そして時刻はお昼を回り―――
「うわ、随分たくさんあるわね〜」
重箱やらタッパーやら、次々と取り出されては開かれてゆく大量のお弁当を前に、
桃子が思わず感嘆の声を漏らす。
「はい、今日は大人数ですし、果歩さんと頑張ってみました!
ね、果歩さん・・・果歩さん?」
「え? あ、ああ! ほんと、ただでさえ人数がいる上に食べ盛りが多いですからね〜!
陽菜さんが手伝ってくれて助かりました!」
「いえ、果歩さんの手際のよさは本当に凄かったです・・・けど、どうかされたのですか?」
「い、いえ! 別に何もありませんよ!?」
「はぁ・・・」
「そ、それより、準備もできましたし、お弁当たべましょ!」
「「いっただきま―――すっ!」」
妙にそわそわしている果歩の様子が、陽菜には少し気になったが・・・
「あー! こら珠! 斗馬も! 沢山あるんだから慌てない!」
「むぐ・・・ふぁい!」
「もご、んぐ、いぇっさー!」
「もー、お兄ちゃんもなんか言ってやってよ!」
「む? ふぉ、ほうだな、珠、斗馬、んぐ・・・」
「社長も口にモノを入れたまま喋らないでください!」
「むぐ! す、スマン・・・」
食事が始まってしまえば果歩を含めていかにも工具楽家らしいいつも通りの展開で、
陽菜もそんなことはすぐに忘れてしまう。
「あははー、こりゃあ我聞くん、尻に敷かれるのはもう確定かにゃ〜♪」
「な!?」「んぐ!?」
一見、珠や斗馬と競り合うようにお弁当に集中している様子だった優から不意の茶々を入れられて、
「何を言うんですか、そんな、別に私達―――」
「むぐ、ほ、ふぉうれふよ、優さ・・・っぐ!? む! んぐ・・・!」
「しゃ、社長!? えぇと、これどうぞ、お茶です!」
「むぐ・・・んぐ、んぐ――――――ぷはぁっ! た、助かったよ國生さん、はぁ・・・」
「もう、だから食べながら喋らないでくださいって・・・」
「う・・・面目ない・・・」
微妙に顔を赤くしながらお小言を言う陽菜に、やはり顔を赤くした我聞が済まなそうに謝る。
いつもならここに優か果歩からの更なる追い討ちがかかるのだが、
どうやら今回は見逃して貰えたようで二人は安心して顔を上げ―――
「・・・って優さん何してるんですか!」
もぐもぐと休み無く口を動かしつつ、片手に構えたカメラで二人の様子をしっかり録っている優に今更気付く。
「んぐんぐ・・・っく、いやーほら、折角みんなで遊びにきてるんだし、
記念に映像を記録しておこうと思ったんだけど、なんか録られちゃマズいことでもあったかにゃ〜?」
「い、いえ・・・そういうワケでは・・・」
「だよね〜♪ じゃあこっちのことは気にしないで我聞くんも陽菜ちゃんも食べた食べた〜♪」
「は、はぁ・・・」
そうしてカメラを向けられたまま、二人はさも恥ずかしそうに顔を赤らめながら食事を再開する。
武文が例の爆弾発言を残して旅立ってからそろそろ一年。
その手のネタでからかわれては赤面して恥ずかしがるところは、この二人とも全く変わっていないのだ。
「なぁ、結局カメラは奪えなかったんだな」
そんな二人を苦い顔で見つめながら、番司は隣に座る果歩に低い声で話しかける。
「ん・・・仕方ないでしょ、優さんに追いつくだけなら余裕だけど、流石に蹴るワケにもいかないしさ」
「なんだ、その辺の良識は一応あるんだな」
「んな!? 人を何だと思ってるのよ! 私が実力行使に出るのはウチの家族とあとはアンタくらいよ!」
「いや、俺も蹴るな」
「別にいいじゃない、アンタも凄く頑丈なんだし」
「頑丈ならいいってモンじゃねーよ!
