・愚者のエンドロールを改変してあります。  
・奉太郎xえる、里志x摩耶花  
・18禁  
 
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"ちゃんと入れたようね。こんなことを頼むのは心苦しいけど、表に出られないから"  
"鍵付きなんて、ドキドキします。事情はだいたい伺ってます。わたし、知りたいんです、その結末を"  
"あいつらが暴走しなければ、すんなり解決したのに。大事なポイントは覚えてるよね?"  
"はい。あの人なら、きっと何とかしてくれるはずです"  
"じゃあ、よろしくね。期待してるから。後でバレないよう、発言を削除しておいて"  
"フォロワーから漏れたら台無しですものね。がんばります"  
 
 えるの悩みを解決した後、部室で古典部の文集にはちょうどいい題材だったのでそれを元に編集して  
いたところに遅れてきたえるが、  
「あ、みなさん居ますね。ちょっと大事なことがあるので来てください」  
「何だ、える。また、何かあったのか?」  
「ええ、そうなんです。みなさんの力が必要です」  
 こういう時のえるに逆らえないのでそれぞれ、ため息をつきつつ、全員でえるの後に付いていった。  
 
「ここです、視聴覚室。失礼します」  
 コンコンとノックをして、えるが視聴覚室のドアを開いた。  
「済まない、呼び出したりして。とりあえず、そこのイスに座ってくれ」  
 少し吊り気味な涼しげな目元の冷厳そうな雰囲気の人だ。訳がわからないまま、俺たちはイスに座った。  
「実は、文化祭の出し物として、ミステリー風の映画を撮っていたんだが、不測の事態が生じて、肝心の  
ところで頓挫してしまったんだ。まずは、このビデオを見て欲しい」  
 HDDレコーダーにセットされたディスクを再生し始めた。  
 
 劇中の生徒たちも、文化祭の出し物のために鉱山の廃村に向かい、そこを題材に映画を撮るらしい。  
 いい具合に枯れている廃村は、魅力的な風景だが、廃墟マニアでない限り、地味すぎた。  
 そこにくたびれた劇場を発見する、が、もう夕方となり、帰りのバスもないということで、この中で  
夜露をしのごうということになる。劇場内はあちこちに資材が積みっぱなしになっていたりして、落ち着  
けるような部屋を探すうちに事務室からキーボックスを発見したので、手分けして部屋を探すことにした  
ようだ。薄暗い劇場内は、不気味で誰かがドアを開ける音にも怖気が走る。  
 そして、ホールの方で絶叫が上がり、大きな物音がしたのでびっくりして、ホールの扉を開けると、  
腕がもげて無残な姿になったガタイの良い海藤君を発見する。  
 ふと見ると右手の奥が光っていて、誰か扉を開けて、出て行った。  
 
 といったような、大変、中途半端なところでビデオは終わっていた。  
「こんな具合で、ここから解決編になるらしいのだが、脚本担当は、体調不良となって現在、音信不通なんだ。  
千反田さんによると君らは、何ともよくわからない彼女の悩みを見事、解決したというではないか。誠に申し  
訳ないが、責任者として、この状態で展示するわけに行かないので、助けて欲しい」  
 
 まるで女王様のような人が真摯に頼んでくると頼みを受けざるを得ないような気にさせられるが、  
「千反田の悩みは、偶然解けた物で正直、このビデオを見る限り、その」  
「待ってください!奉太郎さん。わたし、気になるんです。ここまで脚本を書いた人が、何故、止めてしまった  
のか。だから、相談を受けてしまったのです」  
 また、えるの悪い病気のせいだったんだな。  
 
「一応、参考になる資料も用意した。現場までの地図も作成しておいたから、見に行くことも出来るだろう。  
どうだろうか?」  
 
 俺を見つめる、えるの瞳の輝きがまばゆいばかりだ。そして、里志も摩耶花もなんで俺を見るんだ?これは、  
はめられたと言うこと、何だろうな。はぁ。  
 
「何の役にも立たないかもしれませんが、ここまでしてもらったので、努力してみますよ」  
「そうか!もし、成功したなら、映画のエンドロールに君らの名前を入れることを約束しよう!」  
 
 文化祭の映画のエンドロールなんて、誰も注視しないと思うが、名前が残るのはいいじゃないか。えるも喜  
ぶだろうしさ。俺たちは、資料とディスクを持って部室に戻った。  
 
