時間にしてどれくらいかはわかりませんが・・・しばらくそうしていて・・・  
それから、お互いに唇を離して、目を開けて・・・  
 
今更ながらに、恥ずかしくて顔が火照ってきました。  
社長も真っ赤です。  
 
「と、とにかく、冷えるし、会社に入ろうか」  
「そ、そ・・・そうですね!」  
 
会社の中はしばらく前まで人がいたのか、ほのかに暖房の名残のような暖かさが残っていました。  
とは言え寒いことには変わりませんので暖房をつけて、深夜ですので灯りを一つだけつけます。  
ふと時計を見ると、丁度、午前零時を過ぎたところでした。  
 
「もうこんな時間だったのか・・・」  
「25日になっちゃいましたね・・・あの、社長」  
「ん?」  
「今日が本当の・・・メリークリスマス、ですね!」  
「あはは、そうだな、メリークリスマス!」  
「あ、そうだ! ・・・ちょっと待っててください」  
 
クリスマスで、思い出したものがありました。  
急いでロッカーを開くと、丸一日入れっぱなしでしたがどうやら元気でいてくれた“それ”が、  
昨日のままの姿で入っていました。  
それを抱えて戻ると、社長は応接用のソファーに座られていました。  
・・・あそこなら、並んで座れます。  
 
「社長・・・」  
「ん? それは・・・」  
「あ、あの・・・クリスマス・・・プレゼント、です・・・社長に・・・」  
 
鉢植えを少し飾っただけの、簡素なものですが・・・  
 
「幸福の木・・・、あの日、社長が花屋さんで見ていたものですが・・・  
 うちでも育ててまして、社長なら、ちゃんと育てて頂けるかと思いまして・・・」  
「貰っちゃっていいのかな・・・でも、ありがとう! 大切に育てるよ!」  
 
社長は、本当に嬉しそうに笑って、受け取ってくれました。  
でも、それから少し苦笑するように、  
 
「ん〜む、しかし、なんというか・・・」  
「・・・あの、あまり気に入りませんでしたか・・・?」  
「いや! 違う、全然違うから! ただ、まあ、その・・・いや、とにかく俺からも!」  
 
と言って、いつの間に用意されていたのか、社長は足元から袋を取り出して・・・  
 
「これ、俺から國生さんに、クリスマスプレゼント・・・受け取ってくれ」  
「あ、はい! ありがとうございます! ・・・・・・って・・・」  
「まあ、その・・・なんていうか・・・ははは」  
「あは・・・ふふふっ・・・なんて言うんでしょうね、こういうの・・・ふふふ・・・」  
 
偶然・・・で済ますのはちょっと惜しい気もします。  
きっと、私と社長の気持ちが、どこかで通じ合った・・・ということに・・・。  
何故ならそこにあったのは、私が社長に贈ったものと同じ―――幸福の木。  
 
「いやさ、名前が良いなって昨日見たときから思っててさ、それに決めたんだけど・・・  
 國生さんの家にもあるって可能性は考えてなかったなぁ・・・  
 プレゼントして貰えるとも思ってなかったけどさ、あはは」  
「私だって、まさか社長から頂けるなんて思っていませんでしたよ!  
 ・・・でも、すごく、すごく嬉しいです! 私も大事に育てますね!」  
 
お互いに交換することになってしまった二鉢の幸福の木を応接用のテーブルに仲良く並べて、  
私と社長は並んでソファーに腰掛けました。  
どちらとも無く身体を寄り添わせて、私が社長の膝に手を置くと、その上から手を重ねてくれました。  
手に、身体に、社長の温もりを感じます・・・  
今までにも、社長に触れたことは何度もありました。  
仕事の時に抱きかかえられた事だってあります。  
でも・・・こんなに温かいと感じたのは、ついさっきから・・・好きだって、わかった時から。  
ずっと外で、寒い中で、ツリーの下で私を待っていてくれたときも、そして今も・・・  
社長の手は温かくて、優しく、私を包んでくれます。  
・・・でも私は・・・社長に何をしてあげられるのかな・・・  
 
そう思って、唐突に思い出してしまいました。  
あの、花屋で遭遇したお二人のこと・・・保科さんの、台詞・・・  
私が、してあげられること・・・といいますか、私があげられるもの・・・といいますか・・・  
で、でもそれは・・・た、確かに・・・好き合ってるのはわかっちゃったし、  
思えばあの日、お父さんも期待しているようなこと言ってたけど・・・でも・・・でも・・・  
 
自分の思いつきが恥ずかしくてたまりませんが、それでも・・・つい、  
社長の表情を横目に覗うと・・・  
 
「――――――!!」  
 
社長は真っ直ぐこっちを見ていて、  
・・・思わず、飛び退いてしまいました・・・  
 
「こ、國生さん!?」  
「あ・・・す、す、すみません!」  
 
社長に嫌がってると思われたくなくて、慌てて元の位置に戻ってぴとっ、と社長の横に寄り添いますが・・・  
は・・・・・・恥ずかしい・・・  
 
「國生さん、顔が真っ赤だけど・・・いや、俺も赤いとは思うんだが・・・なんか、もの凄いというか・・・」  
「い、いえ、別に、へ、平気ですから!」  
 
まさか、顔を見られただけで私がどんなことを考えていたか、まではわからないでしょうけど・・・  
 
「ま、まあいいけど・・・ところでこれって、やっぱり木って言うくらいだから、  
 ずっと育ててたらいつかは大木になったりするのかな?」  
「え・・・? あ、どうでしょう・・・それはちょっとわかりませんが・・・  
 でも、寒さに弱いですから、外に植えられませんからね、大木にするのは無理かと・・・」  
「ちぇ、そうか、残念・・・庭に植えていつか巨大に育ったら、いい記念になると思ったのにな・・・」  
「・・・記念?」  
「・・・あ! いや、別になんでもないぞ!?」  
 
今度は社長が真っ赤になってそっぽを向かれてしまいました。  
でも、さっきの私よりは・・・なんと言いますか、意味がわかります。  
だって、今日贈ったもの・・・それを、記念にしようと言って下さったのですから・・・  
 
「社長」  
「ん、な、なんだ國生さん!?」  
「今の、お庭に植えるお話ですが・・・」  
「え、ああ、別に気にしなくていいから!」  
「・・・そこに植えるはずだった、その幸福の木・・・  
 それは、一本ですか・・・それとも・・・二本でしたか・・・?」  
 
社長が、驚いたようにこちらを向かれました。  
私は、本当は恥ずかしくてたまりませんが・・・社長の回答を促すように、  
微笑んで(多分顔は赤いのですが)社長を見つめました。  
社長は真っ赤になって困ったような顔をされて、  
正面に向き直られてしまいましたが・・・  
 
「・・・・・・まずは、一本」  
「まず・・・?」  
「ああ・・・それで・・・・・・もうしばらくして・・・俺たちが、高校を出て、それから・・・  
 二本になる予定だった・・・」  
 
そう言いながら社長が見られているのは・・・  
きっと、いつか社長の家の庭で並んで植えられるはずだった、二鉢の木・・・。  
 
「ね・・・社長・・・」  
「ん? どうした?」  
「幸福の木の花言葉、ご存知ですか?」  
「花言葉・・・って、木なのに花言葉なんてあるの?」  
「ふふ・・・ちゃんと、花も咲くんですよ?」  
「ぬぅ、朝のうちに慌てて買いに行ったものだから、そこまで説明聞いたりしなかったよ」  
「そうだったんですか、でも、わざわざ・・・」  
「え、なに?」  
「いえ・・・」  
 
わざわざ、朝のうちに買いに行って下さったんですね・・・それを、こちらに置いていかれた・・・  
 
「幸福の木の花言葉、いくつかあるんですが、一つは――――――名もない寂寥」  
「・・・寂寥」  
 
この鉢を・・・目の前のこれを、ロッカーに押し込んだ時の、私。  
社長から逃げて、もう一度社長に会うまでの、私。  
 
「今夜、社長に会えるまで・・・本当に寂しかった・・・もう二度とあんな思い・・・したくない・・・  
 社長・・・私のこと・・・離さないでいてくれますか・・・?  
 もう、寂しい思いなんてしないで済むように・・・ずっと一緒にいてくれますか・・・?」  
「・・・ああ・・・俺も、そうしたいと思う・・・いや、そうする・・・離さないよ」  
 
