こんにちは、國生陽菜です。  
今私の頭の中はある人の事で半分以上を占めているわけでありまして、  
そう・・・、お父さんが行きがけにあんな事を言うから・・・・・・。  
 
「嫁に貰ってほしい」なんていきなりいわれても社長にだって迷惑だし、  
と社長のほうを向くと社長も同じような顔をしてこちらを見ています。  
その顔は真っ赤でした、多分私も同じようなものでしょうけど・・・  
でももし同じ気持ちなら何かつながったみたいで少し嬉しかったりして。  
そこに先代がホントの父親のようなことを言ってきて、  
社長も社長で売り言葉に買い言葉でケンカが始まっちゃって、  
そこに珠さんや(商売敵の)番司さんもはいってきて結局その話はその場で途切れてしまったのですが・・・・・・  
あの日から2、3日過ぎた今でも私の中であのセリフは仕事の時でも授業中でも忘れる事が出来ないくらいのものになっていました。  
 
どうすればいいかわからない私は部活がはじまる前に会長さんにアドバイスをしている天野さんや住さんに相談することにしました。  
「あの・・・天野さん、ちょっとご相談したいことが」  
ゴソゴソと体育着に着替えていた天野さんに尋ねると、  
「あれ〜るなっちが相談なんて珍しいねぇ〜〜、もしかしてくぐっちの事?」  
いきなり核心を突かれて私は  
「えっ!!!、いや、・・あの・・・その・・・・はぃ」  
と、出鼻をくじかれたわけでしたがこないだのいきさつの話すと、  
「へぇ〜、お父さんがねぇ〜〜それでるなっちはくぐっちのことどう思ってるの?」、といわれて  
「社長の事を・・・ですか?」  
そこで頭の中で社長のことを思い出してみます、  
Tシャツ姿の社長、本業のときの社長、辻原さんのことを聞き泣いている社長、  
・・・そしてお父さんにあんなことを言われ真っ赤になっている社長、ここまで考えて私の頬はまた熱くなっていました。  
「あらあら、くぐっちのことを考えただけでそんなになっちゃうってことはやっぱし好きなんじゃないの〜?」  
そんなことをいわれ私は耳まで赤くなってしまい、  
「わた、私は秘書です!!!秘書として社長にそのような感情は・・・」  
「社長と秘書じゃなくてくぐっちとるなっちとして考えたときにるなっちはどうなの?くぐっちのこと嫌い?」  
「いえ!!けっして嫌いということは、・・その・・仕事の時は頼りになりますし、気を使いすぎなくらい優しいですし・・・・、  
たまに色んな事抱えこみすぎちゃって失敗しちゃうこともありますがそこは私がフォローしていけばいいと思ってますし、  
・・・あ、あとあの笑顔は・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっとドキドキするかもです・・・」  
そこまでいうと天野さんはニヤニヤしてこちらを見ていまして、  
「くぐっちも幸せもんだねぇ〜、こんな美人にここまで思われちゃって」、  
「だ、だから・・・」  
先程言ったことを思い出して再び真っ赤になっていると、話題の中心の人が隣の男子ロッカーに入ってきました。  
「ち〜〜す」  
「おせーぞ我聞!」  
「悪い悪い、クラスの花に水あげててさぁ」  
 
このタイミングで社長の声を聞いた私は、  
「っ!!!すみません天野さん、先行ってます!」  
と、今まで1番赤くなって素早くロッカーを出て卓球場へと向かっていきました。  
天野一人になったロッカーにクラスの仕事が終わった住がはいってきて、  
「國生さん真っ赤になって走ってったけどなんかあったの?」  
「ん〜〜種がようやく芽をだしたっていえばわかる?」  
「ああ〜、やっとね」  
と、なにもかも悟った二人のニヤついた笑い声が女子ロッカーに広がっていった。  
 
 
それから部活が始まり、  
私は何事もなかったように振る舞ってました。(なるべく社長の方は見ないように)  
天野さんと住さんの視線を背中に激しく感じながらも向こうから返ってくる  
ピンポン玉を打ち返していると、3台ほど離れた所で・・・  
『我聞ダイナマイトッ!!』  
『甘いわ、佐々木☆スペシウム!!!』  
などとムキになって必殺技?を繰り出している社長の声がして、  
思わずそっちの方を向いてしまったので返ってきた玉を空振ってしまいました。  
 
