ここは福岡県某市……の、某居酒屋。こわしや会長、静馬かなえはやさぐれていた。これ以上ないほどやさぐれていた。
オン・ザ・ロックを一気に煽る姿には、壮絶な男らしさと、えも言われぬ不安定さが漂っている。ぶっちゃけ恐い。
「……あの、かなえさんや?」
傍らから怯えを孕んだ声。光の仙術使い、帳紗理来だった。夜なのにサングラスなのは、もはや仕様であろうか。
「なんじゃいノースリーブ」
(……ノースリーブて)
密かに呟き、臍を噛む。完璧にアテが外れた。
“第一次酒で潰してAもBもすっとばしてあわよくばC作戦”には、早くも暗雲が立ちこめていた。
どーでもいいが古いな。AとかBとか。
(……しかし、まさか酒乱とは)
ことの起こりは数時間前。修業を終えた我聞を見送った後、如月雄次郎が、かなえを呑みに誘ったのが始まりだった。