食べ慣れないフレンチと、こんな機会でもなければ顏をあわせないメンツとの  
居心地の悪さで、コトーは全く食が進まない。それ以上に、彩佳のことが気にかかっていた。  
もし、義母の容体が思わしくないのであれば、仕方のないことなのだが…  
しかし、音田や下山からの連絡が一切ないことが不自然だった。診療所に電話もかけづらかった。  
 
「どうしたんですか、先生。食が進まないようですな。」  
「…あ、はい。そうですね…」  
「いえいえ…しかし、先生が褒められていた星野さんにお会い出来なかったのは誠に残念ですな。  
大変優秀な看護師だそうで…。是非お会いしたかった。急用では仕方のないことですが…」  
「はい…」  
 
熊谷幹事長の問い掛けに、うわの空で返事をするコトーの様子が咲は気になった。  
星野、という名の持ち主が、現在のコトーの恋人であることは彼女にも容易に想像がついた。  
咲は、ただ一目だけコトーに会いたかった。しかし、実際会えば彼の優しさを期待してしまう。  
だが、彼はあの頃とは違う表情を見せていた。そこまで、その『恋人』は、彼を変えたのか。  
 
「さて、会場の方に行きますか。」  
 
ドクン…  
 
嫌な脈がコトーの中でうたれる。酷く、嫌な予感がする。  
彩佳との連絡を取る時間はなかった。  
会場入りすると、ばたばたと段取りに手間がかかってしまう。自分は教壇には向いていない人間だと  
改めて苦笑いをする。こんな立派な場所を用意してもらう立場ではないのに…と。  
スーツに着替え、白衣の中にあった携帯電話を手にする。  
 
---着信がありました---  
 
ディスプレイに目を向けると、それは不在着信と留守番電話を知らせるアイコンが表示されていた。  
慌てて、その着信履歴を調べるが…彩佳からのものではなかった。  
そして、留守番電話には彼の予想していなかったメッセージが残されていた。  
 
『五島健助様の携帯電話でしょうか。…古志木島診療所の ホシノ アヤカ 様が転落による負傷のため  
天津堂病院へ搬送されました。転倒時に頭部を強打しており、意識がありません。また、江葉都さんと名乗る…』  
 
そこで、メッセージの電波状態が悪くなり、はっきりと聞き取れなくなっていた。  
おそらく、彼女の携帯電話からわかる範囲で履歴を探し、コトーへと連絡したのだろう。  
とりあえずわかったことは、現在、彼女はまだ東京にいる。…しかし、酷い怪我を負った上に、  
かつての自分のいた病院に搬送されていることであり…江葉都がその場に同行しているとのことだ。  
 
「ま…まさか…」  
江葉都がそんなことをする筈はない…そう思っている。  
しかし、現に彼女は病院へ搬送されている。…二人の間に何が起こったのか…。  
意識は無い。怪我の程度もわからない。何故、そうなったのかが全くわからない。  
もし、故意に彼が…そう思った瞬間、コトーは一気に手が震え、手にしていた携帯電話を落した。  
その乾いた音に気付いた咲が駆けよってきて、端末を拾い上げる。  
 
「どうしたの?五島君…」  
「咲ちゃ…いや。原沢先生…どうしよう…僕…」  
足元が、がくがくと震える。不安なのか、動揺なのか、怒りなのか…自分でもわからない。  
「何かあったの!?…五島君、留守電聞かせてもらうわよ。」  
咲は素早く、端末を取り上げ、メッセージを聞いた。コトーが酷く震えていた理由はこれなのだと…  
こんなに動揺し、顔面を蒼白にしたコトーの姿など…見た事がない。  
 
とても平常心を取戻せそうになさそうなコトーの姿を見て、咲は何か決心がついたようだ。  
コトーの肩を叩き、気丈そうな笑顔を見せる。  
 
「…あたしが天津堂まで行ってくるわ。星野さんの様子も見てくる。ちゃんと報告するから…。  
大丈夫、彼女は大丈夫よ。江葉都先生も、他の先生方もいらっしゃるから処置は終わってる筈よ。」  
 
