夏の始まりのある日。  
先生とわたしは往診帰りに運悪く土砂降りの大雨に遭遇してしまいました。  
「うわーーーーー、すっごい雨だねぇーー!」  
コトー先生は息を切らしながら、診療所に向かって走っています。  
わたしは途中ぬかるんだ道で先生がコケないように注意しながらも走りつつ。  
その日の午後一番は快晴だったから、油断していたわたしたちが悪かったんだけど。  
まさかこんなに大雨になるなんて。  
先生も私も診療所に着いた頃には、着ていた服全てがびしょびしょに濡れてひどい  
有り様でした。  
 
「ふうーっ、すごい雨だったねえ、星野さん!」  
「もうー、先生、やっぱり車で出かけるべきですよ。この時期は天気が変わりやすいんですから」  
「うーん、でも車じゃ入りきらないお宅も沢山あるからねぇ・・・」  
 
コトー先生はびしょ濡れになった白衣やシャツをひょいひょいと私の前で脱いで行きます。  
揚げ句の果てにトランクス一丁になってしまい、自分の着替えを探しています。  
なんか、堂々と私の前で着替える先生の姿を見ているとちょっとみじめな気持ちになります。  
もっと女性の前では気を使ってよ!とも言いたくなります。  
 
「星野さんもびしょ濡れだよ、風邪ひいちゃうから早く着替えたほうがいいんじゃないかな?」  
 
コトー先生はそう言うと、ひょいとバスタオルを私の方に投げてくれました。  
気がつくと私のナース服もびっしょり濡れていて、肌にぴったりはり付いて気持ち悪いし  
ブラなんて透けて見えちゃってるし・・・このままじゃあまりにも恥ずかしいし、  
何より先生に見られたくないし・・・  
先生の言われる通りにさっさと着替えようと思って、ロッカーを空けたら・・・  
「きゃーー!信じられない!」  
ロッカーの丁度上の天井から雨漏りが!水は中に流れ込み、当然、今日着てきた服もすっかり湿気っぽくなってしまい、着替えは予備のナース服しかなくなってしまいました。  
 
『・・・・下着までびしょ濡れなんだもんなぁ・・・このままいるのも気持ち悪いなあ・・』  
かと言って、先生の服なんて借りるわけにもいかないから、予備のナースウェアを  
もう一着出して、着替えることにしたのです。  
『下着着けないままだし・・・でも、この生地薄くないから透けないよね・・・それに  
こんな大雨じゃ先生との世間話目的の患者さんは来ないだろうし・・」  
 
空はどんどん黒い雲に覆われ、荒れ模様となる様子です。  
揚げ句の果てに雷鳴までが唸る始末。  
 
「星野さん、雷が鳴る前に戻れてよかったねー♪」  
すっかり着替え終わったコトー先生はのん気に麦茶なんて飲んでます。  
そんな私は下着を着けていないことを先生に悟られないように、ヘンに気を使う羽目になり、  
この日だけは急患さんは運ばれてほしくないなあ、と心から思った次第なのですが・・・  
 
「ん?星野さん、この麦茶やたらに濃い味がするよ。でも美味しいなあ。」  
ふとコトー先生の飲んでいる麦茶に目をやると・・・あれは・・!  
ま、まさか!内さんの・・・!  
そうです。コトー先生が飲んでいたお茶。あの色はどう見ても内さんの作った  
あやしい煎じ薬・・・なのです。  
「星野さんも、一息つこうよ。はい、麦茶。」  
 
そう言うと先生は私にそのお茶の入ったコップを手渡してくれました。  
せっかく先生が勧めてくれたので、むげに断るわけにもいかず、思わず  
手に取ってしまいました。  
よく冷えたそれは、たしかにちょっと濃い麦茶と変わらない味でわりと飲みやすい  
ものでした。  
 
『そういえば、コトー先生に夏バテ対策用に・・って何か置いていった記憶があるなあ・・』  
そんなことを考えているうちに、なんか身体中に徐々に違和感を感じてきたのです。  
 
 
『あの薬、絶対変なものが入ってる・・・!』  
酷い眩暈と身体中を襲う倦怠感。視界に入る物全てがぐにゃりと歪んで見えた途端  
わたしの意識は遠のいていったようです・・・  
その時、同じ物を飲んでいたコトー先生の体調を同時に心配していたのですが  
その時はもう、知る由もありませんでした・・・・  
------  
ぼんやりとした灯に気づいた彩佳は、ゆっくりと目を覚ました。  
倒れたのは、診療室のはずなのに、見慣れない部屋がそこにある。  
自分は、その見慣れない部屋にしいてある布団に寝ている。  
彩佳は、一体何がおきたのかわからなかった。服は倒れた時と同じナース服のままだが  
一つだけ、ボタンが緩められていた。きちんと畳まれたナースキャップが丁寧に枕元に  
置いてあった。  
 
「あ、星野さん、おはよー。びっくりしたよ。急に倒れるから。もう少しゆっくりしていて  
いいからね。何かあったら声かけてね。」  
様子を見に来たコトーが、一安心した表情で彩佳に微笑んだ。  
この部屋は新しく増築されたコトーの部屋で、彼が診察室に寝泊まりばかりしているせいか  
あまり使われた様子は無く、布団もまだ新しい物のようだった。  
彩佳が倒れた時、どうやらコトーがここまで抱きかかえて連れてきてくれたらしい。  
 
『・・・先生・・・たよりなさそうだけど・・・やっぱりこういう所は男の人なんだな・・・』  
普段ヘタレだの最低だの散々言ってるのに、彩佳は頬が見る見るうちに紅潮していく。  
自分よりも全然大きな身体。以外と武骨な手。よく見るとさらさらとした髪の毛。  
そして、この無邪気な笑顔に、何度癒されたことだろう。  
もう一つの魅力は、手術中に、突然変わるあの眼光・・・もう何年、この人を想ってるんだろう。  
そして、ずっとこの想いは気づかれないまま、無意味時間だけ過ぎてゆくんだろうか・・・  
何か悪い熱に患わされたような、なんとも言えない気持ちが彩佳の中で渦巻いていた。  
 
「あれ?星野さん。ほっぺた赤いね。熱があるのかな?雨に当たったのが悪かったかな・・・」  
コトーが、彩佳の額に手を当てる。  
『ひゃぁ・・・っ・・!』  
皮膚に触れる感覚、それがいつもと全く違うものだということに、彩佳は気づいた。  
ただ、手が額に触れただけなのに。何故か甘い倦怠感が身体中を駆け巡る。  
 
「うーん・・・風邪ひいちゃったのかな。ごめんね。僕が傘持っていかなかったから・・・」  
さらりと、自分の髪の毛にコトーの指が擦った事に気づくと、心拍数がさらに上がるのが,  
彩佳自身、身を持って感じた。  
『お願い・・・先生、これ以上近づかないで・・・あたし、なんかおかしい・・・』  
「もう少し、雨が小降りになったら送ってくね。それまで、ゆっくりしていて。何かあったら  
すぐ僕を呼んでね。」  
 
