「じゃあね、紅ちゃんオヤスミ〜」  
にこにこしながら、姫が眠りにつく。いつもの通りの、いつもの笑顔。  
いつも、姫は私に笑顔を見せてくれる。たまに、寂しげな顔をなさるがすぐに笑顔をこちらに向けてくれる。  
 
「姫・・・・・」  
そっと、手を伸ばして眠りについた姫の顔に触れる。柔らかい、ふっくらとした頬。  
そのままつっと指を滑らせて可愛らしい桜色の唇に触れる。薄く開かれた、ぷっくりした唇。  
愛しい、自分の主。その声も、顔も、所作も、何もかも。全てが愛しい。  
そのような想いを抱いてはならぬ、いけないのだと心のどこかで誰かが叫ぶ。  
それでも、この方をずっとお守りしたいと思ってしまう。  
この方と、一緒にずっといたいのだと願ってしまう。自分が、願われる立場にあると言うのに。  
 
「姫・・・・・・・」  
身を屈めて頬に口付けを落とす。一瞬、迷ってから体を離す。  
お慕いしております。口の中で呟いて、紅牡丹は眠りについた。  
 
 
自分の選んだワンピースを身につけ、こちらを向いて笑う姫は本当に可愛い、と思う。  
一緒に歩いていると、道行く人々が姫を見て『可愛い』と呟くのが聞こえて自分も嬉しくなる。  
「紅ちゃん、センスいいね、このワンピほんっと可愛くて嬉しい!」  
腕に抱きつくようにして姫が言う。最後の願いを言ってから、前よりも抱きつかれるようになったとは言え、恥ずかしいモノがある。  
 
「次、アレ乗りたい!観覧車!」  
ぐいぐい、と手を引っ張ってそめこははしゃぐ。最初で最後の、『恋人』のデートなんだから、一杯楽しまなくちゃいけないんだ。  
手を繋いで観覧車に乗り込むと、当然のように紅牡丹が隣に座る。  
「姫、随分と歩かれましたがお疲れになっていませんか?」  
「んーん、だいじょーぶだよ。紅ちゃんこそ引っ張り回されて大変でしょ」  
「いえ?姫が喜んで下さるだけで嬉しいですよ」  
にっこりと笑ってそめこの膝の上の手を握る。  
びく、と体が強張る。  
「?」  
その違和感に顔を覗き込むと、泣きそうな、不安そうな、少し潤んだ瞳で紅牡丹を見上げる。  
「あっ、ほっ、ほらっ!夜景がすっごい綺麗だよっ!」  
一瞬の間を置いてそめこが目線を逸らして外を見るが。  
「姫の方が、何倍もお綺麗です。」  
キッパリと言い放つ紅牡丹の一言で体がかたまってしまう。  
ギギ、と音を立てそうな位のぎこちなさで顔を向ける。  
 
紅ちゃ・・・と、言いかけた所で唇がふさがれた。  
 
「まだ、”恋人”なのにしておりませんでした。ココなら、人もおりませんので、その・・・すみません。」  
少しはにかみながら紅牡丹が呟く。  
 
言いながら、姫に目線をやると、最初驚いた顔をしていたのが、とても嬉しそうな顔に変わっていく。  
ぎゅっと抱きついて来る姫。こういう、感情を真っ直ぐに出してくる所が自分には真似できなくて、眩しいのだ。  
「紅ちゃん、大好き!」  
言われる一言に胸が痛む。自分も、お慕いしております、と一言伝えられたらどんなに楽だろうか。  
抱きついたまま、姫がぽつりと言葉を漏らす。  
「ねね、紅ちゃん。観覧車がずっと終点つかなければいいのにね」  
ちょうど、2人の乗った籠は最頂点に差し掛かった所。  
あとは終点に向かって降りて行くだけの観覧車。  
 
2人だけ、の世界が終わりに近づいて行く、と言う事。  
とても、寂しい現実へ戻るという事。  
 
急に、ガクンと籠が揺れて止まり、電気も消えた。  
「な、何!?」  
数分待った所で、籠の中にアナウンスが入り、機器の故障とやらで止まったとの事。  
出来る限り復旧を急ぐが、時間はかかりそうである、そのまま待って欲しいとアナウンスは告げる。  
「紅ちゃんが魔法使って止めてくれちゃったのかと思った〜、故障だったんだね」  
えへへ、と恥ずかしそうに頭をかく姿が可愛らしいと、また不覚にも思ってしまう。  
そんな事を思いながら見つめていると姫が顔を上げて一言。  
「紅ちゃん、もっかいキス、して?」  
目は真剣。こんな時間だから、周りの籠には誰もいない。最頂点、ただ2人きり。  
 
