時は午前二時、とあるプレハブ小屋のような建物の一室でのこと。  
「……これで、『緑印の巨大焼酎』、一ヶ月分は困らないね」  
 エンターキーを弾く。  
 一つの影が、暗闇の中で唯一光を発している少々旧型のディスプレイを前に、ふっふっふっ、と不気味な笑みを漏らしていた。さっすが、優さんはやっぱり天才だね、などという台詞も聞こえる。  
 人影はすさまじいスピードでキーボードを叩くと、パソコンの電源を落とした。  
「ごめんね、はるにゃーん。ほんのお小遣い程度だから許してねー?」  
 悪びれもせずにそんなことを言いながら、影ーーもとい森永優は足取り軽くプレハブもどきこと工具楽屋を後にした。  
 さて、再び静まり返った室内。程なくして優の足跡が聞こえなくなると、また一つの影がロッカーの陰から現れた。  
「やれやれ、経費横領、経理データの改鼠とは……感心しませんね」  
 影は懐から煙草を取り出すと、みるからに安っぽい百円ライターで火を付けた。  
 現れたのは、例によって胡散臭い顔。辻原螢司である。  
「まぁ、これはこれで面白そうですし、しばらくは傍観ですか、ね」  
 はっはっはっ、と笑う。  
 どうやら不謹慎なのはこの男も同じら  
 

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