昼の熱気と喧噪は、夜の涼気と静寂にとって代わられる。
眼下に拡がる街並みは、まとわりつく夜気を払うようにして、煌々たる灯りをその身に点している。見上げる星々になぞらえるように。
――その狭間。中天のおぼんに座す少女。
太陽が眠ったあと、次の季節を仄かに運ぶ涼風にさらされ、彼女は内なる息吹を感じ取る。左胸に押し当てた手で指で、探る。
風もないのに、またあっても揺れるこの胸、掌に余る暖かで弾力溢れる手触りと、高鳴る心音の奥に息づき根付いたもの。再びしっかりとおろされた根深い病根。少し、まだ疼くものの。
「…………くすッ」
少女の口元が小さく、歪む。闇に融ける彩に統一された衣装に包まれた、白くきめ細やかな肌が暗い世界に浮き立つ。
「ふ、ふふふふ……」
華奢な肩が小刻みに震え、次第に激しいものとなる。
そうだ、やっと。危なかった。前回は本当に危なかったが……。
「――おーっほっほっほっ!!! まじかるメイドこより、人の迷惑も顧みずふっかぁーーーつッッ!! で御座いますですわ!」
たまらず、口元に手をあて高笑するまじかるメイドこよりちゃん。胸を思いっきり反らせばたゆんっ、と揺れるうしちちもまた健在だ。 深い谷間をぴっちり包み込む布地の中、飛び跳ねるように揺れ、弾んではその特徴的なハスキーヴォイスより強く自己主張する。
だが、あんぐらーによる支配も限界になった彼女は全世界のネットワークにウイルスを込め、力尽きたはず…………だったけど。
「Don`t think! ふぃ〜るっ! ですわっ♪ ふふ、んふふふ……馴染む! 馴染むッ! 馴〜染〜むのでございますですわぁっっ!!」
指をグーパーグーパーさせたり、こめかみに人差し指をぐりんぐりん当てたりして、とびっきりの悦に入る。そして、
「勝手しったるこのカラダ! 今さら後には引けないのでございますッ! ンン〜〜ッ♪ まさに! まーさーに最高にハイ! ってやつですわぁーッ、お〜っほっほっほ!!!」
昂奮に次ぐ昂奮に、どうやら自前らしいモモンガ耳をぴくぴくさせ、毛並みふさふさ愛らしいしっぽが上機嫌に揺れる。もういっそロードローラーにでもウイルス感染させてやりたい勢いだ。
「こ、こよりん……そんな騒いだら近所迷惑……」
左肩にしがみついただっこちゃん風タヌキがもふもふした顔面に冷や汗を浮かべさせ窘(たしな)める。こよりは疎ましそうに横目で睨みを効かせ、
「お黙りなさいポソ吉、あなた、私が戻ってきたのが嬉しくないんですのッ!? それに、一山いくらの愚民共がどーなろーがこちとら知ったこっちゃねーでございますわ。再びあんぐらー様の僕(しもべ)……じゃなくてメイドとしての生を受けたこのまじかるメイドこよりの目に映るものはただ一つ――」
「ですとろーい?」
「んななッ! ぽ、ポソ吉、先読み厳禁で御座いますですわよ! んんっ、こほんっ! ――と、とにかく」
顔を真っ赤にし、気勢を殺がれたこよりは咳払い一つ、
「この私がこーしてめでたく再臨を遂げた今、目にもの見せてご覧に入れますわよ――安穏たる眠りに浸るその間抜け面を醒まさせて、思い出させてあげますわ……この私の存在を。首――いやウサ耳を長くして待っているがいいですわ、まじかるナース」
顔色を昏い悦びに染め、こよりは飛行端末をある方角へと奔らせる。吹き付ける夜風を心地よく感じながら、漆黒のメイド魔法少女は早々と野望に思いを巡らせる。
「――くすくす。私には、そのための策がある。あのまじかるナースを出し抜くための秘策が――にしても冒頭からこの辺のやりとり、どっかであったよーな気がしないでもありませんが……まぁいいでしょう。さて、そろそろ……」
程なくして、その建物は見えてきた。
「みてなさいませ、おポンチナース……この私の後継者たる誉れを断ったこと、とくと、そしてたぁ〜っぷりと後悔させてあげますですわ――」
――カタカタ……カタカタ…………。
「――うぅ……ん……っ」
夜の冷気を纏った風、寝室の窓をまばら軋ませる。その音に鼓膜を揺さぶられ、京介は微かな呻きを漏らす。だがそれだけではディープな眠りの底から這い上がれるものではない。滞りなく掛け布団の被さった胸は緩やかに上下する。
しかし、今度の震源は彼の部屋の中、それもベッドのすぐそばの机から。突然引き出しがガタガタ揺れたかと思うと唐突に、それは訪れた。
「ぴっかーっ! 御機嫌いかがですか京介くん! 痛ぁッッ!」
引き出しが開いた一瞬、したたかにぶつけた音と共におでこを抑えた女性が、生えてきたように出てくる。
「あ、いたたたぁ………! う、うぅ、こ、この私としたことが……せっかく最近声が変わった、未来の世界のネコ型ロボットの初登場シーンみたいにびっくりさせてあげようと思ったのに……」
こともあろうに引き出しの縁に直撃しようとは夢にもおもわなんだと涙目で俯く。それともドラ○もんに浮気せず、一から十までピカ○ュウ語で挨拶した方が良かったのかな? 中の人も一緒だし、とまだ星がチカチカ瞬く視界で痛む額をさすりながら辺りを見回してみる。お目当ての人は、いたいた。
「ふふ♪ ぐっすり寝ちゃって、まあ……」
――今日もお仕事いっぱいで、忙しかったのかな? いつもいつも、ほんとうにお疲れ様、京介くん……。
さっそく覗き込んでみると、虫も殺せなそうな彼の寝顔に釘付けだ。それだけで、自然と口元が綻んでくる。安らかな気持ちになれる。母が子を見守るような、妹が兄を慕うような、だけどこのままでは決してそれ以上にはなれないだろうという焦りと、一抹のよるべなさ。
