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文化祭も終わった10月の金曜日、今日も古典部で、俺は窓辺の席に座り、安物のペーパーバックを読みながら、過ごしていた。  
千反田は珍しくウロウロと俺の周囲を回っている。  
まあ、何か好奇心に触れるものを見つけようとしているのだろう。  
里志は、俺のはす向かいのいつもの席で、部室の入口の方をじっと見つめている。  
 
そこへ、伊原がやってきた。  
「遅れてごめん、ふくちゃん。実はね、大ニュースがあるの。」  
千反田がニュースという言葉に反応し、口を挟む。  
「摩耶花さん。いったい、どういうニュースですか?」  
「摩耶花、どういうニュースだい。」  
同時に聞かれ、伊原はたじろいだ。少しは俺の気持ちも理解できたか?  
 
「それがね。夏休みに行った青山荘の改修工事が終わったので、古典部の皆さんをまたご招待したいんだって。」  
ああ、俺がバス酔いをしてさんざんな目にあったあの温泉か。  
「それでね。今度は家族風呂というのを作ったそうよ。そのお試しをして欲しいって。もちろん宿代は只。どうする?行こうよ!」  
「ぜひ、行きたいです。」  
「そうだね。行こうか。」  
「折木さんも、一緒に...」と言いかけて、千反田は口をつぐんだ。  
「俺は遠慮しておく。この前も迷惑を掛けたし」  
「そんな。折木さんも一緒に行くべきです。実はですね。万人橋さんのご親戚に、富山の方で薬の製造販売をしている方が居て、そのつてをたどって、強力な酔い止めの薬を入手したんです。  
それを差し上げますから、一緒に行きましょう。」  
まあ、俺も富山の置き薬ぐらいは知っている。これが結構侮れない。  
幼い頃、風邪によく掛かっていた俺は何回か利用させてもらった。医者が処方してくれる薬より効いたことが何度もあった。  
ただ、薬のネーミングがあまりにベタだ。それで損していると思う。  
だから、千反田の好意はありがたく受け取ることにした。  
里志、伊原、なぜニヤニヤしている?  
「ああ、分かった。そうまでいうなら」  
とたんに千反田の顔が笑顔になる。  
 
「ところで、里志、家族風呂ってのはどういうのだ。」  
「他人の目を気にせず、家族だけで入れるお風呂ってことだよ。ホータロー。」  
「それって、混浴ってこと?」  
「そうだね。家族だから基本は混浴さ。もちろん、正式な家族じゃない恋人同士でも使えるよ。」  
「たとえば、私とふくちゃんでも、使える?」  
「もちろん。摩耶花がその気ならね。」  
おいおい、部室でする話か。  
「あ、折木、今、いやらしい想像したでしょ。このムッツリスケベ」  
話題を振ったのはお前だろ。そういえば、前回行ったとき、千反田は俺と混浴できなかったことを残念そうに言っていた気がする。  
それを思い出し、ふと、千反田の方をみたら、千反田はしばらく俺の顔をじっとみつめて、プイっと横に視線をそらした。  
機嫌を損ねるような事あったのか?  
 
「そうそう、家族といえば、手紙にはこう書いてあったの。『それぞれの御家族も1名様だけ無料でご招待します。』って」  
それは大層太っ腹だな。おそらく、家族で一緒の風呂に入ってもらい、その感想を宿の宣伝に使いたいというところだろう。  
「へー、家族連れでも無料なんだ。たしかに、ありがたい話だけどさ、さすがに親を連れていくのはどうかと思うよ。」  
「それわかる、ふくちゃん。親って年が離れ過ぎてて、じじばば臭い話題になって、つまんなくなるから」  
「じゃ、こういうルールはどう?年齢の近い家族、つまり兄弟やイトコに限定する。それなら、僕は妹を連れていくことにするよ。ホータローはお姉さんを誘ったらどうだい?」  
姉貴か。姉貴は俺にとって母がわりだから、連れてきたら、それこそどうかと思う。  
「私はどうしましょう。兄弟は居ないですし」  
「ちーちゃん。私も同じよ。無理に誰かを連れて来てとは書いていないわ。」  
「そうですね。」  
そういう千反田はやはり寂しそうだ。それを見た俺も一人で行こうと決めた。  
 
「それで、日程なんだけど、いつにする?今月中ならいつでも良いって。ただ、この紅葉の季節を見逃すことはないから、早いうちがいいと思うんだけど。」  
「明日じゃ間に合わないから、来週の土日でいいんじゃないかな。」  
「賛成。ちーちゃん、それでいい?」  
「私は構いません。折木さんは、どうですか?」  
「かまわん。いつでも暇だ。」  
「それじゃ、私から連絡入れとくね。宿の新しいパンフをあげるから、よく読んでおいて。」  
 
家に帰ると誰も居なかった。折木家ではよくあることだ。親父は仕事人間で、家に帰ってこないことが多いし。お袋はもの心ついた時にはもう居なかった。  
姉はおそらく大学の飲み会だろう。  
それにしても疲れた。  
今日は体育があって、強制的にマラソンの練習をさせられたからだ。  
適当に残り物で晩飯を取って、風呂に入った。  
明日は、土曜日だ、やるべきことは明日やればいい。そう自分に言い聞かせて寝た。  
 
目が覚めると姉貴が俺の前に立っていた。  
「あ た し も つ れ て い け」  
ぼうっとしていて、何のことか直ぐに理解できなかった。  
姉貴が近づいてくる。左手にあのパンフレットを握っている。  
しまった。リビングに置き忘れていた。  
「奉太郎、あたしもこの温泉に行く。タダって所がすごく魅力よね。ところで、いつにした?予定空けとくから」  
姉貴はもうすっかり行く気になっている、教えなければ多少強引な手を使ってでも俺から聞き出すだろう。ならば痛くされないうちに白状するのが賢明だ。  
「来週の土日」  
「分かった、ありがと。」  
姉貴はそういうと、出掛ける支度を始めた、  
「奉太郎、あたしは今日も遅くなるから勝手にやってて」  
「ああ」気のない返事をして俺はいつものように部屋にこもった。  
 
予定日の前日の金曜日  
姉貴は何処から借りたのか7人乗りのワゴン車を用意していた。  
「明日、これに乗って宿へ行こう。奉太郎の友達とその家族も載せてくから、そのつもりでいてね。」  
えらい張り切りようだ。どんな心境の変化だ?  
 