それに何だ、その、オマエの蹴りは、色々と問題が、だな・・・」
「う・・・だ、大丈夫よ! これからはちゃんと飛び蹴りとハイキック系は控えるから!」
「そういう問題じゃねー!」
そう叫びながら、番司は半ばやれやれという感じで二つ目のオニギリに手を伸ばそうとして・・・
「な、何こっち録ってるんすか!?」
我聞と陽菜に集中しているとばかり思っていた優のカメラはいつの間にやら番司と果歩に向けられていて、
「な!? ゆ、優さん!?
―――って、なんでみんなしてこっち見てるんですかっ!」
そればかりか桃子も我聞も陽菜も、なんとなく意外そうな顔つきで二人のことを見ているのだ。
「いや、ね・・・アンタ達、なんか雰囲気変わってない?」
「なんだそりゃ!? 別に何も変わってねーよ! なぁ?」
「そうよ! 大体何がどう変わったって言うのよ!」
二人とも、橋での一件以外には別に何も心あたりがある訳ではなく、
今言われていることはそれとは全く関係ないハズなのだが・・・何故か妙な緊張を覚えてしまう。
「何がどう、というとなぁ・・・んーむ」
「そうですねぇ・・・」
そんな果歩と番司を交互に見やりつつ、
「仲が良いのは前からだったが、何というか・・・」
「はい、もう少し・・・」
我聞と陽菜はさも当然のようにそんなことをサラリと言い放つ。
「ちょっ、お兄ちゃん!? いつ私が番司なんかと仲良くしてたって言うのよ!」
「陽菜さんもそこで納得しないでください! 誰がコイツなんかと!」
果歩や番司だけでなく、流石にそこは桃子も優も我聞たちに突っ込みかけるが、
すぐにそのままの方が面白そうだと判断し、ニヤニヤしながら当面は様子見に回る。
「いやでも、しょっちゅうじゃれあってると言うか」
「はい、親しいからこそ出来ることでしょうし・・・」
「「いやそこはホント違いますっ!」」
そんなズレまくった認識を共有する二人に、果歩と番司が慌てて否定の声を上げるが、
それは半分照れ隠し、そして半分は素のツッコミ。
これが優の発言なら、自分たちをからかっているとわかるのだが、
我聞と陽菜の場合・・・本気でそう思っているからある意味余計にタチが悪いのだ。
「アレは普通に攻撃してるだけよ! 番司は常に邪魔ものでしかないんだから!」
「そうだぞ! 俺はいつも一方的に蹴られ・・・って何が邪魔者だテメェ!」
「邪魔なモノは邪魔なのよ! いい加減アンタが入り込む余地が無いことくらい察しなさいっての!」
「それでスパッと諦めてもっと私を見て?」
「そうそうそれで――――――って違うわ―――!
桃子アンタ! ドサクサに紛れて何てこと言わそうとしてんのよ!?」
「えー、いいじゃん別に、なかなかお似合いかもしれないわよ?
ねー、ユウ?」
「そうだねぇ、なかなか悪くないかもしれないかな〜♪」
「ちょ! 優さんまで何言ってるんですかっ!」
我聞と陽菜の見当違いな発言が元で唐突に予期せぬ展開にもつれこんでしまい、
果歩も番司も今度は何を言われるのかと気が気ではない。
そんななか、場を混乱に陥れた二人はというと―――
「むぅ、仲が良いとは思ってはいたが・・・果歩もそういう歳になっていたか・・・」
「社長も兄として複雑な気分になられたりするのですか?」
「むぅ、番司なら任せられるような気もするが・・・
む・・・・・・ん? この玉子焼きは國生さんが?」
「あ、はい、わかりますか?」
「ああ、果歩が作るのより甘さが控え目で・・・うん、ウマイよ!