じっと見詰めていたテーブルの鉢植えから目線を外してこちらを向いて、  
静かに、ですが力強く・・・仰って下さいました。  
私も身体を社長に向けて、社長の膝の上に少し乗り出すようにして、その顔を見つめます・・・  
そして、少し照れたように笑って・・・  
 
「でしたら・・・もう一つの花言葉――――――幸せな恋・・・これが、今の私の気持ち・・・です」  
 
あなたが、待っていてくれたから。  
私を好きだって・・・言ってくれたから。  
これから先も・・・ずっと一緒だって・・・言ってくれたから・・・。  
 
「そしてあと一つ・・・名前の通り、ですが・・・」  
 
私が今、夢みてること・・・そうありたいって、思うこと。  
あなたと、育みたいもの・・・あなたと、分かち合いたいもの・・・  
 
「――――――幸福・・・です」  
 
願わくば・・・私と、あなたとの・・・未来。  
 
「社長・・・私のこと・・・幸せに、して下さいますか・・・?」  
 
社長の顔に、吐息がかかるくらいに顔を寄せて、私は問い掛けます。  
私は・・・どんな顔をしているのでしょう。  
恥ずかしいです・・・だから、きっと真っ赤だと思います・・・けど、  
それだけじゃない・・・悲しいわけじゃないのに、涙が出そうで・・・  
嬉しいはずなのに・・・今だって幸せなはずなのに・・・切なくて・・・  
 
そんな私の顔から・・・目から、ずっと視線を逸らさなかった社長が、  
視線はそのままで・・・少し、微笑んでくれて・・・  
すっ・・・と、私に重ねてくれていた社長の手の温もりが消えました。  
でも、それを寂しいと思う前に・・・  
 
私のことを、ぎゅっと・・・抱き締めてくれました。  
 
「幸せにするよ」  
 
短く、そう言いました。  
あと少しで、唇が触れてしまいそうな程に私を抱き寄せて。  
 
「必ず」  
 
真剣な、でも優しい目で。  
・・・また、涙が出てしまいました。  
今日は、泣いてばかりです・・・でも、我慢できません・・・嬉しくて。  
そして、私の心も、決まりました。  
 
「でしたら・・・私はどこまでも・・・どこまででも・・・あなたについていきます・・・」  
 
私も両腕を社長の背中に回して、力いっぱいに抱き締めて・・・  
 
「私の全て・・・あなたに、捧げます・・・」  
 
そして、最後の距離を縮めました。  
唇を開いたまま、私の方から顔を寄せて・・・私から、社長の唇を奪いました。  
 
「――――――!」  
 
二回目のキスは、さっきより遥かに積極的で、そして・・・情熱的でした。  
私がぎゅっと、社長の唇に唇を押し付けると、社長は最初戸惑って、  
それから、私と同じ熱烈さで、応えてくれました。  
将来を誓う言葉に互いの全てを委ねたのか、  
それとも、刹那的な感情の奔流に酔っただけなのか・・・  
私たちは、ただひたすらに・・・求め合いました。  
強く押し付け合っていただけの唇を、どちらとも無く吸い合い、舌が触れると、それを絡めました。  
社長の舌が私の舌に絡みつき、私の唇を舐めまわす感触に、ぞくぞくするような・・・  
嫌じゃない、すこし・・・気持ちいいような・・・そんな感覚に捕われて・・・  
気付いたら、私は・・・私から求めたはずなのに・・・社長のされるがままになっていました。  
そうやって唇を貪りあって、やがて離れた二人の間には銀色の糸が引き、  
それが切れてしまっても、私たちは、ずっと見つめ合っていました。  
 
“私の全てを捧げる”  
・・・たった今、私が社長に言った言葉です。  
勢いもありましたが、決して考えなしに言った訳ではありません。  
ちゃんと、捧げるもの・・・求められるもの・・・それについても、考えています・・・  
でも、今・・・社長から唇を解放されて、じっと見つめられて・・・  
恥ずかしさのあまり、私は顔を背けてしまいました。  
 
「國生さん・・・」  
「は、はい・・・」  
「その・・・なんだ・・・」  
 
見つめられた時、社長は紅潮した顔で、まっすぐに、私の目を見ていました。  
必死で抑えようとしているものが、でも身体の奥から沸々と煮え立って、  
抑えられなくなりそうで、でもまだ抑えている・・・そんな印象でした。  
・・・多分、私を、求めてくれています・・・さっきより、もっと深く・・・もっと、激しく。  
でも、それを口にするのが躊躇われる・・・そんなところでしょうか。  
ならば、私がすべきことは・・・  
 
「社長・・・いいですよ?」  
「え・・・國生さん?」  
「・・・社長のなさりたいように、なさって下さい・・・それが私の望みですから」  
 
怖いけど・・・でも、今日なら・・・今なら、勇気が出せるから。  
 
「だ、だが・・・俺のしたいようにって・・・俺は、君のこと」  
「多分ですが・・・わかっています。 その上で、です」  
「でも・・・國生さん・・・震えてる」  
「え・・・」  
 
気付いていませんでしたが・・・私は・・・思っていた以上に・・・・・・怯えていたみたいでした。  
必死で平静な、冷静なフリをしていて自分では気付かず、  
抱き合ったままの社長にはしっかり伝わってしまっていたようで・・・間の抜けたお話です。  
社長がはっきりと言わなかったのは、しり込みしたからではなく、  
どうやら、私を気遣ってくれたから・・・だったようです。  
・・・・・・でも!  
 
「気付きませんでした・・・確かに、本当は・・・怖いです・・・怯えてます・・・でも・・・  
 私は今、言いました・・・あなたに全てを捧げるって。  
 ・・・痛いって、聞きます・・・失ってしまうものも、あります・・・でも、全部わかっています。  
 その上で、なんです・・・多少辛い思いをしたとしても、それでもいいから・・・  
 今なら、勇気が出せるんです・・・あなたと、一つに・・・・・・」  
 
それ以上は、喋らせて貰えませんでした。  
唇を、塞がれてしまいましたから・・・。  
今度は、優しい、軽めのキス。  
私の口を塞ぐための、言葉を遮るための行為。  
そして、すぐに口を離して・・・  
 
「・・・いいんだね?」  
「・・・はい」  
「わかった・・・・・・ありがとう」  
 
そう言って、社長は私の身体を離しました。  
そして、改めて両手を私の肩に置いて・・・仰いました。  
 
「國生さん・・・君を、抱くよ」  
「・・・はい」  
 
もう・・・後には退けません。  
・・・いえ、退きません。  
怖くても・・・恥ずかしくても・・・  
 
私が改めて覚悟を決めた時・・・まるでそれを待ってくれていたかのように、社長の手が動き始めました。  
肩にかかった手が、する・・・と滑り、  
 
「あ・・・」  
 
制服の上から私の胸に触れました。  
少しだけ、撫でるように触れられただけなのに、身体がぞくりと震えます・・・  
いやらしいことをされている、という、実感が沸いてきますが・・・でも、社長になら・・・  
 
「服、脱がすよ」  
「え・・・は、はい」  
 
社長の手が、ブレザーのボタンをぎこちない手つきで外していきます。  
社長に服を脱がされる・・・会社で、ということも相まって、もの凄い恥ずかしいのですが、  
少しだけ、背徳的な胸の高鳴りを覚えていました・・・  
ブレザーの前がはだけると、続いてネクタイが解かれ、  
ブラウスのボタンも上からひとつ、ふたつ・・・と、外されてゆきました。  
程なくして私の肌を隠すための戒めは全て解かれ、社長は緊張で強ばった面持ちで、  
ブレザーもろともに、ブラウスの前を割り開きました。  
素肌も・・・下着も、社長の目に露になってしまいました・・・は・・・恥ずかし過ぎます・・・  
 