当日の朝、やたらテンションが高い姉貴の運転する車は、集合場所の神山駅に予定時間の10分前に付いていた。  
駐車場に車を停め、車内で待っていると、自転車を押して古典部部長の千反田がまずやって来た。  
ポニーテールの髪が可愛らしい。今日も綺麗だなと思いながら車内から眺めていたら、姉貴が、ドアを急に開けて、千反田を呼び止めた。  
「もしかして、あなたが、千反田さんですか?」  
姉貴、なぜその子が千反田だと分かった?  
「すみません。どちら様でしょうか?」  
「大変失礼しました。はじめまして、私、折木奉太郎の姉の供恵と申します。愚弟が日頃お世話になっています。」  
「はい。千反田です。千反田えると申します。奉太郎さんのお姉様ですか。お噂はかねがね伺っております。お会い出来て光栄です。」  
姉貴は車に振り向き、手招きした。  
会話に入り込むタイミングを逸していた俺は急いで二人の所に駆け寄る。  
「全くこの子は、肝心な時に役立たずなんだから、ごめんなさいね。  
奉太郎が時々寝言で呼ぶ千反田さんがどんな方なのか、一度お会いして確かめておきたくて。本当にお綺麗で礼儀正しい方、これなら奉太郎を任せられるわね」  
姉貴、俺がいつ千反田を寝言で呼んだ?寝言だから記憶に無い。  
だからこそ、言って良い事じゃないだろう。  
千反田は何と返事したら良いか分からなくなり、黙ったままだ。  
このままでは不味い。  
 
「姉貴、俺が千反田を寝言で呼んだって、本当なのか?」  
「千反田さんでしょ。きちんと「さん」付けして呼びなさい。寝言は確かに言ってたわよ。  
『すまん千反田』とか『ゆるしてくれ千反田』とか、これって痴話喧嘩の夢を見ているという事だから、二人は付き合ってるという証拠でしょ。」  
我慢していた千反田が笑い出す。なにが可笑しい?  
「それ、違います。私、折木さんに謎の推理をお願いして、それに折木さんが答えていただいてる関係です。」  
「それは一体、どういう関係?よく分からないけど、つまり、あたしの勘違いで、二人は恋人同士の関係ではないと」  
「ええ、まあ...」  
「そう。でも、あたしは気に入った。ねえ、お友達にならない?千反田さん。下の名前はどう書くのか教えてくれる?」  
「はい。えと、名前はひらがなで、え、る、です。」  
「ありがとう。あたしは千反田さんをこれから、えるちゃんと呼ぶ事にするわ。だから、えるちゃんもあたしを下の名前の『供恵』って呼んで、漢字で子供の供に、恵みと書くの」  
「供恵、さん。こうですか?あのう、失礼ですが、お姉さんと呼んでも構いませんか?」  
「お姉さん?あ、いいわよ。なんか本当に妹が出来たみたいでいい響き。こんな可愛い妹が欲しかったんだ。  
奉太郎ってぶっきらぼうでさ。やっぱり男の子だからね。女の兄弟もいたら、いろいろ相談出来るし。」  
「私も供恵さんみたいなお姉さんが欲しかったんです。私一人っ子なので。」  
「ああ、そうか。だから今日は一人で来たのね。」  
「はい、そうです。」  
 
そこへ、里志と伊原が手を繋いでやって来る。  
こっちに気付いく。  
「供恵さーん。お久しぶりです。あっ、それが今回乗せて頂く車ですか?」  
「そうなの、ちょっと大型だけど、その分、余裕あるからね、楽に移動できるでしょ。」  
「お久しぶりです。供恵さん。お世話になります。」  
「里志。妹はどうした?」  
「いやあ、昨日までは一緒に行く予定だったけど、親から受験生なんだから、この大切な時期に遊んでないで勉強しなさいって言われてさ」  
そりゃ残念。あの変わり者の妹も久しぶりに見たかったが。  
「それでは、早速出発しましょう。えるちゃんは自転車を駐輪場に置いて来て」  
「はい」  
千反田が乗り込むのを待って出発した。  
運転は姉貴で、俺が助手席、後部座席のドアは助手席の直ぐ後ろなので、その右側で運転席の直後が、最後に乗った千反田の席になる。  
その後ろが伊原で、左隣が里志になる。  
 
「ところで、えるちゃん。さっき言ってた謎の推理ってどんななの」  
「えーとですね。私が疑問に感じた事を折木さん、いえ、奉太郎さんに解決していただくという、事です。」  
「へー、こいつそんな事もしてたんだ。あ、『氷菓』事件もその一つって訳か。  
あれ、あたしも気付かなかった。氷菓の意味や、なぜ古典部ではカンヤ祭は禁句なのか、言われれば納得するけどね。」  
「お姉さんて、古典部だったんですか」  
「奉太郎は言ってなかったの?こいつ、必要なことも喋らないから、ごめんね。」  
「お姉さんがいた頃の古典部ってどうでしたか。私、気になります。」  
「気になると言われても、至って普通よ。私は古典だから文学かなと思っていたんだけど、同じ部の友達には考古学の事だと思ってた子も居たし、クラシック音楽と思い込んでいる子も居たわ。  
ただ、文集があって、それを作る予算が学校から出ているから、それだけは適当に作ろうって事にして、それぞれが考えた古典の解釈で適当な文章を作ってまとめていた訳。」  
「文集を作るとき以外は、部員の皆さん、どうされていましたか?」  
古典部部長としては適切な質問だろう。まあ、面倒な事になりそうだろうから、俺はあえて聞きはしないが。  
「それがね。基本、何をするのか決まっていないから、好き勝手なことがやれるわけ。  
で、私は奉太郎と違って人づき合いが好きな方だから、他の部員を巻き込んで、考古学的な文学研究とか、昔の音楽家と作家の関係とか、色々と調べていたわ。」  
「へえ、楽しそうですね。」  
「楽しかった。それが、私が卒業してから2年間も部員なし、このままじゃ廃部になると後輩から聞いて、奉太郎が同じ高校に合格したっていうから、強制的に古典部に入らせた訳。」  
「奉太郎さん。お姉さんから強制されたから古典部に入っているのですか?」  
「最初のきっかけは、そうだったな。でも、千反田、さんが、古典部に入ると聞いて俺が入る必要はなくなった。」  
「でも、辞めなかった理由はなんですか?」  
真顔で俺に聞くな。恥ずかしくなる。  
「古典部が居心地いいからだ。家に帰っても俺は大体一人だ。姉貴はまず、家に居ない。それも悪くはないが、いいかげん飽きた。」  
「そう、ですか。」  
千反田は寂しそうに言った。  
 