これなら幾らでもたべられそうだ!」
「本当ですか!? よかった、社長のお口にあって・・・沢山ありますから、どんどん食べてくださいね」
「よっしゃ、任せておけ!」
と・・・果歩も番司もそっちのけで、いい雰囲気になったりしているのだった。
そんなこんなで慌しい昼食も終わり―――
「はー、なんか散々だったわね・・・」
「ああ・・・ったく、ヒトをネタにしやがってよ」
「なんとなくだけど、少しだけお兄ちゃん達の気持ちがわかった気がするわ・・・」
「工具楽と言やぁ、とんでもねぇこと言うだけ言っておいて、陽菜さんとああもベタベタと・・・
ぐ・・・思い出したらまたムカついてきた・・・あの野郎・・・」
「まったくねぇ、折角お兄ちゃんと陽菜さんがあんないい感じになってたっていうのに、
優さんったらカメラを向ける気配すら見せないんだから・・・はー・・・」
微妙に話が食い違っていても互いに突っ込む気力も無く、
二人は晴れた遊園地の午後に似合わぬ疲労感を漂わせつつふらふらと歩く。
「アンタ達、せっかく遊びに来てるってのにもうちょっと景気良くいかないモノなの?
なんかこっちまでげんなりしてきちゃうんだけど〜」
「う、うるさいわね・・・アンタがあれだけ根も葉もないくっだらないコトをまくし立てるもんだから、
なんかもう疲れちゃって・・・」
「大体午前中からして優さんに振り回されっぱなしだったしな・・・
あの池の件、どう考えてもあの人の仕業だろ・・・」
「そうね・・・なんかもう、してやられたわ・・・」
見かねた桃子がチクリと棘を刺したところで、二人のテンションが上がる気配は全く無い。
普段、我聞と陽菜の件では果歩にやりこめられることの多かった桃子としては、
ここぞとばかりに果歩を弄り回す良い機会だったのだが、
それも楽しいのは相手のレスポンスがあってこそ。
こうもげんなりされてしまっては弄り甲斐も薄れてしまう。
「はぁ・・・なんかこっちまで調子狂いそうだわ、ホント。
アンタ達、少し休んでたら? タマとトウマは私が面倒見といてあげるからさ」
「ん・・・そう? じゃあそうね・・・悪いけど、そうさせて貰おうかしら・・・珠、斗馬、いい?
桃子になら多少迷惑かけても構わないけど、他のお客さんの迷惑にはならないようにしなさいね?」
「「らじゃ〜!」」
「いやちょっと待ちなさい」
「それじゃ俺も少し休ませて貰うとするわ、なんつーかしばらくぼんやりしてぇ・・・」
「・・・まぁいいわ、突っ込むだけ無駄そうだし。
とりあえずこっちは適当に遊んでくるから、ま、二人っきりでごゆっくり〜♪」
「「んなっ!?」」
突っ込む甲斐も無いくらいに投げやりな二人に多少の不満を覚えつつも、
最後にはしっかりと言うことを言って、桃子はにニヤリと薄ら笑いを浮かべながら・・・
「じゃあタマ、トウマ、いくわよ〜!」
「「おお〜!」」
二人が何かを言い返す間もなく一気に走り去ってしまう。
そんな桃子に慌てて何か反論しようとした果歩と番司も、
頭に浮かぶ文句はどれもこれもお弁当の最中に飽きるほど口にした言葉ばかりで今更叫ぶ気にもなれず・・・
「・・・・・・あ―――、いいやもう・・・」
「あぁ、なんつーか・・・いちいち叫ぶのも疲れるぜ・・・ったく」
「とりあえず、座りましょ」
「あぁ、そうだな」
やれやれ、と溜息をついて空いている手近なベンチに腰をかける。
「はぁ・・・ホント参ったわ・・・
しょっちゅうこんなのに耐えてるんだから、お兄ちゃんも陽菜さんもタフだわ、全く」
「まぁなんだ、あの二人はそれなりに根拠があるっつーか、そういう雰囲気があるからいいんだろーけどよ、
流石に俺達みたいに薮蛇が過ぎるともう、どうにもなんねーっつーかなぁ」
果歩の愚痴を受けて、番司も同じ調子で心情を吐露する。
その台詞を、適当な相槌で流そうとした果歩だったが、ふっと思いとどまり、考え直し、そして・・・・・・
「・・・へぇ?」
「あん? なんだよ?」
「いやぁ・・・アンタもお兄ちゃんと陽菜さんに“そういう雰囲気”があるのは認めてるんだな〜って」
ニヤリと笑う果歩に番司は“しまった”という顔をして何か言おうとするが、
それも面倒になってしまったのか、
「まぁ、流石になぁ・・・その辺、認めねー訳にはいかねーよ」
「・・・・・・アンタ」
「あん?」
「やっぱり風邪ひいたんじゃ・・・」
思わず番司の額に手を当てる果歩。
「い、いやだからそんなにヤワじゃねーよ!