「さて、提案なんだが、資料も多いし、もう、下校時刻だ。いったん帰宅して夕飯後、この案件を持ち込んだ、  
えるの屋敷で検討会をしないか?」  
「わたしの家なら、大丈夫です。親は旅行中なので気兼ねなくできますよ?」  
「さっきのビデオのことですっかり気になってることだし、僕は付き合うよ。摩耶花は?」  
「えっ?!あたしは、興味ないけど、里志が行くなら」  
「では、みなさんをお待ちしております」  
 
 そんなわけで、えるの屋敷にぼちぼちと集まってきた。ビデオを50インチはあろうかという液晶テレビに  
映し、資料を検討しつつ、あーでもない、こーでもないと議論し、あとは翌朝、現場の廃村に向かおうという  
ことになったが、日付が変わるような時刻になってしまった。  
 
「念のため、聞いておくが親には泊まりだって言ってきた?」  
「僕は、里志の家に泊まりに行ってることになってるよ?」  
「あたしは、ここにパジャマパーティ的な感じで」  
 
「じゃあ、問題ないですね。露天風呂があるので、みなさんで入りましょう!」  
「お、おい、える。俺とおまえはいいけど」  
「わたし、他の人の裸も知りたいです」  
 
 俺と里志は、思わず目線が合って、お互いの恋人の裸を見られたくないと思いつつも知りたいような微妙な  
牽制があったが、  
 
「あたしは、かまわないわよ。減るもんじゃないし」  
「摩耶花、あの、いいのか?」  
「乱交はイヤよ? でも、一緒にお風呂に入るくらいいいじゃない」  
「ば、馬鹿言うな、僕は、摩耶花だけだからな!いくら親友でもムリだから」  
 
 そんなこと言うから、ヤバイ気持ちが一気に強まったじゃないか。でも、気になるな。  
 
「はいはい、仲良くお風呂に入りましょう!」  
 またも、えるの好奇心に押し切られて、俺らは露天風呂に向かうのだった。  
 
 脱衣所で、お互い、裸になるのに慣れているとは言え、何だろうこのいけない気持ち。  
 はしゃいでる、える以外、黙って服を脱ぎ、タオルを持って、湯気がたなびく石造りの露天風呂に出た。  
 
「まるで、温泉のようだな」「さすが、豪農だけあるな、見事な石造りと風景だ」「ひろーい!」  
 
 落ち着かない気持ちで手桶に湯を取り、体に流して、俺とえる、里志と摩耶花と並んで岩風呂に入った。  
 温泉だし、広くて、のびのび出来る。その上、女の子と入るなんてなんか元気が出てくるな。  
 なんて思っていると里志がえるの胸元を見ている。どうだ、俺が育てたんだぞとか思いつつ、俺も摩耶花の  
胸元を見ると手の平のすっぽり収まるようなかわいらしい乳房が見えて、新鮮だ。  
 
「何か、みんなの目線がいやらしいんですけど」  
「そ、そんなことないよ、摩耶花」  
「ああ、いい温泉だな、える」  
「いえ、奉太郎さんのは性的にみなぎってきてます」  
「握るなよ、える!」  
「あ、里志のも。どうしてかしら?」  
「そりゃー摩耶花がとなりにいるからだよ。ほーたろーだってそうだろ?」  
 
 里志の声がいつもより高めだ。嘘のつけない男だな。  
 
「ま、まあな。あ、体を洗おうかな」と湯から立ち上がる。  
「俺も、そうしようっと」と里志も立ち上がったところ、二人の女性の目線が股間に注がれた。  
「里志さんのおちんちん、太めです」  
「奉太郎のが長いみたいね」  
 
 何かこの混浴、イヤ。シャワー前のイスに座って、ボディーシャンプーをプッシュして体に伸ばしていると  
 
「奉太郎、背中流してあげるわ」  
「えっ?!なんで……」  
「お互い、裸なんて機会、そうそう無いし。童貞じゃ無いんだから」  
「そうだけどって、えるまで!」  
 向こうでは、えるが里志の体を洗っている。  
「うふふ」  
 摩耶花の手が俺の体を洗ってくれるのはうれしいんだけど、里志も困ってるみたいだな。でも、隠すことが  
出来ないし、お互いの恋人がこの場に居るんだからと思うときが楽になってきた。と手が前に伸びてきて、俺  
のをしごくように洗い始めた。  
 