(何やってんだろ・・・)  
玉を拾いに後ろを向かうと、  
そこにはニヤついた笑顔の天野さん達が玉を拾って渡してきてくれて・・・  
『はい』  
『・・あ、ありがとうございます』  
『部活中に卓球以外のものに熱中しすぎないようにね』  
『べ、別に社長を見たから空振ったわけじゃありません!!』  
『へぇ〜くぐっちをねぇ、私一言もくぐっちの事とはいってないんだけどなぁ』  
『うっ・・それは・・・その』  
これ以上喋っても墓穴を掘るだけだと悟り、黙って台へと戻ることにしました。  
この後も何度か空振りをして、そのたびに天野さん達からおかしな視線を  
浴びながらも、部活の終わりの時間が近づいてきました。  
部活が終わったら皆さんと少し時間を潰し、仕事に行く、  
いつもと変わらない日常のはずでしたが今日はいつもと変わっていました。  
 
しゃ、社長が本業のときの様な顔で私に近づいてきたんです!!  
 
 
『あのさ国生さん、その・・・こ、この後時間あるかな?』  
『えっ、あ・・・さ、30分程でしたら』  
『そっか、んじゃ校門の所で待ってるから』  
といって社長はそそくさと行ってしまいました。  
 
『・・・・・・・・・・・・・・・・え?』  
『テンチョ〜、一名様御指名頂きました〜〜』  
『ちょっ、天野さん!!』  
『止めなよ恵〜(笑)』  
『なんでよ〜、くぐっちのあの感じはもう告白しかないっしょ!!!』  
その言葉を聞いた途端私の頭は天野さんを怒るどころでは無くなってしまって・・・  
(しゃ、社長が・・私に・・・?、そんなことあるわけ・・・・・・・・・)  
『ところでいいのかな〜るなっち?、くぐっち待たしちゃって』  
『え、あっ・・・しし、失礼します!!』  
『ふふっ、あんなに慌てちゃって、ほんっとわかりやすいんだから』  
『でも実際工具楽くん何の用事かな?』  
『さぁ〜、まぁくぐっちの事だからたいしたことじゃないんだろうけど  
今のるなっちには効果てきめんだったからなんか起こったりしてね。  
明日問い詰めて全てを吐かせてやるわ〜!!』  
『・・ほどほどにね』  
 
 
ロッカーへ戻りいつもより念入りに身支度を済ませ、私は社長の待つ校門へ急いで向かいました。  
そこには、こちらに気がついて笑顔を向けてくる誰かさんがいるわけでありまして、  
私はそれだけの事で何故かうれしくなって社長の方へ走りました。  
『ハァ・・ハァ・・・お、お待たせしました』  
『あ、ああ。そんなに急がなくても良かったのに。』  
『いえ、社長を待たさせるわけにはいきませんので、それでごしめ、私に何の御用でしょうか?』  
『うん、あの・・・その・・・そ、その前に少し歩こうか』  
『はぁ・・・構いませんが』  
 
それから会社の方に向かって歩きだしましたが、会話は続かず、社長も何故あん  
なことを言ったのかいっこうに教えてくれません。  
そろそろ本題を聞き出そうと、隣にいる社長の顔を見上げる(無意識な上目使い)と、  
社長は珍しく考え事をしているみたいで、そんな社長の顔をあまり見たことがなかったので  
新しい社長の一面を見れたような気がして少し嬉しくて微笑んでいると、  
『ん?どうした国生さん』  
『いえ、別に。ところで社長、そろそろ本題の方を教えていただいても・・・』  
『ん、ああ、それじゃあそこの公園で』  
と言って、歩いていた土手の下にある小さな公園を指差しました。  
下に向かう途中で、先程の天野さんの台詞が急に頭に浮かんできて・・・、  
『くぐっちのあの感じはもう告白しかないっしょ!!!』  
告白・・・もしホントにそうだとしたら・・・私は・・・・・・  
降りる階段が少なくなっていくにつれて、私の心臓は高鳴り続けていきました。  
 
