―――5番線から特急きらめき1号金沢行きが発車します…次の停車駅は長浜ぁ〜、長浜です…―――  
「ゆ、夢か…。さ、3時!早く起き過ぎた」  
 
 その朝、葛飾署の管轄内で女性の遺体が発見された。  
「警部補ぉ!被害者の死亡推定時刻は昨日の5時から6時とみられます」  
 
 一方、亀有公園前派出所では…  
「両津!さっさと仕事をせんか!」  
「先輩、今日は始末書を本署に提出しなければいけませんよ」  
「両ちゃん、大変よ。リカちゃんが昨日の4時半から行方不明なのよ」  
「あの早乙女が!?」  
 
 両さん・中川・麗子の3人は葛飾署へ向かった。  
「よぉ両津、早乙女が攫われたそうだな」  
「さ・ら・わ・れ・ただとぉ!どういうことだ、左近寺」  
「俺も知らん、拉致現場に『ときメモ』のソフトが置かれていたということしかわからん」  
「ソフトは初代だろ、本田・左近寺」  
「そうです」  
「そうだ」  
「早乙女を誘拐した犯人を逮捕すんのはかったりーな。本田、ゲーセン行くぞ」  
「せんぱ〜い始末書を出しましょ〜よぉ〜」  
「いけね。忘れてた」  
「先輩、仕事が終わったら署の企画で芦原温泉に行くそうですよ」  
「温泉で美女に囲まれるのも悪くはないな」  
 
 派出所にて…  
「これで今日は交代だけどどうすればいいんだ…」  
「よぉ寺井」  
「両さん、もう交代の時間過ぎているよぉ〜」  
「くそぉ〜温泉がぁ〜」  
「先輩、明日に延びたそうですよ」  
「けどよぉ、小町と奈緒子は婦警どもを連れて名古屋へ行ったぞ」  
 
 翌朝…  
「くそ〜全然集まらねージャンかよ!」  
「仕方ないですよ。急な用事ができる人が多いのですから」  
「先輩、僕達は車で先に行きますから先輩と本田さんは小町さん達と名古屋で合流してください」  
「でも圭ちゃん、奈緒子さんから聞いたけど小町さんが行方不明になったそうよ」  
「早乙女さんの次は小町さんですか…」  
「僕の会社で開発した10人乗りの武装対応キャンピングカーで行って婦警さん達と合流しますので」  
「両津、ちゃんと仕事をするんだぞ」  
「あい、解りましたよ。部長」  
 
 昼になって…  
「マダデスカぁ〜部長ぉ〜」  
「まだだ」  
 
 14時半…  
「両津、達者でな」  
 
 15時57分、両さんはまだ東京駅にいる。だが奈緒子は芦原温泉へ向かっていた!  
 
〜奈緒子に2時間の差をつけられた両さん・左近寺・ボルボ・本田〜  
 
「なぁ本田、ワシ等は名古屋5時57分の奴に乗るんだよな」  
「えぇそうですよ。先輩」  
 
 名古屋に着いた…  
「本田・ボルボ・左近寺、急ぐぞ!」  
 
「ふぅ、やっと車内に着いたな」  
「3号車の3番と4番のABか」  
 
 17時57分、奈緒子に2時間差をつけられたまま両さんたちは芦原温泉へ向かった。  
―――この列車は特急しらさぎ13号、富山行きです。後ろより1号車から順に1番前が8号車です…―――  
「なぁ両津、『ときメモ』の藤崎詩織が検札してるぞ」  
「んな訳ねぇだろ、あれは架空の女だぞ」  
「ですけど先輩…僕と左近寺さんが持っているソフトのキャラと声も外見も瓜2つなんですよぉ〜」  
 