そう言うと、コトーは診療所の方に戻って行ってしまった。彩佳は安堵した反面、何故か残念 
なような、切ない気持ちになった。  
ずっと続く片思い。日増しに想いは強くなるのに・・・好きとも言えない。手すら握ってない。  
過去に、恋心が芽生えたことは何度かあった。しかし、高校での受験勉強や看護学校の実習 
・・・忙殺される日々に、そんな甘い気持ちは掻消えていってしまっていた。  
だから、まともに男の人と付きあったことがない。告白されたことも、何度かあったが、妥協  
することが嫌いな彼女は、それを受け入れることはなかった。  
 
「絶対言えないし、あの先生のことだもの・・・あたしじゃきっと無理・・・」  
コトーは、きっと自分のことは仕事上のパートナーとして信頼しているのだから。  
ただそれだけでもいい。信頼してくれるのなら。不安定な関係でいたくない。  
彩佳を支配していたもう一つの感情が、告白を引き止めていた。ずっと。  
 
ふと気づくと、この部屋はまだあまり生活感が感じない部屋なのだが、所々にコトーの存在を感 
じる物がある。  
無頓着に置いてある普段着や、変なたたみ方をしてある白衣たち。彩佳の横たわっていた布団に 
も、ほんの少し、コトーの匂いがする気がした。  
優しく、コトーに抱きしめられているような甘いこの空気に、彩佳は少し酔っていたようだ。  
 
ふと、自分の下半身にぬるりとした感触を感じ、我にかえると、声をつい出してしまった。  
「ちょっと、やだ・・・!」  
ナース服と布団の一部が、濡れた染みを作っていた。そこからは、隠しようのない女の匂いが  
立ちこめてくる。ほんの少しの甘い妄想と、コトーの僅かな匂いと、あの薬。  
ただそれだけで、自分の身体が反応してしまったのだと彩佳は気づき、あまりの恥ずかしさに顏 
がさらに紅潮した。そして、着替えた時に。下着を着けていなかったこと。  
きっと、倒れた時に、コトーに気づかれてしまっていたのではないかという不安が  
さらに羞恥心を煽った。  
 
「星野さん?! どうしたの?」  
動揺している彩佳の前に、コトーが心配そうな顏をしてやって来た。  
慌てて走って来たコトーの顏を見ると彩佳は一番見られたくない所を見られた恥ずかしさと  
もう隠しようのない『証拠』に気づかれるのが時間の問題という恐怖に近い感情と  
コトーに対するわけのわからない罪悪感・・・パニックと自己嫌悪に耐えきれず彩佳は顏を  
真っ赤にしながら、涙をこぼした。  
「先生、こっちに来ないでください、お願い!!」  
自分がどれだけ失礼なことを言っているかなんて、もうわけがわからなくなっていた  
彩佳は半ばパニックに陥っていた。想像だけで濡れた所なんて、見られたら軽蔑されると  
思ったからだ。  
 
しかし、その彩佳の叫びを無視するかの如く、コトーは部屋に上がり込む。そして、  
無言のまま、彩佳の身体を抱きしめた。彩佳が必死で隠そうとしていた布団と制服の  
濡れた跡もさして気にとめず。一方、彩佳はいきなり抱きしめられた驚きで、さらに自分の 
身体が反応を続けていることに気がついていなかった。  
薄い制服の上から、二つの頂点がその存在を示していることにも、既にストッキングが  
透ける程そこが濡れていることも・・・蜜の甘い匂いを漂わせている自分のことも。  
 
コトーは、パニックに陥った彩佳を落ち着かせるために、どちらかといえば子供を抱きしめる  
感覚に近い感情でついそうしたのだが・・独特の女の匂いが自分の鼻孔を刺激する。  
抱きしめた身体から伝わる柔らかい胸の感触。・・・・あの薬はどうやらコトーの中の何かを  
書き換えたようである。  
 
「星野さん・・・どうやら、あの麦茶・・・内さん特製の何かの薬だったみたい・・・」  
コトーは、どうやら少し遅れてあの薬の効き目が出てきたようだ。  
彩佳を抱きしめるコトーの身体から、熱とそれに伴う汗の湿気を感じる。  
コトーの汗の匂いに、ただでさえ感覚が敏感になっている彩佳の感覚がさらに鋭敏になる。  
「星野さんと、僕の今の身体の感覚って、多分同じはずだよ・・・、けっこうしんどいでしょ・・・」 
そう言ってコトーは脱力し、腕の力を緩めた。  
彩佳の身体を抱きしめていたその腕が一瞬床に置かれると、とろりとした粘液性の  
物が指に絡みついたのを感じ取る。それに気づいた彩佳の表情は凍った。  
 
くん、とその匂いを嗅ぐコトーの姿を見て、もう此処から逃げ出したい気持ちでいっぱいで、  
立ち上がろうとするが、無理に動こうとすると、四肢がもつれる感覚に囚われ、更に慌てた。  
あの液体が何なのか、彼にはもう分かっているだろう。  
彩佳は、もう身体のいうことが効かない時点で此処から逃げることを諦めた。  
 
「お互い厄介なモノ飲んじゃったね。僕も、ちょっとしんどいから横になってるよ・・・、  
星野さんも効き目が切れるまで、休んでたほうがいいよ・・・」  
そんな声さえ誘いの声に聞こえる程の淫らな空気がこの部屋には漂っていた。  
横になっているはず・・・なのに。次の瞬間、コトーは彩佳をよりきつく抱きしめた。  
彩佳の匂いが引金になり、コトーの理性が弾けてしまったようだ。  
次の瞬間、彩佳の唇はコトーの唇によって塞がれていた。舌が強引に割って入り込み、  
息の出来ない想像もしていなかった激しいキス。最初は驚きのあまりつい抵抗していた  
彩佳の目が、想い人とのキスが深くなるにつれて陶酔の表情を醸し出す。  
 
「やぁ・・・んっ、せ・・せんせ・・あっ・・・はぁ・・・」  
コトーは白いナース服から存在を示している豊かな胸に手を置き、やわやわと揉みしだく。  
下着のつけていないそれは、あまりにも柔らかく、その頂点ははっきりと存在を示して  
固くなっていた。コトーは、その頂点を親指の腹で、優しく撫ではじめた。  
 