今度は肩に手を添えてそっと口付ける。一瞬唇を離すと、間近で顔を見つめる。  
目を閉じ、唇を薄く開けている姫。この間の夜は眠っていたけれど、今は違う。  
一瞬だけ躊躇って、今度は深く口付けを落とす。  
咥内に優しく進むと、肩に力が入るのがわかる。止めた方が良かっただろうか、と思った時、そめこの両手が紅の背中を包んだ。  
ぎこちなく、2人の舌が絡み合う。言葉に出せない分、想いを伝えるように、伝え合うように、絡まる。  
一瞬だけのような、永遠のような口付けを終えて体を離す。  
 
はふ、と息を漏らすと恥ずかしそうにそめこが微笑む。紅牡丹も、つられて微笑む。  
「ね、紅ちゃん・・・コレだけじゃ、ヤダって言ったら・・・・困っちゃう?」  
上目遣いでいきなりそんな事を言い出す。  
「こ・これだけじゃって、どういう意味ですか?姫」  
「初めて、がこういうトコってのもアリだとそめこ思うのね。だって、ムードはバッチリ!じゃない?  
 ちょっと狭いけど、そういうのあるよって言うコとかいるし、そめこはその、紅ちゃんに、その・・・」  
最後は俯いて耳も首筋も真っ赤になってゴニョゴニョ、とつぶやく。  
「本当に、姫は可愛らしい方ですね。でも、それでは姫がお辛いばかりですし、負担も・・その・・・」  
自分も一緒にゴニョゴニョと。  
膝の上に置いた自分の手の上に。白い手がそえられるのが視界に入る。  
「そめこなら、大丈夫だよ。そめこの、じゃなくって『カノジョ』のお願い、ダメ?」  
ダメ?と言われて断れるモノなら、断っているだろうけれど。  
今まで、過去何度も同じような問答を繰り返してきて、断った事が・・・何度あったか?  
 
魔法で柔らかい敷布を出して、椅子に敷く。  
さすがに横にはなれないので、座ったままで、という苦労を強いる事になったが、本人は嬉しそうである。  
「姫、お辛いようでしたらすぐ言って下さいね?」  
ふふ、と笑ってそめこは首を少し動かすだけで返事はしない。  
 
もう一度、また口付ける。  
ちゅ、ちゅ、と軽く音を立てながら軽くキスを繰り返す。  
時々首筋とかにもキスを軽く落とすと、クスクスと笑う。  
鎖骨の辺りにキスをすると、笑う声に艶が混じる。ペロリ、と舐めると声自体が艶を帯びる。  
ワンピースの肩紐をずらそうとすると、そめこが体を離した。  
「姫?」  
「よごれちゃうから、ちょっとま・・・・・」  
蚊の鳴くような声で呟くと、うなじまで真っ赤にしてうつむく。  
「大丈夫、汚したりなぞいたしません」  
耳元で囁いて、体をそっと抱きしめる。腕の中、体は小さく震えていた。  
 
眼下に広がる綺麗な夜景。窓から入るは星明り。  
その中に、白い肌が浮かび上がる。  
「ほ・・・紅ちゃん、あんまりじーって見ないで〜」  
ワンピースも、ブラも苦戦しつつ脱がせたあと、そのまま見とれていた紅牡丹はハッと我に返る。  
「姫があまりにも可愛らしいので見とれてしまいました・・・申し訳ございません」  
いつものように深々と頭を下げる。当然、目線の高さはそめこの座った足の高さになってしまう。  
初めて見るソコに、思わずまた見入ってしまう。  
視線に気付いたそめこが、恥ずかしがって膝をすりあわせると、その間から水の音がした。  
「姫・・・?」  
顔を上げても、真っ赤になった顔を隠すように両手で覆っているので表情がわからない。  
目線の先にある、胸にふれると、指の間からため息のような甘い声が漏れる。  
ふれるだけではなく、そっと力を込めると更に甘い声が漏れ出す。  
 