「ええと、これって、背中、かな・・・?」  
「え・・・? あ、は・・・はい・・・」  
 
社長も一瞬、わたしの・・・その、下着姿に見入られたようですが・・・  
すぐに行動を再開され、当然、その下着も、同じ運命を辿ります。  
さっき覚悟を決めたはずの心が今、ものすごい脆さを発揮しています・・・恥ずかしすぎて泣きそうです・・・  
 
「む・・・す、すまん、すぐ外すから・・・!」  
「いえ、別に、焦らなくて平気ですから・・・」  
 
ある意味予想通り・・・外すのにてこずっています。  
本当は私が手を出してしまった方がスムーズだったと思いますが、  
気持ちにそんな余裕はありませんでした。  
それに、心のどこかで社長に脱がされたい、とも思っていたのかも知れません・・・  
結局、長かったのか短かったのかもわからない間をおいて、  
ぱら、  
・・・と、胸を緩く締め付けていた感覚が失われました。  
 
「あ・・・」  
「外れたけど・・・腕を抜かないと脱げないのか・・・じゃあ、ずらすよ・・・」  
「あ、は・・・あ・・・はい・・・ぃ・・・」  
 
ホックを外されて肩紐で引っ掛かっているだけになったブラは、簡単に手でずり上げられて、  
・・・社長に、その、中身を・・・見られてしまいました。  
 
「・・・・・・・・・」  
「・・・あ・・・あの・・・」  
 
無言で、じぃ・・・っと見つめられて・・・  
背中にソファーの背もたれが当たっていなかったら、逃げ出しそうなくらいに恥ずかしいです・・・  
 
「國生さんの肌・・・白くて、綺麗だよ・・・」  
 
敢えて胸のことを言わないのは、恥ずかしいからでしょうか・・・それとも・・・  
 
「そ、そんな見ないでください・・・こんな、小さい胸なんて・・・見たって楽しくないでしょう・・・?」  
 
コンプレックスという程のものではありませんが、  
身近にいる優さんや高校の同級生達と比べたら、サイズの違いは明白です・・・  
以前は、体術をはじめ仕事での動きやすさを考えて、この方が身軽でいい、と思っていました。  
髪だって、行動の邪魔にならないようにと仕事優先で考えた上でのカットです。  
でも、今こうして・・・女性として・・・男性の・・・想いを寄せる人の前で身体を晒すに至って・・・  
少しだけ、残念な気持ちになってしまいます・・・  
 
「いや、なんていうか・・・ものすごく、ドキドキする・・・  
 ドキドキしすぎて・・・ごめん、見ていられない・・・」  
「え・・・っきゃあ!」  
 
言うが早いか、社長の手は私の小さい胸を、鷲掴みにしていました・・・。  
今度は、さっきみたいに触れるだけじゃなく、  
掴んで・・・少し乱暴に・・・揉んでます・・・私の・・・胸・・・揉まれてます・・・  
 
「ひぁ・・・や、やぁ・・・社長、ちょ・・・ふぁ・・・」  
「大きさなんて、気にしなくていいのに・・・國生さんのおっぱい・・・綺麗な形だし、  
 手が吸い付くみたいな感触で・・・温かくって、柔らかくて、でも弾力もあって  
 ・・・すごい・・・心地いいよ」  
「はぅ・・・ほ、本当・・・ですか・・・ぁ・・・っ」  
「ああ・・・可愛いよ・・・すごい・・・國生さん・・・」  
 
そう仰いながら・・・私の首筋に顔を埋めると、そこに舌を這わせ・・・キスして下さいました・・・  
 
「ふぁ・・・! あ、ぁ・・・ん・・・はっ・・・」  
 
ちゅう・・・っ、と、少し強く吸われて・・・もしかすると跡がついてしまうかもしれませんが・・・  
でも、いいです・・・恥ずかしいのは相変わらずですが・・・  
社長に求められているという実感があって・・・嬉しいです。  
それに、胸を弄る手も、キスも・・・ちょっとだけ、気持ちいい・・・です・・・  
そのように社長の愛撫に酔いつつあった私は、  
胸から離れた社長の片手が私の膝に触れても、その手がスカートの中へ滑り込んでも、  
特に抵抗しませんでした・・・正直、一瞬だけ怖かったですが・・・すぐにそれは期待に変わりました。  
 
「は・・・ぁ・・・ひぅ・・・あ! あ、あ・・・っ」  
 
内腿をゆっくりと撫で上げられる感触に、背筋がぞくぞくと震えます。  
そして、程なくその指がショーツに触れ・・・私の、大事なところに、下着越しに触れて・・・  
 
「・・・っぁあ!」  
 
思わず、これまでよりトーンの高い声を上げてしまい、その拍子に社長の動きが止まりました。  
しばし、私の反応を待ったのでしょうか・・・ですが私はそれ以上、何も言いませんでしたので、  
社長の手は再び動き出します・・・首筋へキスを繰り返し、片手で胸を弄り・・・  
もう一方の手で、下着越しに・・・秘裂を指で、撫で上げられます・・・  
 
「ふぁ! あ・・・あっ! ひぅ・・・っ」  
 
今度は、高い声を上げても止まってはくれません。  
いえ、むしろ、少しずつ・・・指の動きが速くなっています・・・  
 
「・・・國生さんのここ・・・湿ってきてる・・・」  
「・・・え!? そ、そんな! ・・・っあ! は・・・ふぁ! ひゃ・・・うそ・・・」  
「嘘じゃないよ・・・俺ので、感じてくれてるのかな・・・?」  
 
言われてみれば・・・わかります・・・自分のそこが、濡れはじめていることが・・・  
恥ずかしくてたまりませんが・・・でも、それで余計に意識してしまいます・・・  
 
一旦意識してしまうと、私のそこはいきなり敏感になったみたいに社長の指に反応して、  
何度もそこを擦りあげる社長の指の刺激を甘い電流に変えて私の頭に送り込んできます。  
つられて、首筋を這う舌や、胸を・・・揉みしだきながら、乳首を指の腹で優しく撫でる感触まで、  
一気に鮮烈になって・・・私の頭を・・・焦がします。  
 
「っや、ひゃああ! だめ・・・っ、ふぁあ・・・っ」  
「國生さん・・・ここ、どんどん濡れてくる・・・」  
「そ・・・んなっ・・・しゃ、ふぁ! 社長が・・・弄るから・・・あ・・・あ、や!」  
 
不意に耳に息を吹きかけられて、耳たぶを甘噛みされて・・・こんなところまで敏感になってしまって、  
びくびくっと身体が震えてしまいます。  
 
「國生さん、今まで聞いたこと無いような声・・・すごく・・・なんていうか・・・そそるっていうか・・・」  
「っは・・・へ、ヘンなこと・・・いわないで・・・ください・・・っ」  
「ね・・・気持ち、いい?」  
「・・・! し、知りませんっ!」  
 
・・・本当は・・・気持ち、いいです・・・  
こんな風に身体を触られるのも、キスされるのも、当然、初めてですが・・・  
社長の指から・・・舌から・・・敏感なところに甘い刺激を擦り込まれているようで・・・  
身体が・・・こころが・・・蕩けそうです・・・  
でも・・・恥ずかしくて絶対に口に出せないけど・・・できれば、もうちょっと・・・強く・・・  
 
・・・という、私のはしたない願いが、通じてしまったのか、  
それとも、顔に出てしまっていたのか・・・  
下着の上からそこを弄っていた指が、ショーツの中に潜り込んで来て・・・  
 
「っひ!?」  
 
緩衝する媒介無しに直接そこを触られる感触に、思わず悲鳴みたいな声を出してしまいました。  
社長の指が・・・わたしの・・・その・・・割れ目に、当てられてて・・・  
やがて、ゆっくりと、その割れ目に沿って指が上下に動き出します。  
ほんの軽く、割れ目に指を押し付けながら・・・  
 
「っあ、あ! ふぁ! あ! ひゃ!」  
 
蕩けそう・・・なんて生易しいものじゃ・・・ないです・・・  
社長の指、軽く押し付けられただけなのに・・・ちょっとひりひりするけど・・・身体の奥まで響いて・・・!  
私・・・焼けちゃう・・・焦げちゃう・・・!  
 