「前は、洗えるから。それだけはダメだ」  
「けち。えるちゃんは、これを入れてるんだー。さて、あたしも洗ってよ」  
 ギブアンドテイクって奴か。  
「仕方ないな」  
 えるより華奢な摩耶花の体。こいつは本当に里志だけを思ってたのかなとふと、思ってしまう。  
「……奉太郎、ちょっと、そんなとこばかり洗わないで」  
「ごめん、うっかりした」  
 
 いつものクセでえるを刺激するような洗い方になってしまった。横でえると里志がキャッキャうふふしてい  
るし、どうにかなりそうだったのでお互いの体をシャワーで洗い流して、岩風呂に入った。  
 
 里志たちも俺たちに気づいて、洗い流し、岩風呂に入ってきた。  
 お互いの顔が赤いのは、温泉だからだけじゃないよな、やはり。落ち着かなくなってきたので、  
 
「そろそろ、上がろうか?」「そうだな」「…うん」「あがりましょう」ともう、始まっちゃってる感じで、  
脱衣所に向かい、用意してあった浴衣に着替えた。  
 
「里志さんと摩耶花さんは、右手の寝室を使ってください。では、おやすみなさい」  
「ああ、おやすみ」「おやすみ〜」  
 俺とえるは、手をつないで寝室に入った。2つくっつけた布団に枕が並べてあり、枕元にはコンドームまで。  
「なんかさ、える。もう、我慢できないよ」  
「わたしもです。奉太郎さん……」  
 
 お互い、ゆかたをするりと脱いで、湯上がりのほんわりといい匂いがするからだを抱き合うとさっきまでの  
興奮のせいか、電気が流れるような感じだ。  
 貪るようにキスをして、熱い吐息がこぼれる。布団の上に移動するとえるが俺を押し倒すように上に乗り、  
俺の頭をまたぎ、  
「奉太郎さん、えるを舐めて」  
 
 俺の顔に熱い陰部を押し当てるので思わずしゃぶりつく。えるは俺の頭を押しつけてよがっている。  
 
「摩耶花さんといちゃいちゃしているのを見て、あぁ…どうしようもない気持ちになって、わたしもう」  
 あふれ出る愛液をすすり、ひくひくする膣に舌を差し入れてなめ回すと腰ががくがくして、頭を出した  
クリトリスを弄っているとえるは、甘い声を上げはじめ、自分で乳房を弄りながら高まり、背中を反らして  
イった。  
 
 
「摩耶花、僕は、おかしくなりそうだったよ。奉太郎にあんなことされて色っぽい表情になって」  
「里志、あたしが誘ったわけじゃないのよ?でも、あなただって、その、もう…」  
 
 摩耶花は僕のをむしゃぶりつくようにフェラチオをはじめた。いつものような遠慮しがちな感じじゃ無く、  
荒々しいような舌使いで舐め、吸い付くように咥えたり口の中でなめ回したり。そんな淫らな摩耶花の顔を  
見つつ、俺の手にすっぽりと馴染む乳房を揉み、乳首をつまんだり、捏ねたり。  
 
「いつもより里志のが大きくなってる」  
 熱い吐息で摩耶花が陶然と僕のをしごきながら淫らなことを言ってる。  
 
「離れた部屋なのに、えるちゃんの喘ぎ声が聞こえるね……。どうしようか?摩耶花」  
 
 摩耶花は、四つん這いになり、僕に尻を向けておねだりしてきた。  
 その熱くぬらぬらした陰部をなめ回すと尻がぴくりとし、もう充血しているクリトリスを弄りながら、  
膣に舌を入れて吸ったりかき回したりしていると、摩耶花は堪らず、こっちを向いて、  
「里志、もう、どうしようもないくらいしたいの。来て!!」と尻を突き出した。  
 枕元に添えてあったコンドームのパッケージを破き、ぎんぎんにみなぎってる自分のに装着した。  
「摩耶花、愛してるよ!」  
 