暫く胸先から感じる甘い感覚と、ついばむような軽いキスを繰り返され、彩佳はその快感に  
酔っていた。しかし、その愛撫が止まり、甘美な時が一瞬止まる。  
湿った吐息混じりに、コトーが言った。彼の中に残る僅かな理性が、一瞬コトーを冷静にさせたのだ。  
「星野さんごめんね・・・僕、とんでもないことをしてしまったね・・・ごめん、僕のことを  
思いっきり蹴っ飛ばすか殴ってくれないかな、そうしたら多分止《や》め・・・」  
コトーの言葉を止めたのは、彩佳が発した思わぬ告白だった。  
「・・・嫌だったらもう蹴っ飛ばしてますよ・・・先生だから、コトー先生だから・・・  
抵抗できないんですよ・・・」  
コトーは、彩佳の言葉の真意を理解出来ていないようで、こんな場面でも鈍さは相変わらずだった。  
「・・・え・・・僕のこと、そんなに怖い?・・・僕は星野さんが怒る方が怖いけど・・・」  
「ホント鈍いんだから・・・こんな時に言うのも変ですけど・・・はっきり言います!わたし、  
ずっとコトー先生に憧れてたんですよ!そういう人にこういうことされたら、嫌なわけないじゃ  
ないですか・・・!」  
コトーの相変わらずの鈍さと、意を決した告白、そして途中で愛撫を止められ、言いようのない感覚が  
彩佳の中に渦巻いていた。  
「・・・わたし、こういうことされるの、初めてなんです・・・!でも、コトー先生なら・・・んっ・・」  
「ごめん・・・」  
先と違う、強い口調でコトーが応えると同時に、再び唇を塞がれた。  
 
一つだけ外してあったナース服のボタンが、次々と外され、先ずは彩佳の形の良い胸が  
露になった。ピンク色の先端が、つんと固く尖りコトーを誘った。  
唇が首筋から鎖骨、乳房へと触れる度に、彩佳は湿った吐息を漏らす。  
彩佳の滑らかな吸い付くような肌に、コトーの指と唇が辿ってゆく。やがて、唇が  
固く尖った乳首に辿り着き、コトーはそれに吸い付き、舌で舐め上げる。円を描くように  
舌で攻める。  
「あっ・・あ、せんせい・・・やぁ・・・んっ・・・あんっ!」  
彩佳のいやらしい声に、コトーが湿った熱を帯びた声で応える。  
「すごく可愛いよ・・・星野さん・・」  
彩佳は、そんなコトーの声にすら、身体を反応させてしまう程であった。  
舌で胸への愛撫をしつつ、コトーの腕が、ナース服のスカートの裾から潜り込む。  
彩佳は一瞬我にかえり、あまりにも反応しすぎた『そこ』を触れられることを反射的に阻止しようとしたが、コトーの指がストッキング越しに辿り着く方が早かった。  
既にストッキングは何の意味をもなしておらず、秘所からのとろとろとした愛液がコトーの  
指に絡みついた。  
「こんなに・・・我慢してたの・・・?さっきのは、これだったんだね。」  
「あ・・んっ!それ・・は、先生のせい・・っ・・・んっ・・だ・・だめ!それ以上しちゃ・・・ああんっ!」  
ストッキング越しに彩佳の秘所を、くちくちという粘液の音をさせながら弄る。  
一つ、熱を帯びた膨らみをコトーは指先に感じる。そこは少し固く、ストッキング越しにもはっきりその存在がわかる。  
彩佳のそこを人差指でやんわりとなぞると、ひと際甘い声を出し、のけぞった。  
指が動くたびに、既に達してしまいそうな感覚にすら陥るのを、彩佳は必死で耐えた。  
「・・・痛くしないから・・・ここまで来たら、ちゃんと責任は取るからね・・・」  
コトーは、彩佳のスカートをたくし上げ、ストッキングを一気に下ろした。  
 
コトーは、さっきまで彩佳が穿いていたストッキングを取り去ると、スカートの裾から  
再び右手を差し入れる。薄い茂みをかき分けて、彩佳の秘裂に指を這わせる。  
ゆっくりと、壊れ物を扱うかの如くのタッチで割れ目に沿い、撫で上げる。  
少し固くなった小さな膨らみに指の腹が当たると、そこをさらにソフトタッチで擦りはじめる。  
「ちょ・・・ちょっとせんせ・・・!ダメぇ・・・!」  
直接の指の刺激は、一人で慰めていた時とは比べ物にならないくらいの感覚だった。  
そこが一番感じる所とは自分でもわかっていたのだが・・・・  
脳天が痺れるほどの快楽。コトーは、それでも彩佳の顏を見つめたまま、指先からの優しい  
甘い愛撫を繰り返す。彩佳は、コトーの顏をまともに見つめられなかった。  
『あっ・・・やだ・・・先生、そんな目で見ないで・・・』  
いつもは強がってコトーの前で怒ったり、憎まれ口を叩いたりしていた自分。なのに、  
今、見られている自分の姿は淫らな、快楽に喘いでいる無防備な自分なのだから。  
 
「星野さんが嫌なら、ここでもう止めちゃおうか?」  
コトーは指の動きを止め、ニコリと微笑むが、先程迄の優しい笑顔とは違う。  
・・・今度の笑顔は確実に確信犯の顏。  
「・・・ばかっ・・・ホントにデリカシーないんだからぁ・・あっ、はぁ・・」  
その言葉を聞いて、コトーが再び笑う。そんな狡いコトーに彩佳も、つい苦笑いを返す。  
彩佳のそこは、既に指の摩擦すら感じなくなる程に濡れている。彼女は無意識だろうが、  
より強い刺激を求めて、自分で腰を押し付けてきている。  
コトーは、少し指先に抵抗感を感じると指での愛撫を止め、彩佳の膝の上に濡れた手を置いた。  
 
「星野さん、ちょっと身体の力を抜いてリラックスして。これ、脱がせるからね。」  
コトーはそう言うとナース服の脇のファスナーをゆっくり下ろした。既に衣服はただ身体に  
『まとってある』状態。もう、これではほぼ裸になっている。  
よく見ると、コトーは白衣すら脱いでいないのだ。そんなことに気がついた途端に、  
コトーはゆっくりと彩佳の脚を開き、今度は顏を近づける。  
そこに、ふうっ、と熱い吐息が吹きかけられ、彩佳の身体がびくん、と跳ねる。  
「力抜いて。気持ち良かったらそのままイっちゃっていいからね。」  
ちゅくっ、と音を立てて秘部に再び触れたのは、コトーの舌先だった。  
 
「きゃあ!せ、先生、どこ舐めて・・・!やっ、あああん!だめぇ!やだぁ・・・あん、だめぇ!」  
ダメ、と言ってるわりには、彩佳の抵抗は最初だけだった。  
コトーの舌から、クリトリスに与えられる感触は指よりもさらに繊細なもの。  
しかし、快感はもっと強烈なものだった。  
コトーの舌は、秘裂の上から、小さな膨らみ、さらに濡れそぼった膣口へと辿り着く。  
それぞれの反応を楽しむ余裕のあるコトーに対して、彩佳の脚はガクガクと震えはじめ、  
少し力が入ってきている。  
コトーが、少し舌先を尖らせて彩佳のクリトリスを突くように攻めたり、さらに舌の中心部で  
ざらりと舐めたり、下から上に舐め上げたりを繰り返しているうちに  
彩佳が、息も絶え絶えに懇願した。  
 