認めたってのはあくまで現状を正確に把握してるってだけのことだ!
誰も諦めたなんて言っちゃいねー!」
「・・・ちっ」
「・・・てめ・・・」
舌打ちする果歩に食ってかかろうかとも思った番司だったが、
「・・・はぁ」
なんかもう本気で疲れてきて、まぁあいや、と流してしまう。
そんな番司に拍子抜けしつつも、果歩も果歩で疲れていることには変わりなく、
「まぁいいや・・・もう今日は一時休戦ってことにしましょ」
「あぁ、ありがてぇ」
お互いになんとなく投げやりな感じに休戦協定を結び、やれやれともう一度溜め息をついてみたりする。
「はー、今頃お兄ちゃんと陽菜さん、上手くやってるかなぁ」
「さぁな・・・考えたかねーけど、優さんに良いようにイジられてんじゃねーか?」
「そうよねー・・・一応本来の目的は優さんと辻原さんをイイ感じにするのことだけど・・・
あの二人が何か気の利いたことが出来るとも思えないし、
かといって優さん達が影響されちゃうくらいラブラブな雰囲気にはならないだろうしなー・・・」
「まぁ気の利いたことはムリだろうけどよ、あの二人にも策は授けてあるんだろ?」
「まぁね、でもその作戦、時間的な条件があってねー」
「時間?」
「ん。 夕方になるまで待たなきゃならなくてねー」
「夕方ってーと・・・」
番司は丁度正面にある時計を見上げ・・・
「あと2時間・・・半てとこか。
そこそこあるけどよ、別に間がもたなくなる程じゃないだろ?」
「う〜ん、それは心配ないんだけど・・・それまでヒマだなー、って」
「なんだ、そーいうことか」
さも何でも無さそうに、番司はそんな言葉を口にする。
「む・・・そんなことって言うけどね・・・
お兄ちゃんと陽菜さん達ならともかく、私とアンタで2時間半も間が持つと思うワケ?」
「んな難しく考えるなよ・・・折角遊園地に来てるんだぜ?
オマエは何か乗りたいモノとか無いのかよ?」
「へ・・・?」
そんな極々当たり前の質問に、果歩は何がそんなに、というくらいに意外な顔をする。
「・・・なぁ、どうしたんだオマエ?」
「え・・・あ、あぁ、うん・・・そういえば、全然考えていなかったなぁ・・・って・・・」
「は?」
「だ、だって! 優さんと辻原さんをくっつけなきゃいけない上に、お兄ちゃんと陽菜さんのこともあるのよ!?
自分のことを考える予定なんて・・・!」
番司としては特に後者について色々言いたいこともあるのだが、
そこを突付くとまたしても不毛な口論に陥ることは目に見えていて・・・
「ま、まぁ、わかったよ・・・けどそれも今日はもうお役御免、だろ?
折角の機会なんだしよ、楽しんで行ったらどうだ?」
年長者としての体裁、というよりはこれまでのドタバタに疲れてしまっているせいで、
コトを荒立たせないように振舞う番司に果歩は妙な違和感を覚えてしまうのだが、
「う・・・そ、そうね・・・じゃあ・・・」
同様に疲れている果歩としては番司に甘えてしまうようで少し悔しいが、今はもう優たちもおらず、
流石にこのコトで後日冷やかされることもないだろう、と思うと気も楽になって、
つい思ったままの言葉を出してしまう。
「め・・・メリーゴーランド・・・とか・・・」
「・・・は?」
番司としては、別に果歩が何を言うか予想していた訳ではない。
・・・が、余りにもイメージと違う発言に、思わず素で聴き返してしまう。
「わ、悪い!? 私がメリーゴーランドとか乗りたがるの!?」
「い、いや・・・別に悪かねーけどよ・・・なんつーか・・・」
「似合わないって言いたいの?」
「・・・まぁな」
コトを荒立てたくもないが、かといって必死でフォローする気力があるワケでもなく、
結局そう答えるしかない番司。
一方の果歩も、
「わ、わかってるわよ! アンタが私に抱いてるイメージとかけ離れすぎてるってことくらい!