 もう、ぬるぬるになっていたそこに亀頭を押し当て、後ろから強引に奥まで押し込むと摩耶花は悲鳴の  
ような声を上げて肉壁が僕のを締め付け、数回腰を使っただけで背筋を震わせながら軽くイってしまった  
ようだ。  
 そんな摩耶花の顔を横に向かせて、ディープキスをした。  
 バックのまま、柔らかな尻を掴みながら腰を使い、ふるふるしている乳房を揉み、摩耶花のまとわりつ  
いてくる肉壁の感触に何度もヤバくなり、摩耶花の体を起こして、両腕を掴みながら激しく後ろから突い  
て、その勢いのまま、射精した。  
 まだ、ムラムラが治まらないので、コンドームを交換して、正常位で摩耶花と汗だくになりながら、  
お互いの名前を呼びながら、びっくりするほどの量で射精した。摩耶花もぐったりとしている。  
 
 
 えるを仰向けに寝かせ、俺はえるのはぁはぁと喘ぐ唇に自分のを押し当てた。今日は、こうしてやらな  
いと気が済まなかった。えるは、ちろりと舌先で亀頭を舐め、唇を開いたので口の中に入れると舌が竿に  
そってぬめぬめと蠢き、生暖かい口中は例えようも無く気持ちよく、俺を見つめるえるの目は、発情して  
いて、亀頭や竿を舐めるえるの舌があっという間に淫らな気持ちを急速に高めて、結構な勢いで射精して  
しまった。腰が溶けるような快感だ。えるは、精液を飲んでしまったのか、むせている。  
 
「ごめん、える。つい、口の中に出してしまった。吐き出してくれ」  
「けふっ、いいんです。これが奉太郎さんの精液の味なんですね」  
 口中の精液の残りをくちゅくちゅと舐め取っている、えるがすごく淫らに思えて、我慢が出来なくなっ  
た俺は、枕元のコンドームを取り、いらいらとパッケージから出して、出したばかりで敏感な自分の物に  
装着して、えるの両膝を広げて腰を上げさせ、熱い股間に自分のを押し当てたら、飲み込まれるように中  
に入って、えるがしがみついてきた。  
 
「える、俺は、お前が好きだ」  
「奉太郎さん、わたしもです、ずっと好きです」  
 いつもより、乱暴になってしまうが衝動が止められない。あっ、あっというような悲鳴のような低い喘ぎ  
をする、えるの乳房を揉み乳首を舐め、甘く噛んだりしつつ、隣からかすかに聞こえる摩耶花の高い喘ぎ声  
を聞くと負けていられない気分だ。えるの体を起こして、座位になり、えるの尻を掴みながら下からずんず  
んストロークを大きくして突き上げていると、えるが激しくよがる。  
「奉太郎さんのが、子宮まで届いてます。入り口から奥まで、すごいことに……」  
 快感に震えるえるを抱き締めつつ、更に高めていくとえるの腰がぐいぐいと動き始め、自分の腰使いと相  
まって我慢のならない高ぶりが止められず、えるのかすれたような喘ぎ声の高まりに合わせて、射精した。  
 何度も何度も出すたびにえるの腰が動き、背筋がびくりびくりとした。  
「える、俺のが全然治まらないんだ。もう一度、していいか?」  
「気の済むまでしてください。わたしのだって疼きが止まりません」  
 そういう、えるを布団に寝かせて、使用済みのコンドームを縛り、新しいのを装着した。  
 熱くほてった膣に俺のを挿入するとまた、堪らない一体感が戻り、汗びっしょりの肌を合わせて抱いて  
いると、全身で感じ合っているかのようだ。思うがまま、腰を使い、愛撫し、唇を貪って、最後はお互いの  
指を絡み合わせ、これでもかと激しく求め合い、えるの喘ぎ声に合わせて、一番奥で激しく射精した。  
 
 
 汗をかいたのでえるを連れて裸のまま露天風呂に向かうと、里志と摩耶花に出くわした。  
「なんか、気が抜けるな」  
「ああ、賢者モードってやつかもな。あはは」  
 邪気が抜けた感じで、シャワーを浴びて汗とか落として、岩風呂に入ると大変心地よく、眠くなる。  
「寝ちゃダメですよ、奉太郎さん」  
「ん……ああ」  
「里志さんも摩耶花さんも起きてください!」  
 えるに起こされて、俺らは湯から上がり、てきとーにバスタオルで体を拭いて、寝室に戻って死んだ  
ように寝た。  
 
 
 翌朝、目覚めると一人だった。何かいい匂いがするのでそっちに歩いて行くと、台所にたどり着き、  
「おはようございます、奉太郎さん」  
「ああ、おはよう。おにぎり作ってるのか?」  
「ええ。今日は撮影現場に行くんですよね」  
「そういえば、そうだな…。」  
「あ、おにぎりだ!おはよう」  
「ふわー、えるちゃんは、朝早いわね」  
 