公園の真ん中、大きな滑り台があるその前で社長が振り返ってきました。  
その顔は私に近づいてきたのと同じ、本業のときような真剣な顔でした。  
私はもう社長のセリフを自分の中で決めつけていました。  
サ行の3番目、カ行の2番目、その2文字の言葉を心待ちにしている自分に嫌気がさしながらも、  
待ってないのかといわれると否定しきれない自分がいる。  
だから次の社長の言葉を聞いた瞬間・・・・  
 
『こないだおっちゃんにあんな事いわれて国生さん迷惑だったよな・・・忘れてくれ』  
『・・・・・・え?』  
体中の血が冷えていくのがわかった。  
メイワク?社長にとってあれは迷惑だったの?私には何日たっても忘れられない  
事なのに・・・・・・迷惑。  
視界が歪む、社長の顔が見えなくなる、胸が痛い、ここに居たくない、  
社長にこんな顔見られたくない、涙が止まらない・・・・・  
私は・・私は・・・・・、  
『私は・・・嬉しかった・・のに・・・・』  
 
私は走って逃げた。  
有り得ない幻想を抱いていた自分から、  
『社長にとって迷惑』という認めたくない現実から、  
そしてなによりそんな幻想を抱かせた社長から、  
このまま会社にいって何にもなかったような振りをしよう。  
今まで通り社長と秘書でいよう。私はこれ以上の事を望んではいけなかったんだ・・・・・・  
 
 
 
不意に私の腕を何かが掴み、そしてそのまま何かに抱かれた。体中がぬくもりで包まれる。  
私はこのぬくもりを知っている・・・  
辻原さんがいなくなった日、私はこのぬくもりと指切りをした、  
私はこの人を支えたいと思った、家族として・・そして、今は・・・・・・  
 
 
『社長・・・』  
『待ってくれ国生さん!!』  
『離してください!!何を待てっていうんですか。  
お父さんにあんな事いわれて、社長は迷惑だったんでしょう!?  
私の事なんて嫌いなんでしょう!?』  
『そんなわけ無いだろ!!!』  
『え・・・』  
『国生さんの事嫌いなわけないだろ!?、迷惑なわけないだろ!?  
俺だって嬉しかったよ、でも国生さんも嬉しいなんてそんなことあるわけないって、  
有り得ないってずっと思ってて・・・  
今日国生さんに言ってすっきりしよう、何にもなかったようにしようと思って・・・・  
でも国生さんが言ってくれたから・・嬉しかったって言ってくれたから・・・、  
自分の気持ちを素直に言おうと思った。国生さん、君が好きだ!!!』  
 
体中の血が聞く前のように熱くなるのがわかった。  
また涙が出てきた。  
さっきとは違う、悲しくて出たのとは違う・・・嬉し・・涙。  
『私ずっと悩んでたんですよ・・・』  
『・・ゴメン』  
『迷惑だよななんて言われて、すっごく悲しかったんですよ!!』  
口ではそういいながら私は腕を社長の背中にまわして、  
『・・・スマン』  
社長も私を強く抱いてくれて・・・、でも涙は止まらなくて、  
『でも・・・でも社長も嬉しかったってわかって、私のこと好きって言ってくれ  
て、今はすっごく幸せです。私、私も社長のことが好きです。』  
社長は何も言わず先程よりも強く抱いてくれました。  
少し痛くて苦しいけど、その痛みも好きな人にやられるのは幸せに感じられてしまうわけで・・、  
『社長・・・』  
『国生さん・・・』  
社長の腕の中で私達の距離はゼロからマイナスへと変わっていきました・・・・・・  
 
 
『そろそろ仕事に遅れちゃうから行こうか』  
『はい・・・・・』  
 
どれくらいそうしていたでしょうか、私は社長の腕の中から離れ、  
降りてきた階段を上り始めました。  
・・・もちろん手は繋いだまま・・・  
 
土手の道へと戻り、私達はまた歩き出しました。  
ここに来るまでのようにあまり会話はありませんでしたが、  
私の心の中からは不安は消え、そのかわり幸せがパンクしそうなほど溢れていました。  
そんな私の幸せが社長のほうにも漏れたのか、  
社長は手を繋いだまま少し肩があたるくらい近づいてきて・・・  
私はその逞しい肩に頭を預け、社長のトクトクと動く心臓の音を愛おしく感じていました。  
 
