<プロローグ>
それはもっと早く、僕たちが付き合うきっかけとなっていた筈の出来事だったのに
どうしてもっと早く思いだ出さなかったのだろう…
そのことで彼女を傷つけていたのかもしれないのに…
それなのに彼女はいつものように優しかった。あの陽だまりのような笑顔を見せていて
くれた。
<1>
―――ずっと奥の記憶の片隅にあるモノ。
それが何なのか分からない、思い出せない。きっと大切なこと…だったと思う。
そのことを気に留めていたはずなのに慌しい日々に忙殺されいつのまにか忘れていた…
そんなある日の昼下がり、その日は休診日で急患が出る気配もなく、のんびりとしていたら、
いつのまにか眠っていた。
目を覚ますと辺りはオレンジ色に染まっていた。
辺りはオレンジ色だがコトー本人は何故か顔が赤い。
―――とんでもない夢を見てしまったからである。
夢…夢を見た…
その夢は…
彩佳さんを…抱いてる夢だった…
その夢から覚めた時焦った…。やけにリアルだったからだ。
ま、まっさっか〜〜ははは…。
…で、でも夢じゃないような気もするのは何故だろう…。
今でこそ彩佳さんとはそう言う関係になり何日にもなるが、この夢は随分、前の出来事のように感じる。
彩佳さんとそう言う関係になっていない時の夢っぽい。
だとしたらその時の彩佳さんの態度だって変わるだろうし…
態度が変わってないってことはそんなことはないんだよ、夢なんだよ、きっと。うん。
と自分に言い聞かせてみたが、やっぱり引っかかる。