「すごい・・・温かくて、柔らかくて・・・触ってるだけで、気持ち良いよ・・・指が、溶けちゃいそうだ・・・」  
「ひぁあ・・・、や、そんな・・・っふぁあ! 私が・・・私のほうが・・・溶けちゃう・・・っ」  
「ふふ、そうだね・・・ここ、もうこんなにとろとろに濡れて・・・溢れてくるみたい・・・」  
「や、やだ・・・! そんなの、だめ・・・言っちゃ・・・イヤです・・・っ!」  
 
そんなことを言っている間にも、社長の指は少しずつ深く私の中に埋まり、  
少しずつ速く、そして緩急までつけて動いて・・・私のそこを・・・苛めます。  
それでも、ほとんど痛みを感じさせずに、にゅる、にゅちゅ、と社長の指が滑らかに動くのは、  
社長の言う通り・・・私のそこが、その・・・えっちな、蜜を・・・絶え間なく、垂らしているから・・・  
社長の・・・指で・・・キスで・・・気持ちよく・・・なっちゃってるから・・・・・・  
 
「ああ・・・しゃちょ・・・ゆび・・・だめぇ・・・っ そこ・・・、そんな・・・ひぅう・・・」  
「本当に、可愛い声・・・それに顔も・・・すごく、可愛いよ・・・」  
「ひぁ・・・や! だめ、見ないでぇ・・・恥ずかしいです・・・やぁ・・・」  
 
首筋へのキスの雨は降り止んで、今度は私の顔を正面から見られてしまいます。  
きっと、恥ずかしさで紅潮して、気持ちよすぎて蕩けてしまっている、情けない、私の顔・・・  
 
「だめ・・・見ないで・・・おねがい、しゃちょ・・・ふぁ・・・っ」  
「・・・無理だよ、國生さん・・・だって・・・こんなに、可愛い顔・・・見たことないもの・・・」  
 
そう言って、頬にキスをしてくれて・・・  
そんなことされたら・・・どうしよう・・・本当に、溶けちゃいますよぉ・・・  
 
「でも、本当に気持ちよさそう・・・不安だったんだけど、俺ので、ちゃんと感じてくれてるんだね・・・」  
「ひぅ・・・や・・・し、しらない・・・知らないですっ・・・!」  
 
確かに、気持ち良いです・・・けど、そんな質問・・・恥ずかしすぎて・・・  
 
「む、強情な・・・じゃあ、これを見てもそう言える?」  
「え・・・あ・・・っ!? や、やだ・・・・・・」  
 
そう言って、社長は私の・・・そこを愛撫していた手をショーツから抜くと、  
その、私の・・・えっちな蜜で濡れそぼった指を・・・よりによって、私の目の前に・・・  
社長の右手の中指・・・私ので、べっとりと濡れていて・・・え・・・!?  
そ、それを・・・私の、目の前で・・・ぺろって・・・舐めて・・・  
 
「國生さんのここのお汁・・・えっちな味がするよ・・・」  
「やあ! そ、そんなこと! そんなの舐めちゃだめえ! ・・・え・・・ええ? ちょ、や・・・ひむぅっ!?」  
 
それだけでも、泣きたくなるくらいに恥ずかしいのに・・・今度は、その指を・・・  
私の口にまで突きこんで・・・  
 
「んんん!? んむ・・・っ、ちゅ・・・んぷっ、ぷぁ・・・はむ・・・ぢゅっ・・・」  
 
恥ずかしいのに・・・私・・・社長の指を・・・舐めしゃぶってる・・・  
舌を絡めて・・・卑しく・・・いやらしく・・・赤ちゃんみたいに・・・しゃぶってる・・・  
私の味・・・苦くて・・・ちょっとだけ、すっぱくて・・・こんなこと、おかしいのに・・・だめなのに・・・  
 
「ぷぁ・・・しゃちょお・・・わたし・・・その・・・」  
「な、なんか、こっちまでドキドキしちゃったよ・・・おいしかった?」  
「はぅ・・・はい・・・おいしかった・・・気持ちよかった・・・です・・・・・・んん!?」  
 
今度は・・・キス、されました。  
さっきの社長の指の変わりに、今度は舌が私の口に入ってきて・・・  
さっきと同じように、舌を絡めて・・・絡め合って、口をお互いに、吸い合います。  
もう・・・恥ずかしさとか・・・よく、わからないです・・・  
互いの唾液を送り合って、混ぜ合わせて・・・呑みこんで・・・  
口の端から垂れて互いの制服やソファーを汚すのも気にせずに、ただひたすら、貪りあいました。  
 
その最中にも、社長の指は再び私のショーツに潜り込んで、  
さっき以上の激しさで濡れそぼった秘所への愛撫を再開します。  
胸を揉みしだき、乳首を優しく撫でるもう一方の手も、休まることはありません。  
・・・もう、身体中が甘い刺激で痺れてしまったようです・・・  
今、社長に気持ちいいかって聞かれたら・・・虚勢を張って強がることなんて、できません・・・  
でも・・・これはこれで、いいかもしれません・・・  
身も心も、社長に捧げてしまった感じ・・・私が、望んだこと・・・  
・・・このまま、快楽に流されるまま終われたら、どんなにいいでしょう・・・  
 
でも、忘れてはいません・・・いえ、忘れられませんでした・・・  
身体が疼けば疼くほど・・・昂ぶれば昂ぶるほど、それが迫っていることに。  
だからこそ、社長も・・・こんなに手を尽くして、私のことを愛してくれたのだと思います。  
長いディープキスを終えて唇を離したとき、社長は気遣うように、そして少し不安げに、私の顔を見ました。  
わたしは、そんな色を出さないように意識して・・・社長にただ、うなずきました。  
 
「國生さん・・・ほんとうに・・・いいの・・・?」  
「はい・・・だって、社長が・・・こんなに・・・感じさせて・・・くれたから・・・」  
 
敢えて何が、とは言われませんでしたが、唇だけでなく、両手も私から離して改まって問われたら、  
もう、そのことしかありません・・・。  
 
「じゃあ・・・下着、脱がすよ・・・」  
「・・・はい」  
 
ショーツを穿いたままで愛撫され続けたせいですっかり濡れてしまったそれを、社長が下ろしていきます。  
私は・・・やっぱり、恥ずかしいですが・・・せめて脱がしやすいようにと腰を浮かせていました。  
スカートは捲れたままなので、私のそこは外気に触れて・・・思わず、ぞくりと震えてしまいます。  
 
「ここ・・・こんな風になっているんだ・・・綺麗なピンク色・・・」  
「そ、そんなじぃっと見ないでください・・・」  
「あ、す、すまん」  
 
社長以外の人には絶対に見せられないところ・・・社長にだって・・・イヤ、とは言いませんが・・・  
恥ずかしいのはどうにもなりません・・・  
 
「じゃあ、その・・・俺も・・・」  
「あ、は・・・はい・・・」  
 
そう言って、カチャカチャとベルトを外す社長を見て、初めて・・・  
社長のそこが、もの凄く膨らんでいるのに、気付きました。  
まるで、何か入っているみたい・・・も、勿論・・・それが男性特有の生理現象で、  
何がそうなっているのか・・・知識では・・・知っていますが・・・私を、弄って、あんなになったんだ・・・  
 
・・・私のそこを見られるのと同じくらい、  
社長のものとはいえ・・・男の人のそれを見るのも恥ずかしくてたまりませんが、  
でも、これからのことを思うと、気にせずにはいられません・・・  
社長がベルトを外し、ファスナーを下ろし、そして下着を少しずらすと・・・  
 
「――――――!?」  
 
む・・・昔、お父さんのは見た記憶がありますが・・・と、当然ながら・・・その、普通の状態だったわけで・・・  
あ、あんな・・・あれが・・・本当に・・・・・・わ、私の、中に・・・・・・?  
・・・標準的な大きさがどんなものかはわかりません・・・けど、  
私の中に、入るなんて・・・信じられないくらい・・・大きい・・・太い・・・です・・・  
それに、形・・・こわい・・・  
 
「・・・國生さん・・・やっぱり、今度にしようか・・・?」  
「え・・・」  
 
顔に、出てしまっていたのでしょうか・・・  
さっきまで、ちょっと意地悪なくらいに私を昂ぶらせてくれていたのに、  
わたしにばっかりえっちとか言ってたけど、社長の方が絶対にえっちなことしてたのに、  
多分、社長の・・・それが、そんなになっているということは、  
社長は・・・その・・・したい、はずなのに・・・  
気遣ってくれるのが、嬉しいです・・・でも、だから・・・そんなあなただからこそ・・・!  
 