「せんせ・・・ぇっ、もうあたしイっちゃう・・・!せんせ・・ああっ、コトーせんせぇ・・・!」  
コトーが、限りなく優しく舌先をそこに押し付けた時。  
次の瞬間、彩佳の頭の中は全てが真っ白になり、何もかも眩しく見えたと思った途端、  
意識がそこで途切れた。  
身体が反り返り、コトーの唇と舌にさらに強く腰を押さえつけるような体制で、彼女は一度目の  
絶頂を迎えた。  
 
 
コトーは、濡れた口元を白衣の裾でぐい、と拭った。  
彩佳のそこは、自らの愛液とコトーの唾液と、互いの汗が混ざった液体で濡れている。  
そして、あまりの快楽に意識を失った彼女の髪を、コトーが優しく撫でる。  
すべやかな、細く柔らかい髪の毛の感触が心地よく思えた。  
少し間をおいて、髪の毛を撫でられる感覚によって、彩佳は目を覚ました。  
気絶していたといっても、ものの1・2分くらいなのだが、とても長い時間に感じた。  
 
「彩佳さん、凄く可愛かったよ。いつもこんなに素直だといいのに。」  
心なしか、コトーは嬉しそうである。悪戯が成功したような子供のようだ。  
「ばっ、ばかっ・・・!からかわないでください・・・!」  
彩佳は自分がどんなに甘い声を出して彼を呼んでいたのか、彼の手と舌の愛撫に  
どれだけ悦んだのか、どれほどいやらしい姿を彼に見せていたのか・・・  
先程までされていたことを思い出し、急に羞恥心の方が強くなる。  
 
「・・・薬の勢いだったんですか。それとも、雰囲気に流されたんですか・・・」  
何故か、悔しい。ちゃんと告白をしたわけでもないのに身体の関係を持とうとしている。  
増してや相手は、人としても医師としても尊敬しているコトー。  
この後、お互い平常心に戻った時にどうなるのだろう。ぎくしゃくする関係になるのを  
彩佳は恐れていた。プライベートにも、仕事にも覿面に影響だろう、それが怖かった。  
 
落胆気味の彩佳の様子を見て、コトーが答える。  
「やれやれ・・・きっかけはたしかに雰囲気や薬だったかもしれないよ。でもね、僕は  
好きじゃない人にキスしたり・・・その・・・身体に触ったりとかとても出来ないよ。  
そんな器用な人間じゃないからね。男としては情けないかもしれないけど。」  
コトーは少し拗ねた様子だ。声のトーンがいつもより低い・・・  
失礼なことを言ってしまったと、彩佳はその時気づいた。  
 
「そ、そんなことないです!情けなくなんかないです!コトー先生は!んっ・・・」  
それに気づいた彩佳が、慌てて前言を撤回しようとした時に突然耳元で囁かれた。  
「言ったでしょ。ちゃんと責任は取るから、痛くしないから・・・って。」  
そう言いながら、コトーは未だ熱を帯びている彩佳の秘部を再び指でゆっくりなぞる。  
「あっ・・・!やぁ・・んっ!」  
花弁のまわりを優しく撫でると、ひくん、とそこが痙攣する。面白い程素直に反応する。  
「それに、僕はここで止められるほど紳士でもないからね・・・」  
充分すぎるほど潤った入り口に、コトーが人差指をゆっくりと挿入しはじめる。  
 
『絶対この人わざとやってる!楽しんでる!・・・でも・・・』  
そんなことを考えていた彩佳だったが、それ以上に自分の中からコトーの指の感触を感じると  
正直どうしたらいいかわからなく、戸惑った。実際、クリトリスに与えられた甘く溶ける  
ような快楽とは違う。もっとダイレクトに侵食してくる感じだ。  
狭く固く拒む彩佳のそれを、ゆっくりと柔らかく、受け入れやすくするための指からの愛撫。  
もしかしたら少し痛みを伴うのではないかと気が気ではない。しかし、それ以上、  
何か自分の中で期待しているものがある。  
「身体の力は抜いて・・・そう。まだ固いけど大丈夫。充分濡れているから、痛くないからね。」  
コトーがゆっくりと指を出し入れする。その度に、くちゅ・・・ぬちゅ・・・と音がする。  
「はぁ・・・っ・・・んっ・・・ふぅ・・・んんっ・・・」  
彩佳の深い呼吸と嬌声は暫く続いた。膣内への愛撫は最初違和感を感じていたようだが  
愛液の淫らな音と、この甘ったるい雰囲気と、コトーの身体から伝わる温もりを感じ、  
少しずつ自分の身体の奥から、何か火を灯されるような熱さを感じてくる。。  
外は雨が止む気配はなく、むしろ雨足が強くなっている上に風も強さを増している。  
『・・・お願い・・・今夜は急患が来ませんように・・・』  
彩佳は、コトーに自ら手をまわし、唇から強引に舌を潜り込ませ絡ませた。  
彼女のキスは上手なものではなく、不器用なものでたまに舌を噛む程だった。  
しかし、そんな不器用さがコトーの独占欲をさらに掻き立てていった・・・  
 
「さてと・・・僕もそろそろ我慢できなくなってきたからね。」  
コトーは、白衣を脱ぎ捨て、シャツを脱いだ。さんざん隠れ肥満だの、不健康だの  
言いたい放題言っていたコトーの身体。見た目にはわりと均整が整っている。  
そして、彩佳が小柄なせいもあり、余計に彼の身体はしっかりとした、男らしいものに見える。  
ベルトを外し、トランクスも脱ぎ捨てて自らも裸になると、そのまま彩佳を抱きしめた。  
「あ・・・っ」  
直接触れ合う肌と肌の感触は何て心地良いものなのだろうか。それだけで、溶けてしまい  
そうな感覚に陥る。相手の身体に、取り込まれてしまうのではないかという錯覚さえ感じる。  
「彩佳さんの肌って気持ちいいねえ。綺麗な肌してる。」  
そう言いながら、彩佳の脇腹に指をつい、と滑らせる。  
「やっ・・・!コトー先生!」  
びくん、と身体が反応する。すると、再び肌と肌が擦れあい、余計に感覚は鋭敏になってくる。  
「こことか、気持ち良いんじゃないかな。あと、こことか。」  
うなじ、おへそ、尾てい骨、太股の内側へと、あちらこちらにコトーは指を滑らせる。  
その度に彩佳は身をよじらせ、甘い声を出しながら何度も身体が跳ねる。  
「やぁっ・・・んっ・・・コトー先生・・・ダ・・・ダメです・・・ってば・・・」  
何度か擦れていた胸先が再び固く尖り、肌全体が淡い紅色に染まっている。  
コトーは再びその先端に舌を這わせると、互いの肌が徐々に汗で湿り気を帯びてきた。  
 