「大丈夫じゃなかったらどうするんだ!」  
 
コトーは思わずそう怒鳴ってしまった。かつての恋人に、かなりきつく怒鳴ってしまったのだ。  
次の瞬間、しまったと思ったが、咲は動揺する様子は無かった。  
 
「そう…大丈夫ではないかもしれない…だから、だから。私も一人の医師よ。ちゃんと責任をもって  
彼女のことと、江葉都先生の事情はあなたに必ず報告するから。だから、講演はきちんとやり遂げて。  
私は彼女の容体を見てくる。あなたには報告を必ずするから、絶対に講演のキャンセルはしない。  
医師の卵達は、この話を聞きたがっている。…あなたの恋人も聴きたがっていた講演でしょう?  
 同じ気持ちで待ち望んでいる人達を裏切らないことね…」  
咲はそう言うと、足早にタクシー乗り場へと急いだ。振り返って、コトーのことは見ようともしなかった。  
 
何も出来ない自分がコトーはもどかしかった。が、あの病院には腕のたつ医師も、自分のよく知る  
咲もいる。心配は無い筈なのだが、言い様の無い悔しさが自分を支配していた。  
仕事を投げ出すことは出来ない。もしそれが出来れば、今すぐ此処を抜け出ていただろう。  
 
無情にも、コトーを呼ぶ関係者の声が聞こえた。彼はスーツの襟を正し、ピッと表情を変えた。  
『これが終わったら、すぐに君の元に行く。』  
靴音をたてて、歩き始めた。あの会場の中には、沢山の聴衆が待っているのだから。  
今回は、これが仕事なのだから…裏切ることは出来ないのだ。  
 
・・・あの瞬間のことは断片的にだけ思い出せる。何が起きたのだろう…一体何が…  
 
頼りなくなった足元の感覚。 中年男の酒臭い息と怒鳴り声。乱暴に突き落とされる瞬間。  
足の痛みより酷かった頭痛… 脈打ちながら流れ出る血液と、赤に遮られる視界。  
聞こえたのは、ストレッチャーが運ばれて来る音と、江葉都先生の怒号。  
そこで、意識が混濁しはじめてきて…全てがブラックアウトする前に見えたのは…一番好きな人の顏だった。  
『コトー先生…ごめんなさい…』  
・・・・・・・・・・・・・・どのくらい時間がたったのだろう…。  
 
橙色の西日が彩佳の頬を照らす。その温かさは決して不快なものではなく、  
むしろ心地よいものであった。…もう、コトーの講演会は終了した時間なのは確実だ。  
…身体は酷く重い感じが抜けない。我にかえると、彩佳はベッドの上に横たわっていた。  
真新しい病室。診療所の簡素な病室とは何もかも違うのだ。あたりを見回してみると、  
洗面台やロッカー、はてはシャワー付きのトイレまで全て揃っている。思わず呆気にとられた。  
 
「ごめんなさいね。ここしか部屋、開いてなかったのよ。」  
柔らかな声が背後から聞こえる…。  
穏やかで、聡明そうで優しそうな女医。ふと、ネームタグに目をやると、あの名前が…  
「ハ…ラサワ…さん…」  
 
次の瞬間、鋭い痛みが額に走る。彩佳は、その痛さに顏を歪めた。  
気がつくと、いつの間にか服がパジャマに着替えさせられている。おまけに、額の周囲には包帯がぐるぐる巻き。  
「骨折は無かったし、CTの結果も異常無しよ。外傷性蜘蛛膜下が心配だったけど大丈夫ね。  
頭部の傷は暫く痛むかもしれないけど、綺麗に縫って下さったわ。暫くは髪の毛で隠れるし、跡も残らないわね。  
気分が悪くなったら、私でも、他の医師でもかまわないから直ぐに呼んでね。それと、もうすぐ来…たわね。」  
 
廊下からけたたましい音が聞こえてきた。誰かが走って此処に向かってくる様子だ。  
「担当医がいらっしゃったわよ、星野さん。あと、これはあなたの忘れ物。江葉都先生が届けて下さったわ。」  
ニコリと微笑むと、咲はそのまま病室を後にした。  
 
彩佳は何かを伝えようと咲に声をかけたが、彼女はそのまま病室から出ていってしまった。  
沢山、彼女に聞きたかったことがあったのに、タイミングの悪さに彩佳は肩を落とした。  
 