「今はまだ、それでもいい。けど、いつかきっと……!」
――そう思ったら。
「京介くん――――いまあなたが見ている夢は、どんな夢?」
額に落ちた京介の髪を指に絡ませ撫でると、染み一つない貌が露わとなる。その白さは、彼自身の純真さ無垢さがそのまま彩(いろ)になったようで。だから。
「全くもう。うら若き男のコが女の人の前でこうも無防備な寝顔を魅せてるなんて……まるで、そう、まるで」
ちょっとした悪戯心も涌いてくるというもの。片時も離さなかった杖をベッドの横に立てかけ、膝を立てて乗り入れる。ぎしり、とスプリングは彼女の体躯を支え、迎え入れる。それでも眠りは微動だにしない。押し倒すような体勢で京介を下に敷くと、艶っぽく前髪を掻き上げ、貌を近づける。少しのほつれもない、垂らされた蒼く長い髪が、規則正しい寝息を立てる横顔をくすぐった。
「すぅ………すぅ…………」
うつぶせ気味だが、そこからでも見てとれる端正な面立ち。形のよい唇に整った目元。ほんの少し前までの彼女ならこのまま見とれてしまいそうだった、が。
「む……っ!」
苛立ちが先に立ち、くいっと両の手で正面に向かせる。
いい感じに向かい合ったところで満足げに微笑む。
後は目覚めるだけで、見つめ合える。きっと私のことを見てくれるはず。そうするにはどうすればいいか? それは、とても簡単なこと。この瞬間も、こうして心が惹き合うのだから、導き出されることをすればいいだけ。
「――まるで、“キスして欲しい”って言わんばかりね」
うっとりと目を細め、唇を寄せる。あの時のように。
繊細な指先が彼の頬を撫でさすり、空いた指はケープの紅い結び目をほどき、フロントのボタンをゆっくり外し始める。胸元から、徐々に下へ、下へ。
だって、ここのところのあなたってば小麦ちゃんばっかり気にかけて、わたしのことなんてちっとも構ってくれないから……せめて、今は。今だけは。
「可愛い……京介くん……わたしの、王子様――――」
紡ぐ言葉なんてもういらない。気持ちを伝える手段なんて、いくらでもある。例えばほら、こんな風にして――。
軽い衣擦れに続いて、ケープが滑り落ちると真冬の白雪のような肩が、素肌があらわになった。うっすら濡れそぼった唇が触れようとした刹那。
「!」
聴覚の隅にこびりつく、ドアノブを捻る音。続いて空気が流れ、誰かの気配がそこに生まれる。
「ち――ちょっとあなたッ! こ、この私を差し置いてナニやってるで御座いますかッッ!!?」
さて野望と策謀をはちきれそうな胸いっぱいに秘め、いざやってきてみれば、これだ。
淡い月明かりの下、豪奢に仕立てたドレスを乱れさせた半裸の女性が標的にのしかかり、今まさに唇を落とそうとしているではないか。 深窓の姫君を思わせる装束より露わになった、乳色の素肌が窓からの夜光に融け映え、透けるように煌びやかとしてるのが無駄に絵になってて癪だ。
それまで身体の線を隠した装束で覗えなかったが、重力に逆らえず引き伸ばされた豊かな乳房は解(ほど)けかけた衣装からこぼれ落ちそうで、しなやかな曲線を描くウエストは抱きしめたら折れてしまいそうに細く。
彼が目覚めてさえいれば、たちまちの内にその誘惑の虜になっていただろう、女神の如き肢体の持ち主は果たして、本当の女神様なんだから世の中たまったもんじゃない。
「……? こより、ちゃん……? その、格好」
顔だけをこちらに向け、この度まじかるナースへの変身は汎用人型決戦兵器の運用の如く国家予算で賄われていたという、凄い事実が発覚したわくちん界の女王・女神マヤはやって来たメイド魔法少女を見上げる。何やら捲し立ててはいるが不自然に頬を紅らめ、左胸を押さえ熱っぽく息を荒げているのが見てとれた。ついでに声も。
「あ、ど、どうも……お……お取り込み中だったようで……すみません……」
たまたま目があったポソ吉がすまなそうな挨拶を返す。
お互いがどうして此処に!? というよりもどうしてお互いが!? ということを追求したいようだ。
因みにマヤには小麦がまじかるナースとして覚醒する前から、まじかるメイドの正体は分かっていた。彼女に教えなかったのは単に、
「その方がいろいろと面白!」という、至ってノートの死神チックな理由からだった。
対してこよりは、至って悄然としながらもやおらびしぃっっ! と邪道女神を指さし、
「…女神マヤ。どうして貴女が此処にいるのかは存じ上げませんし、敢えて問いも致しませんが――わたくしはその男に用があってきたのでございます。邪魔しないでもらえますかしら!?」
「あらあら? 私の京介君に用、ね……くすくす。『だが断る』――といったら、わたくし、どうなっちゃいますの?」
詰問めいた物言いを流し、女神はゆったりと上半身を起きあがらせ、嫣然と問いかける。
「もちろん、私も“何の用”なのかは敢えて問いはしませんけど…――♪」
「――! 邪魔だてするのであれば……!」
何故だろう。今微かに、背筋が震えた。その怖気を振り払うように、手を宙に閃かせ魔杖を召喚する。
「このまじかるメイド、容赦せん! でございますですわ。わくちん界の者は人間界では魔法は使えず、加えて頼みの綱の貧乳おたんこナースが此処にいない以上! 聖衣の無い聖○士、ガ○ダムの無いニュー○イプよろしく女神といえどもただの人! 一般ピーポー村人A! どう? 違いまして?」
「成る程、ね、どうやら本当にまた寄生されちゃった様、ですね……でも確かにあの時、あんぐらーは私の中に戻したはずなのに、おかしいですねぇ…ほわーい?」