♥ 
財前村は神山市の北西方向にあります。  
神山市自体が比較的高い土地なのですが、さらに高い、いわゆる山間の村です。  
ここは海から吹く湿った風で良く霧が掛かります。  
今日も所どころで霧が掛かり、また晴れたりと急変して、山に来たという雰囲気を味合わせてくれます。  
季節はもう秋、紅葉の美しい時期です。私の住む陣出周辺では、まだ所々黄色い木々が混ざった状態なのですが、ここではもう鮮やかな赤や黄色に色付いています。時折見えるナナカマドの赤い実が綺麗。  
 
ただ、運転をしている折木さんご兄弟は今、その景色を楽しむどころではないようです。  
「奉太郎、そっちの後ろ路肩を見てて、まだ行けそう?」  
「ああ、あと50cmは余裕あるな」  
「分かった。それなら、ギリギリで切り返せる。」  
財前村へ至る道の途中は急な角度のカーブが多く、こういう大型の車では1度では曲がりきれない様です。  
何度も角度を微調整して、やっと通行しています。  
バスの時は手慣れた運転手さんだったらしく、切り返しはほとんどありませんでした。  
それでも奉太郎さん、酔ってしまわれたんですけどね。  
慣れてない方なら切り返しは多くなって当然だと思います。  
それより気になりますのは、お二人の連携の巧さです。これが阿吽の呼吸というのしょうか?  
折木さんは良く、お姉さんを苦手と言ってましたが、そんな事はないようですね。  
私にも姉や弟が居たら、こういう関係が作れたかもしれません。  
 
急カーブの連続が終わった頃、福部さんがお話を切り出しました。  
「ここで、古典部でのホータローの活躍ぶりを紹介しようと思うんですが、供恵さん聞きたいですか?」  
「是非、教えてくれる?奉太郎の活躍というより、今の古典部の活動をさ」  
福部さんは要領良く、『氷菓』事件の解決までや、2年F組の自主映画についての経緯を説明していました。最後まで黙って聞いていた供恵さんは  
「なんだ。奉太郎もそれなりに働いていたんだ。全く意外。この子って身内であるあたしの頼みでも、まず素直には動かないもの。  
今日だって、助手席に座る事でさえ渋ってた。  
ねえ、えるちゃん。聞いていい?」  
「はい、なんでしょうか?」  
「奉太郎を素直に働かせるコツを教えてくれない?」  
「いいえ、コツはありません。私、いつも奉太郎さんにこうやって、お願いしてるだけです」  
私は返答しながら、立ち上がって、いつもしているように、助手席の折木さんの顔に顔を近づけます。お姉さんは、チラチラとその様子を見ています。  
「ああ、なんとなく分かった。ありがとう。だけど今は運転中だから、宿に着いたら続きの話をしましょう。」  
程なく財前村に入り、やがて青山荘に着きました。  
一体何が分かったのでしょうか。  
私、気になります。  
 
♠ 
青山荘に泊まるのはこれが2回目だ。  
前回は車酔いで酷い目にあったが、今回は千反田がくれた薬でなんとか持ちこたえた。  
千反田は何か嬉しそうにしている。  
何があった?ああ、さっきの続きとやらが気になるのか。まあいい。今回答えるのは俺じゃない。姉貴だ。  
 
宿につくと、民宿の経営者の善名夫妻と、その二人娘がまた出迎えてくれた。  
伊原と千反田はその姉妹との再会を喜び、姉貴はご主人に前回の俺の失態を詫びている。  
「この前は、弟の奉太郎が大変ご迷惑をお掛けしました。つまらない物ですが、これはお詫びの品です。どうぞお納めください。」  
おそらく姉貴の事だから、事前に里志から俺が湯当たりで倒れる騒ぎになった事を聞き出してたんだろう。  
「それから、これは、今回お世話になる事への感謝の気持ちです。こちらもお納め下さい。」  
「わざわざ、ご丁寧に有難うございます。長旅お疲れの事でしょう。早速、お部屋へご案内いたします。」  
そう言うご主人に案内されて、部屋へ通された。  
 
宿の部屋割は4家族分の4部屋になっていた。  
が、前回の幽霊騒ぎを思い出した伊原が一人で寝たくないと言い、結局、善名姉妹が伊原と一緒に寝てあげることになった。  
俺も姉と一緒の部屋はまずいと思ったが、姉貴もそこは考えていたので、結局、姉貴と千反田、俺と里志が一人で寝ることになった。  
「ホータロー寂しかったらいつでも呼んでくれ」  
「里志、本気か?」  
「ジョークだよ。いつもの事さ」  
 
宿代無料を条件に家族風呂のお試しに志願した訳だから、少なくとも1回は入浴せねばならん。  
やるべき事は手短かにの方針に従い俺と里志が先に入浴し、夜8時までに部屋へ戻る約束をした。それ以降は、女性陣の貸切だ。  
部屋に荷物を置いて、さっそく二人で家族風呂に向かった。  
 