 みんな起きてきたので、朝食となった。味海苔で巻かれたおにぎりは、見た目が変だが大変うまい。  
 
「おにぎりがヤケにうまいな」  
「うちで収穫された新米を使ってますから。お口に合ったようで良かった」  
「そうか、米の味が違うんだね」  
 
 里志も納得だ。それぞれ、朝食を食べ終えて、支度をしてから出かけた。  
 
 バス停までの間に飲み物を補充し、バスに乗った。うつらうつらしながら終点まで行き、そこから  
1時間ほどすると廃村に着いた。すっかり日が高い、というかもうお昼だ。  
 
「まだ、何にもしてないけど、昼飯にするか」  
「そうですね。それにしても昼間なのに寒々しい風景です」  
「鉱山としては、まだ細々とやってるらしいよ。今は夏休みだから誰も居ないだろうけど」  
 早速、下調べしてきた里志が知識をひけらかす。  
「その辺のベンチに座って、食べましょうよ」  
 おにぎり、鶏の唐揚げ、たくあんというようなセットでえるから配られ、夏の日差しで唐揚げが  
いい具合に温まって大変うまい。程なく食べ終えたので、撮影場所の劇場に向かう。  
 
 10分ほど歩くとその劇場が見えてきた。外壁が相当痛んでいるようだが雨風が入り放題になる  
ほどじゃないらしい。周囲は夏草がみっしり生えていて鎌を持ってこないと入れないと警告された  
通りだ。俺と里志は劇場には入れるだけのスペースを空けるため、鎌を持って草刈りだ。  
 
 いい汗をかいた頃、薄暗い劇場内に入ることが出来た。  
 
「これは、倉庫として使われているのか?」  
「ああ、本来ならホール周囲は、ぐるっと開いている筈なのに左側が資材等で入れなくなってるね」  
「事務室に合い鍵があったわ」  
「お、気が利くな、摩耶花は」  
「えるが居ないぞ?あ、勝手にホールに向かってる」  
 
 慌てて俺たちはライトを片手に、えるを追いかけた。  
 
「こら、単独行動は、危ないって」  
「あ、奉太郎さん。ビデオの海藤さんが死んでいた場所を早く確かめたくて」  
 ホール内も乱雑な物だった。アルミサッシが積んであって、一部は派手にガラスが割れてるし。  
 
「とりあえず、俺とえるは、ホールをチェックしてみるよ。里志たちは通路とか外回りを見てきて  
くれないか?」  
「判った。何かあるといけないから、1時間後にこのホールに集合しよう」  
「ああ、その方がいいな」里志たちは、ホールから出て行った。  
 
 出入り口が右に2つ正面に1つあって、右奥のドアが開いてビデオのラストで光が見えたんだろうな。  
「わたし、気になるんです。何故、海藤さんはホール中央で倒れていたんでしょう?」  
「俺もそれは疑問に思った。誰かに殺害されたなら、殺害後、目撃されることを恐れて、壁沿いとか  
逃走しやすい場所にするよな」  
 
 えるは、ふらふらと歩き回り、天井から下がっているロープにつかまろうとぴょんぴょんしていたので  
俺は何か気になったので、えるでは届かなかったロープは俺の身長だと届いた。  
 ロープの上を見るとレールがあって、舞台上まで繋がっているようだった。俺はロープを引っ張って、  
舞台上まで上がって考えた。いつのまにか、えるも隣に座っていて、  
 
「やっぱり、このロープが怪しいですよね、奉太郎さん」  
「ああ。今、考えているのは無邪気さと単純さの両方なんだが…」  
 
 ホール入り口から里志と摩耶花が入ってきて、舞台上まで上がって来た。  
「おーい、ホータロー、何やってるんだ?」  
「あのさ、里志、このロープにつかまってターザンみたいに向こうへ跳んでみてくれないか?」  
「えっ?面白そうだから、やってみるよ。いっくぞー!」  
 
 里志は、ロープにつかまり、助走を付けてびゅんと宙を飛び、中央付近に積んである資材にかすって  
レールが中央で止まっているのでロープがふり戻って、里志は、ずるずると落ちた。  
 