こよりの必死だな! ってな感じの長科白が耳に入ってるのかいないのか、もしくは右の耳から左の耳まですっぽ抜けてしまったか(たぶん、これが正解だろう)、マヤは可愛らしく口元に指をあて小首を傾げてみせる。
「トイレはすませましたか!? 神様にお祈りは!? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK!? ふっふっふ、あまりに私が恐ろしくって声もないようで御座いますわねぇ♪ そういえば……あの時の借り、まだ返してませんでしたわね」
こよりスティックのヘッドをマヤに向け、魔力を収束させる。
「宜しい、この際伊達京介は後回しにして、まずは貴女から――」 六芒星の浮かび上がる水晶が、禍々しいオーラに囚われ鳴動する。宿った黒々としたカオス・エネルギーは全盛時と比肩しても、いやそれ以上か。全快の力の発露に、こよりは愉快げに口端をつり上げる。
「おほほほほほ♪ 復活早々、まーさかクソ忌々しい貴女から始末できるなんて思いもしませんでしたわ♪ だけど殺しはしない……わくちん界の守護者たる女神を我が下僕とするなんて私としても光栄の至り。いざ下克上! それではみーなさんお待ちかね〜、リベンジ一発目、復活の雄叫びレッツ・ビギ――!?」
勝利を確信し、ついつい饒舌となるこよりだったが。
ちうぅうぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!
やたらめったら生々しい擬音にうしちちメイドは声を失う。
「ん♪ んふ――んん……! ぁふっ、ちゅぷ、ちゅっ、ちゅくぅ、は、ん……ぁ……ん……ン、んン〜〜っっ♪」
「んなッ!? なッ! は、え――えぇッ?」
目に飛び込んでくるは睦み合う唇と唇。舌と舌。否、一方的に貪っているだけか。狩るものと狩られるもの。呆気にとられるタヌキメイドを余所に、ぬらぬらと照り光る口唇が京介の唇全体を滑り、包み込み、口腔を赤い舌でこじ開け、奔放に這い回る。その内に潜まれた舌を捕まえ、蠢く舌と上下の唇を使って器用に引き出し、舐め回す。傍目にはお互いの舌が絡んで、輪舞を踊ってるようにしか見えない。
「ちゅくっ! ちぷ……ちゅぷ……ぅん、んむ、ふぅあっ、あんっ♪ はぷぁっ、ちゅ、ちゆぅうぅ、ぷちゅ、んっ! ぁんんっ! く、ふっ――れりゅれりゅ……んうっっ! ――ぷぁあっはッ……♪」
……はーっ、はーっ、はーっ、はーっ……。
――だけど、狩られてるのは実の処マヤに他ならなかった。
名残惜しげに離れたくちびるは堰を切ったように、湯気のように乱舞する呼気を漏れさせ、接吻の余韻に背筋を奔る電流にぞくぞくっ! と身を震わせる。彼が何もせずとも自分の魂はとうに狩られてしまっているのだ。それはいつだって、心の奥にまで染み込んだことだったが改めて自覚するだけで躯の芯から熱くなってくる。
「――くすっ……♪」
そして、朱唇の間で淫靡に糸惹く銀糸を、刺すような視線を送る主に見せつけるように流し目をくれ、小さく笑む。
「……ッ!」
険を露わにするこよりを見ようともせずに、マヤは再び、奈落の底を覗く深い深いキスに没入する。
何故か先程と同様に肩を戦慄かせ、頬を紅潮させて抗議するこよりだが、それ故彼女がキスに没頭しながら、左手があさっての何かを探っているのに気づかなかった。
「ですからッ! 私を無視して色事にうつつ抜かしてるんじゃねーでございますですわッ! この色情女神! まったく女神は女神でもメ○ミマガジンの方なんじゃ――――」
「えい♪ 隙あり、です♪」
ベッドに立てかけられたそれを捕捉し、投げつける。
――ひゅんっ、と何か長いものが迫ってくるのが見えて――。
「はへ? ――ぷぎゃっっ!!」
目を丸くしたときは遅く、女神の杖の先端がものの見事に額に突き刺さり、あえなく転倒する。そのはずみで杖を取り落とし、転がったポソ吉は壁に激突してしまった。
「ばたんきゅ〜〜」
「……あ、いたたたッ……ですわ――……ッ!?」
女神は間髪入れず飛びかかり、こよりを難なく組み敷く。
「――あ、うぅ……っ! く……!」」
「んふふふ♪ ざーんねん! 捕まえちゃいましたっ♪ 折角、もう少しだったのにねぇこよりちゃん? 私にウイルスを取り憑かせて、あんなことーやこんなことー、あ、駄目、そんなことまでッ! とかさせてみたかったんでしょう?」
「くぅっ、うぅ……ぬ、抜かりましたわ……よもや、これまでのはおとり……」
「ノンノンノン、違いますよ♪」
Noォ、これはボクシングではない。とばかりににっこりやんわり否定したマヤはおもむろにこよりの首筋に舌を這わせる。成熟した女の芳香と、よく湿らせた生暖かい舌先が汗ばんだ敏感な肌にねっとりと張り付いて、撫でる。
「ひゃっ!? んんッ! な、なにを……ッ?」
「みくびってもらっては困ります。私はですねこよりちゃん。私の王子さ――京介くんとだったらこんなこと、いつだって何処だって……例えばそう、こんな風にね――ん、んん……っ!」
さらに湿った唇を滑らせ、上にスライドする。右手はその果肉たっぷりのバストを鷲掴んで、きつめのメイド服の上から押し込むように揉み上げ頂点の突起を探り当て、親指と人差し指でくりくりと摘み捻る。
「くぁッ! んっっ!? や、やめ……っ! て……はぁっ、あッ!」 「ぷぁっ! だから――ね? 解るでしょ、こよりちゃん。おとりでも、ましてや演技だなんて……誰が見てようが関係ないの。だって自分の気持ちに、嘘なんて――」