想定してたのと違う風呂場の入口に俺達は戸惑う。  
「なあ、里志、家族風呂の場所はあっているか?」  
里志が巾着からメモを取り出して確認する。  
「メモによればここだね。」  
そこには「男湯」「女湯」と描かれた暖簾が下がっていた。  
「他に男女別の内風呂はあるか聞いてないか?」  
「書いてないね。内風呂はこの家族風呂だけだ。」  
「...とすると、まあ、今は時間も押している。とにかく入ってみよう。違っていても、また事情を聞いて入り直せば済む。」  
「そうだね。入ろう。」  
俺達は、「男湯」と描かれた暖簾のある入口から入った。  
脱衣場で服を脱ぎ、浴室へ行く。  
ヤケに広い浴室で、普通の内風呂の2倍以上ある。  
大家族用か。いや、妙な事がある。  
「水風呂」と描かれた札のある風呂が2箇所。2箇所は不要だろう。洗い場も2箇所ある。  
ふと思いつく、多分正しい推理結果だ。  
「ここは、元々、男女別の内風呂だったんじゃないか。その仕切りを外しただけだと思う。」  
「そうだね。ホータローの考えで正しいと思うよ。」  
おそらくは、家族風呂が流行っていると聞いた宿の経営者が、稼働率の低い男女別の内風呂を改装しただけなのだろう。  
「たださ、僕はこれを家族風呂とは認められないよ。」  
「何故だ。」  
「入口に鍵が無い。これじゃ家族以外も入れてしまう。家族水入らずが成り立たない。」  
それもそうだが、なにせまだお試し中なのだ。鍵の件も含めて、ダメ出しして欲しいとも考えられる。  
 
♣ 
男女別の脱衣場にも利点はあると僕は思う。  
家族とは言え、母や1歳しか違わない妹と同じ脱衣場で脱ぐのは恥ずかしい。  
それでも家族の親睦をお風呂で深めたいなら、湯浴み服に着替える手もある。お湯が汚れるのが好きではないので僕は使わないけど。  
もちろん水着に着替える手もあるが、それでは温水プールと変わらない、全然粋じゃない。  
いずれにせよ、脱衣場が別なら気兼ねなくいろいろできる。  
これは良いアイデアだ。アンケートにはそう書いておこう。  
 
ホータローは湯船で寛いでいる。前回と違い、湯温が低い内風呂だからのぼせる心配はなさそうだ。  
しからば、僕の趣味である温泉の梯子をするため、前回行った露天風呂に行くことにしよう。今なら、湯船に紅葉が舞って、風情がありそうだ。  
「ホータロー、のぼせそうだったら、水風呂入って目を覚ませ。僕はこれから例の露天風呂に行くとするよ」  
そう言って、僕は家族風呂を後にした。  
 
♥ 
供恵さんと同じお部屋に荷物を下ろした時、思い切って聞いてみました。  
「あの、先ほどお車で言われた、『分かった』とはどう言う意味でしょうか?」  
「お待たせしたわね。話してあげる。」  
「もしかして、私、奉太郎さんに、すごく失礼な事をしていたのでしょうか?」  
「いいえ、違うと思うな。私は奉太郎じゃないので、推測するしかないけど、その為には、もう少し情報が欲しい。  
まず、奉太郎に顔を近づけた時、あいつ、どう言う態度をしてた?あいつの言葉はじゃなくて、態度はどうだった?」  
「態度、ですか。そうですね。私から目を逸らしてますね。」  
「それだけ?他には?」  
「うーん、そうですね...分かりません。」  
「予断は与えたくないからヒントだけ。口元に変化ないかな。」  
「あ、そういえば、唇の端、口角と呼ばれる所が上がるような気がします。」  
「その仕草を覚えておいて。奉太郎に頼んで口角が上がったら、あいつが他にどんな表現をしていても、あいつ喜んでいるから。」  
「そして。今まであいつに何か頼んで、あいつをずっと喜ばせているのは、えるちゃんだけ。後は自分で考えて」  
分かった様な、そうでない様な、はぐらかされてしまったようです。  
話題を変えた方がよいですね。  
「あ、そろそろ8時ね。あいつらも部屋に戻った頃だから、早速行ってみない?」  
「そうですね。行きましょう。」  
摩耶花さんにも声を掛けて一緒に行きます。  
 
家族風呂に着きました。本当にここでいいのでしょうか。  
「摩耶花ちゃん、ここで間違いない場所はあってるわね。」  
「はい、ここで間違いありません。」  
「ここの改修期間はどのくらいだったの?」  
「たしか、2ヶ月ぐらいです。」  
「じゃ、ここで間違いないわね。入りましょう。」  
「どうして間違っていないと分かったのですか。気になります。教えてください。」  
「ああ、それはね。ま、湯船に漬かりながらゆっくり話してあげるわ。」  
脱衣場で服を脱ぎます。  
供恵さんは女子大生ですから大人の女性の体型をしています。  
私もそれなりにあるのですが、胸もお尻もひとまわりは大きいです。でもお腹周りは引き締まっています。  
「奉太郎が見たら卒倒しそうなくらい綺麗だわ。」  
「お姉さんに比べれば、私なんて大したことないです。」  
「いいえ、奉太郎があんなに働くなんて、それ以外に考えられないもの。こんな素敵なお嬢さんと知り合えて奉太郎は幸せね。」  
かなり照れます。そんなの自覚したことありませんでしたから。  
 