一方、咲はしっかり彩佳の声を聞き取っていた。だが、敢えて振り向かなかった。  
きっと、色々と詮索したくなる。その話を聞いたら、嫉妬をするのが自分でもわかっていた。  
かつての最愛の男の、今の恋人の心と身体を傷つけ、追い込んだ原因は自分なのだから。  
 
『女』よりも、『医師』としての気持ちが先に心を支配する。咲は思わず苦笑した。  
「だから、いい人見つからないのかなぁ…」  
そう咲が呟いた時。目の前にコトーが息を切らして、スーツも着崩れした状態で現れた。  
 
「ふはぁ…はぁ…さっ、咲ちゃん!あ、あのっ、星野さんは!?…ゲホっ…だ、大丈夫!?」  
不健康で運動不足。不精者でマイペース。そんな彼が息を切らしてまで飛んでくる。  
よっぽど慌てて、一目散に此処に来たのだろう。そんなこと、自分の時には無かったなと振りかえる。  
 
「五島君、星野さんは大丈夫よ。念のために一晩入院はしてもらうけどね。もちろん五島君の自腹でね。  
ちなみに、ここ一番いい個室だから♪ はい、カルテとCT。  
明日9時のMRIがキャンセル出たから、念のために検査しておいたほうがいいわよ。」  
穏やかな咲の表情が、今の彩佳の状態を物語っているのだろう。コトーは安堵の  
感情に支配されると、身体の力ががくがくと抜けて思わず膝をついてしまった。  
 
「よかったぁ〜。ありがとう、咲ちゃん。感謝するよー。」  
「…私が此処に着いた時には、もう彼女の処置は完璧に施されていたわ…。感謝するなら  
江葉都先生にどうぞ。ちなみに彼、事情聴衆で今、警察で色々聞かれてると思うわよ。」  
「えっ!?」  
「江葉都先生は確かに、ちょっと手が先に出るタイプね。五島君、江葉都先生の仕業だと思ったでしょう?  
…彼はむしろ、星野さんの恩人よ。誤解しないでね。」  
 
はっきりしない話にもどかしさを感じながらも、感謝の言葉を並べるコトー。その肩を押したのは咲だった。  
「早く会ってあげて。お待ちかねよ。」  
 
 
「星野さん!!」  
 
ドアをバンッと音をたてて、いきなり転がり込んできたコトーの姿に彩佳は驚いた。  
スーツも髪の毛もぐしゃぐしゃ。何度かコケたのだろう。一張羅が薄汚れている。  
彩佳は驚くと同時に、なんて姿なんだろう…と愕然とした。ヘタレだ…そう思った瞬間。  
コトーに思いきり抱きしめられる…少し汗ばんだ皮膚の感触と苦しそうに切らす呼吸と、  
心臓の力強い音…少し埃っぽい匂い……なんか、嫌な音。  
 
「ちょっと、先生!痛たたたた!」  
「うわーーん、よかったよぉー。星野さんが無事でよかったぁーーー!」  
鼻水と涙でぐしゃぐしゃな顏に一気に興醒め。ついでに、酸欠状態で駆け込んで吐きそうでもある。  
「ホントによかっ…うぷっ…」  
「ちょっと!ゲロは勘弁してください!!」  
「……ぐはぁ〜…ら、らいじょうぶ。…それより、よがっだぁーー。」  
悪態をついてくる彩佳の様子に無事を確認したコトーは、次は優しく自分の胸に彩佳の  
身体を寄せる。包み込むように、壊れ物を扱うかのように抱きしめてきた。  
 
「よかった…生きた心地がしなかった…ごめんね…ごめんね…」  
おそらく、講演の後に親睦会等も予定されていたのだろう。しかし、それを蹴ってまで  
彼はここに真っ先に来てくれた。  
こんなに動揺するコトーの表情があまりにも以外で…自分は本当に大事に想われてると確信が持てる。  
それだけで、今までの不安を全て拭い去ってくれる。  
 
「ごめんなさい…コトー先生…あたしも…心配かけて…それに…」  
一瞬、江葉都の顏が脳裏を過る。…が、次の瞬間、コトーの手が頬に触れられると言葉を遮られてしまった。  
 
