「性行はやめよう。手間がかかりすぎる。それに……、そうだ、経験がないんじゃさまにならないぜ」
だが千反田は強硬に主張した。
「いえ、性行でないと駄目なんです」
「仲を深めるだけなら、他に方法もあるだろう。デートとか」
「折木さんからお誘いがあったことなんてほとんど……。いえ、それよりも、性行でないと駄目なんです」
「……なんで」
「籍を入れて責任を果たす以上、作らないと困ったことになるんだそうです」
千反田は胸ポケットから几帳面に四つ折りになった紙を出し、俺に見せた。確かに、千反田が諦めた経営的
戦略眼を俺が修めるのなら、籍を入れて責任を果たす必要がある……のか?
「それと、父からも作ってくれと頼まれてます。わたしの家は一応それなりの伝統があるので、あんまり途絶え
させたくないそうです。あと、早く顔が見たいと」
「…………」
「わかった、わかったよ。子供を作ろう」