「平気です・・・最後まで、して下さい」  
「だが・・・」  
「今度にしたって、何も変わりませんから・・・それに・・・」  
 
多分、顔色は・・・赤くは無くなっているでしょう、もしかすると蒼ざめているかもしれません。  
でも、せめて笑顔は絶やさずに、そして・・・恥ずかしいけど・・・演じます。  
社長のそれに、両手を添えて・・・  
 
「それに・・・私の望みは・・・社長と、一つになること・・・ですから・・・」  
「國生さん・・・」  
 
私の虚勢が、どこまで通じたかはわかりません・・・そもそも、笑顔が作れていたかどうかさえ、怪しいです。  
ですが、社長は私の方へ身体を寄せました。  
その表情は・・・私を安心させようと、微笑を浮かべようとして・・・でも、上手くいっていない、  
そんな感じでした。  
私が不安なのと同じくらい、社長も不安なんだと思います・・・私を、傷つけてしまうことが・・・  
 
「・・・國生さんは強いな」  
「え・・・?」  
「俺よりも、よっぽど辛いはずなのに・・・  
 そうやって、微笑んで・・・俺をリラックスさせようとしてくれてる・・・」  
 
上手く、いっていたようです、でも、上手くいっていたけど・・・  
 
「見抜かれちゃってましたか・・・でも・・・怖いけど・・・私の望みは、本当です・・・」  
「だが・・・しかし・・・!」  
「今夜じゃないと、ダメかもしれないんです・・・」  
「え・・・?」  
「今夜は、特別な夜だから・・・  
 今夜なら、いつもより、今までのどんな時よりも、勇気が出せるから・・・  
 私が好きな人が、私のことを好きだって、言ってくれた夜だから・・・」  
 
今夜、あなたと・・・結ばれたいから・・・  
 
「本当に・・・いいんだね?」  
「はい・・・」  
 
そう言って、社長は私の前に立ちました。  
そして、ソファーにもたれかかる私に、被さるように近寄って、  
腰のものを・・・わたしの、そこに・・・あてがおうとします。  
私は、それに添えた両手で目指すところへ導きます。  
そして・・・  
 
「・・・じゃあ・・・いくよ・・・」  
「はい・・・来て、下さい・・・  
 私の身体に・・・社長のしるし・・・刻んで、下さい・・・」  
 
そして、互いに覚悟を決めた上での微笑を浮かべて、軽く、おまじないのようなキスをして、  
私たちは最後の一歩を、踏み出しました。  
 
社長のものが、私の中に埋まる感覚に・・・最初は・・・最初だけだとわかっていますが、  
先程の甘い疼きが蘇ります。  
指より遥かに太いものが、私の最も敏感なところを、押し広げる感覚・・・  
あとに続くものが予想できるのに、それでも期待してしまう感覚に、身体がふるふると震えます・・・が、  
その先端は、すぐに薄い膜にぶつかります。  
社長は、そこでまた私を見て・・・私は、軽くうなずいて・・・下を向きます。  
・・・これからの表情を、見られたくなかったから。  
 
薄い膜に力がかかって、ぴりっと破れる感覚が、続きました。  
そして・・・狭い釘穴に、明らかに太すぎる杭を打ち込むような・・・  
身体を貫く・・・いえ、裂く、よう、な――――――  
 
「――――――――――――っ!!」  
 
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い―――――――――――――!!  
ずぶずぶ・・・と、社長のものが私の中に埋まりゆく間、私は、ただ歯を食いしばっていました。  
ぼろぼろ涙を流しながら・・・絶対に声は上げないって決めて・・・  
社長の背中に手を回して、力の限りに抱き締めて、その胸に顔を押し付けて、  
目をぎゅっと瞑って歯を食いしばって・・・  
社長のものが、全部私の中に埋まるのを、待ちました。  
 
「國生さん・・・無理、しないで・・・」  
 
腰を静めながら、優しく・・・そう言ってくれます。  
でも、そんなこと言われても・・・無理しないことが、無理です・・・もう、どうにもならないです・・・  
 
「君が止めてって言わない限り・・・止めようって言わないから・・・止めないから・・・だから、  
 せめて・・・声を上げてもいいから・・・泣いたっていいから・・・そこまで、無理しないでくれ・・・」  
 
そんなこと言ったって・・・本当に痛いんですよ・・・?  
これで声出しちゃったら・・・社長、私・・・泣き叫びますよ・・・?  
 
「・・・っふ・・・あ・・・うぁ・・・しゃちょ・・・あ、あ、ああ・・・わああああああああっ!!」  
「・・・國生さん・・・っ」  
「痛いです、痛い、痛いですっ! しゃちょお、しゃちょおぉっ! うぇ・・・うぁあああああ!」  
 
だから言ったのに・・・  
一度、声が漏れた後は、もう、抑えられませんでした。  
“痛い”と“社長”という言葉を何度も繰り返しながら、あとはただただ嗚咽を、漏らしつづけました。  
私が号泣している間、社長は私の背中に回した片腕でぎゅっと抱き締めて、  
もう片方の腕で頭を抱いて、優しく・・・髪を撫で続けてくれていました・・・  
 
やがて、慣れたのか、麻痺したのか・・・少しだけ痛みが退いて、私が泣き止んだとき、  
既に社長のものは、私の中に全て埋まっていました。  
 
「社長・・・ごめんなさい・・・わたし・・・」  
「國生さんが謝ることない・・・俺が、君に痛い思いをさせたんだ・・・謝るなら、俺の方だよ」  
「・・・社長」  
 
確かに、そうかもしれない・・・社長がこうしたから、私が痛い思いをしているのは、その通りだけど・・・  
でも、それでも・・・あなたのことが憎いとか、欠片ほどだって思っていないんですよ・・・?  
だって、私は、それくらい、あなたのことが・・・  
 
「社長・・・好き・・・好きです・・・大好きです・・・しゃちょお・・・」  
「俺もだよ・・・好きだ・・・國生さん・・・愛してる」  
 
痛いけど・・・辛いけど・・・でも。  
その言葉だけで・・・その気持ちだけで・・・私は、大丈夫です。  
身体は傷ついても・・・心は、嬉しさで・・・愛しさで・・・いっぱいですから・・・  
 
お互いの言葉を確かめ合うように、どちらとも無く唇を寄せて、もう一度、キスを交わしました。  
交わしたと言っても・・・刹那的なものではなく・・・舌を絡めあうような、濃厚な、ディープキス。  
飽く事なく、執拗に・・・私たちは、繋がったまま・・・互いの唇を、吸い続けました。  
そして、いつしか・・・先程の感覚が、蘇ってきます。  
痛みは痛みのままあって、でもそれとは別に、あの、蕩けそうな昂ぶりが・・・  
社長のものを納めたそこも・・・多少、馴染んできたとはいえ未だに痛みははっきりとありますが、  
微かに・・・ジンジンと、疼くものがあります・・・  
あんなに・・・号泣するほど痛かったはずなのに・・・今だって、痛いのに・・・  
やっぱり、私・・・えっちなのかもしれません・・・でも、それでもいいです。  
それで、社長と、一緒に気持ちよくなれるなら・・・えっちで、いいです・・・  
 