 
『寒くない?』  
『大丈夫です、ここはどこよりもあったかいから・・』  
『そう?俺はまだ寒いな・・・』  
『えっ?』  
そういって社長は繋いでた手を離してしまいました。  
それだけで私の身体は芯まで冷えたようになってしまって・・・・・  
でも次の瞬間、私達の身体は先程よりもずっと暖かくなりました。  
 
『あっ・・』  
社長が離した手を私の肩に乗せて、私を自分の方へと引き寄せてきたんです。  
手を繋いでたときよりは多少歩きにくいですが、  
そんなこと気にもなりませんでした。  
『これならもっと暖かいでしょ?』  
『はい・・・』  
 
また涙が出そうになりました。こんなに幸せになっていいのでしょうか?  
・・・ちょっと自分に言い訳、私は今までお父さんがいなくなったりして悲しんだから・・  
これはそのご褒美、一人で頑張ってきたご褒美、でも・・もう一人じゃないから・・・。  
『・・・・・・さん。』  
 
そんな神様からのご褒美ももう終わりです・・、会社が見えてきちゃいました。  
はじめて仕事があることが嫌だと感じました。  
先代にもらった大切なお仕事なのに・・・  
今の私にはそれよりも大切なものができちゃったみたいです、すいません先代・・・。  
『・・・・・生さん!』  
でも、先代の家族も・・私も幸せになるんだからいいですよね?  
などと、心の中で葛藤を繰り広げていた私には私達以外の人が近づいていたのに  
気付くのが遅れてしまって・・・  
『国生さん!!』  
『あ・・はい!、何でしょう社長?』  
『だから・・前・・・』  
『え?』  
社長のほうから前方へと顔を戻すと、そこにはよく知る人物が立っていて・・・  
 
『ゆ・・優さん・・・』  
『二人ともそんなくっついちゃってラブラブだね〜、優さん火傷しちゃうよ〜(笑)』  
その言葉で一瞬にして私達は身体を離して距離をとります。  
『ち、違いますよ優さん!!、俺たちは別に・・』  
『え〜?、何が違うのかなぁ〜?』  
そう・・今まではそう否定して皆さんからの追撃を逃れてきた。でも・・今は・  
・・、ちゃんとわかりあった今は・・・・・  
 
 
 
『いや、ホント何も』  
ん?、誰かが服の裾を引っ張ってくる。なんだろうとそっちを向くと俺の好きな人が・・・  
今にも泣きそうな瞳で俺をじっと見てくる。  
その瞳から国生さんが何を言いたいのか、すぐに理解した。  
(ホントに・・・違うんですか?)  
ひ、卑怯だ国生さん・・・、そんな瞳で見られたら断れるわけないじゃないか!!  
『あれあれ〜どうしたのかな我聞君?、違うんじゃなかったの〜?』  
『いや・・その・・・ち、違くないです』  
その途端国生さんの顔はこれでもかというくらい明るくなって・・  
優さんの前だというのに俺の手を掴んできた・・・  
 
『だよねぇ〜、なんてったって陽菜ちゃんのほうはもう我聞君にメロメロだもん  
ねぇ〜』  
私は否定もせず、ただ真っ赤になって俯いていた・・・、もちろん社長の手は放さない。  
『さぁ〜てこんなおもし、幸せな出来事はみんなにひろめないとね〜  
中乃井さん、辻原くん、果歩ちゃんにかなちんも。桃子ちゃんにも勝利宣言いれとく?  
あぁ、お出かけ中の二人にも知らせないとね、陽菜ちゃんパパは大喜びだわね(笑)、ウフフ』  
 
 
俯いているどころでは無くなりました、  
そんないきなりひろめられるなんて・・・恥ずかし過ぎます!!  
 
 
なんで桃子が!?  
い、いや、そんな場合じゃない!!親父に知れたら本気で収束爆砕を出しかねん!?  
 
 
           『『や、やめてくださ〜い!!!』』  
 
 
              解体業者[工具楽屋]  
                勤務評価報告書  
 
 
                おおむね良し  
 
 
 
                   終  
 
 
 

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