夏のある日。午前の診療時間が終わった時刻である。
最後の患者のカルテをまだ見ているコトー。
彩佳が声をかけないと、きっとまた昼食を食べ損ねてしまう。
患者さんのこともいいけど体壊さないでほしいなぁ・・・。彩佳は小さなため息をもらした。
「先生、お昼どうします?」
「あ〜、お湯沸かしといてくれる?」
「カップラーメンはダメですッ! 今日は、私が何か作りますね」
「!!」
コトーは心底驚いた顔をした。
付き合い始めてからも、診療所内では彩佳は決してコトーに甘くはなかったからである。
むしろ、今までよりもキビシイ看護婦になってしまっていた。
しかしそれが彩佳なりのケジメのつけ方であることはコトーも分かっていたし、一歩診療所から出れば、限りなく彼氏に優しい彩佳だった。
「彩佳さん、ホントにー?」
「ホントです。なんでそんなにビックリしてるんですか」
「だってさ、えっと、その・・・」
「ハイハイ、ご飯できるまでにはそのカルテ片付けてくださいね」
「は〜い」
満面の笑みで返事をするコトーだったが、給湯室兼台所に向かう彩佳の後ろ姿を見た時の顔は何か企みがあるようだった。
コトー先生の顔、可愛かったなぁ・・・。っと、いけないいけない。まだココは診療所だし、しっかりしなくちゃ。さて、先生が元気でいられるようにおいしいもの作ろうっと!!
彩佳は腕まくりをしながらシンクの前に立った。
そして、まずは手を洗おうと蛇口をひねったその時だった。
「何つくるの?」
「きゃぁ!!」
突然後ろからコトーに声をかけられ、彩佳は思わず大きな声を出してしまった。
「せ、せんせいッ! ビックリしたじゃないですか。いきなり声をかけるのはやめ・・・」
言い終わらないうちに彩佳は後ろからコトーに抱きすくめられてしまう。
「彩佳・・・」
顔が上を向くように顎に手をかけられ、そのままむさぼるように口づけされる。
彩佳は頭の芯がクラクラするような感覚を覚えた。
彩佳の熱が上がった唇を湿らせるように、コトーの舌がその先端で撫で上げる。
やがてそれは、彩佳の小さな口の僅かな隙間から侵入し、彩佳のなかを弄くるように彼女の口内で自由を得て動きまわる。
「やぁ・・・っ・・・・・・ん・・・んん・・・・・・せんせ・・・」
「なに、つくってくれるの? ん?」
彩佳を抱きしめたまま、その耳元でコトーは彩佳に聞く。
「チャーハンと、サラダ・・・です・・・」
彩佳の抗議するような目に対してコトーの目は悪戯心で満ち溢れているかのようだった。
「ふぅん、おいしそうだね。でも僕は・・・」
コトーはそこまで言ってから、彩佳によりピッタリと体を密着させる。
「ここじゃダメ・・・・・・やめてください、先生・・・・・・」
コトーの手が後ろから彩佳の胸を服越しに包み、優しく揉みしだく。
つんと尖ってふくらんできた乳首を指先でつままれると、熱い電撃のような感覚が、彩佳の首筋を駆け抜けた。
「はぁ・・・っん・・・・・・、せんせ・・・ホントにダメですってば・・・・・・」
コトーの手が彩佳の胸から離れて、流れつづけていたままだった水道の水を止めた。
そしてその手はそのまま彩佳のヒップラインをなぞる。
ゆっくりと尻を撫でた後、脚の間に忍び込んでいった指は、彩佳が一番感じるところをいとも簡単に探り当ててしまった。そして下着越しにゆっくりとそこを上下に擦る。
「僕は彩佳が食べたい」
彩佳はクリトリスを弄くられながら、耳に吹きかけられるコトーの熱い息に体が痺れるようだった。
「ダメダメダメ・・・・・・」
「もう診療時間じゃないんだし」
「ダメです・・・」
「僕たち付き合ってるんだし」
「ダメです・・・」
「キッチンに立つ彩佳は可愛いし」
「ダメです・・・・・・あ・・・ん・・・」
一瞬のうちに、彩佳のスカートの中でパンティーが下ろされてしまった。
そのまま直接触れようとするコトーの指から逃れようと彩佳は腰を浮かす。
「彩佳、逃げちゃだめだよ。もうこんなに濡れてるよ?」
蜜をしたたらせ、じんじんと熱くしびれるクリトリスに、コトーの指が直に触れた。
「っあ―――くぅんッ!」
丹念に、丹念に、コトーの指が彩佳を愛していく。
触れるか触れないかの微妙なタッチで、彩佳のもっとも敏感な真珠を撫でる。
「せ、せんせい・・・・・・ふ・・・くぅ、んん・・・・・・」
残酷なくらい優しいコトーの動きに、彩佳の花園は焦らされる。
本当はもっと、強くしてほしい。その一番感じるところを、もっと強引に乱暴なくらいに・・・。
コトーが、喉の奥で含むように低く笑う。
「どうしたの? 彩佳。そんなにお尻をもじもじさせて、もうおねだり?」
「ち、ちが・・・っ・・・」
彩佳は目に涙が浮かんできた。でも、コトーの意地の悪い言葉にも感じてしまう。
反撃するなら今だ、と彩佳は思った。
いつも自分ばかりがコトーのいいようにされている気がする。
コトーの息をもっと熱くさせたいと彩佳は願った。
彩佳はコトーから一旦逃れると、自分からコトーを抱きしめた。
「彩佳・・・?」
不思議そうなコトーの声には応えず、濡れた唇でコトーに口づけ、その耳元、顎から首筋、鎖骨へとキスを下ろしていく。
まだほとんど乱れていないコトーのシャツのボタンをもどかしい手つきで外し、あらわになった胸に、彩佳はさらにキスをする。
たどたどしい愛撫。誰に教わったわけでもない。
ただ、もっとコトーを熱くさせたい。コトーを悦ばせてみたい。
その思いに急かされて、彩佳はさらに唇を滑らせる。
そして、激しい熱を秘め屹立しているコトーの欲望に、彩佳はためらうことなく口づけた。
小さな唇を精一杯開いて、コトーをあたためる。
指をからめ、その形を確かめるように、丁寧に舌を這わせていく。
「彩佳――――」
やがてコトーは、彩佳の髪に指を埋め、耐え切れないように熱っぽくかき乱した。
先生―――コトー先生、気持ちいいの? 感じてくれているの・・・・・・?