「…んっ…」  
キスは何度もしているのに…少しは慣れてきた筈なのに。  
触れるだけで溶けてしまいそうになる。繰り返し唇に落とされるキスだけで全てが飛びそうになる。  
ただ優しく繰り返される口付の甘さに彩佳は身体中の力が抜けていった。  
 
コトーは一旦、唇を離す。先程までの動揺した表情でも甘い表情でもなく、医師としての表情になっている。  
 
「傷、見せてね。」  
丁寧に包帯を外すと、左の眉間に近い部分が縫合されている。傷自体は小さいもので  
あったが、きっと深く切れてしまったのだろう。見るからに痛々しい。  
髪の毛で隠れて目立たないだろうが、おそらく暫くは此処を庇わないとならないだろう。  
よく見て見ると傷の縫合は驚く程綺麗なものだった…誰が施術したものかは直ぐに見当がついた。  
「綺麗に縫ってあるね。これなら傷は残らないよ…ま、僕ならもっと綺麗に縫えるけど。」  
 
昨日の煙草とアルコールの匂い、江葉都と会った彩佳…今日の怪我…昨日の彩佳の様子…  
だいたい何があったかも想像はついた。しかし、全ての歯車を狂わせたのは自分。  
…彼女に、罪などないのだ。経緯を聞き出そうとは思わなかった。  
だけど悔しかった。本当は誰よりも先に駆けつけたかったのだから。  
輝いた目で自分の講演を聴いている学生の姿も、必死にメモを取り、頷きながら熱心に  
聴いてる者達の姿も…只の静止画像のようにしか見えなかった。  
いずれ、この中から若い離島医療従事者も生まれるだろう…誰かを助けるだろう。  
だが…大事な者の前にあまりに非力すぎた自分の不甲斐なさが悔しかった。  
たった一人を守るために、ただそれだけを考えて此処に来た。そんな男は教壇に立つ資格など無いのだから。  
 
「抜糸は島に戻ったら僕がするから。今日は念のために僕もここに泊まるからね。  
明日は念のために朝はMRIを撮って、それから午後の便で帰ろう。」  
コトーは相変わらず優しいが、未だ気恥ずかしさと、気まずさが彩佳の中には残っていたので黙って頷いていた。  
ふと意識すると、自分の髪の毛がやたらに血生臭いのに気付く。ついでに、消毒液の匂いもする。  
「…っ!! うわ〜!やな匂い!…でもこんな場所の怪我だと髪の毛も洗えないや…」  
 
すると、コトーが実に嬉しそうに微笑んでいる。嫌な予感。次に出た言葉は予想通りだった。  
「僕が洗ってあげようか?」  
この人は、こういう時必ず何かやらかすのだが…しかし、このままだと不快極まりない。  
「ヘンなことしないでくださいよ!それと!髪の毛だけで結構ですから!」  
「はいはい。」  
 
背をゆったりと預けられる椅子とバスタオルと、おそらく病院内の理容室から借りてきたで  
あろうビニールのエプロンに…シャンプーハット。洗面台を上手く利用してコトーは  
上手く傷口を避け、手際よく彩佳の髪を洗っている。  
 
『ああ、気持ちいいなあ…』  
コトーの手の感触と、温かさが彩佳を心地よく癒してくれる。  
いつもは洗濯さえまともに出来ないのに、こういうことは上手なんだなあと改めて関心する。  
 
「はい、おしまい。あと、身体は温いシャワーで流す程度ね。あんまり長い時間はダメだよ。星野さんが  
シャワー浴びてる間に、僕は仮眠室から毛布かりてくるよ。」  
そう言うと、コトーは扉を開けてパタパタと足音をたてて出ていった。  
 
シャワーを浴びながら、彩佳はふと思い出す。この3日間のことを。  
はしゃぎ廻って。元彼女の存在を知って、勝手に不安になり…そして、恋人以外の男と寝ようとまで…。  
今日はじめて出会った原沢 咲は優しく、魅力的な綺麗な女性だった。落ち着いていて、知性に溢れて。  
自分がいつか医師になった時、ああなりたいと思う程に素敵な女性だった。  
 
