいが?」  
「い、いえ、大丈夫です! ……そ、それより、お店の方はどうします? もう開けますか?」  
 
内心の動揺を悟られぬように、私はできるだけ明るく若様へと問いかけました。  
せっかくの晴れの日。こんな辛気臭い顔をしていたら台無しですから。  
 
「ふむ……できれば山岡くんも一緒にいるときに開けたいな……それに……」  
「……それに?」  
「その前に、千紘くんに言っておきたい事もあるからね」  
「私に?」  
 
若様は急に真面目な顔になって、私をじっと見つめました。  
な、なんでしょう? 私、なにかやっちゃったんでしょうか?  
い、いえ、最近はお皿も割ってませんし、塩と砂糖も間違えていませんし……  
 
「大事な事だからね、二人だけで話したいんだ」  
「え……」  
 
だ、大事な話って……も、もしかして……って、な、何期待してるんですか、私は!  
そ、そんな訳ないじゃないですか……所詮、私は使用人なんです……  
……だけど、もしかしたら――  
深い諦めの感情と、淡い期待を胸に、私は若様の言葉を待ちました。  
 
「まず、最初にお礼を言わせて貰うよ……今まで、ボクについて来てくれてありがとう」  
 
いきなり、若様は私に向かって頭を下げたのです。  
 
「君には本当に感謝している。復讐というボクの身勝手な行動に付き合ってくれたんだからね」  
「や、やめてください! 頭を下げる必要なんてありません! 私が勝手についてきただけなんですから!」  
 
私は驚いて、手をあたふたと振りながら、若様へと言いました。  
だけど若様はその姿勢のまま、頭を上げようとはしませんでした。  
 
「それでも、君の大切な時間をボクが無駄にしてしまった事には変わりは無い」  
「む、無駄だなんて思ってません! 私は……私は、若様と一緒にいることが出来て、嬉しかったんですから!」  
 
思わず叫んだ、その言葉。  
そして若様はやっと頭を上げてくれました。  
 
「……ありがとう、千紘くん。ボクも君といられて嬉しかった」  
 
優しい笑顔と共に発せられた、その言葉。  
……何故でしょう。  
いつもなら、その笑顔を見るだけで幸せになれるのに、今はそんな気分になれません。  
漠然とした、不安。  
それが、私の心をかき乱すのです。  
 
「しかし、いつまでも今のままというわけにもいかない。そこはきちんとケジメをつけるべきだ。  
 君にだってやりたい事はあるはずだからね。だから……これからは君の好きなように生きるといい」  
「好きな……ように……」  
「そう。だから……」  
 
そして若様は、言葉を選ぶように、ゆっくりと時間をかけて、一言、こう言いました。  
 
「もう、『若様』と呼ばなくていい」  
 
 
 
『もう、『若様』と呼ばなくていい』  
 
私は心の中で、その台詞を反芻しました。  
その意味を理解するために……いえ、理解はしていたのです。  
ただ、理解したくなかっただけ。  
漠然としていた不安が、今、形を持って私の心に影を落としました。  
私が今まで若様のお側にいれたのは、あくまで使用人として若様に雇っていて貰えたからです。  
「若様」と呼び続ける事で、私は私の居場所を守り続けていたのです。  
それなのに。  
 
若様と呼ぶのをやめる。  
 
それは、つまり、私がここにいる理由の全否定。  
私の居場所がなくなる事を意味しているのです。  
 
「え、あ、その……」  
 
私は何かを言おうと、口を動かしました。  
だけど、何も言葉が出てきません。  
むしろ、私は何を言おうとしていたのでしょうか。  
……分かっています……所詮、私は雇われの身。  
雇い主に口答えをする権利など、あるはずも無いのです。  
 
「……そ、そうですよね。これからの十曲家に私なんかがいても邪魔なだけですよね」  
 
むしろ、こんな私を今まで使ってくれた事を嬉しく思います。  
バカで、とりえも無く、可愛くもない私を使ってくれて、何より短い間だったとはいえ、若様のお手伝いが出来ました。  
辛い事もあったけど、楽しい事もいっぱいありました。  
少し泣いたりもしましたけど、それ以上に笑う事が出来ました。  
十分じゃないですか。  
使用人なのに、若様は私を大事に扱ってくれました。  
使用人なのに、こんなに幸せでした。  
まるで、使用人じゃない位に……十分幸せでした。  
だから……せめて最後くらいは、使用人らしく終わらせます。  
 
