9巻真芝に乗り込む前の場面。
第一研壊滅を誓い、ゆびきりする我聞と陽菜。
「…ふふ」
微笑む陽菜。
「む?どうした?」
「いえ…そういえば、よく私の父ともゆびきりをしたな、と思って。父は約束事に特に厳しい人でしたから。」
準備のために事務所に向かう我聞を見送る陽菜。
ただし、彼女が微笑んだのは父との約束を思い出したからだけではない。
彼女はもう一つの、彼女もとっくに忘れてしまっていたゆびきりを思い出していた。
それは陽菜がまだ小学生に上がる前の話。
「おとーさーん!」
「む?どうした陽菜?」
「ガモンくんがねー、私のことお嫁さんにしてくれるってー!今指切りしたんだよー!」
私でさえ忘れていた昔のことだ、社長もとっくに忘れているだろう。
そして、何よりこれから真芝第一研の壊滅作戦が控えている、甘い思い出に浸っている場合ではない。
でも、全てが終わり、父と先代が無事戻った時には…彼は「社長」でなくなるし、私も「秘書」でなくなるはずだ。
「その時には我聞くんって呼んでいいのかな…」
陽菜はゆびきりした右手をじっと見つめながら、現実に戻るかのように、
「がんばろうね、我聞くん…みんなを悲しませないために」