伊原のパンツが見えている。
夕暮れの射した特別棟4階に至る階段。そこで千反田が家から持ってきた珈琲豆クッキーを
俺と里志、そして伊原の3人で舌鼓を打っていた。
里志が階段の一番上の段に座り、千反田と伊原がその2つ下の段に。そして俺はさらに2つ
下の段に膝を曲げ座っている。
伊原もまた同じように膝を曲げ座っており、合わさった膝の下、スカートの奥に白いものが
見え隠れした。
「このクッキー美味しい。これどうしたのちーちゃん」
「親戚からの貰い物なんです。ただ、私には少々カフェインが強かったようで……」
「まやか、僕にその茶色いクッキー取ってくれるかな」
「駄目よふくちゃん、もう四つも食べたじゃない」
伊原は里志の座っているほうへ上半身を反らし顔を向ける。
それが不味かった。合わさっていた膝が開いた。
(俺からだとパンツが丸見えなんだが……)
伊原のほうは里志とクッキーに気を配っているせいか、下着が見えていることに気づいていないようだ。
(足を閉じろ、足を)
もちろん指摘すれば何を言われるか分からないので、内心だけで指摘する。
催淫薬としてカフェインが効いているのか、俺の目は伊原のスカートの奥から目が放せない。
それどころかじっくりと観察してしまう。きっと舐めるように見るとは今の俺の目線を言うのだろう。
童顔の伊原はやはり下着も幼さが残る白い木綿のショーツを穿いていた。恥丘部分は柔らかく盛り上がっていたが、
クロッチ部より下には深い縦皺が寄り、その奥にあるまっすぐな恥裂の形を浮き立たせていた。夕日も相まって、
うっすらと赤い縦筋まで見えているような気がする。
あまりにも淫猥な光景にたまらず愚息が反応してしまう。
普段は口を開くと辛辣な言葉を投げつけてくる伊原。その伊原の恥ずかしい部分を覗き見ているというこの状況に
否応にも興奮を覚えてしまう。
(駄目だ、ズボンがきつくなってきた……)
ゆっくりと腰を浮かし、前傾姿勢になったところで里志に声を掛けられた。
「どうだい奉太郎、白いのは美味しそうかい?」
ギクリとした。
「え?福部さん白いクッキーも入っていましたか? ホワイトチョコレートでしょうか。私はてっきり…」
見れば里志はニヤニヤと笑みを浮かべていた。恐らく里志は気付いていたのだろう。そしてこのタイミングで
声を掛けてきた。
自分の醜態が旧知の友にばれたことに思わず顔が上気していくのがわかる。
「折木、あんた顔が赤いわよ。大丈夫?」
もはや伊原の顔を見ることはできない。俺は顔を上に向かせた。鼻の奥から鉄の臭いがする。
「あはは、さすが奉太郎。コーヒークッキーのカフェインにやられたんだよ」
「まぁ!折木さん大丈夫ですか?」
「折木、あんたって奴は……」
もはや、返す言葉も無い。口に残るクッキーの味はほんのり苦く、次第に鉄の味を醸し始めた。
脳裏に焼きついてしまった淫猥な光景は忘れられそうにないが、思い出したいことは思い出せない。
鼻血を出すのは一体何年ぶりだろうか……。
完