浴室に入ってみてその広さに驚きました。普通の内風呂の倍はあるでしょう。  
そして、私たちが入ってきた脱衣場のと並んで、もう一つの脱衣場への出入口が見えました。  
皆で体を洗い合い。湯船に漬かってから、先ほどの疑問を聞いてみました。  
「普通、内風呂を家族風呂にするなら、その入り口に鍵を掛けられるようにして暖簾を付け替えれば済むから、改装にどんなに遅くても1ヶ月も掛からないの。  
それをわざわざ2か月も掛けたということは、浴室そのものに手を加えているということ。  
でも逆に2ヶ月では、二つの浴室の壁を取り払うことしか出来なかった。暖簾が「女湯」とかだったのは、これから正式オープンまでに変える予定なんでしょう。」  
「どうしてわざわざ、そんなことをしたのでしょうか?」  
「うーん。摩耶花ちゃんが叔父さんに直接聞いてしまうのが確実なんだけど、推測でいいなら説明できるわ」  
「お願いします。」  
「脱衣場を同じにしたくないって要望があったことは確かね。いくら家族とはいえ、あたしは奉太郎と同じ場所で脱ぎたくないわよ。やっぱり恥ずかしいし。」  
「そうですか。一応納得しました。」  
私は弟が居たら、と思ってましたが、そういう部分では気遣いが必要なんですね。  
「だけど、私だったら、こういう改装はしないわよ。」  
「それって、供恵さん。浴室ではなくて、脱衣所に男女別の仕切りを入れる方が早いって事ですね?」  
「摩耶花ちゃんの言うとおり、その方が工費も少なく期間も短くて出来るでしょ?だから他の理由があるのかもしれないわね。」  
 
♠ 
ん、寝てしまった。近くで聞きなれた女性の声が聞こえる。エコーが掛かっているようだ。  
あれ?ここは風呂場だった。水風呂に入って頭をはっきりさせよう。  
よいしょっと。  
「あのう、何か音がしませんでしたか?」  
千反田の声だ。  
「まさかと思うけど、ふくちゃん、まだそこに居るの?」  
伊原の声だ。  
「ひょっとして、奉太郎?」  
姉貴の声だ。  
まずい、約束の8時を過ぎていたのだろう。  
俺は、元男湯の岩風呂で寝ていた。岩の感触と湯温が心地よかったからだ。丁度、元女湯からは影になっていた。  
「折木さんか福部さんか返事してください。」  
「....」  
「おーし、あたしが確認する。」  
姉貴の声がする。  
「もし、奉太郎なら、今のうちに返事をしろ、そうでないと、分かるな。」  
「姉貴、俺だ。」  
「奉太郎、お前、分かっててやったのか?」  
「いや、寝てしまってた、不可抗力だ。許してくれ。」  
「ふくちゃんは居ないの?」  
「里志なら、あの露天風呂に行くって出て行った。」  
「あのう、奉太郎さん。そちらへ行ってもいいですか?」  
どういう意味だ。おい、千反田。  
 
「どういうこと、ちーちゃん。恥ずかしくないの?」  
「えるちゃんて、そういう子だったの?」  
「えっ、ここって家族風呂ですよね。お姉さんと家族のつもりでこうしているのですから、奉太郎さんともそうしたい。一緒の湯船に漬かって、体を洗い合ったりしたいです。変ですか。」  
「変、十分変よ」  
「でも、摩耶花さんは福部さんとそうしたいと...。私も奉太郎さんとそうするつもりで今日来たんです。」  
「そうね。だんだん否定することが出来なくなってるわ。」  
「ふーん、なんか、えるちゃんの真剣な目を見てたらえっちな気持ちが無いのが分かるし。やってみたら?でもたしか、あなたたち、恋人じゃないっていってたわよね。どういう事かな?」  
私は小声でお姉さんに耳打ちします。  
「それは、私の片思いだから。正式な恋人ではないという意味です。」  
「ふっ、参ったわ。ま、やるだけやってみたら、もう止めないから。」  
おいおい、止めてくれ。  
「では、参ります、奉太郎さん。待っててくださいね。」  
千反田がこちらへやってきた。タオルや腕で肝心な部分を隠しているが、当然、全裸だ。  
タオルを畳んでおき、少し離れたところから、一緒の湯船に入り、こちらへ近づいてくる。おれは終始うつむいて、出来るだけ見ないようにした。  
「おい、ち、千反田、さん。正気か。」  
「奉太郎さん。私、いつでも正気ですよ。前回の露天風呂で、こうしたかったのです。念願かないました。」  
千反田の首筋は白くきれいで、俺が前回想像したとおりのだった。  
胸は..と視線を落とすと、はっと手で押さえて隠す。  
「えっちは後で、今は家族として親睦を深めましょうね。」  
その後、千反田俺の背中を流してくれ、俺も、目をつぶりながら彼女の背中を流した。  
前はさすがにまずいので、遠慮した。  
正直、俺のあれは、終始はちきれんばかりになっていたが、千反田はそれは男の人の生理現象で、仕方ないですねと微笑むだけだった。  
何か悔しい気持ちが沸くが、俺としては、これ以上の手出しはできなかった。  
近くに姉貴たちがいたからだ...というのは言い訳だ、童貞の俺には勇気が無かった。  
 
「あたし、ふくちゃんを追いかけるわ。」  
伊原の声がした。  
「よし、あたしもそっちへ行くわ。」  
姉貴も、全裸でやってきた。いや、まあ、そのう、なんというのかな。勘弁してください。  
久しぶりに見る姉貴の裸体は、まぶしかった。千反田もすごいが、姉貴もすごい。というか、これは男としてどうなのだろう。  
理性では姉貴は怖い存在だし、千反田は未だ遠い存在だ。それは変わっていない。  
しかし、本能では、姉貴も千反田も雌にしか見えないのだ。それもこれ以上ありえない最高の雌だ。  
その二人が童貞の俺に迫っている。しかしえっちな事は禁止とくる。  
これって生殺し?  
「久しぶりに、おまえと裸の付き合いをしよう。」  
そう聞いたとたん、俺の意識が限界を迎えた。  
 
