「そういえばさ、千反田さんて意外とさ、あるよね。」
「藪から棒になんだ、いったい。」
「今日は摩耶花が居ないからね。」
「…だからって昼間から猥談か、壁に耳あり障子に目ありって言葉知らないのか。」
「大丈夫、千反田さんも今日は行事で居ないからね。」
では、何故そもそも部に来ているのか。俺と里志の二人ならばそれこそゲームセンターで十分ではなないのか。
などと思ったりもするが別段用事も無かったし、姉も帰って来ていたので出掛ける事自体はやぶさかではなく、また馴染みの深い部室は落ち着くのでなんだかんだ里志には感謝していたりする。
「…伊原も苦労するな。」
「痛いとこ突くね。」
僅かに苦笑いしたものの、当人もよく分かっているので、さして痛そうではない。
「良い天気だな。」
「話を逸らさないでよ、ホータロー。」
別段逸らしたつもりは無かった。
が、声の調子から判断するに向こうもちょっとしたちょっかいみたいなものだろう。
「省エネ主義なんでな、猥談するメリットが感じられん」
「まぁまぁ、憧れの薔薇色生活のひとつと思ってさ。」
「それは、どっちかって言うとショッキングピンクじゃないか。」
「おー、ホータロー良いこと言うね。」
感心感心と言った様子でこくこくと頷く里志。前々から思っていた事ではあったが、やっぱりコイツの感覚はかなり独特だ。
変な所の地理に詳しかったり、不思議な風習や伝記を知っていたり、怪談の類いにも大体精通してる。そして古典部で活動してる内にミステリーも好きなことが分かった。
気に入ったことならば貪欲に知識を吸収する。自分には出来ない生き方だ。
「じゃー、ショッキングピンクに染まらないかい。」
読んでいた文庫本の残っているページを見る。
3ページ。
たまには話にのってみるのも良いかも知れない。
「本も読み終わるしな、いいぞ。」
「流石ホータロー!よ、思春期!」
「やっぱりやめようか。」
「あぁ、嘘ウソ、うそです。」