だけどね! 昔お父さんが遊園地に連れてきてくれたことも何度かあったんだけど、あのお父さんよ!?
もともと絶叫系ばっかり乗りたがるし、
それ以外でもカートに乗れば車体が凹むまで体当たり合戦するし、
コーヒーカップに乗れば空飛んじゃうんじゃないかって思うくらいに全力で回転させるし!
こーいうゆったりとした、女の子らしい乗り物に乗れたことないんだから!」
体裁を取り繕う気力も無く、ただただ思ったままを口にする。
「そ、そうか・・・そりゃあ大変だったな・・・」
番司もまた、そんな果歩の彼女なりに辛かったらしい過去を否定する気力は無く、
「じゃあ、メリーゴーランドでも何でもいいから、好きなだけ乗ってこいよ、
俺はこの辺でテキトーに時間潰してるからよ・・・」
この話はこれで仕舞い、とばかりに振舞う。
だが・・・
「は? 何言ってるのよ、番司も乗るのよ」
「・・・は?」
「は? じゃないわよ! アンタまさか、女の子を独りでアトラクションの順番待ちの列に並ばそう、
なんて思ってるんじゃないでしょうね!?」
「い、いや待て! ちょっと考えてみろ! 俺だぞ!? 俺がメリーゴーランドって・・・」
好きでしている格好とは言え、学ランにバンダナでメリーゴーランドは・・・いくらなんでも有り得ない。
・・・と番司は思うのだが、
「そんなの私の知ったことじゃないわよ! っていうかアンタこそ考えなさいよ!
こんな遊園地の家族とかカップルで賑わってる列の中、独りで並ぶってどれだけ恥ずかしいと思ってるの!?」
「いやそれこそ俺の知ったことじゃ・・・」
「知っときなさいっ!」
果歩はそんな番司の訴えなど、一蹴して、
「それに・・・そうね、アンタがどんな顔でメリーゴーランドに乗るのか、
ちょっと興味も出てきたし・・・じゃ、行ってみよっか〜♪」
「お、おい!? ちょ、ちょっと待てって、おいっ!」
「あら、アンタが言い出したんでしょ? 好きなモノに乗れって。
ま・さ・か、そんな風に言っておいて、年下の女の子を独りで行かせるなんて・・・しないわよね〜?」
「て・・・てめぇ・・・」
「じゃ、行きましょ〜、番司さん♪」
「だーやめろっ! 行ってやるから! 冗談でもそーいう呼び方すんなっ!」
「あははっ! うん、私も自分で言っててちょっと辛いからもう言わない」
「た・・・助かるぜ・・・」
番司をからかうことですっかりいつもの調子を取り戻してしまった果歩と、
彼女にいいようにからかわれて完全に疲れきってしまった番司。
今はまだ当人達は欠片ほども思っていないのだが、
近い将来、いい仲になり、
“果歩にすっかり尻に敷かれてしまう番司”という構図が出来上がってしまうのを、このとき・・・
「うーん、バンジったら情けないわねぇ・・・
けどまぁ、この調子でカホがバンジといい感じなってくれれば、私へのちょっかいも減るだろうし・・・
ここは今のところはヒミツにしておいてあげようかしら、ね〜♪」
「ねぇねぇ桃子ねえちゃん、おねえちゃんとパンツマンがどうかしたの?」
「ん〜? いいのよ別に、いつも通りだったでしょ?」
「うんー、そうだけど・・・」
「だからいいの! じゃ、今度こそこっちもこっちで遊びましょ! さぁアンタたち、何に乗りたい?」
「じゃあコーヒーカップがいい!」
「それがしはゴーカートで戦争が・・・」
「う・・・・・・ま、まぁ・・・任せるわ・・・」
なんだかんだで後に果歩の親友となる桃子だけは、
この時点で二人の将来のことも大体お見通しだったりしたのであった。