しばらくその甘い快楽に酔っていた彩佳だったが、自分の下半身に、何か固い物が当たって  
いるのを感じた。  
それはまぎれもないコトー自身で、欲望を今にも吐き出しそうな程固く起立していた。  
男性器は仕事柄、何度も目にしていて驚く物などではなかったが、これが好きな人の  
場合ならまた別で、まともに見ることがどうしても彩佳には出来なかった。  
しかし、彼女が身を捩らすたびに、そこが擦れて余計に存在を誇示させてくる。  
 
「ん?気になる?」  
必死にそこから目を反らそうとする彩佳の様子にコトーは気づいた。  
そして一言、こう耳元で囁いた。  
「触ってみる?」  
その一言に驚いた彩佳は、コトーの身体から離れようとした。しかし、コトーががっちり  
背中に腕をまわしている。逃れようにも逃れられない。そして、この人にこんな強い  
力があることに、さらに驚いたが、ここまで来てしまえば意を決するべきだと、彩佳は  
コクリと頷いた。その顏は酷く紅潮し、コトーにとってはまたそれが可愛らしく思えた。  
おそるおそる触れると、それは自分が想像したものよりはるかに固く、脈打っていた。  
驚く程の熱さと・・・大きさに、恐怖すらおぼえた。  
『・・・こんなに大きいのが・・・本当に入るの・・・?』  
 
不安そうな彩佳を見て、コトーが腕を緩める。  
「もしね・・・怖いとか、嫌だったら言って。そこで止めるよ。『痛くしない』って言ったけど、  
彩佳さんがどう感じるかは、僕には想像がつかないからね。」  
コトーが彩佳の頬に手をあてながら自分自身を戒めるように、ゆっくりと話す。  
少し、やりすぎたとコトー自身がブレーキをかけた。初めて男を受け入れる彩佳の気持ちを  
まずは考えるべきだったと、彼女の表情を見て気づいたのだ。  
 
「・・・怖いけど・・・嫌じゃないですから・・・。」  
彩佳はそう答えた。破瓜の痛みに恐怖を感じているのは事実だ。しかし、それと同じ程、  
いやそれ以上に彼に自分の身体を開いて欲しいと本能が訴えかけている。  
その証拠に、膣口から太股にかけては蜜でびっしょり濡れている。彩佳がコトーの手を取り、  
自分の秘所に、その指先を触れさせた。  
「こうさせたの、先生ですよ・・・痛いのは我慢できます・・・あたし、コトー先生となら、  
後悔なんてしません・・・」  
コトーの指と彩佳の秘所の間に、透明な糸が引く。  
「・・・わかった。優しくするからね。君のことが……だから・・・」  
その言葉に、一瞬彩佳は耳を疑ったが、最後の方は彼の吐息にかき消され  
全てを聞き取ることは出来なかった。  
 
コトーはゆっくりと、彩佳の身体を布団に沈めた。  
かすかに、彼女の指先が震えていることに気づくと、その手を優しく握り、頬や唇への  
優しいキスで、彼女の緊張を少しでも和らげるよう、ゆっくりと丁寧に彼女の身体を  
開く準備をした。  
「大丈夫だからね・・・力抜いて・・・脚開いて。」  
コトーの優しい声と、身体から伝わる温もりが彩佳にとっては狂おしく感じる程愛しく  
思えた。好きになったのがこの人でよかった、と心から思えた。  
「ゆっくり・・・時間をかけるからね。我慢できなくなったら、言ってね。」  
コトーが自分のものを彩佳の膣口に当てると、その先端で充分潤っていることを  
確認し、ゆっくりと腰を沈ませてゆく。  
 
「あっ・・・あああ!っあ!」  
異物感を局部に感じ、彩佳が声を上げた。少しずつ、少しずつ自分の身体に、  
コトーの陰茎が入ってくるのがわかる。鈍い痛みが、徐々に強くなってくる。  
愛液と唾液で濡らされているとはいえ、男を受け入れたことのない彩佳の中はまだ固く、  
締めつけもかなりキツかった。  
コトーが自分の陰茎に痛みを感じるほどのきつさだった。  
「・・・ひっ・・・くっ・・・ああっ・・・!!」  
『痛い』という言葉を必死にこらえている彩佳の表情はあまりにも辛そうだ。  
コトーは彩佳の髪を撫でながら、彼女の目にうっすら涙が溜まっているのを見た。  
それを見て、『痛くしない』と言った自分はあまりにも無責任だったと、ここで  
一旦自分のモノを引き抜こうと思い、一旦腰を引こうとしたが、彩佳がコトーの首に  
手をまわし、そのまま、強く抱きついてきた。  
 
「・・・止めないでください・・・そのまま、続けてください・・・あたし、  
コトー先生にもちゃんと気持ち良くなってほしいです・・・」  
息も絶え絶えに彩佳はコトーに訴えた。まだ、陰茎の先端部分しか入っていない。  
これからさらに強烈な破瓜の痛みが襲う。それは彼女も覚悟の上だった。  
 
膣内の肉壁を進んでいくうちに、一瞬、コトーは先端に抵抗感を感じた。  
そこに進む時に、強い抵抗があった。コトーがそこに進入してきたときに、  
彩佳の顏が激痛に歪んだ。・・・破瓜の痛み・・・  
「ひっ・・・・いっ痛い・・・・!痛い・・・!」  
あまりの痛みに、さすがに我慢強い彩佳も涙がこぼれて止まらなかった。  
コトーは最初、あまりに彩佳が痛がる姿を見て、もうここで止めたほうがいいのかと  
思ったが、彩佳が決して自分の身体を離してくれない。  
「このまま・・・しばらくいたほうがいいね・・・」  
コトーは一旦、腰を進ませることを中断した。  
彩佳の髪を撫で、額にキスをすると、そのまま頬…唇…首筋へと舌を這わせた。  
繋がったままの状態。優しいキスが、胸元…乳房…胸先へと施される。  
コトーは彩佳の左の胸先に吸い付き、右手でもう一つの実を摘み、指で丹念に愛撫した。  
性交時に、胸の愛撫が施されると感度が強くなる。それは彩佳も例外ではなかった。  
 