♥ 
奉太郎さん、気絶してしまいました。仕方ありませんので、お姉さんと一緒に部屋まで運びました。  
一応浴衣を着せましたので、奉太郎さんの体の隅々まで見てしまいました。意外にたくましいです。  
「あたしが少しは鍛えていたから。でも成りは大きくなっても、まだ子供。こうして、奉太郎を運んでいると、こいつが幼い頃に高熱を出して医者に駆け込んだ時の事を思い出すわ。」  
「あの、失礼ですが、折木さんのご両親は?」  
「あ、奉太郎、まだ言ってなかったんだ。そう、あたしんちは母を早く亡くしてて、あたしが、奉太郎の母親代わり。母が亡くなったのが、たしか、あたしが9歳の頃で、奉太郎は3歳だった。」  
「亡くなってからしばらくは、叔母が家事を引き受けてくれてたんだけど、叔母の所も家族があるし、父は仕事人間で帰らないことも多いし。夜中には二人切りだった。」  
「そんな時にこいつが風邪で高熱をだしてさ。奉太郎まであたしを置いて逝ってしまわないように、必死に電話して、医者を捕まえて連れて行ったの。幸い大事にはならなかったけどね。」  
供恵さん、膝を改めて聞いて来ました。  
「ねえ、えるちゃん。こいつ、この程度で倒れるような根性なしだよ。それでもいいの」  
私はきっぱり言います。真剣です。  
「構いません。奉太郎さんの過去も今も、全部含めて好きなんですから。」  
「本当、えるちゃんに勝てる気がしない。じゃさ、奉太郎の介抱は任せていい?あたしは集合部屋でお酒でも飲んでるわ。」  
「わかりました。喜んでお引き受けいたします。」  
 
ふふふ、二人きり、折木さんと二人だけのです。鍵はしっかり掛けました。だから、ここ密室です。  
密室といえば、殺人事件?いーえ違います。密室といえば、古来より秘め事、そうに決まっているのです。  
で、折木さんはいま、意識なくスヤスヤと寝ているのです。  
外から覗かれないようにカーテンを閉めます。ちょっと興奮します。一旦全部脱いで、浴衣だけ羽織って準備します。  
折木さんとは逆さまの格好で四つん這いで跨って、、パンツから気になるアレを取り出します。  
さっきは、あんなに大きかったのに、意外に小さいですね。あの大きさになるなんて信じられません。刺激してみます。  
手でニギニギしていると、少し固くなりますが、それだけですね。口に入れて舐めてみましょう。ムクムクと大きくなってきました。  
「おい、千反田、何をしている。」  
もう気づかれてしまいました。  
「え..と..舐めてました。」  
「何を?」  
「折木さんのアレをです。大きくするためです。」  
「そんなに、俺としたいのか?」  
「はい、したいです。ひょっとして怒ってますか?」  
「まあな。」  
「どうしたら、許してもらえますか?」  
「そうだな、おまえのを舐めさせろ、」  
「はい、こうですか?」  
腰を後ろに下げると、股間に熱い息が掛かります。大切な所を覗かれ、舐められてます。  
恥ずかしい、でも、この切ない感じがいいです。奥から何かが溢れてきます。  
「おまえ、もう濡れてるな。入れて欲しいのか」  
「はい、お願いします。」  
 
♠ 
気がつくと、ふとんの上で寝ていて、掛け布団の代わりに女性が被さって俺の下半身を舐めているというありえない状況であった。  
舐められて気持ちよいので、そのままにして出してしまおうかとも考えたが、それじゃ悔しかった。  
お尻を後ろの穴まで丸出しにして、こちらへ向けている。ただ、あるはずのホクロが無いから姉貴ではないし、伊原はもっと華奢だから違う。  
となると、残る可能性はお嬢様の千反田だ。  
「可能性の無いものを消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」とはホームズの名言だが、これは奇妙すぎるのではないか。  
何故か、一介の男子高校生に過ぎない俺が、豪農千反田家の一人娘から求愛されている。うれしいのは確かだ。感情の表現が乏しいからといって、感情が無いわけではない。  
ただ、責任が取れるかと聞かれると弱いのだ。  
千反田ははっきり言えば、俺にとって理想の女性だ。かわいいし、頭もよく、俺に欠けている部分を多く持っている。なんといっても、一緒に居て気持ちが安らぐ。  
この半年間で、いろいろと体験できたと思う。もう、自分の気持ちという謎の答えを出す時なのだろう。  
 
千反田に声を掛け、迫ってくる尻の谷間の臭いを嗅ぐ、少し臭うが、これが却って興奮させる。両手でそれを左右に広げ、しばらくじっくりと見る。視線を感じたのか、あふれ出て来るものがある。  
それに口をつけると、かなり酸っぱい。旨いものではないな。これが甘いとか言うのは都市伝説だろう。  
千反田は毛深い方だ。舐める時に、じゃりじゃりとするのは好きではないが、これもアリだろう。舌先で、溝の先にある突起物をチロチロと舐める。いっそう液体があふれ出てきた。  
 
これからする事に持てる知識を駆使し、女性が一番楽な体勢で臨むことにした。  
千反田を一旦立ち上がらせ、体勢を変える。俺は、胡坐をかいた。いわゆる坐位を試してみようと思ったのだ、これなら、千反田の負担も軽く、しかも顔を見ながらできる。  
俺の股間のモノは十分大きくなっている。千反田を手招きして、俺の腰の上で向かい合ってしゃがむようにいう。  
すっかり濡れている部分に俺のが入ろうとする。が入らない。  
「すまん。位置がよく分からない。」  
千反田は少し腰を浮かして、右手で俺のを入り口まで誘導し、離して両手を俺の両肩に添える。そして、ゆっくりと腰を落としていく。  
痛みに耐えているのだろう。顔が苦痛に歪んでいる。  
「大丈夫か」  
なんと無粋な質問かと思う。  
「ええ、平気..です。もう少しで...」  
やがて、きつい空間を抜け、その先にまた別の空間を感じた。  
「もう、奥まで届きました。もう動かしても大丈夫です。」  
だが俺はあえて動かさずに、そのまま半開きになっている千反田の口に舌を入れ、口内を舐めまわす深いキスをした。併せて胸の双丘を両手で撫でまわす。乳首が固くなる。  
キスを終わらせ、ぼうっとしている顔から、たわわな左胸に視線を移す、それを右手で掬う様に持ち上げ、乳首に唇をつけて、舌先でころがす。  
同時に、お尻に左手を掛け、付け根の敏感な部分に指をそっと這わす。千反田の息がいっそう荒くなる。  
「もう動いてください。限界です。一緒にいきたいです。」  
その声を聞いて、両手を千反田の背中に廻して軽く押さえ、腰を上下に激しく動かす。ほどなく  
「あ、ああ、いく..」  
その声を聞いた瞬間、千反田の中で果てた。  
 
