「私が…子どもじゃない証拠を、今から見せます」  
 
かなえは辻原の胸倉を掴むと、自分の唇を辻原の唇に押し当てた。  
この“口と口がくっついた”としか表現できないような行為が、大人の証拠だとでも  
いいたいのか───。  
そもそもどうしてこんな事になってしまったのか。  
あまりの出来事に、辻原は頭を抱えるしかなかった。  
 
今日はかなえの快気祝いと、先日の真芝壊滅作戦の慰労会であった。  
それぞれが大いに今回の宴席を楽しむ中、かなえの様子が少しおかしいとは  
辻原も感じていた。  
ただ、自分以外の人間にはいつも通りの対応をしている事から、この間話した実験部隊の  
件で、完全な信用を得られなかったと言う事だろう。  
元真芝の人間だと思えば、かなえの態度にも納得が行く。  
ただ───どうもそれだけではないらしい。  
どう見ても、酒を呑むペースが速すぎる。  
かなえの隣で湧次郎が嬉しそうに酒を注いでいるが、辻原から見ればそろそろやめた方が  
いいと思えるほどのハイペースだ。  
 
いったん宴席が終了し、未成年以外のメンバーが二次会の会場にそぞろ歩きを始める中、  
辻原は「明日には飛行機で九州でしょう?無理は駄目です」と半ば強引にかなえを  
引き止めた。  
ホテルに送るなら自分がと言い出した湧次郎に「この辺の地理に明るくないでしょう」と  
下がらせ、かなえを連れてホテルまでやってきたのだ。  
 
ホテルのフロントで、かなえが突然崩れ落ちると言うアクシデントに見舞われたが、なんとか  
チェックインを済ませ、部屋までたどり着き水の入ったコップを握らせた。  
 
それで終わりのはずだった。  
水を飲んで早く寝るようにと指示し部屋を後にしようとしたその時  
「何なんですか!さっきから人を…子ども扱いして!」と、かなえが突然切れたのだ。  
この言葉に辻原も「───子どもでしょう?」と返す。  
かなえはなおも食い下がり、自分は子どもではないと言い張る。  
 
「子どもです。自分の体調も摂取量の限界も考えずに酒を呑んでホテルのチェックインもままならない  
 それが大人の女性と言えますか」  
 
ハイペースで呑み続けるかなえをどれほど心配したか。  
そんな事を出来るだけ優しく言ったつもりだった。  
だが、かなえに辻原の言葉届かなかったようだ。  
気を抜いた一瞬、ドンッと胸に衝撃を受け、背中にベットのスプリングを感じた。  
かなえは辻原の体に跨り、胸倉を掴むように引き寄せると、唇を押し付けてきたのだ。  
 
まさかこんな拙いキスが大人の証だと言うのだろうか。  
しかし、それだけでは終わらなかった。  
いったん辻原の体から離れると、スカートの裾から手を入れ、下着を脱ぎ始める。  
チラリと見えた真っ白な太ももに目を奪われた───が、そんな場合ではない。  
 
「かなえさん…?何するつもり…ってちょっ…」  
「───こんなことだって…出来ます…」  
 
かなえは辻原のベルトを外し始めたのだ。  
あまりの展開に茫然自失の辻原がやっと我に返った時には、下着を下ろされ、自身を  
かなえの手が握っていた。  
 
我に返ったと言っても、頭の中は「?」マークだらけで、体も反応しない。  
反応したのは別の場所だ。  
かなえの指が辻原自身を何度もさすると、体中の血がそこに集まってくる。  
ムクムクと鎌首をもたげてくるそれを見て、ようやっとかなえに逡巡の色が見えた。  
しかしそのためらいを振り切るように、かなえは辻原に跨ると、ゆっくり腰を下ろした。  
 
自身の先端にかなえの柔らかな肉の感触が伝わる。  
だが───これでは無理だ。  
かなえは乾いたソコを何度も押し付けてくるが、ただそれだけで挿入に至らない。  
 
「かなえさん…やめなさい」  
「出来ますっ…出来るんだから…」  
 
グイグイと入り口を押し付け、腰を落とす。  
ほんの少しめり込むような感触があった時、かなえがきつく眉を寄せ「いっ…」とうめいた。  
 
「もうやめなさい」  
 
かなえは腰を上げ、辻原から離れると壁にとんっと背中をつけた後、ずるずると崩れ落ちた。  
 
「───かなえさん…何かあったんですか?今日のあなたはあなたらしくない」  
 
ちょっとからかえば、多少落ち着きをなくしカッとなる所もあるが、決してこんな事をする  
女(ひと)ではないはずだ。  
年齢の割りにはしっかりとこわしやの会長も務めている───そんなかなえが。  
 