コトーを締めつける内部が、ひくひくと痙攣しはじめた。  
彩佳も、自分の中で感じる痛みより、そちらへの甘い刺激に火が灯されたようだ。  
また、丁寧な愛撫により、さらに内部が潤い、少しずつ、少しずつ彼女の身体が  
開いてゆく。コトーはタイミングを見計らい、少しずつ中に進めていった。  
愛撫を重ねた指が下へと滑ってゆく。ゆっくり、焦《じ》らしながら。  
辿り着いた先は・・・一番、彩佳が感じる場所。先程彼女が達した時に一度は  
その包皮の中に隠れた物を膨らまそうと、コトーは指で触れるか触れないかの  
感触を与えながら、少しずつそこに膨らみを与えてゆく。  
「あっ・・・んっ・・・きもち・・・いい・・・コトー先生・・・気持ちいい・・・」  
身体をくねらせ、中はひくん、と痙攣を何度か繰り返す。クリトリスへの愛撫を  
丹念に繰り返し、彩佳が甘い快楽に浸っているうちに、コトーがさらに進入してゆく。  
彩佳は、鈍い痛みと熱さを膣内に感じつつも、与えられる優しい愛撫に翻弄されていた。  
暫く、コトーの愛撫と彩佳の甘い声が続く。  
その頃、彩佳の痛みはかなり引いていた。ちりちりとした痛みがあるが、我慢できる。  
その時、コトーが彩佳の頬を撫で、唇に軽いキスを落とした。  
「頑張ったね・・・全部、入ったよ。」  
 
『えっ!?あんなに大きい物が入っちゃったの!?』  
彩佳は、信じられなかった。これが自分の中に入ったら裂けてしまうのではないかという  
恐怖で先程までいっぱいだった。だが、コトーの優しく丁寧な愛撫に翻弄されているうちに  
しっかりと繋がっていたのだとは・・・たしかに、重い異物感・鈍い痛みと違和感が、  
膣内から感じられる。でも、今一つ実感が湧かないのだ。嬉しいのには変わりないのだが・・・。  
 
「痛い?」  
コトーが優しく聞いてくる。彩佳は、彼が自分の身体を心配してくれるのが嬉しい。  
「そうでもないです・・・大丈夫ですよ・・・」  
今一つ、なんか釈然としていない様子の彩佳の様子にコトーが気付く。  
「うーん、入ってるって感じ、あんまりしないかな? でも、ちゃんと根本まで入ってるよ。」  
コトーの指・舌の愛撫は気が狂いそうになる程の気持ち良さだったのだが、  
実際、男性器が入ってくると痛かったし、違和感も感じる・・・そんなことをぼんやりと  
考えていた時だった。初めての彼女としては、苦痛を通り越してやっと入ったという安堵感が先に出てしまった。  
 
「あまり奥までは突かないからね。とりあえず、ゆっくり動いてみるから。  
痛かったら、我慢しないで僕に言ってね。」  
「は、はい・・・」  
彩佳が、そう答えるとコトーは腰を引き、それを押し戻す動作を繰り返し始めた。  
コトーが、ゆっくりと動き始める。奥の方ではなく、わりと浅い所を往復している。  
奥の方は鈍感だということは、コトーも知っているから、初めての彩佳にあまり負担を  
かけたくなかった。  
「っ・・・んっ・・・」  
彩佳の表情はまだ苦痛の方が強そうだった。  
二人の繋がった部分からは、お互いの体液と破瓜の時の血液が絡み合い、  
互いの性器をべっとりと濡らし、零れ落ちたものはシーツに、薄赤色の染みを作っていた。  
 
「ああん・・・っ、あっ、あっ、んっ」  
暫く往復しているうちに、彩佳が甘い声を漏らしはじめた。  
クリトリスからではない、別の部分から火がつくような、違う刺激を徐々に感じてきた。  
徐々に彩佳からは、最初に繋がったばかりの時よりも、多くの愛液がとろとろと流れてくるのが  
わかる。潤い、滑りが良くなった内部は、コトーにとってもたまらなく気持ちの良いものであった。  
 
コトーが、入り口から少し奥の部分をこつん、と先で突いた時に、彩佳は「ひゃあ!」と  
声をあげ、身体をビクンと跳ねらせた。  
「そっ、そこはダメですっ!」  
彩佳が、コトーの身体を一生懸命押しのけようとする。しかもかなり慌てた様子で。  
「あれ?彩佳さん、どうして?」  
すると、彩佳は真っ赤になって答えた。照れとかではない。本当に恥ずかしそうだ。  
「そ・・そこ・・・擦れるたびに・・・お・・おしっこが出そうになるんです・・・」  
自分の好きな人に、尿意を伝えるなんてなんて恥ずかしいことなんだろうと思った。  
今は羞恥心でいっぱいだ。本当にそう思ったのだから。しかも、よりによってこんな時に。  
しかし、コトーはあまりにもあっけらかんとしている。ニコニコとほほ笑みながら、あっさり言った。  
「じゃあ、このまましちゃっていいよ。我慢しなくていいから。」  
彩佳の反応は予想どおりパニック状態。  
「えええ!絶対嫌です!!!もう、抜いてください!コトー先生ってば!」  
しかし、コトーは自分のモノを、抜こうともしない。  
「僕はぜーんぜん平気なんだけどなあ。」  
それを聞いて、彼女の頭の中は沸騰したも同然だった。もう、さっきまでの甘い気持ちも、  
今までのコトーの優しさも、ちょっと意地悪なところが逆に興奮させられてしまった所まで・・  
それらを全て吹っ飛ばすような羞恥心が、彼女の頭の中を真っ白にしてしまった。  
『・・・やっぱり先生は無神経でデリカシーの無い人だっ!すごいエッチだし!おまけに変態入ってるし!』  
それだけは嫌!と首を横に振る彩佳を見ても、コトーは余裕綽々である。  
「彩佳さん・・・もっともっと気持ちがいい場所が君の中にはあるんだよ・・・それが、ココ。」  
 
しかし、コトーはこれ以上その部分を攻める様子は無さそうである。  
「まぁ・・・でもね、あんまり強い刺激を与えると逆にツライ場所だからね。  
もう、これ以上ここは攻めないからね。・・・ゴメンね。」  
半分泣き顔の彩佳を見て、またやりすぎた、とコトーは反省する。  
何故、こんなに調子が狂うのだろうと、コトーは自分の中に渦巻く感情に戸惑っていた。  
それが何なのか・・・もうわかっているのに。  
 
「・・・ゴメンね、彩佳さん。」  
さっきまでの意地悪なコトーの声ではなかった。  
「優しくするって、言ったのにね。でも、君が可愛いんだ・・・だから、つい・・・こう、なんて  
言うんだろう・・・うーん・・・ちょっと・・・うーん・・・・」  
言葉に詰まってしまったコトーは、次に何といって良いか、考えあぐねていた。  
なんかその様子が可笑しくて、彩佳はつい笑ってしまった。  
 
「あ、ひどいなー!僕、これでも色々真剣に考えてるんだよ!」  
コトーがちょっとムキになる様子が、彩佳には何故か可愛くてたまらない。  
おそらく、一回りは年の違う、今まで雲の上のような存在だったこの人が、こんなに  
自分の前で色々な表情を見せてくれるのが嬉しくてたまらない。  
 
「好きですよ、コトー先生。あたし、コトー先生のこと大好きですから。」  
あまりにも、自然に口を突いて出た言葉。それは彩佳のまぎれもない本心だった。  
「だから、本当はすごく嬉しいんです。コトー先生と・・・こういうことになって・・・」  
コトーの頬を撫で、彩佳は少し照れながら告白した。  
 