耳元に、吹きかけるよう囁いて。
この場にあっても女神の表情は泰然自若としていたが、右手だけは粗暴にこよりのうしちちをぐにぐにする。歪なまでに盛り上がった双丘に指を這わせ、やがてざらついた布の表面から一転、真っ白な生乳ひしめく谷間の、深い、深い合わせ目にずぶりっ! と二本の指を差し込み、一気に付け根まで沈める。
「――あ……あッ!」
「すっごいわ。本当に大きなおっぱい……わたくしの指先、まるごと全部入っちゃった……ちょっと、オドロキです……♪」
マヤの長い指を第三関節まで呑み込んでしまった胸の谷間の違和感に、こよりは小さく声を上げてしまう。だが本番はこれから。 指を全方位から包む乳肉のむちむちとした弾力感と、汗の滑りを愉しむように、ぱっつんぱっつんのメイド服にどうにか収まる、今にも弾け出そうな乳谷間を掻き回す。
――にゅぐ……っ、ぐにゅ……ぐにゅっ、ずにゅ……!
「ひあっ!? あっ、あん! ――っ」
否、『掻き乱す』といったほうが正しいのだろう。暗く深い底を探るスコップで掘り進むように指を曲げ、張りつめた乳の谷間を掻き分け指の通る道とし、汗で滑る柔肉の裡で暴れさせる。
人差し指中指を暖かな乳肉の海に溺れさせるたび、鋭い痙攣がそこから立ち上る。未体験の快感だが、それは異様なほど秘唇を掻き出されるのに似ていて、こよりの熟れた肉体から徐々に力を奪っていく。 それも時折小麦に負けた憂さ晴らしに、やがて気付いたときには彼女を想ってしていた自慰行為のそれを上回るものだ。
――な、に、何ですの、こ、これは……!? うそ、ちくびも触られてな――っのに、なんで、こんなっ…!
利き腕で秘処やクリトリスを、右手で豊かな乳房を愛撫するよりも強烈な何かが、たった二本の指が乳の谷間を自由に泳ぐことによって生み出されている。
烈しく掻き回せば掻き回すほど軟らかな肉の切れ込みがどこまでもいやらしく、猥雑に歪んでいくのがマヤの視覚を好くさせ、服の上からも判る大きな乳首突起が薄手のメイド服を突き破らんばかりに尖りきっているのが、こよりの翻弄され具合を如実に語っていた。
「はっ――! あっ! あ! んあ、そ――そんなっ! そんな強く、おっぱい、掻き回さな……ッ! いで、くださいませッ――ふぁ、はッ、んんッ! ぁあぁあッッ!?」
「くすくすくす♪ 可愛いですよこよりちゃん、谷間に指挿入れられただけでそんなになっちゃって、たぷたぷでぽよんっぽよんなおっぱい、ぴくんぴくんってさせて私を誘ってる? 誘っちゃってますぅ? ほんとう小麦ちゃんの言うとおりえっちですけべなメイドさんなんですね……えぇと、何でしたっけ? 確かえろタヌキ……じゃなかった乳ダヌキ、うしちち――そうそうっ、うしちちえろメイドさんっ!」
やっと思い出しましたっ♪ ととても嬉しそうに空いた手の人差し指をぴんと立たせてみせる。
「えっ!? ち――違っ…ちがっ……! ま、まじかるメイド……っ!」
涙目で否定するも、
「違いません♪ そんな牛みたいなお乳して…ノーブラなのにすっごく感じやすくてビーンカンっ――えろメイドさん以外の何者でもないでしょ〜、そんなFUSHIDARA100%な有様でよくまぁ今まで生活してこれましたねー、ちょっと触られただけでもこよりちゃんってとってもとっても露出狂でえっちだから、すーぐ変な気分になってたんでしょ? そのたびに服の上からちくび立たせて……さわって欲しい、摘んで欲しいって、また私を誘ってる……くすくすっ」
謳うようにねっとりと、マヤの指はいっこうに休まる気配はない。
ミキサーのように感じられる勢いでぐにゅぐにゅ乳谷間を犯し、左手は浮き立った乳の突起を摘み引っ張るといった絶え間なく脈絡ない愛撫に、こよりの誇るエロボディは性急なる反応を示すばかりだ。 幽かな吐息にさえぴくぴくと痙攣するモモンガ耳への囁きにも返す言葉が見つからず、ハスキーな喘ぎだけが口をついて出る。
「――いやっ、んっ! っは! ぁ、あぁ、こんなのっ、お、おっぱいのたに、ま、が……んっ!? くぅっ! はぁ、だめぇ、ですのぉっ! あ……あ!? ちくびだめっ――ひっ、引っぱらなっ――」
「ふぅっ、それにしてもまあ――詰めの甘さは相変わらずですね。何も変わってない。あんぐらーを貴女から回収する前と何も、かも――これじゃあ喩え小麦ちゃんと再会しても、結果は視えてるから」
「んぁんっ! ふぁっ…! くふあっ!? ぁ――――?」
汗と摩擦でぬちゅぬちゃといやらしい音さえし始めた乳間から指を引っこ抜いたマヤは、返す刀で二本指を立て乱れた吐息に上下するバストに埋める。そのままつつー、と下方にスライドしていき、
「はぁーっ、はぁーっ、はぁー……あっ!? ぅう、くぅんっっ! ひっ! な、何ですのっ……?」
繊細な指がゆっくりと躯を這い伝うと背筋がぞぞぞ、と粟立ち、仰け反らせるもマヤの躯がしっかり上乗せられ逃げれない。
「クス、この期に及んで『何?』って、こよりちゃんまだ理解(わか)ってませんのねぇ? あなた。自分の立場を。わざわざ小麦ちゃんが出向くまでもないの。ああ見えてあの子今までずっとバカ正直にもとい、私たちのためにお勤めしてくれたからまぁその、戦士の休息とでもいいますか、作者が登場させるのまんどくさがってるとでもいいますか、いわゆる一つのうん、有給休暇みたいな? とはいってもボランティアですけど。従って――」
――くちゅっ!