時間にすると短かったかもしれない。だが、この重い空気の中では一分が一年にも  
思えてしまう。  
どのくらい待っただろう…ようやくかなえが口を開いた。  
 
「あなたの過去を無理やり聞きだした事を怒っているでしょう?」  
「───こわしやの会長として、あなたは当たり前のことをしたんです」  
「…それは建前で、ただあなたの過去を知りたかっただけだとしても、そう言えますか?」  
 
かなえはさっき落としたコップからこぼれた水を見つめる。  
ユラユラと一本の筋になって上昇する水が、ふっと元の形に戻った。  
 
「仙術を自分の私利私欲の為に使ってしまった…入院中、ずっとそんな事ばかりを考えて、  
 胸が苦しくて───今日あなたに会ったらこのモヤモヤした気持ちに出口が見つかるかも  
 しれないって…そう思っていたのに…どんなに呑んでも気持ちは晴れないまま…」  
 
辻原はかなえの言いたい事が何であるか、少し分かったような気がした。  
この人は、とても真面目な人なのだ。  
 
「元気そうだと言ってくれた時も、送ってくれると言ってくれた時も、とても、嬉しかったのに…  
 だめなんです…あなたといるといつもの私じゃなくなってしまうんです───もう、私のことは  
 ほおって置いて下さい…これ以上、私の心をかき乱さないで…」  
 
(これは───)  
 
辻原は面食らった。  
これはどう考えても愛の告白ではないか。  
 
自覚がない。その気持ちを愛だと知らず、そのせいで心を持て余してしまっている。  
幼い頃から仙術の修行に打ち込み、両親の命を奪った真芝をこわす事に身命を尽くす人。  
 
「かなわないな…」  
 
辻原は独り言のようにそう呟くとかなえににじり寄り、力なくうなだれるかなえの膝に  
両手をかけて、ぐっと足を開かせた。  
突然の事にかなえはあわてて足を閉じようともがくが、背後の壁に体をぴったりと押しやり  
力でM字に開かせる。  
 
「いっ、嫌です!こんな…」  
「さっきあんな大胆な事をした人が、何言ってるんです」  
 
両足をしっかりと固定したまま、辻原は頭をかがめかなえの秘所を覗き込んだ。  
 
「そのまま動いちゃいけませんよ」  
 
辻原の指がかなえのヒダをかき分けながらクレバスをなぞる。  
しっかりと広げて入り口に浅く指を差し込むと、かなえのソコからじわっと蜜がにじんだ。  
 
「───ひどく切れたりしてないようですね…」  
 
先ほどの無茶な挿入で、裂傷が出来たのではないかと心配したが、無事のようだ。  
しかし、辻原は確認が済んだ後も、ゆっくりした指の動きをやめない。  
ひいては押し込み、押し込んでは浅く引く───そんな動きを繰り返しながらかなえのソコに  
指を埋め込んだ。  
 
「んんっ…」  
「指一本でもきついでしょう…」  
 
埋め込んだ指を何度も抜き差しすると、かなえのソコからどんどん蜜があふれてくる。  
静かな部屋に淫靡な水音が響き始めた。  
辻原はかなえの手を取り、自分の股間にあてるとおもむろに言った。  
 
「これを入れるときはね、指で慣らして、しっかり濡らしてからじゃないとだめなんです」  
 
そして「ほら」と、かなえの中から指を抜き、愛液に濡れたそれを見せた。  
恥ずかしさに目をそらすかなえに、辻原はなおも言う。  
 
「けっこう怒ってるんですよ、オレも痛かったんで。デリケートなものなんです、わかりますか?」  
「───ごめ…ごめんなさい…」  
「寝た子を起こしたんだから責任とってくださいね」  
 
そう言うが早いか、辻原はかなえを抱え上げベットに横たえた。  
そしてそのままかなえを組み敷くと、メガネをはずしサイドテーブルに置く。  
メガネのフレームがテーブルにあたってカチリと鳴った───それが合図だ。  
かなえの下唇を自分の唇で挟んで軽く力を入れる。柔らかな感触を楽しむように何度もついばむと  
かなえの口から甘い吐息が漏れ出した。  
辻原はうっすらと開いた唇に舌を滑り込ませる。  
深く、深く口付けてかなえの舌に自分の舌をからませ口腔を蹂躙していく。  
うまく呼吸が出来ないでいるかなえの為に、幾度か唇を離し、その度に角度を変えて  
激しくむさぼった。  
 
「脱がせますよ」  
 
かなえのカットソーの裾を掴み、万歳をさせるように引き抜く。  
片手でかなえの体を抱きしめるよう軽く持ち上げ、胸を反らせると、もう片方の手でブラのホックをはずした。  
窮屈な締め付けから開放された乳房がカップからこぼれる。  
辻原が慣れた手つきでブラを引き抜くと、桜色の突起が顔を出した。  
真っ白な双丘ツンと上を向いた蕾───  
今にも口に含みたい気持ちをこらえ、尖らせた舌で乳輪をなぞる。  
かなえの口から「あっ…ん…」と短い喘ぎが出るが、辻原は少し焦らした。  
 