「なあ、避妊はしなくても良かったのか?」  
「私、避妊はしないんですよ。」  
「えっどういうことだ?」  
詳しく聞いてみるとそれは千反田家の存続が掛かっているからとの理由だった。  
えるのご両親はえるを身ごもるまでかなり掛かっていて、えるが生まれたあともしばらくは兄弟を作ろうと頑張っていたらしい。  
しかし、出来なかった。  
だから、えるの母は、えるが高校生になった時、なるべく避妊しないようにと伝えたらしい。子供が出来たら代わりに育てるからとのこと。  
「でも、相手は誰でもいい訳ではありませんよ。私が好きになって、私を愛してくださるたった一人の方に決めてます。」  
 
♦ 
わたし、勘違いしてた。  
美味しいご飯をいただいて、新鮮な空気を吸って、温泉で日頃のストレスを発散させて...それでふくちゃんとの距離は短くなるかな?  
ううん、変わらない。  
 
そう、ちーちゃんの言うとおり、この旅行を決めた時はふくちゃんと一緒に入浴したかった。それはえっちな意味もあったけど、もっと親密になり、思い出を作りたかった。  
わたしがふくちゃんを求めているのに、それすらしないのは変。常識が心を曇らせてたんだ。反省しよう。  
ふくちゃんがわたしをどう見ているか、それはもう知っている。  
心は通じている。あの浮気性の優男にね。  
うーん。でも、どうしようか。早くしないとふくちゃんが逃げる気がする。露天風呂に早く行く方法はあるかな。  
迷っていると後ろから声を掛けられた。  
「摩耶花おねえちゃんと。どうしたの?」  
「ねえ、梨絵ちゃん、あの露天風呂に行く近道しってる?」  
「ここの裏の崖をすべり降りれば近いけど、もう暗いから危ないよ。」  
「どうしても行きたいの、詳しく教えてくれる?」  
「わかった。こっちについて来て。」  
そこは岩だらけの崖、ここを降りるのは厳しい。でも会いたい気持ちが強くなってる。  
よし、と覚悟を決めてゆっくり降りた。見た目ほど距離は無かったので、怪我もしなかった。  
露天風呂に急ぐ。  
 
♣ 
ふう、やっぱり温泉は露天だね。幸い、この時間では外湯の露天風呂には人がいない。景色を独り占めさ。  
明るい照明の下、紅葉が湯船に浮かんでいる。これだよ。これこれ。  
ここの泉質は硫黄泉、薄く白く濁り、湯の花が細かい糸のように沈んでいる。  
その掛け流しの湯の中に浮かぶ赤と黄色の落ち葉がゆっくり揺れて流れてる。少し虫喰いのある落ち葉だ。  
さーて、今日はこれぐらいにして、そろそろ宿へ帰るとしますか。  
 
ん?何かあったのかな、崖の方から音がする。  
「ふくちゃーん。お待たせ。」  
あれ摩耶花だ。  
「摩耶花も近道おしえてもらったんだ。やっぱり露天風呂はいいよ。」  
「ねえ、そっちは誰か居るの?」  
「いない、一人で風情を満喫してた。」  
「じゃ、私も入るね。」  
今からか。ま、いいや。一緒に出てあげよう。僕は、長いすに腰掛けて、ほてった体を覚ましていた。  
突然、内扉が開いた。  
「来ちゃった。」  
って、おい女湯へ入るのじゃなかったのか?というか、タオルで前を隠してくれないかなあ。丸見えだよ。  
「....どういうこと?」  
「だから、最初に言ったでしょ?わたしにその気があれば、一緒に入ってくれるって」  
あ、そんなことも言ってたような。僕はあせっていた。保留にしてた気持ちを急にはっきりさせないといけなくなったからだ。  
「冷えちゃったからあったまるね」  
タオルを畳んで、掛け湯をしてから湯船にはいる、その仕草を何気に見ていた。  
 
いや、もっとじっくり見ていいんだよね。女の子が自ら男湯に入るってことは見せたがってるって意味でもある訳だし。見なけりゃ却って失礼というものさ。  
ただ、その女の子が、中学・高校の同級生なんだよ。思い出とのギャップがすごいなあ。最初に出会った頃、告白された時のあの赤ら顔。色々思い出す。  
そう、僕はよく怒られてるけど、摩耶花なら許せるというか、むしろあえて怒らせてその姿を楽しみたいとすら思う。怒る姿がかわいい。  
 
僕はロリ好きな性格だ。どうもこれは持って生まれた物で、変えようがない。中学1年生にすら魅力を感じる。この宿の娘の梨絵ちゃんも好みだ、手は出さないけどね。  
だから、今でもその雰囲気のままの摩耶花が好みだ。  
では、なんで告白に答えないか。僕は浮気性だ。博愛主義という方が正しいかな。特定の誰かに縛られるのは嫌う。  
自分がそんないい加減な男だから、大切な摩耶花の心を傷つけるのじゃないかと心配する。  
 
「ふう、あったまる、ここ宿の家族風呂より熱いんじゃない?」  
湯船に漬かりながらこっちを見ている。  
「露天だからね。温度を高くしてあるのさ。宿までに冷える分を考えてる。」  
「そっか。ふくちゃんてやっぱり物知り。」  
僕は照れる。データベースを自認してても、僕の知識なんて偏っているのは知ってるし。でもほめられると素直にうれしいって...あれ、摩耶花ってそんなに誉めることあったっけ?  
「ん、どうしたの?」  
「いや、摩耶花に誉められたのが嬉しい」  
「今日だけ、いつもは怒るだけだから。でもそれじゃふくちゃんに嫌われるでしょ。わたし嫌われたくない。」  
 