コトーは、ああいう人の方がつり合うのかもしれない…と、ふと彩佳は想った。  
そう思って、短めのシャワーを終えると、いつの間にか、コトーは身体には小さすぎる座イスを組み合わせ、  
簡易ベッドを作り、そこに寝ようとしていた。毛布は仮眠している医師達に申し訳なく、借りるのをやめたと  
言っていたが、なんせ夜は冷え込むのに…と心配だ。  
 
コトーは、彩佳のベッドをポンポンと叩いてこちらに来るように促す。  
「明日は帰らないとね。今日はゆっくり寝よう。僕は暫く起きて、星野さんの様子を見ておくよ。  
大丈夫だと思うけど、万が一のことを、ね。」  
 
「ごめんなさい、コトー先生…」  
これで許してもらえるとは思っていないけど、ねぎらいの意味も込めたキスを頬に落とそうと思った瞬間、  
ぐい、っと身体ごと引き込まれた。  
 
「お、起きてたんですか!?」  
「うん。寝たふり寝たふり♪ あれ?星野さんキスしてくれないの?」  
「知りません!」  
コトーの膝の上に対面で座ったような微妙な姿勢が妙に恥ずかしい。  
じっと顏を見られると思わず視線を外したくなる…さっきのキスの余韻だってまだ消えてない…  
体温を直に感じると、甘くせつない気持ちになってくる。愛しくて、たまらなくて。大好きだから。  
 
コトーが傷口に触れないように、額から軽くキスを降らせてくる。  
「んっ、だめ…明日…早いんじゃないですか…っあっ」  
一つ一つパジャマのボタンが外されて、白い胸元が露になると、コトーは裾から手を進入させた。  
「やっぱり、星野さんって柔らかくて、気持ちいいなあ…変な気分になっちゃうよなぁ…。」  
コトーが目ざとく、彩佳が下着をつけていないことに気付き、柔らかな膨らみへと直に手を伸ばす。  
「星野さんさぁ…すぐ、ココ弄られるとすぐ固くなっちゃうんだよね、やらしいなぁ…」  
少し紅く色づいた頂点を摘み上げるように弄ると、彩佳の口元から頼りないか細い声だけが漏れる。  
 
「や、やだぁ…先生…ここ病院…っ…あん…」  
その固くなった紅色の先をコトーは口に含むと、その弾力を楽しむかのように舌を這わせ、吸いあげる。  
「……可愛い声出しちゃってさ。だから離したくないんだよ。」  
ちゅく…と、わざと音をたて、繰り返し愛撫をされると甘い快楽に身体が支配されてゆく。  
 
パジャマのボタンが全て外されると、隙間からはほんのりピンク色に染まった色白い肌が垣間見られる。  
左の二の腕…肘…少し、痣がある…彼女は怪我をしている…無理は出来ないのだが…  
「よし、ここは庇えばなんとかね。星野さん、ベッドサイドに座って。」  
と、コトーは言い、彩佳の身体を抱きかかえ、彼女のベッドに座らせた。  
 
「脚の方の怪我の程度も見ておかないとね。じゃ、下の方も脱がなきゃ。」  
 
そう言われるや否や、パジャマの下も脱がされ、パンティーにパジャマ一枚を羽織っただけの格好で、  
脚をコトーに開かれてしまった。膝の間をわって、手が進入してくる。  
「やっぱり左はちょっと痛めてるみたいだね…足首は…?…痛いよね…ごめんね。」  
馴れた手つきで怪我の加減をみてみる。左足首に内出血、そしてどうやら少しひねってしまったようだ。  
 
「星野さん、左に重心を置かないほうがいいね。」  
ほんの少し、その言葉に安心して油断した彩佳は、この淫らな事もここで終わりかなと思い、  
ほっとしたのが半分、ほんの少し残念だなとも思いつつ、パジャマのボタンを締めようとした。  
すると、コトーがその手を優しく、やんわりと止める。無言で、再び口付を落とす。  
 