「――あッ!? やんっ! そ、そこっ、ソコはぁ――あぁっっ!」
指は順調にスカート下の股間まで伝い降り、その奥の場所へと辿り着く。
這わせると閉じこめられた空気が熱でむっとし、触れたショーツは既に汗とアブノーマルな乳愛撫で溢れ出した蜜汁とにまみれ、ぴっちり肌に張り付き下着としての役目を果たしていない。
「この私、わくちん界の女神マヤ直々にこよりちゃん、再び闇に囚われた貴女を――癒してさしあげましょう。くすっ、さぁ、トイレはすませましたか? 神様にお祈りは? ――って目の前にいますけど。 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK? なーんちて♪ ……ってあ、あれれっ?」
殊更に陽気に、冗談めかして言うものの目の前の獲物はすっかり戦意喪失気味で、萎縮してしまっている。もはや洒落ではなく怯えた目つきでかぶりを振るばかり。
「……(ふるふるふるふるっっ)」
「も、もう、そんな檻に入れられたてのマウスの様な憐憫を誘う目で私を見ないの! 我がわくちん界は癒しの世界。その守護者たる私は、いわば看護婦の神様みたいなものなんです! 知ってましたか? かのヘ○ン・ケラーやナイ○ンゲールだって私を拝んだからこそ歴史に名を残す偉人となったんですよ? 御利益は家内安全商売繁盛千客万来、ぜーんぶまとめてこのマヤにお任せ! えっへん♪
だから心配しないでこよりちゃん」
まるでカルト教団教祖並の全能ぶりに胡散臭さ100点満点だ。しかも何より大事な「健康長寿」が無いのはどういうことだ。
「それに――ほらっ」
――くいっ、と指を顎にやり桃色の唇を無理矢理上向かせる。
触れるか触れないかの距離まで顎を寄せると甘く緩やかな吐息と荒く切ない吐息とが重なり合い、交錯し、アンサンブルを奏でる。
「あの時の私のくちびる――気持ち良かったんでしょう……? 今みたいに顔真っ赤にしてキスで感じてたの、識ってるんですから。本当言うと、私も――ね……?」
なんだか雲行きが妖しくなってきた。こよりは背筋に怖気が奔るのを抑えきれない。同時にマヤの吐息も荒く速く、艶めいたものとなる。何かを抑えるかのような焦躁が、大気に充満していく。
「……マ……ヤ……?」
「もう一つだけ本音を言うとね、私――わたし、できるコトならもう一度キスしたいなってずっと思ってた。あなたのくちびるに憧れちゃったの……この瞬間も突き出されたくちびるを見てるだけで、無性に……こよりちゃんがいけないのよ? だってあの時のこよりちゃん、とってもえろ可愛くて……見てるだけでぞくぞくしてきちゃって――いいでしょ? ――いいよね……はい決定」
有無を言わさず自分の怯えきった表情をしっかりと瞳に宿したまま、マヤはまるでスローモーションのように紅い唇を……――。
「熱い、あついキスを、あげる……痺れるような、女神のキスを……――♪」
もう少し……あと少しで……恐慌の拒絶も、悲鳴すら上げるのも甘い粘膜で塞がれる、そう思ったら。
「さぁ――じっとして……」
――……もう、駄目。
「あ…あぁッ……! ま、まって……。わたくしの負け、ですから、あ、あ、あやまりますから、ゆ……赦して……」
あの唇が触れれば自分は……。
そのしぶとさたるや最凶死刑囚も裸足で逃げ出すこよりは、ここに来てようやく己の敗北を悟ったのだった。
押しのけるように左手をマヤの頬に置くが、骨が抜かれ軟体になったように力が入らない。薄く開かれた目からは一筋の涙が流れ落ちる。潤んだ視界は正しい像を結ぼうとしない。
「心配しないで、っていったでしょこよりちゃん。怖がることなんて、ないんですよ? それどころか気持ちよくしてあげますのに……私にとって一番はおうじ――京介クンの唇なのは勿論だけれど、こよりちゃんのもまた…ね――決して赦されず天に唾をし神に弓を引き――まぁ私が引いてるんですけど。重い十字架を背負う感じがこう、なかなか乙なものでして……♪」
こよりによれば、早々と自分を始末できるのが嬉しいそうだが、自分としてもこの機会がこんなに早く訪れようとはまさに願ったり叶ったりでいても立ってもいられないって感じだ。最近気付いたが、自分がこうまでもキスが好きだとは。あの北関東の件で目覚めてしまったのかもしれない。
「だから、優しくしてあげる……包み込んであげますわ。珈琲に溶けるクリープのように甘い甘い、このくちびるで……♪」
――それなら、それで。
唇の端だけで笑む。全く京介ときたらピーク限りなくソウル果てしなく罪作りで、女殺しだ。そんな天性の資質があればこそ、アイドルとしてやってこられたのだろう。自分がこうまで魅了されているのだから、その成果は推して知るべし。
その彼の興味が今は小麦の方に向いているのが、何とも――……。