「乗車券と特急券を拝見させて頂きます…」  
 外見は小町でも早乙女でもない。  
 
 米原18時52分。ここで7分停車するが、編成の向きと共に乗務員もかわる。  
 
〜米原駅停車中の列車に乗っている両さん一行〜  
 
「なぁ左近寺、検札した車掌の名札が『JR東海名古屋運輸区 車掌 藤崎詩織』って入ってたぞ」  
「感動だぁ〜!詩織がJRに勤めていたとは!」  
「左近寺、迷惑になってるぞ。しかも有得ない話だ」  
 
♪他の〜誰でも〜ないあな〜たがいて〜  
 
「ワシの携帯だ、中川か」  
 そう言って両さんはデッキへ出た。  
 
プルルルルルルル  
 
―――先輩、奈緒子さんは一緒ですか。  
「いや、全然見当たらんぞ」  
―――そうですか…また後で連絡します。  
「すまんな、中川」  
両さんは席に戻った。  
 
 米原から乗車率が上がってきた。  
 今日は平日とはいえ7割ほどであろう、グレーのシートは過半数が埋まっている。  
 ここからは長浜・敦賀・武生・鯖江・福井・芦原温泉…と停車する。  
 「両津、今度の車掌さんは人気漫画のヒロインに酷似していねぇか」  
「確かにな。それよりも…おい!ボルボ!」  
 ボルボは鼻血を出して卒倒したが、両さんは2人の違いを感じていた。米原までの車掌は活力に欠けていた、が、この車掌は明らかに活力に満ちている。  
「お客様、大丈夫ですか?」  
 
 原発で問題になった敦賀を19時29分に出た後福井県内を行き、かつて金津町に属していた芦原温泉が20時13分、中川達が待っていた。  
「先輩、奈緒子さんがいません!」  
「何だって」  
「兎に角、宿へ行って対策を考えましょう」  
 
 〜早乙女と小町に続いて奈緒子も攫われたので旅館で救出作戦を練ろうとする中川と両さん〜  
 
「なぁ中川、奈緒子は何時から行方不明になったんだ」  
「僕も詳しくは解りません、奈緒子さんは先輩と同行するとバカリ思っていましたから…」  
「まぁいい、とにかく飲んで歌って大騒ぎだ!」  
 
「♪なっかっがわ〜にうか〜ぶ夕日をめがけて〜」  
「♪男なら〜ハラを見せてやれ〜」  
「♪めっざっまし時計蹴っ飛ばし小指がアイタタタ〜」  
「♪卒業しゃし〜んのあの人は〜」  
「♪あぁ〜こ〜年〜も〜夏が来た〜」  
「♪ひーとーりでは遠い明日を夜明け〜と〜」  
「♪あ〜そこは亀有ぃ〜あ〜きっと亀有ぃ〜」  
「♪これぞ恋愛〜やさしい心ね〜あ・な・たメッチャマッチョッしてても」  
「♪今日ぉ〜のあなたは少しやさし〜く感じまし〜た〜」  
 カラオケ会は婦警たちと両さんに占領された。  
 
 翌朝、中川たちは次の宿泊所へ行くこととし、両さんと本田は芦原温泉7時41分発の『はくたか5号』で先に東京へ戻ることとなった。もちろん両さんは寝起きが悪いので『本当の』芦原温泉から寝たまま車内まで運ばれた。2人は5号車に座った。  
 
「乗車券と特急券を拝見させて頂きます…」  
 検札の風景も至極一般的である、車掌の姿と名札を除いては…。  
ありえない人物が車掌なのだ。架空の人物のはずなのに現実にいる!  
「なぁ本田、日暮は寮で寝てるよな」  
「はい、今年は2005年ですからね」  
「だが、この列車の女車掌は『日暮』姓だ」  
 
加賀温泉、小松と停車して金沢着が8時17分、ここで前方に3両を併合し、9両編成で湯沢まで運転する。  
「乗ってんのは殆どワシらだけじゃねぇのか」  
「そうみたいですね…でも指定席のお客さん増えていますよ…先輩」  
 