「あ…ダメです、ここは病院だし…原沢先生だって他の先生だって…いるんですから!」  
「医師が24時間体制でいれば大丈夫だよ。ほら、僕がついてるし…ね。」  
薄地の白いパンティーの上から、割れ目をなぞるようにコトーが指を這わす。  
彼が触れる前に、既に湿り気を帯びていたそこは、もう既に次の愛撫を期待している。  
 
「やっ…やぁぁああん!どこっ…触って…るんです…かあ…」  
「ん?…星野さんの一番気持ち良いところ。ほら、これだけですごく濡れてるしクリトリスもおっきくなってるし…」  
「や、やだぁ!そんなこと言わないでください!」  
「そんな声出さないの。隣の部屋にも患者さんはいるんだから…」  
声を出してはダメ。そう言う彼がしてくることは、わざと彩佳の嬌声を漏らさせることばかり。  
 
「だめ、だめですって…やっ…んっ…ああああっ!」  
パンティーの中に、彼の指が進入してくる。薄い茂みを掻き分けられ、何度も割れ目に沿いながら  
指をスライドさせてくると、既にびしょびしょに濡れていた秘部からさらに蜜が溢れ出てくる。  
クリトリスを指の腹で少し強めに弄られ、思わず彩佳は声をあげてしまう。  
 
「やだぁーーー!やぁあああん!」  
「ほら、静かにしないと…ね。…僕としてはその声もっと聞きたいんだけど、ここじゃね…」  
じゃあ、ここでやめればなんて彩佳は言えなかった。もう、途中で止めるだけの理性も吹き飛んでいた。  
コトーにメチャクチャにされてもいい。彩佳の心の中で、そんな火が静かに灯った。  
 
すっかり濡れそぼったパンティーを脱がされ、下半身が外気に晒される。  
コトーは彩佳から視線を外そうとはせず、彼女の瞳をじっと見つめながら、的確に彼女の弱点を攻めてくる。  
何度も身体を重ねているから、どこに何をすれば彼女が悦ぶのか知り尽くしているコトーの愛撫に  
いともたやすく彩佳は心身共に委ねてしまう。どんな反応を示すのかも、彼は熟知している。  
 
「声出せないのってさ、もしかして興奮する?…すごいよ。星野さんのココ、ものすごく濡れてる。」  
クリトリスを捏ねられ、軽く指で押しつぶされる度に秘所がひくん、と痙攣する。  
その雫が染みを作るくらいに、愛液がお尻の方まで濡らしている。  
コトーの指から、透明の液体が糸を引いているが、彼はそれらを全て美味しそうに舐めとる。  
 
イキそうになる所でコトーの指からの愛撫は一旦弱められ、その感覚は一時的に静まりを得る。  
だが、それを直ぐに彼は察知し、またそれは高められ、快楽に翻弄される。  
「んっ…ふっ…や…やだぁ…」  
「イっちゃいそう…? 何度でもイっていいよ?」  
「…ば、ばかっ…」  
「じゃ、もっと気持ち良くしてからイかせてあげようか。指だけじゃ、物足りないでしょ?」  
 
脚をゆっくりと開かれ、何もつけていない彩佳の秘所に、コトーの顏が近づいてくる。  
関係を持ってからも、身体の全てを彼の目に晒していても、どうしてもこの雰囲気には慣れない。  
「…今日は、力入れないでね。左に重心かけちゃダメだよ。」  
座ったままの姿勢で、無防備に脚を開かれた状態で、コトーがその中心へと顏を埋めてくる。  
 
「んっ……!くっ、んぁ…あっ」  
彼の下がゆっくりと秘部の割れ目をなぞり始める…がくん、と身体中の力が抜けていく感覚に  
襲われるが、コトーに腰を支えられ、顏を埋められていると体制が崩せない。  
座ったままの姿勢で彼に舌と唇でクリトリスを愛撫されると、脊髄を通り脳天まで突き抜けるような強い快感に  
襲われる。ちゅ…くちゅ…といういやらしい音が彩佳を興奮させる。  
 
「やっ、やだぁ…コトーせんせい…」  
「…ん? やなの? もうココでイっちゃいそうなのに…こんなにしちゃって…」  
こんなに恥ずかしいことを言われても、強引に求められても…快楽と同じくらいの愛しさが湧き出るのだ。  
自分の秘部に顏を埋めているコトーの髪の毛を、彼女は無意識のうちに撫でていた。  
 