「あの・・・社長・・・」  
 
長い長いキスを終えて、溶けて小さくなってしまったんじゃないかと思う舌を離して、  
わたしは彼に、一つの提案をします。  
 
「・・・動いて、いいですよ」  
「動いて・・・って、でも、それは・・・」  
「さっきまで・・・わんわん泣いてた時よりも、ずっと痛くなくなりました・・・それに・・・」  
 
懸命に抑えられてるけど・・・ちゃんと、わかります。  
 
「社長だって・・・このままだと、辛いでしょう?」  
「だ、だが・・・動いたら、また・・・」  
「でしたら、少しずつ、ゆっくりと・・・大丈夫です・・・あなたと結ばれて、私の身体が・・・  
 悦ばない訳がないですから・・・」  
「・・・國生さん」  
 
我ながら、無茶苦茶な事を言っていますが・・・でも、ちょっと本気ですよ?  
そして、社長は、本当に僅かずつ・・・腰を、動かし始めました。  
 
「っく! ・・・ぅ」  
「・・・國生さん・・・辛かったら、言ってくれ・・・すぐ、止めるから・・・」  
「はい・・・でも、平気・・・痛いけど・・・痛いだけじゃ、ないから・・・」  
 
勿論、痛いです・・・びりびりと、剥き出しの肉が抉られる感覚は、消えません。  
ですが、破瓜の時ほどではないですし・・・僅かに、疼く感覚もありますから・・・  
 
「っふ・・・あ・・・! あ・・・ぎ・・・はぅ・・・うぐ・・・っ ひぅ・・・」  
 
じゅぷ・・・ずちゅ・・・と、ゆっくりと社長のものが私の中を出入りする度に、  
控えめな湿った音が社屋に響きます。  
動かれる度に鋭い痛みに襲われますが・・・でも、少しだけ・・・気持ちいいです・・・  
そんな私の表情が読めるのか、社長は僅かずつ腰の動きを大きくしながら、  
私が少し大きな悲鳴をあげても、決して緩めたりはしませんでした。  
その代わり、私の額に、頬に、髪に、耳に鼻に瞼に唇に・・・何度も、キスをしてくれました・・・  
 
そしていつしか、私の身体は・・・痛みを抱えたまま、同じくらいの官能の疼きに囚われていました・・・  
 
「うぁ・・・ひぅ・・・社長・・・しゃちょお・・・」  
「國生さん・・・大丈夫か・・・?」  
「大丈夫じゃないです・・・ヘンです・・・痛いのに・・・まだ痛いのに・・・社長ので突かれて・・・  
 私・・・わたしぃ・・・っ」  
 
それ以上は・・・恥ずかしくて言えなかったけど・・・上擦った声と、表情で、  
多分、伝わったと思います・・・  
そして、思った通り、伝わってくれたみたいで・・・社長の腰使いのペースが、いきなり上がりました。  
 
「ひ・・・痛っ・・・ふぁ、あ、ひぁ! あ、や、ふぁああ!」  
「國生さん・・・ごめん! 痛いかもだけど・・・俺も・・・もう・・・」  
「い、いいの・・・いいですっ、社長の、思うままに・・・大丈夫だから・・・っ!」  
 
だって、ずっと・・・私が泣き叫んでる間も、そのあと、延々とキスしている間も、  
社長は私の中で全く動かずにいてくれた・・・きっと、すごく辛かったはずなのに・・・  
私が痛みに泣き叫んでいる間、社長は疼く快楽にずっと耐えていてくれたのですから・・・  
だから、今度は・・・一緒に、気持ちよく・・・なりましょう・・・  
 
ずちゅ、ぢゅぷっ・・・じゅぶ・・・っ  
いきなり激しくなった抽送に、私の身体は苦痛と快楽・・・相反する二種の声をあげて応え、  
私は社長と、自分自身の身体に翻弄されます・・・  
でも、私が欲しいのは、そのうち片方だけだから・・・私の心は、そっちだけを強く感受して、  
いつしか・・・  
 
「ふぁ・・・あ! ひぅ・・・い、ひゃああ! 社長、しゃちょおっ! わた、わたしっ! ふあああ!」  
「國生、さん・・・?」  
「どうしよう・・・っ、痛いのに・・・気持ちいいのっ・・・社長の・・・わたし・・・感じてるっ!」  
「俺も・・・國生さんの中・・・気持ちよすぎて・・・すごい・・・絡み付いて・・・気持ちいいよ・・・っ」  
「ひ・・・っ、つぅ・・・あ、本当、ですか・・・嬉しい・・・んぅ・・・!」  
 
ぐちゅっ、ぎちゅっ、ずちゅっ・・・っ  
痛みを和らげるためか、それとも私がまた感じ初めてしまったからか・・・  
社長のものを咥え込んだ私のそこは新たに垂れ流される愛液でぐずぐずに濡れて、  
そこを社長にかき回されて、卑猥な水音をあげています。  
社長の抽送のペースはますます速く、打ちつける勢いは一層強くなって、  
肉の楔は私の身体のより内奥へと、ずぶずぶと打ち込まれます。  
それは当然ながら激しい痛みを伴いますが・・・でも・・・  
今は、もっと激しい・・・甘い、刺激が一緒になって襲ってきて・・・  
 
「い、いた、ふぁあ! や、あ! くひ・・・っ! いた、痛い、でも、なんで・・・ふぁ、ひゃあっ!」  
「國生さん・・・っ、なか・・・すごい・・・きゅうきゅうって、締め付けてくるよ・・・!」  
「は、はい・・・っ! だって・・・しゃちょおの・・・痛いけど、きもちいいからぁっ!」  
 
社長が顔を上げて、さらに抽送のペースを上げます。  
私は、目の前で露わになった首筋に、今度は私のほうからキスを繰り返します。  
跡が残ってしまえっていうくらいに強く・・・この人は、私のもの・・・私だけのものだって、  
そんな印を幾つも、幾つも付けてしまおう、というくらいに、繰り返し。  
その間にも、社長の腰使いはますます激しくなって、私を乗せたソファーがギシギシ、ゴトゴトと音を立てます。  
当然、社長の腰とソファーの間に挟まれた私は、ソファーが揺れるほどの抽送に曝されるわけで・・・  
 
「んぁあ! ふぁ! しゃちょ・・・はげしっ! おくっ! 奥までぇ・・・! ・・・ひぁ・・・あぁあ!」  
「ごめん、もう、止まらない・・・っ! このまま・・・このまま最後まで・・・!」  
「こわれ・・・っ! らめ・・・すごすぎてぇっ・・・こあれちゃうう! わたし、らめ、しゃちょ・・・お!」  
 
痛みもあるけど・・・痛いからじゃ、ないです・・・気持ちよすぎて・・・私が・・・弾けてしまいそうで・・・  
なのに、私の身体は、貪欲で・・・腕だけじゃなく、脚も社長の腰に巻きつけて・・・  
少しでも、社長の身体に触れようと、貪ろうと、身体中で絡み付こうとしています。  
・・・ですから・・・社長がこう言った時も・・・  
 
「っく・・・國生さん・・・ダメだ、もう・・・もうすぐ、俺・・・脚、離して・・・!」  
「ひぅ! っく! ひゃああ! らめ・・・だめです・・・はぅ・・・ふぁあ! だめ、はなさない・・・」  
「だ、だが、このままじゃ・・・っ、俺、もう、本当に・・・出しちまう・・・!」  
「いいです・・・社長のなら・・・っ! だからっ・・・っふ・・・あ! このままっ・・・もっと・・・!」  
 