「もうこんなに硬くして…かなえさんて案外いやらしいんですね」  
 
言葉で責めると、かなえがいやいやと首を振る。  
その隙を突くように辻原は硬く尖った蕾を口に含んだ。  
 
「───!!」  
 
かなえの声にならない喘ぎが漏れる。  
散々焦らされた後の強い刺激。  
片方の蕾を舌で転がしながら、もう片方の手で反対側を摘み上げる。  
 
「あっ…はぁ…いやぁ…」  
「───イヤじゃなくて…こう言うときはイイって言うんですよ」  
 
意地が悪い。  
自分でもそう思う辻原だが、この人にはこれくらいのほうがいい。  
軽くお仕置きをするような気分だ。  
辻原は散々この感度のいい尖端を指と舌で責めた後、スカートのホックに手をかけた。  
 
すでに下着はつけていない。  
自分で脱ぎ捨ててしまったのだから。  
ホックをはずしたスカートを引き摺り下ろすと、かなえはもう身を隠すものが一枚もない事に気付き  
あわてて身をよじった。  
そのしぐさが可愛らしい───  
 
「綺麗ですよ」  
 
そう呟くと、辻原も上着、ネクタイと服を脱いで行った。  
全ての服を脱ぎ終え、かなえの体に覆いかぶさる。  
地肌に触れるかなえの滑らかな肌が心地よい。  
楽しむ余裕のないかなえは、ただただぎゅっと目を閉じていた。  
それはかなえにとって幸いと言うべきだろう、先ほど自分が挿入しようとしていたものとは比べ物に  
ならないくらい張り詰めたものを見ずに済むのだから。  
辻原は柔らかな体をじっくり堪能すると、かなえの足を割り、体を滑り込ませた。  
しっとりと濡れそぼったソコを指でなぞる。  
 
「っん…あっ」  
 
クレバスにそって、ゆっくり指を上下させ蜜にまみれた指でそっと肉芽を転がす。  
強い刺激にかなえの背が反り返った。  
初めは弱く、次第に強く。  
 
「あっ…ああ…ソコっ…だめぇっ…」  
 
かなえが懇願し始める。  
じゃあこっちはどうですかと言わんばかりに、ヒクつく入り口に指を入れる。  
しっかりと濡れたそこは辻原の指をやすやすと飲み込んだ。  
 
さらに指を増やす。  
くの字にまげた二本の指で、内壁を探るようになぞると「ちょうどいい場所」できゅうっとかなえの  
中が締まった。  
ピンポイントで感じる場所を何度もこすられて、かなえは一段と高い声で喘ぐ。  
 
「そろそろ足りないでしょう?」  
 
辻原は自身をかなえの入り口にあてがい、ぐっと腰を進めた。  
かなえの声にならない呻きが漏れる。  
 
「かなえさん、もっと、力…抜いて…」  
(───締まる…っ)  
 
狭い場所を無理やりこじ開けるように、辻原自身がかなえの中に埋め込まれて行く。  
浅い抜き差しを繰り返しながら最奥まで───  
 
「…はっ…奥まで入りましたよ…辛いですか?」  
 
かなえは口を開かず、ふるふると首を横に振った。  
健気さに、胸が熱くなる。  
いきなり動かしては辛いだろうとしばらくそのままの体制でいた辻原だが、そろそろ限界が  
来そうだ。この、熱く締め付けるかなえの中が誘うかのように辻原を急き立てる。  
 
「動かしますよ…」  
 
出来るだけゆっくりと腰を動かす。  
かなえの顔に苦痛の色が見えるが、そうそうはいたわってやれない───  
 
心地よさに我を忘れそうだ。  
もう、これ以上優しくできそうもない。  
辻原のだんだん激しくなる突き上げに、かなえが肩で息をするように「はっ…はっ」と声を上げた。  
その声が、だんだん艶を帯びてくる。  
かなえの一番感じる所に辻原のくびれた部分が当たり、痛みに慣れるにつれ性感が高まって  
きたのだ。  
盛んに頭を振り乱しながら、せつなく辻原の名を呼ぶ。  
 
「…かなえっ…」  
 
限界が近い。  
辻原は直前で自身を引き抜くと、かなえの白い腹部に欲望を撒き散らした───。  
 
 
身支度を整え、シャワーのコックをひねる。  
 
「今バスタブにお湯を入れてます、少ししたら入って体の疲れを取ってください」  
 
そう言って振り向くと、かなえはなにか言いたそうな顔でこちらを見ていた。  
そして意を決したように口を開く。  
 
「───あの…今日は…ごめんなさい」  
「いえ、それはこっちのセリフです…無理させちゃいましたね」  
「無理なんて…───そうですね、ちょっと辛かったです」  
 
素直な返事だ。  
辻原はふっと笑うと、このどうしょもなく愛しい人に唇を寄せた。  
 
<おわり>  
 

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