「ねえ、こっち来て、キスして。」  
湯船の縁で両手を組んで頭をかしげて頼まれる。僕も湯船につかり、右側から寄って、顔をこちらへ向けてキスをした。  
いや、意識したからじゃないな。自然にそうなったんだよ。唇を離すと、摩耶花は目をつむったままでこう言った。  
「ねえ、ここでしちゃわない。すごくしたい気分」  
「でも誰か入ってきたらどうする?ホータローとかさ」  
「それは嫌よ、やっぱり部屋に戻りましょう。」  
ホータローが来るとは僕は思ってないけど、まったく有り得ないことじゃない。だから僕が荷物を置いた部屋に移動した。  
 
♦ 
折木の無表情な目で覗かれるのは御免だわ。蔑まされてる気分になる。  
部屋へ戻った途端、ふくちゃんたら、もう全部脱いでる。改まるとちょっと恥ずかしくなるけど、覚悟を決めたんだからやっぱり脱いだ。  
立ったまま抱き合ってキスをした。もう私の股間は濡れてきている。ふくちゃんのもかなり大きくなってる。  
どういう体位でして欲しいかはもう決めてた。  
黙って、うつ伏せになって、お尻だけ持ち上げてお願いする。  
「ねえ、早く来て」  
 
♣ 
後背位か、これは僕好みの体位だ。なんか、女の子を屈服させてる気がする。僕はSだ、認めるさ。この体位って動物がやってる体位だよね。  
だから最も自然な形さ。僕たちも動物になってやろう。とことんね。だけど、人間しかしないこともしよう。まずは後ろの穴を舐めてみる。  
「あ、そっちなの、前からにして。」  
 
アレをゆっくりと挿入していく。もちろん、前の穴だよ。後ろはまたの機会にしよう。お楽しみはとっておくものさ。  
さすがにきついな。両手を伸ばして摩耶花の両乳首をつまむ。ゆっくりとやさしくだ。そのリズムに併せて出し入れを繰り返す。  
やがて奥にたどり着いた。動きをもっと速くする。摩耶花の息が乱れる。  
「お、おお、あ、いい。ねえ、もっと強くして」  
Mっ気があるのか。それならと両乳首をつまんで強くひっぱる。  
「いい、いいの、もっと強く」  
もっとかい。じゃあ、これでどうだ。摩耶花の脇腹を舐め、カリっと軽く噛んだ。  
「いく、もう、一緒にいって、いきなさいってば」  
最高、その瞬間に急いで逸物を抜いてお尻に撒き散らした。  
「ねえ、なんで中に出してくれなかったの。もう、信じられない。」  
「妊娠したら困るだろ。責任とれないし。」  
 
♦ 
不満よ、不満、もうこの浮気症の優男。でも一理あるわ。妊娠したら困るのは確か。でも中に出して欲しいなあ。  
そうだ、さっき後ろの穴を舐めてくれたっけ。なら、こっちでもしてくれないかな?聞いてみよう。  
「ねえ、後ろの穴で、もう一回だけ、やってくれない。そっちは中で出しても妊娠しないから、いいでしょ?」  
「僕はいいけど、慣れない内は、切れ痔の原因になったりするよ。それはさせたくない。」  
その心配は要らないのにね。  
「ふくちゃん、試しに指をそっちの穴に入れてみて」  
♣ 
え、これは...すんなり指が飲み込まれていく。その度に腸液がじゅぶっと指にからむ。  
「もう開発済みなの、後ろの穴。指2本でも入るの。最初のきっかけは、小5の時、テストで折木に負けたこと。  
勉強に打ち込んでるわたしが、あの怠け者に負けた、その悔しさったら、ふくちゃん分かる?だから自分への罰を与える事にしたの。  
それがこれ。ちょっと興味があったお尻の穴に指を入れることにしたの。」  
 
♦ 
何か、ふくちゃん。真顔で聞いている、もう恥ずかしいったらない。でも、覚悟を決めたから全部さらけだすわ。  
「最初は全く入らない。そうよね。簡単に入ったら、ずっとお漏らししちゃうもの。何か潤滑剤になるの無いかなって、最初はバター使っちゃった。ちーちゃんごめん、食べ物粗末にして。  
それで、バターを細かく切って、押し込むわけよ。しばらくするとじんわりと溶けてくるの、そしたら、指をゆっくり入れてく。今度は案外スルっと入ったわ。  
あとは、ゆっくりと出し入れする。『これは罰、悪い子へのお仕置き』そう呟きながらやってた。そうしたら物凄く感じてしまうの。  
で、癖になった訳。ねえ、ふくちゃん。もう入れて欲しいな良いでしょ?」  
 
♣ 
僕にもちろん断る理由はない。摩耶花の後ろの穴に、話しを聞いてすっかり回復したあれを押し込む。ちょっと抵抗あったけど、少し押すとすんなり入った。  
前の穴とは違い、きついのは入口だけだ。ゆっくりと奥までいれる。逆にゆっくりと引き抜く。途中まではすんなり出てくるが、端までくると、急に締め付けられる。  
 
♦ 
今、ふくちゃんのがはいってるのが分かる。熱い塊、自分の指じゃない。細くて冷たい棒でもない、それにわたしは今、貫かれてる  
押し込まれると、軽くゲップが出る。これは悪い事してる罰ね。逆に引き抜かれると、まるで排泄してるみたいに感じる。  
そうよね。わたし今ふくちゃんのアレを排泄してるんだ。それがまた押し込まれる。何度も繰り返す排泄。ありえない。  
もう、倒錯の世界だわ。感じすぎちゃう。そろそろ限界。  
「ねえもう限界、出して。」  
その途端、一番奥まで挿入されたアレから、熱いものが注ぎこまれた。  
 
♣ 
ふう、摩耶花は満足して眠った。  
僕は寝ている摩耶花にお休みのキスをして、寝た。  
 
♠ 
結局、千反田は妊娠しなかったが、その後、千反田から折に触れて求められる関係にはなった。どうも、妊娠することよりも、中で出される感覚が気になるらしい。  
あのあと、姉貴は、深酒をした。  
帰ってから、不満たらたらの姉から求められて、遂にしてしまったのだが、それはまたの話だ。  
里志と摩耶花はどうも、帰りの車内でも見せ付けるようにイチャイチャしていた。  
俺達は互いに、かなり深い関係になったのは確かだ。  
 
おわり  
 

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