『手作りチョコレート事件」より、題名「タイ焼きと巾着袋」  
 
・奉太郎xえる  
・ちょいエロ  
 
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 去年、僕に好意を寄せてくれる摩耶花がせっかく作ってくれたバレンタインチョコを溶かして型にはめただけだろ?  
なんて、傲慢にもほどがあるいいわけで断ったのに、摩耶花は僕を見限らず、来年は認めさせてやるんだから!と挫  
けなかった。  
 
 思春期特有だと自覚するけど、自分が中途半端なだけに摩耶花と恋愛なんて縛られたくないと、チョコに込められ  
ていた本来の意味を知りながら、取って付けたようないいわけで逃げを打ってしまったのだ。  
 摩耶花は、まっすぐでぶれないのはいいけど、通じないなら違った手を考えてみるのがムリや痛みの少ない人生を  
過ごす秘訣だと思うんだよね。  
 
 ともあれ、去年の自分を許せないだけに、迫り来る審判の日(バレンタインデー)を万全の備えで迎えないと行け  
ないわけだ。  
 幸いなのは、ホータローが古典部に入り、えるちゃんとくっついた事を契機に、僕と摩耶花の拗れが事故にあった  
ように摩耶花のダイレクトな告白を産み、僕は自分の至らなさを乗り越えて摩耶花を受け入れられて、一番の難関を  
クリアしている事だ。  
 
 だとしたら、今年のバレンタインデーのチョコの意味は、どうなるんだろうか。  
 去年の摩耶花の本命チョコの役目は、もう、済ませてしまったよな。となれば、今年もらうのは、念を押すためか?  
 いや、摩耶花にとっては、そんな軽い物じゃない。  
 僕は、どうしたらいいんだろうかと、どうにも落ち着かない。  
 
 
 去年のバレンタインデーは、最悪だった。あたしも正直、うまくいくとは思ってなかったわ。チョコの出来は微妙  
どころか、生暖かく見守って欲しいレベルだったし、思いを込めると言っても、業を煮やしてって気持ちが強かった  
と思うから、おいしくなかったと思う。  
 
 そういう意味で渡した味も思いも『苦くてまずい』という致命的な失敗にならなかったんだけど、でも、まさか、  
里志、いや、あの時点ではふくちゃんが受け取らないとは、思わなかったのでカッとなって自分で処分しちゃった  
のよね。  
 
 他人に強く求めてしまう自分の強欲な黒い思いが気を重くして、きつい言葉が先に出てしまう。そんな自分を何とか  
して欲しくて強く求めるんだけど、そうよね、そんな身勝手な渦のような思いをぶつけられても迷惑よね。  
 そんなんだから横で見ていた奉太郎だって、引いちゃうわよ。  
 
 ああ、もうっ!て訳で、今年は、えるちゃんとベースになる製菓用チョコをデパートに買いに来た訳よ。  
 
「去年のバレンタインでは、その辺のスーパーで買ったブロックチョコで適当に作ったんだけど、今年はちゃんとした  
のを使いたいのよね」  
「このクーベルチュールなんかは、洋菓子店でも普通に使っているそうですよ。ミルクチョコなので無難だと思いますし」  
「そうね。あたしとしては、このクーベルチュールでも、デュオフロールって良さそうな気がするのよ」  
「確かに、そちらの方が高級ですね。食べたときの覚醒感がはっきりしてますし」  
「覚醒感か。里志のヤツに目を覚まさせるのにちょうどいいかな、ふふふ」  
 
 なんて感じで、えるちゃんはデコレーション用に使うのか、各色チョコペンと生クリームを買っていたので、あたしも  
面白そうなのでチョコペンを何色か買ってみた。  
 
 さて、2月の冷え込む日に外出などしたくはないが2回目の登校拒否児童を迎えに行くようなことをえるにさせるわけ  
に行かないので、俺は自転車で千反田邸に向かっていた。  
 正直、面倒な用事なのだ。自分は、その事件とも言うべき、悲劇の現場に居合わせてしまったので僅かながらの責任が  
あるとえるが主張するので、さらなる悲劇を回避するべく、作戦会議が行われるのだ、などと自分を鼓舞しているうちに  
千反田邸の門に着いたので自転車を停めて、インターフォンを押した。  
 