すると。動きを止めていたコトーが、彩佳の身体を突然抱き起こした。  
正常位の状態から、コトーに対面する形で抱きかかえられた彩佳は、いきなり体勢を  
変えられ、自分の中で摩擦するものの刺激に反応し、びくんと身体が跳ねた。  
 
「ちょ、ちょっと先生!いきなりどうしたんですか!」  
すると、コトーはそのままの体勢で、彼女の中を突いてきた。  
形の良い彩佳の乳房が揺れると、片手でその一つを揉みしだき、もう一つの先端を含み、  
彩佳の腰を淫らに揺すらせた。  
コトーの陰茎は、抱き起こされた体勢により、彩佳のクリトリスに丁度、刺激を与える  
かたちになり、中では彩佳の肉壁を何度も擦り上げる。彩佳は、その動きにあわせるかのように、  
甘い声を上げはじめ、徐々にそれは悲鳴にも近いものへと変わっていった。  
 
コトーは、彩佳の耳元で、低い声で囁いた。  
「ちゃんと繋がってるんだよ、ほら、ここ。」  
コトーは自分の陰茎を引き抜き、互いの体液に滑る部分をわざと彩佳に見せつけた。  
「彩佳さんのが、捕らえて離してくれないんだ。ホラ。」  
滑った彼の陰茎にぴったりと自分の花弁がはりついているのを目の当たりにすると、  
本当に繋がっているという証拠と、コトーの挑発してくるような態度と言葉に、みるみる顏が紅潮していく。  
「・・・やらしいね。彩佳さん。」  
彩佳を挑発するようなコトーの言葉と、それに飲み込まれる彩佳。  
さっきは、本当に恥ずかしくて死にそうだったのに今は、悦びに変わっている。  
 
コトーは身体に無理をさせない、というのを律義に守っているのか、あまり深い所はやはり  
突いてこない。自分がさっき嫌がった所も、攻めてはこない。  
しかし、彩佳の中もう既に何かがはじけてしまっている。本能が訴えているのだ。  
『もっと深く繋がりたい』『この人と溶け合いたい』と。  
破瓜の痛みはその頃には、もう忘れていた。痛み自体はあったのかもしれないが、気にもとめなかった。  
 
セックスが、急に激しさを増した理由・・・それは、ほんの些細なコトーのジェラシー。  
甘く乱れる彩佳に聞こえるか、聞こえないかの小さな声で、コトーは囁いた。  
「僕が、先に言いたかったな・・・『君が好き』だって・・・」  
独占欲や嫉妬。・・・身体の中から押し寄せる本能。・・・そして狂おしい程の愛しさ。  
自分の中にずっと封じ込めていたコトーの、まぎれもない本当の想いだった。  
不器用だった二人の想いが溶け合う。辿り着く所が、徐々に、二人に見えて来た。  
 
抗うことが出来ない程の、狂気に近いような愛しさの中で求めあうことを  
初めて知った二人。  
あれ程嫌がっていた『感じすぎる部分』を、彩佳は夢中になってコトーの陰茎に  
当たるように、自ら腰を動かしていた。彼女自身気付いていなかっただろうが、  
もっと強い快感とコトーを悦ばせたい感情が彼女をそうさせていた。  
先程まで恥じらっていた自らの淫らな姿を、もっと彼に見てほしくて。  
嬌声はより甘いものへ、反応はより深いものへと変化していく。  
 
先に限界が来たのは彩佳の方だった。  
中が酷く熱くてたまらない。この熱を、この人だけに解放してほしい。  
それは、初めて味わう強烈すぎる快楽。精神的にも、肉体的にも何もかも満たされ、  
彼によって昇りつめてゆく彩佳は、コトーに一層強く抱きつき、身体をぎゅうっと密着させた。  
先程も見た、全てが光に包まれるような感覚。しかし、それはもっと強烈なものだった。  
「いやぁ・・・っ、コトー先生、あたしイっちゃう、ダメ、だめ!もうイっちゃうーーー!」  
彼女の動きが一瞬止まり、硬直する。中はコトーの陰茎を何度も締めつけた。  
次いで、透明のさらりとした液体が、互いの繋ぎ目から、沢山の滴を落としていた。  
そして、彼の腕の中で、くたりと脱力して身を任せた。コトーは彩佳の身体を  
抱きかかえると、そのままぎゅうっと抱きしめた。  
 
はぁ・・・はぁ・・・と、乱れた呼吸を整えようとする彩佳の髪の毛をコトーは何度も  
撫でた。もう、彩佳は力が入らないようだ。初めてのセックスで2度もイかされ、  
愛液と唾液と汗で身体が濡れ、この空気の熱さも手伝い、どうにも呼吸が整わない。  
それでも、意識が朦朧としている彩佳が、やっとコトーに、自分の意志を伝えた。  
 
「・・・くふ・・・はぁ・・・先生・・・お願い・・・せ、先生も、イって。気持ち良くなって。」  
コトーは何度もイキそうになる感覚をこらえ、彩佳を昇りつめさせることを優先していた。  
しかし、もう彼自身も限界で、中の欲望が捌け口を求めている。  
 
「うん、わかった。彩佳さん、ちょっとキツイかもしれないけど、ゴメンね。」  
そう言うと、まだ呼吸が整わない彩佳を再び抱きしめ、再度彩佳の中を何度も  
突き上げた。彩佳の中はもう気が遠くなる程気持ちのよいもので、コトーの精を  
放つには充分すぎるほどであった。徐々に、コトーは昇りつめていくのが自分でもわかった。  
彩佳は、中の感覚はあまりの快楽に麻痺すらしていたが、今度は  
クリトリスにコトーの陰茎が何度も擦られ、もう一度達しそうな感覚が再び襲ってきた。  
しかし、3度も達してしまえばさすがに、恥ずかしい。2度もイカされたことに自分は  
正直驚いたのだから。  
だが・・・何故この波がまた自分を襲ってきそうだ・・・・  
 
「うっ・・・、僕ももうイキそうだ・・・彩佳っ!・・・くっ・・・!」  
「せんせぇ・・・っ!イって!ああ・・・あああっ!」  
 
コトーはさらに力をこめ、彩佳の身体を抱きしめると中に熱い精を、何度も放った。  
それは彼女の小さな秘穴から、どろりと溢れ落ちて互いの繋ぎ目は体液と血液で  
ぐしょぐしょに濡れていた。  
コトーが身体に力を入れた瞬間、彩佳もその衝撃で再度クリトリスで達してしまった。  
 
繋がる部分からの快楽が、二人の身体を捕らえて離さなかった。  
なかなか互いの身体から離れることが出来なかったが、それを惜しむように、コトーは  
自分のモノを抜くと、どろりと流れ落ちる自分の精液を見て、コトーはすっかり忘れていた、  
非常ーーーーに大事なことに気付いた。  
 