「今まで、ありがとうございました」  
 
私は、若様に向かって頭を下げました。  
今までの感謝を込めて、深く、しっかりと頭を下げました。  
……そうしないと、零れた涙が若様に気付かれてしまうから。  
 
「これからも頑張って下さいね、若様。私は……」  
 
きっと、もう若様と合う事は無いでしょう。  
私はこれ以上、若様の重荷にはなりたくないんです。  
……だけど……これだけは許してください。  
私は顔をあげると、自分ができる精一杯の笑顔と共に、言葉を紡ぎました。  
従者としての、最後の言葉を。従者としての、最後の願いを。  
 
「私は、若様の幸せをずっと祈っておりますから……」  
 
そして私は若様に背を向けると、一目散に走り出しました。  
 
「千紘くん!」  
 
背中にかけられる若様の声。  
私はそれを無視して部屋を飛び出し、自分の部屋へと走りました。  
……いえ、もうそこは私の部屋ではありません。  
辞めてしまった以上、もうここに住む事は出来ないのです。  
部屋に駆け込むと、私はそのままベッドへと倒れこみました。  
枕に顔を埋めて、ため息を一つ。  
 
「はぁ……」  
 
……いつか、こうなる事は分かっていました。  
私と若さまでは、生きていく場所が違うのです。  
天才である若様は、常に上を目指して進んでいける人です。  
どんな困難があっても、必ず乗り越えていける人です。  
それに比べて私は、どんくさくて、にぶくて、どうしようもないバカです。  
一人では何も出来なくて、誰かの側にいないと生きていけない、ダメな女です。  
……そんな私が、若様と一緒にいられるわけが無いじゃないですか。  
元々、私が無理を言って若様に付いてきたのです。  
いつクビになっても、おかしくなかったのです。  
それが、たまたま今日だっただけのことなんです。  
……十曲家は、これからどんどん大きくなっていくでしょう。  
若様の周りにも、沢山の人が集まってくるでしょう。  
きっとその中に、若様にとって理想のパートナーがいるに違いありません。  
私のように若様の足を引っ張ることの無い、完璧な女性が現れて、若様を支えてくれるでしょう。  
いい事じゃないですか。  
十曲家は繁栄し、若様も幸せになる。  
それが五年後なのか、十年後なのかは分かりませんが、私以外の誰かが必ず若様を幸せにしてくれるでしょう。  
私はそれを遠くからでも見る事が出来れば、十分です。  
若様の幸せが、私の幸せなんですから。  
 
「……ぅ」  
 
それに、短い間とはいえ若様のお側にいれて、十曲家復興のお手伝いが出来た。  
この思い出は、決して消える事はありません。  
この思い出だけで、私はすでに……幸せなんです。  
 
「……うぅ」  
 
……幸せ……なんです……  
……幸せな……はずなのに……  
 
「うぅ、うぁ……ぐすっ……うわぁぁぁぁぁぁ!」  
 
なのに……なんで……涙が止まらないの……  
 
若様と一緒にいた日々は。  
楽しくて。  
嬉しくて。  
幸せでした。  
若様の側にいれて、楽しくて。  
若様と一緒にいれて、嬉しくて。  
とても、とても幸せでした。  
だから。  
ずっと、側にいれたらいいと。  
ずっと、こんな時が続けばいいと。  
願っていました。  
それがかなわぬ事だと分かっていても。  
ずっと、願っていたんです。  
それなのに。  
 
『もう、『若様』と呼ばなくていい』  
 
分かっていたのに。  
かなわぬ事だと分かっていたはずなのに。  
 
「いやだ……いやです……若様……若様ぁ……」  
 
辞めたくない。  
離れたくない。  
一緒にいたい。  
ずっと、一緒にいたい。  
邪魔だと言われても。  
いらないと言われても。  
お側にいさせてください。  
ずっと、お側にいたいんです。  
だって。  
私は。  
若様の事が。  
あなたの事が――  
 
 
「……千紘くん……ちょっと、いいかい?」  
 

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