手をそっと太ももに這わせると、体がビクっと一瞬強張った。  
「お厭でしたら、止めますが・・・」  
声で答えず、首を横に振る。つまり、厭ではない、という事。  
そのまま、気配を気にしつつ太ももをさするように手を滑らせていく。  
付け根まで行くとその周りをゆっくりと撫でさする。  
「ん・・・っ」  
ゆっくり、ゆっくりと撫でるうちに、そめこの体全体から力が抜けて行く。  
閉じられていた脚も、力が抜けて隙間が出来ていく。  
そっとその間に手を差し入れるとそれだけで『くちゅ』という水音。  
限りなく狭い隙間に手を入れてギリギリの所から指でソコに触れる。クッと動かすと、体が敏感に反応して動く。  
声を出さないのは、恥ずかしいからだろうか。  
「姫、我慢なさらずに声をお出しいただいても・・」  
「やぁ・・恥ずかしいもん・・んっ」  
言っている途中で指を動かすと、水音と一緒に甘い声が漏れる。  
真っ赤になった顔で見下ろす瞳は”ズルイ”と言っているのが良くわかる。  
ズルくてもいい。姫の、このような表情を見る事ができるのは、今、ココにいる私だけなのだ。  
今、ここにいて姫が望む限り、姫が望む事をして差し上げる。それが自分の望む事でもあるから。  
 
少し力を強めて、指先に当たる小さな部分を突っ突く。  
「んんっ!」  
いつの間にか肩に置かれていた細い指先に力を込め、背中を仰け反らせてくぐもった声を出す。  
「姫、どうかもう少しだけ、隙間を開けていただけませんか?」  
はぁはぁと口で息を荒くつく姿を見ながらそう伝えると、とまどいながら少しだけ足を広げる。  
正面にそめこの女の部分が現れる。  
まだ、誰にも見せた事がない、綺麗な色をした場所。  
紅牡丹のつたない動きだけでも、充分そこは潤っているように見受けられる。  
 
「紅ちゃん〜あ・・あんまじーって見ないでよぉ〜」  
少しだけ不服そうに、恥ずかしげに呟く声が頭上から降って来る。  
それに答えずに、秘所に指を当ててそっと直線でなぞる。  
声を出す代わりに、肩をつかんだ手に力を込めて反応するそめこ。  
同時に、ふれるそばからドンドンと蜜が溢れ出し、洪水までとはいかずとも敷布に染みができていく。  
「本当に、辛かったら言ってくださいね」  
言いながら、人差し指を中にそっと入れる。  
抵抗もなく、スッと中に入る指。この様子なら、大丈夫かと中指も入れる。  
「ぁっ」  
小さく声を出して、体をくの字に曲げて、初めての感覚にそめこは耐えた。  
自分の体の中に、なにかが入ってくる感触。今まで、生理の時とかに使ったタンポンとかとは違う、感覚。  
紅牡丹がゆっくりと指を中で動かすたびに、不思議な感覚が体の中央から湧き出してくる。  
しばらくすると、あんなに恥ずかしがった声も、今はもう素直に口から漏れ出していた。  
 
「やっ、あ!んっ・んんっ・ほ・紅ちゃ・・や・なんかっへンッ」  
声に合わせて、中で指をくぃっと曲げると、少し大きく声を上げてそめこの体が硬直し、脱力した。  
ハァハァ、と荒く息をつく背中を、そっと撫でさする。  
「紅ちゃん、なんかね、いまね、そめこ、すっごい天国いった」  
真っ赤になった顔をほころばせながら、そめこは自分なりに表現する。  
「だからね、今度こそ、紅ちゃんにあげたいの、そめこのハジメテ」  
そこまで言うと、紅牡丹の首に両手を回して頬にキスの雨を降らせる。  
「姫、お辛いですよ?いいのですか?」  
「やっぱし、ダメ?」  
再確認しようとした自分の一言と、上目遣いのトドメの一言が重なっては、拒否も何もあったものではない。  
主のこの台詞に、拒否しようがないのだから。  
 