もう、恥も外聞も、何もありませんでした・・・  
ただ、ただひたすら・・・社長を、求めていました。  
 
私のおねだり・・・私の願いを、受け入れてくれたのでしょうか。  
社長はそれ以上何も言わず、その代わり・・・腰の動きが、更に・・・乱暴なくらいに、激しくなりました。  
ソファーごと倒されてしまうのではないかというくらいに、激しく腰を打ち付けられて、  
社長のものは、私の秘肉の奥の奥まで達し、何度も何度もそこを突き上げます。  
その度に、私の身体はガクガクと震え、全身が粟立つような、甘すぎる快楽に押し流されるようで・・・  
 
「っあ、ふぁ、あああ! らめ、へんになるっ! わたし、しゃちょおっ、こんなっ、ふぁあああ!?」  
 
ずちゅ!ずぷ!ぐちゅ!ぎちゅ!じゅぶ!ぐぷっ!ぢゅぶ!・・・・・・  
ソファーの軋む音、私のそこが立てるいやらしい水音・・・そして、私があげる、上擦った喘ぎ声・・・  
真夜中の工具楽屋に、そんな音が鳴り響いていました。  
 
「國生さんっ! もう、俺、もうすぐっ、國生さんっ! 國生さんっ!」  
 
社長が切羽詰った声を上げて、これで最後とばかりに腰を使い、二度、三度と、私の中を抉るように突いて、  
最後に、本当に最後に、私をソファーに釘付けにするみたいに深く、突き込みました。  
 
「もう・・・出る、出る! 出すよっ、中に・・・國生さんの中に全部・・・っ!」  
 
そしてぎゅううっと、私を強く、痛いほど強く抱き締めて・・・  
私も、力いっぱい社長の方を抱いて、腰に絡めた足を思い切り締め付けて・・・  
 
「ぅあっ! きて、きてぇ! しゃちょお、中に、私の中に出してぇ、しゃちょ・・・ふぁ、あ、うぁああああっ!!」  
 
そして、私の中で社長が弾けて・・・熱い迸りが私の身体の一番奥に、断続的に何度も何度も注ぎ込まれて・・・  
その感触がトドメになったみたいに、私の身体を快楽の電撃が駆け巡り、そして・・・  
私の意識はホワイトアウトするような、どこかに上り詰めてしまうような・・・  
脱力した社長の体重がかかるのを感じながら、私はそんな感覚に呑み込まれました。  
 
それから、どれだけ時間が経ったかわかりませんが・・・  
生まれて初めて知った、甘美過ぎる感覚の余韻から醒めたとき、目の前に社長の顔がありました。  
 
「しゃ・・ちょぉ・・・」  
「國生さん・・・大丈夫?」  
「は・・・はい・・・すごかった・・・です・・・社長の・・・いっぱい・・・注がれちゃいました・・・」  
「あ、ああ・・・でも、俺も・・・すごい、気持ちよかった・・・國生さんの中・・・」  
「よかった・・・嬉しいです・・・」  
 
私たちは微笑みあって、軽く、ちゅ、とキスをします。  
そして・・・  
 
「でも、正直、すごく心配だったんだけど・・・よかった、ちゃんと國生さんも気持ちよくなってくれて・・・」  
「え・・・?」  
「だって・・・聞いた話だと、初めてのときって、痛いだけとかいうから・・・」  
「そ、それは・・・でも、今だって、い、痛いは痛いんですよ・・・?」  
 
まるで言外に私のことをえっちだって言われてるような気がして、思わず・・・  
 
「な、そ、そうなの? すまん、じゃあ、すぐ・・・」  
「あ、だめ!」  
 
でも、今度は社長が私の中にまだ入っていたそれを抜こうとするのに、またしても思わず・・・  
 
「へ?」  
「そ、その・・・痛いですけど、でも・・・折角、繋がってるから・・・もう、ちょっとだけ、このまま・・・」  
 
言ってから、恥ずかしくて思わず顔を逸らしてしまいますが・・・  
 
「そか・・・じゃあ、こうしよう」  
「え? ええ!?」  
 
ソファーにもたれかかったままだった私を、社長は・・・繋がったまま、ひょいと抱き上げて、  
社長が今度はソファーに座り、私はその腰の上に座る形になって、  
社長の身体に、身体をもたせかけるようになりました。  
 
「これなら、重くないだろう?」  
「はい・・・」  
 
別に、さっきのまま・・・社長の重さを感じる位置も、悪くはなかったのですが・・・  
でも、社長の膝の上ならぬ腰の上・・・ですが、そこでぎゅっと抱かれるのも、  
とても気持ちよく感じました・・・  
 
「社長・・・温かくて・・・気持ちいい・・・です・・・」  
「そう? いくらでもこのままでいていいよ・・・朝までなら、だけどね」  
「じゃあ・・・もう、しばらく・・・この、まま・・・」  
「・・・ああ」  
 
そう言って・・・優しく・・・私の、髪を・・・撫でて・・・くれます・・・  
そこは、あんまり、心地よくて・・・つい、うとうととして・・・  
だから・・・まだ口が動くうちに・・・もう一回・・・伝えて、おこうかな・・・  
 
「ね・・・社長・・・」  
「ん?」  
「・・・好き・・・」  
「ああ・・・俺も・・・好きだよ」  
 
そして、頬に軽く・・・キスを・・・してくれました・・・まるで・・・お休みの、キス・・・  
あ・・・おやすみって・・・言ってない・・・すみません・・・しゃちょ・・・  
・・・そんな、薄れ行く、意識のなかで・・・  
 
「お疲れ様・・・おやすみ、陽菜」  
 
え・・・いま・・・あれ・・・いいや・・・おやすみなさい・・・・・・我聞さん・・・  
 
 
12月25日 時刻は午前4時頃。  
場所は、工具楽屋前の道。  
 
「うはー! 呑んだ呑んだあ〜! くそー! クリスマスがなんだってんだ〜!」  
「はっはっは、優さんは元気ですね」  
「なぬぅ・・・わ、ワシもまだまだ・・・若い者には負けんわい・・・うぃっ・・・」  
「はっはっは、仲之井さんもお若い」  
 
工具楽屋の大人三人組は、我聞が飛び出した後に会社で半端に呑んだ酒で勢いがついてしまったらしく、  
街まで呑みに繰り出して、そのまま閉店まで飲み明かしていたのだった。  
帰る前に、会社でコーヒーでも一杯、ということになって社屋の前まで雪道を歩いてきたのだが・・・  
 
「むむっ!」  
「どうしました・・・って、おや」  
「この時間の会社に、灯り?」  
 
こんな夜更けに本来、人がいるはずもないわけで、そうなると考えられる可能性は二つ。  
一つは・・・  
 
「賊かっ!?」  
「まあ、あんなところに入る賊は・・・余程に見る目がないか、もしくは情報狙いの真芝関係・・・ですが」  
 
真芝、と聞いて二人が少し緊張・・・したつもりなのだろうが、酔ってとてもそうは見えない。  
 
「仮にも真芝関係のものが、盗みに入った先で灯りをつけるなんて真似は間違ってもありえないでしょう」  
 
はっはっは、と勝手に不安を煽って勝手にオチをつけている辻原。  
酔っているのか素なのか、誰にもわからない男。  
だが、その結論に至り、今度は優がにやーっとした笑みを浮かべ・・・  
 
「と、なると・・・ふふ・・・ふふふふ・・・それでは不肖、森永優! 偵察へ行って参ります!」  
「おう、頼むぞ優くん!」  
 
びしっと敬礼を決められ、事態を把握できないままに敬礼を返す仲之井。  
優は優で、それまでの千鳥足が嘘だったかのような確かな足取りで、音も無く工具楽屋の階段を登り、  
扉の窓の隅からこそっと中を覗き、ついで堂々と正面に立って、携帯をかざして・・・  
それが済むと、下の二人へVサインを送ってから音も無くするすると階段を降りて戻ってきた。  
 
「どうじゃった?」  
 
仲之井の問いに、無言でにやーっとした笑みを返すと、携帯に撮った画像を二人へ見せる。  
それを見た二人、いや、優も含めて三人とも、ほっとしたような笑顔を浮かべ・・・  
 