 8時25分、金沢を出た。問題行動の多い両さんとバイクに乗ると性格の変わる本田は後に犯人と戦うことになる。  
 
―――両津、早乙女君が殺された。  
「いきなりなんですか、部長」  
―――早乙女君の遺体は変装させられ、身元を証明するものは全て抜かれていた。第1の事件で殺されていたのは早乙女君だったのだ。あと、新潟県警からFAXで連絡されたが小町君も殺された。  
 
〜早乙女と小町がこの世にいないことを大原部長から耳にした両さん〜  
「小町もですか!」  
―――そうだ。変装させられて殺された。早乙女君の遺体の方にはソフトの他、『虹野沙希』とやらのレコードが多数遺留品として存在  
する。早乙女君がさせられていたのもその格好だ、犯人は死体に精巧なメイクをさせ、DNAを壊して別人だと思わせた。だが、メイクに  
よって護られていたものが剥き出しになって解った、。『早乙女君はあの時すでに死んでいた』と。そこで本署では早乙女君の人間関係を  
洗うことにしたが、小町君や奈緒子君との接点がない人物ばかりが浮上しそうだ。  
「そうですか…」  
湯沢着が3分遅れの11時丁度だった。  
「本田、新幹線で帰るぞ」  
「せ、先輩…あの人は…」  
「本田、よくぞ言ってくれた。奈緒子と男を追うぞ!」  
「はい、ですが県警の白バイでは…」  
新潟県警の白バイでは精々120q/hしか出ない。それに対して男と奈緒子らしき人物が乗る『はくたか8号』はほくほく線内で160q/h、  
JR管内でも130q/h出すと思われる。しかも、湯沢から高速道路を使おうとすると必ず長岡を通らなければならない。十日町を通った  
としても一般道路しか存在せず、近くに民家が聳えるなど条件も良くはない。さらにはどの道を行くにせよ給油に時間がかかる。  
すなわち、遠くなれば遠くなるほど不利になるのである。  
「先輩、早く乗りましょう」  
「解ったあいつらの席がどこかわかるか」  
「はやくしてくださいよぉ〜」  
11時37分、両さんと本田は例の2人が座っている2つ後ろの席を確保した。  
「あの女は本当に奈緒子なのか?やけに愛想が良すぎるぞ」  
「詳しくは解りません」  
十日町駅が近付いている。  
「乗車券と特急券を拝見いたします…」  
「なぁ車掌さん、ワシらの2つ前の席に座っているアベックはどこまで乗るんだ?ある事件に関係があるんで訊くが」  
「御二方とも魚津まで乗られますよ」  
直江津12時半、糸魚川12時53分、そして魚津着13時23分。駅前には魚津署の白バイが1台だけ用意されている。  
「本田!飛ばしてくれ」  
「解ったぜ!両津の旦那!」  
 本田の他に地元警察の白バイも付いて来ている。  
「追いついてくれよぉ!」  
「旦那!もう一息だ!」  
「本田、頼むぞ!」  
「さっさと車を止めやがれ!誘拐殺人犯め!」  
問題の車が止まったので本田もバイクを降りた。  
「昨日の午後4時ごろどこにいましたか」  
「浦佐にいました」  
早乙女の顔写真を見せたが2人とも知らないという。しかも高性能な嘘発見器にかけて再度やってみたが結果は同じだった。  
「シロのようですね、先輩」  
「奈緒子はいねぇし、帰りの金も無くなっちまった」  
「よければ、帰りの費用とお二方が傷をつけたお車の修理代はは我々が出します」  
本田と両さんは魚津16時10分の『はくたか17号』で東京へ戻った。  
 