それに反して…コトーの心の中は嫉妬に支配されていたのだ。それも、自分でコントロール出来ない程に。  
聞き出すつもりなど無かった筈だっただが…つい、快楽に翻弄される彩佳を見ているうちに、つい口にしてしまった。  
 
「星野さん…ホントは、江葉都先生とも、こんなことしたの…?」  
びくん、と、彩佳の身体が跳ねる。…訊かれるとは思っていた。黙っていようとも思わなかったのだが、  
いざその言葉を聞いた時、今まで身体中を満たしていた甘い感覚が全て引いていくような気がした。  
いかされる寸前まで快楽を追いつめられ、いきなりその言葉を投げかけられたのだから。  
 
「…せ…先生…」  
「別に、僕は事実かどうかを聞きたいだけ…じゃあ、僕から言うよ。僕は原沢先生とキスをした。  
でもそれだけ。星野さんはどうなの…? お酒も煙草も星野さんはやってない筈だよね。  
でも、昨日の君の身体から、その二つの匂いがした…その理由を聞きたいんだ。」  
 
心拍数が上がる。ふと、江葉都の言葉が思い出される。  
『…黙っていればわからない…』  
しかし、明らかに動揺する自分の姿を見れば、誰にだってわかってしまう。もう隠しきれないだろう。  
本来、自分は物事を隠し通すことが出来ない性格だ…。  
 
「…はい…でも…セックスは…してないです…」  
「どんなことをしたの?」  
「……キスされて…身体触られて…」  
「で、彼にはイかされたの?」  
「……!! でも、こんなことまではしてないです!」  
 
つい、大きな声を出してしまった。何度もイかされそうになって、快楽に陶酔していた自分がどれだけ  
淫らなのかと言われたような気がした。  
 
しかし、顏を上げたコトーの表情は穏やかだ。思わず泣きそうになる自分の余裕の無さが悔しかったのだ。  
それをわかっていたかのように、コトーが続ける。  
 
「…辛い思いをさせたのは、僕の方なのに…。ごめんね。本当は訊くつもりは無かった…でも…でもね。  
今…物凄く江葉都先生に嫉妬してるんだ…。だって、星野さんを誰にも触らせたくなかったから…」  
 
彩佳は自責への念にかられ、涙をぼろぼろと落とした。  
愚かな行為だったのは自覚しているが、こんな時にストレートに聞かれるとは思っていなかった。  
この甘い行為は、もしかして誘導尋問なのかとも疑った。  
…コトーの思惑は違っていたのだ。  
 
「ごめんね。でも、君がそのことを隠していてずっと抱え込むようなら、吐き出してほしかった。  
…なんとなくわかっちゃうんだよ…何か抱えてるんだってことくらい…だから、ね。」  
コトーの指が伝い落ちてくる涙を優しく拭ってくれる。  
 
「泣かせちゃったからなあ…。優しくしたいんだけど…でも、ちょっと僕も色々キちゃってるから…」  
コトーはそう言うと、優しく彩佳の唇にキスを落とした。自ら、白衣を脱ぎ捨て、衣服を床に乱暴に脱ぎ捨てる。  
そのまま、彼も全ての衣服を脱ぎ終えると、コトーは彩佳を抱きかかえ、そのまま身体の上に彼女の身体を  
乗せるような体制になった。大柄なコトーの身体の上には、いともたやすく彩佳の華奢な身体が収まった。  
 
「これ、邪魔だね。」  
一枚だけ羽織っていたパジャマも、するりと脱がされ、全裸にされてしまった。  
彩佳のお尻の方をつたい、後ろから局部に再びコトーの手が伸びる。  
 
「きゃあっ!」  
「星野さんは怪我してるからね…この体制が一番いいかな。」  
再び、コトーの指に攻められると、あの身体の中に灯っていた火が再びつくまで、さして時間はかからなかった。  
 
「なるべく、優しくするけどさ…ちょっと意地悪しちゃうかもしれない。」  
コトーの低い声が彩佳の耳に届いた…この声を聞いた時は…少し覚悟が必要なのだ…。  
 
 

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