 鈴を鳴らすような声で返事があり、「どうぞ」というので玄関に向かい、扉を開けるとえるが居た。  
 
「お寒い中、ご足労くださいましてありがとうございます、奉太郎さん」  
「うむ、楽にしてよいぞ、えるよ。っていうか足下から冷えるから上がらせてもらうよ」  
「はい!」  
 軽い足取りのえるの後に続き、暖房の効いた、えるの部屋に招かれた。  
 
 クッションに座り、テーブルにおいてあったティーポットから、えるがカップに紅茶を淹れていく。  
 立ち上る良い香りとほどよい濃さなので俺が来てから湯を入れたのだろうな。  
 
 とりあえず、一口飲んでから、  
「まずは、俺から行こうか。里志のヤツは、去年のバレンタインの後、摩耶花に数時間も謝罪してあるから、それについ  
てはもういいだろうと。そして、既につきあっているから、今回のバレンタインには特に意味合いがないんじゃないか?  
という事らしい」  
 
 俺的には、里志の事がどうあれ、えるは俺のチョコをくれないんじゃないか?という懸念がある。深い仲になっている  
から、さすがにそれはないだろうと思っているが、この寒波のような、心を冷えさす予感がある。  
 
「はい。里志さんは、そのように思っているんですね。さて、摩耶花さんですが、実は玉砕覚悟でのバレンタインチョコ  
だったようで、結果的には自爆なされましたが、受け取られたらもっと残念なことになったかもしれないと思っているよ  
うです。その後、わたしと奉太郎さんがつきあうようになったことで弾みが付いて恋人同士になれたけど、どこか、まだ  
親密になれない何かがあるので何とかしたいそうです。なので、今度のチョコは失敗したくないというので、先日、摩耶  
花さんとデパートにお買い物に行き、上質な材料を仕入れましたよ!」  
 
 去年のあの摩耶花の表情は、悔しさ+自分で作ったチョコの不味さが出てたんだな。  
 
「う、うむ。ちなみにだな、えるもバレンタインチョコの材料を買ったのか?」  
 
 不自然にならないよう、きわめて、自然に言えたと思う、たぶん。  
 
「はい!きっと、喜んでもらえると信じてます」  
 
 俺に向かって、このまばゆいばかりの瞳。信じて良いんだよな?える!と念を送ってみるが小首をかしげてやがる。  
 
「俺としては、里志がどんなチョコであれ、摩耶花からチョコを素直に受け取り、食べれば済んでしまうと思う。  
 所詮は、製菓会社の販促だろう?チョコアレルギーなら話が別だが」  
「奉太郎さんは、ぜんっぜん判ってないです。摩耶花さんは里志さんとの関係が未だに十分じゃないと思ってるんですよっ」  
 
 以前なら、こういうときにキスできそうなくらい寄ってきたんだが、判ってくれてるという安心感があるから迫ってこな  
いんだろうな、少々寂しいが。  
 
「そうか?あのこだわりのない里志が今まで続いているけど、もしや、深い仲になっているからそうしているだけで、あい  
つはムリしてつきあっているのか?」  
「うーん、どうなのでしょう。わたしから見て、そういう表面的なつきあいに思えないです。ただ、摩耶花さんにとって  
何か足りないんじゃないかと」  
 
 二人で考え込み、冷めかけた紅茶をすする。クッキーを食べつつ、  
「里志のヤツは、興味のあるものにとことん集中するが、摩耶花にはあっさりなのか?」  
「あっさりというかさっぱりした関係には見える、かな。そこが摩耶花さんには不安定に感じるのかもしれませんね」  
 
「こう言うのも何だが、里志にとって摩耶花は絶対じゃないのかもしれない。正直、あいつがどんな女性を好むか判らないし、  
何を求めているのかもはっきりしないから」  
「そうだと、摩耶花さんは歯がゆいでしょうね。でも、つきあっていくうちに離れられない関係になっていったりしないんですか?」  
 
