ある日、里志と摩耶花からカラオケに誘われた奉太郎だったが……
「カ、カラオケか……遠慮する。俺は無駄な事はやらない主義なんだ」
「ほ、奉太郎……お前まさか……人前で歌うのが恥ずかしいのか?」
「違う!!俺は"やらなくても良い事はしない、やるべき事なら手短に"というのが人生の――」
「いいよ、いっしょに行こう折木」
「Oh my god!! Oh my god!!」
「ほら、折木もなんか歌えば?」
「いいよ俺は」
「ひょっとして……飲まないと歌えないってタイプ?」
「いや、そういうんじゃなくてだな……」
「じゃー、とりあえずビールを」
「…………ギャ〜〜〜〜〜ハッハハ! ふざけんなよ! 摩耶花〜!」
「なんだこいつ、むちゃくちゃ酒ぐせわるいな」
「なんだとこの、ぶっとばしちゃうぞ」
「折木、ふざけないでy――」スパッ
「あ、あああ……普段は無気力なくせに酔ってめちゃくちゃ強くなってる……」
「どうしたんだ摩耶花、あの日でも無いのにそんな出血しちゃって?」
「い、今、折木に話しかけないほうがいいよ。チョット酒を飲ませたらえらいことになってしまった」
「ちょっと奉太郎、一体どうしt」
「あーーーん なんなんだよ」
「だめ……だめだ、直ぐに逃げよう摩耶花。既に奉太郎は灰色熊と門田京平のハイブリッドになってる、もうシャレは通じない」
「歌うぞ!! おい、そこのホームズとワトソン、どこへ行くのかね。ジュースでも飲みながら私の歌を聞きなさい」
(ホームズとワトソンって……そりゃあんた、ホモでんがな……)
「まずは『優しさの理由』!!」〜退屈な窓辺に 吹き込む風に〜♪
ブーーーーッ
奉太郎の歌には音調と音程というものがなかった。ただひたすらに、推理小説で用いられる兇器を思わせる
怪音波を口腔から発していた。その音は百人がいっせいに黒板を引っかき、千人がいちどに紙にマジックで線を引く……
それ以上に耐えがたき何かを折木奉太郎、いや、灰色熊と門田京平の融合体は出し続けていた。
〜目覚めるまま走れ〜蜃気楼を追いかけて〜♪
「福ちゃん!ここで目覚めて走らなかったら死ぬよ!!」
〜好きにフェードアウト〜ゆえにフェードイン〜〜♪
「だ、脱出しなければ……あたし達に待っているものは確実な死……」
〜それからそれから次のページ〜♪
「や、やっと出入り口まで来た。ふ、福ちゃん……助かったy――」
〜キミのミステリー〜解いてみたい〜少年の〜ヒミツめいた背中探せ〜♪ ズズズズズズ
「ギャ〜〜〜〜!!!!!!」
「ここでいったい何があったんですか、お客さん」
「い……インシテ、ミル……」
伊原摩耶花はカラオケショップの店員に謎のメッセージを残すと、倒れた。
翌日、二人の唐突な病欠が気になった千反田は奉太郎と一緒に推理したが、結局は解き明かされないままに終わってしまった
しかし倒れた二人だけは知っている。ここ神山市の某カラオケショップで"6曲分のデス・ゲーム"が開催されたことを――