「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーっ!!!避妊しなかった!!!中に出しちゃったよぉぉお!」  
「え゛ーーーーーーーーーーーーーーっ!!!・・・そういえば、そうだった・・・・」  
どうやら、彩佳もすっかり忘れていたらしい・・・  
 
「多分、コンドーム自体この島に売ってないでしょうし・・・それに、あたし暫くは安全日ですよ。  
一応基礎体温は計ってますから。」  
コトーの大失敗?で、すっかり先程までの淫靡な空気も、甘い余韻もいつも通りの部屋の  
空気に戻ってしまった。  
彩佳は以外と落ち着いているのに対して、コトーはすっかりしょげてしまっている。  
「・・・星野さーん・・・基礎体温ってちょっとしたことで狂うからそれだけで避妊には  
ならないんだよぉ・・・まぁ、万が一の時には責任は取るから・・・」  
最後はもう小声だ。彩佳が聞き取れたかどうか。医師としては大失態。  
いつものヘタレなコトーに元通りだ。  
 
「・・・で、星野さん。まだ痛いかなぁ・・・ゴメンね。結局無理させちゃったね・・・」  
丁寧に局部にまとわりついた液体をふき取る。ティッシュには血は殆どついてないが  
布団とシーツに、赤い染みがいくつか跡が残っている。  
コトーの白衣も、彩佳のナース服も互いの体液で染みを作り、結局洗濯物になってしまった。  
 
「まだ、なんか挟まっている感じはしますけど・・・ちょっとひりひりする程度だから  
大丈夫ですよ。って言うか。いつの間にか『星野さん』に戻ってるし。」  
「えっ!?」  
「途中、『彩佳さん』ってなって、最後、『彩佳』って呼ばれた時、すごく嬉しかったんですよ・・・」  
どうやら、コトーは夢中になっていたせいでそんなことは忘れていたようだ。  
「気付かないのが先生らしくて、そこが好きなんですけどね。」  
彩佳は正直、いつものコトーに戻ったのがとても安心した。  
少し残る照れと、なんとなく、くすぐったい感覚が嬉しかった。  
洗濯行きの自分とコトーの下着や白衣等をまとめて、コトーのシャツの上だけを借りて  
洗濯機の方に行こうとした時、コトーの声が後ろから聞こえた。  
「僕も星野さんのこと好きだよ。3回もイっちゃって。けっこうエッチで可愛いかった。  
いつもこんなに素直だとホントに可愛いのに。」  
すると、みるみるうちに彩佳の顏が赤くなっていく。3回もイったことまで、コトーはしっかり  
気付いていた。  
「バカーーーーー!ムッツリスケベ、エッチ、変態!」  
コトーの顏に、彩佳の投げた洗濯物が直撃し、呆気なく彼は撃沈した。  
 
 
洗濯物を部屋中に干しまくり、コトーもパジャマに着替えた。  
外はまだ雨が降り続いているので、結局、彩佳はコトーの部屋に泊まることになった。  
布団は一組しかないので、一緒に眠ることになった。  
過ぎてゆくのは穏やかで優しい時間で、気がつけば、もう午前2時をまわっていた。  
「もうーーっ!内さんったら、変なモノ持ってこないように叱っておこう!」  
「いやー、でも内さんは好意で持ってきたんだから。大目に見ようよ。」  
「だって・・・・」  
「いやー、僕はあの薬に感謝してるよ。」  
「・・・・////」  
こういう時間の方がなんか気恥ずかしいのは何故だろう。洗濯機と、雨の音が響く  
この部屋で、コトーは改めてあの言葉を口にした。  
 
「星野さん、僕のこと『好き』って言ってくれてありがとうね。」  
「えっ・・・」  
「僕も君のことが好きだよ。・・・僕の傍にいたのは、いつでも君だったからね。  
でも、僕も色々あってね・・・君を傷つけたくなかったから、言わないつもりでいた。でも、  
もう隠しきれないから、言っちゃったよ。先に言われた時はちょっと悔しかったかなー。  
僕から言いたかったからね。あちゃーって思った。」  
 
・・・・・・・・・・・・・・  
わたしは、その後あまりの嬉しさに大泣きして、コトー先生を困らせてしまいました。  
この日のことは絶対に忘れません。  
独占欲なんだけど、コトー先生の『あの顏』は絶対誰にも見せたくないです。  
自分が独占欲がこんなに強いなんて改めて驚いたけど、コトー先生の意地悪っぷりや  
それに相反する優しさとか・・・はじめて見ました。これはわたしだけの秘密です。  
すごく恥ずかしくて、怖かったけど、女に生まれてよかったなって心から思います。  
だって、今まで以上にコトー先生のこと好きになっちゃったから。  
・・・・・・・・・・・・・・  
 
 
 
朝一番、誰かが扉を叩く音で二人は起きた。寝不足の状態でぼーっとしながら彩佳がまず  
先に起き、なかなか起きないコトーを無理やり引っ張り出すと奥の部屋から入り口の方に  
向かって二人は実に眠そうにふらふらと歩いていった。嵐はもう過ぎ去り、強い眩しい太陽の光が二人を包んだ。  
 
「おっ、コトー先生おは・・・?ほ・・星野?!・・お、おはよう・・」  
「お・・・おはようございます・・・!?・・・・!!!」  
「コトー先生、すっごくでっかいイシダイが取れたんだ、ホラ!あれ?お父さん?」  
「あ゛ー・・・原さん、タケヒロくん、おは・・・・よう・・・」  
 
朝一番のお客さんは原親子。原さんとコトーと彩佳が固まっているのを、タケヒロは  
不思議そうに見ていた。  
「・・・で、何で星野が・・・ああ、そうかそうか!悪かったな!じゃあな!」  
タケヒロの手を慌てて引いて原はバツが悪そうに走り去っていった。  
「あれー、お父さん、イシダイは?」  
「そんなモン後だ!・・・・ははは、やるな、先生・・・!」  
ほくそ笑む原に不思議そうなタケヒロが後を追う。  
「ねー、どうして星野さんがいたの!?・・・・あーーーーーー!」  
タケヒロもどうやら気付いて、にやーっと笑っていた。  
「お父さん、後でこれ焼いてコトー先生んとこ持っていこうね!へへへ。」  
「・・・そうだな!赤飯でもおまけするか!」  
 
走り去る後ろ姿をぼう然と見送るコトーと彩佳は、これが内さんやシゲさんじゃなくて  
良かったという妙な安堵感と、原さんに見られた大失態に愕然としながらも、  
互いに顏を見合わせて思わず吹き出してしまった。  
 
・・・とは言いつつも。この後二人の関係が島中にバレてゆくのは時間の問題だということを  
まだ気付かずにいた、暢気な二人である。  
眩しい光と、済みきった青空が、今後の二人を象徴するかのように、夏の始まりを告げていた。  
 
 

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