「情が移るって感じか。無関係だった二人がつきあいを続け、徐々に心を開いていくに連れてお互いが無くてはならない存在  
になるような」  
 
「えるは、奉太郎さんにとってどんな感じなんですか?」  
「外見で言えば、長い髪も顔立ちも可愛いし、その瞳に何度も魅了されたよ。内面で言えば、えるが興味を持つ事は心惹かれ  
る事が多いし、その先も知りたくなる。俺はどこまでもえるを知りたいし、俺のことを愛して…欲しいと思う。えるはどうな  
んだ?」  
 
 えるは頬を染めて、まじっとこっちを見つめてうんうんと頷きながら聞いている。  
 
「外見は、もう少し、愛想良くしても良いと思います。でも、影のあるような雰囲気に惹かれます。内面は、えるのあれこれ  
にイラっとするのを隠そうともしないのが正直で好きです。でも、どうしてでしょう、わたしの心に届く素晴らしい事をして  
くれるんです。愛されてるのかな?って思って甘えたりしてます。そして、えるのことをずっと離さないで欲しいです」  
 
 部屋の湿度が上がったような、ほわっと良い雰囲気だな。  
 
「こ、こほん。まあ、俺とえるは親密だよな?」  
「もちろんです。切っても切れない仲とも言えます!」  
 
 ふぅ。不思議ちゃんなところがあるだけに時々こうして確かめたくなるぜ。  
 
「俺たちの仲が参考になるかどうか判らないが、そういうきっかけにこのバレンタインがならないとダメなんだな?」  
「そうなんですよね。ちょっと摩耶花さんが考え過ぎって気もしますが」  
 
 ふーむ、あの二人のことだ、具体的にああしろこうしろと言っても反発を食らうだけだろうな。  
 
「単純にいくか。摩耶花は、漫画が得意だよな。となれば、自分の思ってること、伝えたいことをチョコにペンとかで描いて、  
それを里志に渡せばいいんじゃないか?」  
「となると、里志さんは手芸が得意ですから、なにか作って、摩耶花さんに渡せば、手製ですし、うれしいと思うんですよ。  
摩耶花さんは、ずっと大切にすると思います」  
 といったことを少し詰めて話し合い、俺は里志に、えるは摩耶花にそれぞれ伝えることにして作戦会議を終えた。  
 
 そして、あっという間にバレンタイン当日となった。  
 放課後の古典部部室にて、俺とえるは立会人となって、二人を見守る役目だ。不安げな里志は俺に目配せするので頷いてやり、  
摩耶花はえるを見て、えるは両手を胸元で握りしめ、ファイト!と言う感じか。  
 
「じ、じゃあ、あたしから。去年の反省を生かし、食べておいしく、見て判るチョコを作ってきたわ。受け取ってくれるなら、  
この場で開けて見て欲しいの」  
 
 摩耶花のチョコの箱は、雑誌くらいのサイズで大きいぞ。凄い気合いだ。  
 
「謹んで、受け取らせていただきます。こっこれは、漫画チョコだ!」  
 
 里志は、しげしげと漫画を読んでいて、ああ、これか!という表情になった。  
 
「摩耶花、この魔法使いは、僕だよね」  
「そうよ。あなたがあたしに魔法を使ってくれたわ」  
 
「この子、摩耶花のお腹の中で暴れて苦しめていたものを魔法で引っ張り出したら、タイ焼きになったのか。  
 タイ焼きって、以前、摩耶花としたあとにまどろんでいた時に言った、あのタイ焼き?」  
「そう。読んで判るとおり、食べ物のタイ焼きよ」  
 
「タイ焼きって、夢判断などで出てくる『魚』、だよね。その魚には黒い物を抱えている、摩耶花の中に澱んでいるあれこれ、  
かな。それを僕が魔法をかけたの?」  
「うん。あなたがあたしの中のどうにもならない物を魔法で変えて、おいしく食べられるものに変えてくれたの。  
 ねえ、里志、これからもあたしに魔法を使ってくれる?」  
「摩耶花のタイ焼きは、おいしいからね。何度でも魔法を使うよ。…そして、僕の魔法だけでは、不完全なんだ、摩耶花。  
 このプレゼントを受け取ってくれるかい?」  
 
 里志は、ラッピングされた袋を摩耶花に渡した。何を作ったんだろうか?  
 