紅牡丹が服を脱ぎ捨てる。  
父親以外では初めて目にする男性自身。その形と言い、大きさといい、想像以上のモノであった。  
明らかに自分を見て絶句している主を見て、心が揺らぐ。  
「紅ちゃん、スゴイね、ソレちゃんとそめこでも大丈夫なのかな?大丈夫じゃなくても大丈夫だよね」  
ケロっと言い放つとにっこりといつもの笑顔で、立っている愛しい自分の紅茶王子を見上げる。  
 
そめこの横に、紅牡丹が座り、そめこを膝の上に乗せるように座らせる。  
「本当に、よろしいのですね?」  
「ウン、そめこは紅ちゃんがいいの、紅ちゃんは今そめこのカレシでしょ?だから大丈夫だよ」  
 
最後の最後に、また意思確認をする紅に、苦笑しながらそめこは答える。  
(大好きな紅ちゃんに、捧げるんだから迷う事なんか無いんだから、痛いだろうけど大丈夫、大丈夫。)  
 
紅牡丹が手を添えて、真上にそめこを誘導する。  
先端が少しだけ中に進むと、先程感じた違和感以上の圧迫感に、そめこの体が強張る。  
「ゆっくりだと余計にお辛いかと思いますので、苦しいとは思いますが失礼します」  
耳元で囁くと同時にそめこの腰をつかんで一気におろす。  
「!!!」  
紅の肩に血が軽くにじむ位にそめこの手に力が入る。  
ゆっくり入れたのでは、この痛みがもっと長い時間をかけて体にかかるのだから、最善の策と言えば最善ではあったのだが。  
 
数分ばかり、動かさず、動かず、そのまま2人でじっと待っていた。  
「紅ちゃん・・も・だいじょぶ・・・みたい・・」  
ボソボソと耳元で呟く声を合図に、紅牡丹は掴んでいる体をそっと揺らし始める。  
もちろん表情を常に気にしながら、少しでも痛そうな素振りを見せれば動きを止める。  
最初はほとんど痛そうだった顔が、だんだんとやわらいで来、そしてだんだんと口から甘い声が漏れてきた。  
「あ、あ、やっ・んんっ」  
声を漏らすたびに、2人が繋がる部分から水音が一緒にリズムを奏でる。  
だんだん、紅牡丹自身も余裕を保てなくなってきて動きが激しいものへと変わって行く。  
「っ!あっ!やっ・やぁ・やだっ!ダメ・またっ!んっ!」  
そめこの声がだんだんと切迫した声になってきたのを聞いて、更に激しく紅牡丹は体を動かす。  
「あぁ!」  
一言だけ、一際大きく声を上げてそめこの体が硬直する。  
しかし中はそれとは反対に強く痙攣を起こしたかのような伸縮を起こし、紅牡丹自身を刺激する。  
「ひ・・・姫ッ」  
こらえきれず紅牡丹が自分自身を慌てて外に出し、欲望を吐き出した。  
溢れた紅牡丹のソレはそめこの胸だけでなく、豊かな胸にまでかかる程噴きあがる。  
 
と・その時、観覧車に明かりが点り、アナウンスが機器の故障が直った事を告げる。  
がくん、と止まった時と同じように急に籠が動き出す。  
 
真っ赤になったそめこの体を、魔法で一気に洗い上げ、慌てて服を着る2人。  
数分もしない内に籠の中は何事も無かったかのように綺麗に元に戻っていた。  
先程の名残と言えば、こっそりと紅牡丹のポケットにしまわれている、小さくされた先程の敷布だけである。  
 
そして、それから十数分もしない内に11時を回り、そめこはティアラを見知らぬ少女にあげて、閉園時間となってしまった。  
 
「いーから するのっ  姫の命令なんだから!」  
いつものように、”紅牡丹”を呼び出した”主”のように、言い放つ。  
そしてそっと、唇にキスをする瞬間。  
「お慕いしております、愛しい姫」と。  
聞こえるか聞こえないか、という位の声で紅牡丹は囁き”ぱちん”と消えた。  
 
 
 
いっその事、聞き分けなければ良かったのだと。今でも思う。  
離れて辛いのは姫ばかりだと思っていた。  
今は、わかる。今までの帰ってきた時のアッサムや、アールグレイやペコー王女のあの顔が。  
 
 
『もっと  おそばに   いたかったのです』  
 
 

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