「あっぶねー、なんだアレ、アルミサッシ?すれすれだったよ」  
「ちょっと、奉太郎、里志になんてことさせるのよ!」  
 摩耶花に睨まれてしまった。  
「いや、俺の推理だと海藤先輩が里志がぶつかる予定の場所で派手にぶつかった筈だから、当たらない  
だろうと思ってさ、済まんな、里志」  
「どういうことなんだ?ホータロー」  
 里志を少し怒らせてしまったようで険悪な表情だ。  
 
「通路や外回りは、特にめぼしいところ無かったろう?」  
「ああ。僕の見た限りでは、資料通りに窓は雪害対策で打ち付けてあるし、使えない部屋が多かったよ」  
「あたしが見たところ、何か仕掛けとか工作したような所も無かったわ」  
「奉太郎さん、どんな推理が出来上がったんですか?」  
 
「事故と殺害の両面がありそうだなってさ。単純に事故の場合、ガタイが良くて体育会系の海藤先輩  
なら、さっきの里志みたいにターザンのまねごとがしたくなってもおかしくない」  
「そういえば、資料のノートに丈夫なロープってありましたね。あ、ロープが途中でつないであるから  
それに使ったのかしら」  
 えるが補足してくれた。  
 
「それで、事故の場合、身体能力の高い先輩がスゴイスピードで舞台から助走し、積んであるサッシに  
激突、割れたガラスで腕が切り落とされ、衝撃で首でも折ったのか、それで死んだ場合と殺害の場合、  
誰かが殺害を計画し、当たりやすいようにサッシ等を積み上げ、ロープの長さ等を調整して、海藤先輩  
をそそのかし、右奥の扉から逃走した、とすると大ざっぱだけどつじつまが合う」  
「でも、なんでそうなったのでしょうか?」  
 えるがもっともな疑問を挟む。  
 
「おおかた、撮影現場でロープ遊びが止まらなくなり、これで行こうぜ!とかなって別の目的でロープ  
を使おうと思った脚本の本郷さんが呆れたとかじゃないか?」  
 里志が撮影現場を見てきたように推測した。  
「いかにもあり得そうねえ。どの時点でそうなったかは、判らないけど、腕がもげるトリックのために  
ロープが使われる筈だったのかもしれないわ」  
 摩耶花があきれ顔で意見を言った。  
 
「入須先輩の依頼は、あの中途半端なところで頓挫したミステリー?を何とかして欲しいということだ  
ったので、ロープの本来の使用目的は解決しなくていいんじゃないか?」  
「うん、きっと本郷さんもこれでいいと言ってくれると思います。大丈夫…な、筈です」  
「入須先輩じゃ無くて?まあ、いいや。えるがそう言うなら、これをまとめて提出しよう」  
 そんな感じで、あとはこのいい具合に廃れた劇場の雰囲気で何とかなるだろうさ、と俺らは廃村を出  
て、バスに揺られて今日は、解散となった。  
 翌日、昨日のことをまとめたレポートを入須先輩に読んでもらったら、大変喜んでくれて、これなら  
まだ間に合うと礼を述べて、クラスに戻っていった。  
 
 俺としては、文集の編集に戻りつつ、省エネな生活に戻ってきたのでほっとした。  
 入須先輩のクラスのビデオは、後日完成し、古典部にディスクが届けられたので再生してみた。  
 あの中断した部分から解決編に入り、再現映像で海藤先輩が奇声を上げながら、豪快にロープに飛び  
つき、見ている人が心配になるくらい激しくアルミサッシにアタックするところが爆笑だった。  
 エンドロールに Thanks として古典部一同の名前が載っていたので、俺は満足した。  
 
 
"ホント、感謝します。あなたたちのおかげで何食わぬ顔で学校に出られるようになったわ"  
"いえいえ、楽しかったですよ。検索してたら、偶然、先輩のつぶやきを見て、興味が出ただけですし"  
"あのロープ、結構予算を食っていたから、どうしても使わないと行けなかったから。それも生かして  
くれたし"  
"そこは、彼に気づいてくれるよう、あれこれしちゃいました"  
"クラスの馬鹿共が暴走しなければ、あたしが引きこもりになることも無かったのに…あ、これはあなた  
には関係ないわね"  
"ともあれ、今度、あなたたちに何かあったら協力するから。今回は本当にありがとう。でわ"  
"はい、先輩。では、ごきげんよう"  
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
おわり  
 

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