また再び彩佳の目に涙が浮かぶ。
つたない動きで、彩佳は精いっぱいコトーを愛していく。
「彩佳――――もう、いいよ・・・・・・」
コトーの手が、彩佳の顔を上向かせる。
「え・・・・・・」
やっぱり、コトーを悦ばせることはできなかったのだろうか。不安の表情を浮かべる彩佳に、
「このままじゃ、ぼくも保てないよ。口もいいけど、今は、彩佳の中でイカせてほしい」
コトーは優しく微笑んだ。そして、黒髪をはりつかせ汗の光る彩佳のこめかみに、涙があふれる目元に、最後に紅い唇にキスを落とす。
「彩佳、立って、むこうを向いて・・・」
さらにコトーは、後ろから彩佳の手に自分の手を添え、しっかりとシンクの縁を握らせる。
「それじゃ、入れるよ―――彩佳」
コトーの熱い欲望の切っ先が、彩佳の濡れる秘部に接した。
「あ、あ――――くふうぅんんッ!!」
彩佳の中にコトーが押し入ってくる。
「あっ、あっ、ああ――――あはあぁっ!」
激しい律動が、背中から彩佳に襲いかかった。
責めたてられる快楽の火花が、濡れた淫らな水音となって辺りに響き渡る。
「ああっ! あっ、ふ・・・・・・あぁ、こ、コトーせんせぇ・・・ッ!!」
「感じてるの? 彩佳」
からかうようなコトーの問いにも、彩佳はもう答えることができない。
深く浅くかき乱すコトーの動きに翻弄され、ただ、切れ切れに悲鳴をあげるだけだった。
熱い蜜が、体の芯からあふれ出す。
そしてそれは二人の繋がりあった部分から流れ出し、床にしたたり落ちていく。
「いい子だね、彩佳―――。ほら、ここもこんなに悦んで・・・・・・いやらしいんだね」
コトーはさらに手を伸ばし、欲望に犯されている泉の上で、真っ赤に色づいているクリトリスをも指でつまみ、爪を立てて責めた。
快楽というにはあまりにも鮮烈な感覚が、彩佳の全身を貫いていく。
「ひゃッ! あああぁぁぁーッ!!」
泣き叫ぶ彩佳。
「ひあ、ああっ! そ、そんな、もう・・・・・・! も、もうだめ、もう――――っ!」
「まだ、まだダメだ・・・彩佳・・・・・・」
「もう、もう、ゆ、許してっ! だめッ、だめッ、あああッ!!」
容赦なくコトーに揺さぶられ、突き上げられ、彩佳は一層大きな声で喘いだ。
いつの間にか彩佳は床に這わされている。その押さえつけられた体はがくがくと痙攣し、絶頂が近いことを告げている。
「あああッ! い、悦い・・・先生のがすごく悦いの・・・・・・ッ!」
快楽の波にのたうつ彩佳を、コトーはさらに責めたてる。
熱くとろけ、締めつけてくる狭い泉を、何度も何度も激しく突き上げ、過敏な内壁を猛々しい欲望で押し広げ、えぐり、擦り立てる。
「僕も悦いよ、彩佳・・・・・・こんなに熱くて、締めつけてくる――――」
コトーが彩佳の耳元で淫らな言葉をささやく。
熱く、かすれる声。平常を保とうとしてはいるが、その奥の昂ぶりは隠しきれない。
感じてる―――先生も。快楽に冒されて白濁した彩佳の脳裏に、切れ切れにそんな思いが浮かぶ。先生も、感じてる。私を抱いて――――私の体で、先生も悦んでる。
そう思うことは、彩佳の中に、今まで味わったことのない、鮮烈な歓びを呼び覚ました。
「はああぁんッ!! ああ、いく――――いく、いっちゃうの・・・ッ!」
「あ、あや・・・ッ・・・か・・・・・・一緒に・・・」
「一緒にいって・・・! せんせぇ・・・あっ、あっ、あっ、ああ!! い、いくううううッ!!」
ひときわ深く強く、泉をえぐられて、彩佳は絶頂へ昇りつめる。そしてコトーも同時に果てた。
それから1時間後――――
「いやぁ、午後休診の日でホントよかったよね」
黙って洗濯機の前に立つ彩佳にコトーはわざとらしいほどの明るい声をかける。
彩佳から返ってくる言葉はない。
コトーは彩佳の顔をそっと盗み見た。
お、怒ってる・・・。相当怒ってる・・・(泣)
洗濯をしている彩佳の格好は、コトーのシャツを短いワンピースのようにして着ているだけである。
「あ、彩佳さん・・・、怒ってる・・・?」
「当たり前ですッ! 先生のせいでナース服も下着も全部ダメになっちゃったじゃないですか!!」
「ほら、でも、ノーパンノーブラの彩佳さんもすっごく可愛いよ! このまま夜まで・・・」
「先生のバカーっ!!!!」
コトーの頭に彩佳の持っていた洗濯かごがヒットしたことは言うまでもない。