「なにかしら…あ、これ、巾着袋。しっかり出来ていて…、どうして?」  
「僕の巾着袋は傷んできたので、新しいのを2つ作ったんだ。厚めの丈夫な生地でしっかり縫製したんだよ。僕の思いを込めた  
袋で摩耶花の大事な物を長くしっかり守りたいって、感じなんだけど…、どうかな?」  
 
 摩耶花の目に大粒の涙がこぼれ、ふたりは強く抱き合った。  
 
 この場に俺とえるは、じゃまだろうということでえるの手を引いて、部室を後にした。  
「奉太郎さん、わたし、気になるんです。タイ焼きってなんですか?」  
「それは、里志と摩耶花だけがどういうものか通じる暗号みたいな物か。例えるならば、以前、学校の裏山にえるが連れて  
行ってくれたじゃないか。『あの場所』みたいなものだ」  
「ああ!そうですね、判ります。二人だけの大事な場所なんですよ」  
 
 えるは、頬を赤らめ、あのときのことを思い出しているようだ。  
 
 それより、俺にはもっと大事なことがある。この流れだとふつうに校門で別れて、愕然としている姿をリアルに見てしまう!  
 
「そうだな。…それで、今日はバレンタインデーだよな?」  
 
「ええ。それがどうかしましたか?……ぷーっ、久々に見ましたその顔!」  
 
「ば、馬鹿、違うって、その、だなあ…」  
「ごめんなさい、奉太郎さん。えるの家までチョコを取りに来てもらえますか?」  
「ああ…もちろん、行くさ。万難を排してでも!」  
 
「うふふ」と微笑む、えると千反田家まで自転車を飛ばして、えるの部屋まで来た。  
 
「ちょっとそこで待っててください」「ああ」さて、どんなチョコなんだろう。  
 
「…どうぞ」  
 
 部屋に入ると、全裸のえるが色とりどりのチョコペンと生クリームのチューブを持っていた。  
 
「奉太郎さんは、えるとあまり遊んでくれません。なので、えるチョコで遊んでみませんか?」  
 えるに遊ぶための道具を渡された。  
「…こういうチョコもあるんだな、驚いた。とりあえず、こんな感じか?」  
 
 俺は、ストロベリーチョコペンでえるにルージュを引いて、甘いキスをしてみた。  
 
「ふぅ、そんな感じです。さあ、奉太郎さんも裸になって。チョコからの逆襲もあるんですよ?」  
 
 舌にチョコを塗って、グミチョコとか、俺の手の爪に色とりどりのチョコでマニキュアされて舐め取られたり、  
生クリームでひげを描かれたり、お互いの体がチョコと生クリームで彩られ、興奮してきたえるが、俺の陰茎に複雑な  
模様をチョコペンで描いては舐め、描いては舐めし始め、俺は、生クリームをえるの膣にぎゅうっと入れては溢れる  
クリームが愛液と混じるので中出ししたみたいに見えて激しく興奮して吸い、舌を入れて味わったりして、勢いで挿入  
しようと思ったら、コンドームを付け忘れてたことを思いだし、えるに怒られながら装着したコンドームにまた模様を  
描かれたので、そのまま挿入するときゃーきゃーいいながら喜ぶえるが新鮮だった。  
 えるの乳房に生クリームを盛って、抱き合いながらすると何とも言えない柔らかくて乳臭い物が俺とえるの間でうねうね  
して気持ちよく、我を忘れて1度目イって、いろんな体位をしつつ、塗ったり舐めたりしていたので最後にはチョコも  
生クリームも使い切ってしまった。俺とえるは何度イったのか判らない。  
 
 そんなこんなで甘ったるくて、胸焼けしそうな狂乱のバレンタインは終わった。  
 
 当分、チョコと生クリームを遠慮したいが、えるがたいそう満足していたのでよしとするか。  
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おわり  
 

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