「――マジカル注射器、ご〜ッッ!!」
舌足らずな雄叫びと共に飛び立ち、いざ最終決戦地へ。
まじかるナース小麦の背は、あっという小さくなってしまう。
風が舞った後の静寂がついさっきまでの騒ぎを押しやり、スタジオの一室にはぼんやり座り込んだ女神マヤ、開け放たれた窓の向こうを見上げる伊達京介、二人だけが取り残される。
小麦の安否を気遣う京介に突き刺さる視線。
ふと振り向くと、きょとん、とした感じに、しかしじっと見上げるマヤと目が合う。
「……………………………」
「……………………………」
あ、やっと気付いてくれた……! あ、やだ、そんなに見つめられたら――私――。
我知らず、頬に朱が射すマヤ。京介としてはむず痒い視線を感じて何となく、という程度だったりなのだが彼女には二の次三の次、振り返ればまじかるティーチャーコマチの一件以来、日々の忙しさに追われかれこれ一年近くも逢えていないのだ。
いや、女神としての聖務もそこそこに、折を見て会いに行ったはいったのだがタレント業に忙殺される京介ととても逢瀬できるような雰囲気ではなかった。空腹は最高の調味料というように、ようやく見つけた白馬に乗った王子様――自分を満たしてくれる想い人に逢えないだけで、どうにも相当に鬱屈した想いが溜まっていたらしい。
だいたい前回のキス一度だけなんて、生殺しだ。
「う……っ」
さて、京介といえば頬どころか全身からピンク色の何かを発散し始めた女神に本能的に後退りする。ああ、獣の本能。蛇に睨まれた蛙、種の本能。
が、時既に遅し。
「さぁさぁさぁ京介くんっ! 後はふたりっきりでしっぽりたっぷりと楽しみましょうっっ♪ ねっ! ねっ? ねっ!?」
「え――えぇ!? ちょっと……! あのっ! ひぃっ!」
がばーっ! と愛のままにわがままに不埒な女神は飛びかかり、ごろにゃあ〜ん♪ と猫みたく全身を擦りつける。大人の女性特有の香りと、甘く高貴な香水のブレンドされた芳香が鼻腔に飛び込んでくる。
「うぅ〜ん♪ 相も変わらずたくましいお躯! 抱き心地も蝶! サイコーです! んふふふふ、京介クンがイけないんですよっ、そんなアブない視線で私を誘惑するからぁッ!」
四肢をじたばたさせながらも何とか京介は抵抗を試みる。
「ち――ちょっと待って――! 視線って、そっちが先にっ! って、うわわッ!?」
「あらららっ♪ 声を出しても無駄無駄無駄ァ! ですよ? さすがスタジオの一室だけあって防音設備もイッツ・パーフェクツ! 加えて外はどこもかしこもウイルスだらけ、もう逃げられませんよ? さぁさぁ、潔く覚悟しちゃってください! それに私、ずっと、ずーっとあなたにもう一度逢いたくって――!」
――そうだ、こんなところで油売ってる場合じゃあない。今も中原さんは一人っきりで……!
残念ながらムギ丸のことは忘れていたというか眼中になかった。
「あ、そうそう、申し遅れました。私、みさ……じゃなかった女神マ――きゃっ!?」
「そうだ、中原さんッ!」
弾かれたように立ち上がり、マヤを押し退け扉へと走る。
「――きょうすけ、くん………」
残された彼女はただ呆然と、彼が去った方を見上げるだけだった。
「いやッ、わたくし……やっと生き返れましたのに、こんなっ――!」
自分とよく似た声に引き戻されると、眼前には最初の威勢は何処へやら、ようやく、しおらしくなったこよりの眼が一瞬、ぼうっとした自分を写す。その悲痛なトーンも表情も今のマヤにとっては嗜虐心を煽る結果にしかなっていない。荒ぶる感情のままに、
「いいからっ! いい加減観念なさい! 満たされないのはお互い様でしょ――? これ以上の抗議はあなたのそのたっぷり苛めて欲しそうな唇に聞いてあげる――!」
「や、やめっ――! わたくしまだ消えたくな――んッ! んぶぅッッ!?」
なお縋ろうとする天使な小生意気の唇に蓋をして、手を後頭部に回し、ぐっと引き寄せる。
サラサラ流れる髪の感触が指によく、疾く馴染み、隙間ないくらいに密着した唇をマヤは更にはぷっ…! と上唇と下唇で包みくるみ、唾液をこよりの唇全体にまぶして美貌を揺り動かし、表面に擦りつける。
――ちぅうぅぅうぅッ――……!
間髪入れず蛇のような舌で薄く開いた朱唇の門をこじ開けて、両唇と舌の三層でサンドイッチするように唇全体を挟みこみ、強く吸い上げる。マヤの口腔にこよりの突き出された、甘露なグミにも似た触感が癖になる口唇がすっぽり収まる感覚。
それを同じくらいの弾力と、みずみずしい桃色唇で押しつぶす。
「あっ、んあ……!! ん――ふぅっ! あっあん! ん…っ! んん〜〜〜〜っっ!」
――ひあ……あ……! す、吸われちゃ…ぁあ……う――!? く、くちっ、くちびる…がぁ――――!?