17時40分、十日町を出た4分後だ。  
―――両津、奈緒子君が亡くなった…。  
青森県警からの知らせを受けた葛飾署からの連絡である。無論今夜を金沢で明かす中川たちも耳にしたであろう。  
「奈緒子もですかぁ!」  
―――そうだ。また変装させられて殺された。  
「またですかぁ〜」  
―――このままだとお前の減給は避けられないぞ。  
「そんなぁ〜酷いですよ部長ぉ〜」  
―――ワシに言ってもどうにもならんだろ。  
部長に電話を切られたものの、今度は檸檬からメールが来た。  
―――マトイが毒で死んだ。  
おそらく、酒に酔ったか寝惚けたのかこの時期に毒性が強くなる蠣を誤って口にしたのであろう。  
中川からもメールが来た。  
―――麗子さんと京香さんと愛美さんが亡くなりました。云々  
これで両さんに敵対していた婦警の主要メンバーが全員死んだことになる。  
 
湯沢着は定刻の18時丁度だ。ここで新幹線に乗り換えて東京へ向かう。  
「本田、帰るぞ」  
東京へ戻った後、石川県警からの連絡で早矢の訃報が伝わった。  
「早矢ぁ〜なんでわしを残して先に逝くんだぁ〜」  
若い男の声がした。  
「それは貴方が知っているはずです。両津さん」  
「何で婦警たちを殺したんだ!本田!やるぞ!」  
「やるんですかぁ〜せんぱ〜い」  
「こんにゃろう!よくも麗子と早矢と纏を!」  
両さんに催眠術がかけられている。本田は小町と奈緒子の事件の真相を知った。  
「両津さん、10万円をあげますから止めにしていただけませんか」  
「術が弱まった!本田!やるぞ!」  
 だが、両さんも本田も15分で伸された。  
 
翌朝、その男は亀有公園で死んでいた…。  
「両さん、死体の傍から紙が出てきたよ」  
「遺書か…」  
 
―――拝啓 両津勘吉様  
僕は嘗て早乙女リカさんに惚れていました。  
彼女との関係は当初、まずまずの状況でしたし、  
早乙女さんのお料理は途轍もなく美味だと思っていました。  
ある日、彼女が僕を縛り上げ、殴る蹴るの行為を異常な  
ほどにしたことを境に僕の運命は逆転しました。給料は減らされ、  
職場仲間から苛められる毎日になりました。  
それでも早乙女さんとの関係は続きましたが、痛めつけられて10日、  
僕は彼女に捨てられました。それから何度死のうと思い、恋愛ゲームに没頭し、  
2次元や写真の美女を求めていたでしょうか。そんな中、1人の葛飾署員が  
僕に早乙女さんの署内での様子を教えてくれました。8000億円もする贅沢な  
女子寮、署長さんを廊下へ放逐したこと、野球部や両津さんへの辱め等数  
多くの独善行為をやってきたことを知りました。早乙女さんによって痛い目に  
遭わされた方は多いでしょうし、僕も亦その1人です。だからこそ今回の殺人を  
計画しました。まず、早乙女さんを中川さんが呼んでいると偽ってお台場へ呼び  
出した後、催眠術で眠らせて鬘を付けて虹野沙希さんの格好をさせ、包丁で刺し  
殺した後で容赦無く鞭を打ってやりました。さらにそのあとメイクで体を覆い、  
DNAを死滅させて服を着せ替え、車で発見された地点まで運びました(中略)両津さんが  
『しらさぎ13号』の車内で見た車掌の内、米原まで乗務した方は小町です。僕が催眠術  
でやらせたのです(中略)拉致した奈緒子に『犬夜叉』の日暮かごめの格好をさせ、催眠術  
で翌朝の福井から湯沢まで通しで『はくたか5号』に乗務させ、八甲田丸で殺しました。  
磯鷲さんを殺したのも僕です。彼女は銃が不得意だそうですので、乗務員を装い、  
死電区間を利用して『雷鳥37号』のグリーン車で銃殺しました。(中略)敬具  
 
中川たちが戻ってきたのはその2日後だった。  
            ―――完―――  
このラストで遺書を遺して自殺した男は私ではないようです。  
 

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