「おお・・・! 会社でとは、どうかと思うが・・・でも、よかった、よかったのう・・・!  
 さすが我らが社長じゃああ!」  
「どうやらケリをつけたようですね、まあ終わりよければってことで、合格です。  
 ・・・が、これでは社には入れませんねぇ」  
 
どうこう言いながらも、未熟な人生の後輩が、一つの試練を乗り越えたことを祝福しているようだった。  
が。  
 
「まーったく、心配ばーっかりかけさせてくれちゃって! でも、これで・・・ふふ・・・ふふふふふ・・・」  
「ゆ・・・優くん? ど、どうしたのじゃ・・・」  
「いやぁ、こうして掴むものも掴んだし、心配かけさせてくれたお返し、どうしてあげようかなぁと・・・  
 うふ、うふふふふふ・・・・・・」  
 
最初は優しげだったはずの笑顔は、いつの間にか黒いオーラを纏う悪い笑いに。  
残る二人はどうしようもなく、ただただ見守るしかなかったとか。  
 
 
日は変わって、12月26日、月曜日。  
 
既に学校は冬休みですが、年末年始以外は学校は開放されているので、当然、卓球部だって活動します。  
とはいえ長期休暇中は平日でも一日中仕事が入れられるので、  
基本的には仕事優先な訳ですが、本日は・・・  
 
「・・・というわけで、解体の仕事は午後からしか入っていませんので、午前中は部の方に参加できますね」  
「そうか、サンキュ! じゃあまた、國生さんの挑戦を受けるとしようかな?」  
「余裕ですね? そんな風に油断してると、ひっくり返しちゃいますよ?」  
「ふっふ、いいだろう、年季の違い、見せてやろう!」  
 
とまあ、そんな感じで・・・なんだかんだで相変わらずの会話をしております。  
ただ、以前と違うのは、学校に向かう道すがら・・・手を繋いで歩いていること。  
最初は、やっぱり恥ずかしかったですが、人通りの少ない道を通りますし、  
知り合いに合うまでは、ということで・・・  
でも、これもそろそろ離さないといけません、何故なら・・・  
 
「お、るなっち! くぐっちも、おっはよ〜!」  
「あ、皆さん、おはようございます!」  
 
結構危ないタイミングでしたが、どうやら見られずには済んだようで・・・  
まあ、その・・・隠すことではないかもしれませんが、やはり、少し恥ずかしいものですから、  
社長と話した結果、当面は二人だけの秘密ということに・・・  
 
「この前のとき急に帰っちゃったけど、仕事とか平気だったの?」  
「あ、あの時は本当にすみません、でも、お陰さまでもう問題は片付きましたから!」  
「そっか、ならいい、許す! ・・・けど、どう片付いたのか、お姉さん方に教えてくれるよね〜?」  
 
にや〜っと、天野さんと住さんに詰め寄られてしまいまして・・・ええと・・・どうしよう・・・  
しゃ、社長は・・・社長で、佐々木さんになんだか詰め寄られています・・・  
 
「な、何か誤解されていませんか!? べ、別に、といいますか、仕事のことですから!」  
「ほほ〜、それにしては、くぐっちも探しに行く前、結構な慌て方してたけど、ねぇ、友子?」  
「だよね〜? それに、さっきの工具楽くんと國生さん・・・ちょっと、いつもより近くなかった?」  
「ね〜? そこんとこ、じっくりと、聞かせて頂こうかしら、ねぇ?」  
 
ああ・・・どうしよう・・・仕事のこととか予算のこととかで強く出ることが出来ない分、  
もしかすると優さん達よりタチがよろしくないかもです・・・  
 
ちゃららら―――♪ ちゃーちゃちゃちゃちゃらちゃららら―――♪  
 
「あ、ど、同僚からのメールです! 仕事関係かもですので、しばしお待ちを!」  
 
優さんから? ・・・こんな朝から起きていられるなんて珍しいですが、何にせよ助かります!  
あ、でもそれってもしかすると本当に仕事・・・?  
まあでもこの際、社長には悪いですが、それでもいいです・・・この危険な状況を抜け出せますから・・・  
うん?・・・ええと、“この画像をちょっと見て欲しいんだけど”?  
なんでしょう、仕事関係でしょうか・・・  
ぴ。  
 
・・・・・・・・・  
 
「・・・え」  
 
そこに写っていたのは・・・  
あの晩の・・・私と、社長・・・  
私が、眠ったあと・・・社長がロッカーから毛布を出してくれて、それに包まって二人、  
ソファーで朝まで寄り添って眠っていた訳ですが・・・何故、この写真を優さんが・・・  
・・・っていうか、何のために!?  
 
・・・そして、気付きました・・・周囲からの、視線に。  
私は、なるべく冷静を装いつつ可及的速やかに携帯を閉じて、  
 
「どうした國生さん、仕事?」  
「い、いえ、優さんから・・・ちょっとしたことで・・・大丈夫です、問題ありません!  
 ただ、社長、ちょっと別件で、あとでお話が・・・」  
「む? わかった、じゃあ、行こうか!」  
「ぬぅう我聞、貴様、本当に國生さんと何もなかったんだろうな!? なんだか仲良くしやがって!」  
「ば、馬鹿な! 前からこんなだろうが!」  
 
・・・どうやら、事なきを得たようです・・・  
優さんに現場を抑えられていたのは由々しき事態ですが・・・  
まずは、それが何処まで広がっているか調べないと・・・社の皆さんはわかりませんが・・・  
果歩さん達は・・・優さんと仲がいいから、既に手遅れかも・・・  
あ、でもそうしたら、ちょっと恥ずかしいけど社長の家に出入り自由になったり・・・って、ヘンな期待しない!  
とにかく、後で社長と相談を・・・  
 
と、一息ついたところで、ぽん、と左右から肩を叩かれまして、  
いつの間にかぴったり真横に並ばれていた天野さんと住さんが・・・  
 
「ね、るなっち」  
「は、はい? なんでしょう?」  
「今の写真のことだけどさ〜?」  
「――――――!! え、え、えええ!?」  
 
み・・・・・・見られてました・・・!?  
 
「随分と御親密になられたようですが、ちょっと心配しちゃった身としては、その場面に至った経緯、  
 教えて欲しいかな〜、なんて?」  
「あんな展開の末にこんな場面なんて、さぞかしドラマがあったんだよね〜?  
 友達として気になっちゃうな〜♪」  
「あ、あ・・・あの、その・・・」  
「「教えてくれるよね〜?」」  
 
すいません社長・・・無理です・・・はぐらかせません・・・  
 
「で、では・・・その・・・あとで、ロッカーででも・・・」  
「お! さすがるなっち! 安心して、絶対に漏らしたりしないから!」  
「そうそう! ちゃーんと秘密にしておくから、ね!」  
 
社長・・・私たちのこと、きっと・・・いろんな人にばれちゃうと思います・・・すぐに・・・  
よく考えたら、マフラーで隠してるけど、キスマークとか・・・多分、ありますし・・・  
あ、でも・・・恥ずかしいけど・・・逆にそうしたら私たち、公然と付き合える訳でもあるのかな。  
人目を気にせずに手を繋いだり、腕を組んだり、互いの部屋に通ったりとか・・・  
 
例えば今、社長と腕を組んだら・・・さぞかしいろんな事を言われるでしょうけど、  
でも、明日からは手を繋いだまま皆さんと会っても、気にすることは無いわけですよね。  
どうせいつかは通る道ですから・・・すこし早まっても、問題ないですよね?  
勝手にやったら、怒るかな?  
ううん・・・きっと、ちょっとだけ苦笑して、でも許してくれる・・・  
だから・・・ごめんなさい!  
 
「―――社長!」  
 
大きな声で呼んで、少し驚いたように振り返る彼に駆け寄って――――――  
 
 
 
                              Merry Christmas! ―――Fin―――  
 

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