あのビルの屋上で胡乱な意識下で感じたのと同じキスにがんじがらめにされる乳ダヌキを余所に、順調に口内に侵入した紅い舌はさながら別個の生き物のように歯列を這いなぞる。自分と同じように一際尖った八重歯の感触を味わってから、満を持して舌と舌とを絡ませる。 「――ぁむ……んん――♪ くち……くちぅ、ちゅぷ――あっ、ん……んむ、ぁはっ♪ れる…れりゅれりゅれりゅ――ふぁふ、はァっ、んむっ、――は♪ ちゅっ……ちゅ、ぁんんっっ!」
「ん……んんっ!? んぅ、ふっ――あむ、ぅう、んぁ、くふっ! むぁっ、んっ――ふッ!」
――や……あっ――! し……舌が、ぐるぐる、ぐるぐるって!! あっ、ふぁん! はっ、やはぁっ……――!?
目眩く一方的な舌技に流されるしかないまじかるメイドは、しかしこの場はまるきり予想の埒外の場所までも責められるとは露にも思わず、奔りだした電流に意識を白めかせる。
――ぐちゅっ! ぐちぐちゅぐちゅ――――!!
「――んんッッ!? ぁふぅっっん、んくッ!! ンッんん〜〜〜〜ッッ!!」
すっかり口唇だけに認識奪われていたので、濡れそぼつショーツに張り付いた女神の右手を失念しきっていた。スカート奥で水音をしぶかせ、巧みに踊る指先の前には下着越しだろうと識りはしない。
「はぷっ…んっ――ぁむ、ふぅうっ、ぁうん! っふ、む、ちぷ、ちゅぷ…ちゅくちゅく、ちうぅぅ――♪」
「くうっン!? ぅうっふ――! んァ、ぁあっ…♪ ふぅああっ!!くうっう! ぅんぁンッ! ぁう、はっ♪ んく――!? んぅん!! くぅっ、ぅううゥぅぅ!!」
薄紫色のショーツを突き破ろうと、蜜でぴっつり肌に張り付きぷっくり浮き出た秘部の縦スジをつつき、その割れ目に沿って白い指を埋め、深いシワを刻んで掻きむしるように引っ掻く。
そうして目茶目茶に掻き乱されるたびに腰ががくがくっ! とセクシーな濃紺のガーターストッキングに包まれた長い美脚をばたつかせ、宙に浮いた両腕は背中を這い回ることしかできず、仕舞いには自ら求めるようにドレスを引っ掴む始末。しかも唇が厳重に栓をされやり場を喪った喘ぎと嬌声は、締め付けられるような呻きとしてマヤの口腔に、咽喉(のど)の奥の奥まで吸い込まれる。
――あっああ――――!!? そンなッ、そんなっ……! あそこぐちゃぐちゅって烈しくされたら……やめぇっ、そ、んな、き、きもち、いぃ、い、いいのぉ、あ、あ♪ あっ♪ あぁぁっっ!!
――こよりちゃんの身体って、むっちりしてて、くちびるも、胸も――ぜんぶましまろみたいで……♪ くすっ、もちろんコ、コ、も――。
「あはっ――――――♪」
触れ合い混ざり合い、融け合う粘膜の隙間から幽かな笑みが、ぶれた自我に混ぜ込まれ女神の中指がショーツの端から直接、愛液をだだ漏れさせる秘処に。
射し込まれ――――つぷぅ――――と存外にあっけない水音がこよりの脳裏に木霊して、何か大きなものが、一斉に弾け飛んだ。
ひうぅっっ――!!? いぃ、いっ――クッ……うぅッ――――!!!
「あンんッッ――!!? んんゥッく――ぁんッ!! ぅんんンンぅぅーーーーーーッッッ!!!」
一際甲高く、激しい呻きがこよりの嬲られつくした唇から迸った瞬間。全身という全身がぶるぶるぶるるッッ!! と震撼し、女神を押し出すバネとなって、秘唇からの熱い飛沫がマヤの指を叩いて濡らす。 「――んっ……ふっ!? ぁ――ん――♪ う……むっ――ンッ――――!」
――あ……こよりちゃんの声が、私の喉に奥に吸い込まれ、て――震えてるっ……♪ イッちゃったんだ――――♪
目は、口ほどに物を言う。
もはやメイド魔法少女の少女たるすべてを把握した女神は、眼だけで慈(やさ)しく微笑みながら、花弁に浸した指を休ませようとはしない。中指できつく蠢く膣肉をぐりゅぐりゅほじくれば暴れる唇を、貌を、振り乱した蒼いセミロングを利き手と唇だけで支え、逃がしはしない。
「ふぅンぅッッ!! んぅん〜〜ッ! んっンッ♪ ぅむうぅんんン――ぁぁんゥうぅっっ!!」
電流めいた甘美な痙攣は唇から、抱きすくめた全身から伝播(つた)わり、まるでこよりの肉体そのものがマッサージ器になったようで癒しの女神は眼をとろんとさせ、その振動にたゆたう――。
――わたくしも……気持ちいいですよ……こよりちゃん♪
ひとしきり総身を駈けめぐる、オルガスムがもたらす灼熱に酔いしれたメイド少女はぷっつりと糸の切れた人形のように躯が軽くなるにつれ偏執的な唇の拘束が解かれ、背後の壁にへたり込む。
くたっ、として口許から垂れる互いの唾液が混じったモノを拭おうともせず、虚ろに見知らぬ、天井を見つめる。
その手は、熱を冷ますように額に。
「――あ………? ぁあ……ぅあ――はッ、あぁ……!」
――はぁ……はぁ……はーっ、はーっ……――。
絶頂の余韻に震える唇から、掠れた声が、火打ち石めいた時折歯と歯が打ち鳴らす音が漏れる。
重く上下する二つの小山のようなバストに併せて開放的な吐息が、緩やかに放たれていく。
臓腑までも持っていかれそうな吸引で酸欠状態に陥りかけた脳と、肺腑に空気が流れ込み明瞭になりつつある思考が、根本的な疑問を浮かび上がらせる。
あ……れ……わたくし……ま、だ……――?
「ふふっ♪ アンバランスなkissをしながらびくびくっっ! て……躰中震わせてイッちゃったのね、こよりちゃん――どう? いっぱいトんじゃいましたか…? 私の指、こよりちゃんジュースですっかりびしょびしょ……んふっ、これがこよりちゃんの味……サワークリームみたいに酸味がきいてて、なのにこくまろで……わたしのとちょっと違う味――けどこれはこれで、でりぃしゃす……♪」
下弦の月を仄かな後光に、ぺろり、とキラキラと輝くもの――愛液を滴らせた指を舐めとる光景からは女神としての神性、清廉さは微塵も見あたらず、ただ映し出すは親玉破壊ウイルス・あんぐらーの本体という、アナザーな側面のみ。舌なめずりをし、やや切れ長の眼でこちらを見下ろす様を、彼女は畏れさえ込めた涙も乾かぬ瞳で見る。
「――くす、此処までくると潮吹きというよりはまるで射精ね――しゃ・せ・い。……もう、射精(だ)しすぎですよ? 全く何処までインランになれば気が済むんだか、そんなになっちゃうくらいよかったの…? ふふっ」
「ふっ……ふにゃあ……!」
実に納得いかず認められず変な話だが、こよりはどこまでも無力だった。
考えてみれば我が術中に陥れたはずの標的(ターゲット)に赤い彗星ばりに逆襲されたのも一度や二度ではない。ある時はウイルスのみならず、自らの美貌で完膚無きまで小麦信者を調教してやったのにも関わらず、文字通り通常の三倍返し――そんな走馬燈が脳内にオンエアされた。
「でもね、声を抑えながら、泣きながら健気に絶頂に悶えるこよりちゃん凄く――それも今まで見た中でとびっきりえっちで可愛かったですよ♪ 唇もぷにっと柔らかくて気持ちよかったし……もう一度キスしたくって待ちわびてた甲斐がありましたわ――ご馳走様、こよりちゃん♪」
良かった。どうやら満足して頂けたようだ。此処まで果敢に耐えた自分を褒めてやりたい。耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぶ。この先生きのこるためならば嘘の敗北宣言だって何のその。さしもの女神もこの綿密な計算のもと練りに練った超グレイトかつマーヴェラスな頭脳プレーには気付くまい。
――ふ……ふふふ。め、女神マヤめ、き、今日の処はこれで勘弁してやるでございますですわッ――――。
マヤに悟られないよう顔を俯かせ、口元歪ませる。
よし、ここはひとまず退いて、態勢を立て直して――とそう心で安堵した矢先、
――これで……。
「そして、これで」
――そう、これで帰れ……――はれっ?
「え……っ?」
マヤの影が、落ちてくる。そして、意味ありげに嗤うと、
「……。先ずは頑なな心をこうして快楽で解きほぐして、丸裸にすれば……」
「――んぅん…ッッ!!」
こよりの肉体を這うように女神の手が左胸に触れる。柔らかすぎず、堅すぎもせずという、まさに劣情を催させる小麦曰く、「たわわに実った一品」の絶妙の手触りに、我知らずとも顔を埋めてしまう。両手の平でロケットみたく張り出した乳房を真ん中に寄せ、めり込み、頭部まで埋まってしまいそうな錯覚に陥る。
それに気をよくしたマヤは巨乳の谷間ならではの汗ばむ体臭をも嗅ごうと息を吸い込ますと生々しい行為に、こよりの羞恥が呼び覚まされる。
「んん〜、いい匂い――こよりちゃんおっぱいと匂いで、わたし、チッソクしそ……♪ ううんっ――!」
「っ――! やっ? やめ………ッ!」
「――ぷぁっ! ん……。このいやらしいカタマリの中にあんぐらーがギュウギュウに詰まってるんですね……このえっちなおっぱいで今まで、どれだけ沢山の男のコゆーわくしてきたの? そうだ、もしかして――このおっぱいで京介くんも?」
「ち……ちがっ! あっ――はあッ…!」
そう答えてはみるものの。
再び始まった胸愛撫の中で、両の指でバストがいじくり回されるに伴って、脳裏が甘いフレグランスのようなもやに覆われてしまう。
「惚けたってだぁめ。私が来なかったら京介クンにどんなコトしようとしてたのかな〜? 知りたいなぁ、私――ほんとうに、し、り、た、い、なぁ〜〜〜♪」
……あっ、んぁあっ! はぁっ、んくッ! ……――!
漏れる喘ぎも何処吹く風といった女神は粘土のように乳肉をこね続ける。焦点の合わない瞳が彼女を見上げて、潤んだ像を映す。
ま、た――!? なんっ、で……ッ――?
「――でも、おっぱい(ココ)に訊いてもちっとも教えてくれなそうだから。うんと、こういうのって――黙秘権?」
熱いものが胸を中心にして広がる。まじかるメイドとしての自分を取り戻した瞬間より続く乳房の奥の違和感は、この部屋に来る頃には痛みにも似た疼きとなって思考領域をも侵そうとしていた。
今回の作戦にしても昔の彼女では思いもつかないモノだったが、無意識にそれに身を委ねていたとしたら――。
「はぁー、はぁーっ……わた、くし、は――……!」
「ちょっと見せて―――――――こよりちゃんの、裡(なか)……」
だから、マヤと額が触れ合ったにも気付かず、世界が移り変わっていく。
――わたくし――わた、くし……こよりは、伊達京介……きょうすけ、くんに、おっぱいでご奉仕して、この胸の疼きを消して貰って……それ、から――――。
………………――――――。