「はー……はー……また、ぜーんぶ入っちゃったわよ――? 分かる? き、京介くんのが、真夜に、んく♪ ――た、食べられちゃってるのよ? さっきよりお腹いっぱい……お、くまで届いて――ひあぅ! すご……、い、入れただけで、イッちゃいそ………こ、こんどは京介くんからでもよく見えるでしょ、お○んちんがお○んこの中に根本までねじ込まれてんくぁっ! ほ、ほらァ、動いてあげるね、もう痛くないか、ら、思いっきりしてあげられる、のよ…んぁは! あ、ぁあッ! あ! あぁんんッッ!!」 
 
 ――ずっ! ズッ! じゅぶ! じゅく゛……ッ! 
  
 初めての時よりも淫らな水音を弾かせ。真夜が動く。 
  
 「――ちょ……!? ま、真夜さん、ちょっとまって……い、今は――!!」 
 「んくぁ! ふゥ、ぁあァ、くはぁ、ッはんん!! さ、サービス期間は、終わったのよ――? あん♪ くぅっ! 京介くんの番は、ふあ、ぁあ! いまはお・あ・ず・けよ――♪ 踊り子さんには手を触れちゃあダメですよー、こ、ここからは、あたしがいっぱい可愛がってあげるぅ♪ あはぁっ! んうっン!」 
 「ち、違ッッ……! あぅ――!?」 
 違うのだ。さっきからの真夜の異変について尋ねたかった。それなのに……。 
 わくちん界の女王様ときたらお構いなしで腰を振るうのだ。 
 「そっ――それにィ、はぁーっ、はぁーっ! それに、あたし、こう見えても京介くんより、おねーさんなのよ……だから素直に年上にリード、されなさい……! あっ、ひあ! おねーさん、頑張っちゃうから、あっぁあぁッ! はぁうぅ、ひっんあぁ――!!」 
 勘違いはもはや600マイル彼方の出来事というように加速し、腰が自在に上下する快楽に融かされ、正そうという気力も地平線の向こうに通り過ぎていくのだった。 
 
 「くすくす……京介くんの感じてる貌、いつ見ても可愛い……♪ 大好き! はぁっ、くはぁあッ! ほ――ほらぁ、よく見て、き、京介クンの、お○んちん、こ、ンなに大きいのに、ふぁあぁ真夜のッ! 真夜のお○んこに出たり入ったり、はく! してるのが、分かるでしょ――? ぃあ!! はぁ、ぁはあっは、あ、あ、あっ!!」 
 そそり立つペニスを貪ろうとするピストンは次第に真夜のテンションが高まるまま速さを増していくが、 
 「ひゃうッ! ンふぁ! お、おいしい、京介くんのお○んち、ぁく、ふぅっぅうぅ――あ、はあぁあッ!! あッ――!?」 
 あまりに大きく腰をグラインドさせるものだから、勃起はすっぽ抜ける。 
 「はぁ……はぁ……! ぅう、く――」 
 「はーっ、はーっ…………ご、ごめんね? あたしまだ、慣れてなくって……気持ちよくてつい止まらなくって……あたし、おねーさんなのにごめんね……そ、そうよね、もっと、ゆっくりなほうが、いいよね……?」 
 華奢な腰をブリッジよろしく両手を後ろにして支え、息遣いにFカップはあろうかという双乳はゆったり上下する。ハートは震え、燃え尽きるほどヒートしていた頭が、冷えていく。だけどまだまだ、火種は燻(くすぶ)って。 
 
 ――あ、そうだ……忘れちゃあ、ダメ、だよね……肝心なコト。 
 
 「だけどその前に、京介くん………それよりも――」 
 「? ――」 
 「さっきの話の続き……あ、あたしやっぱり今日がいいなー……その、結婚式」 
 「……き、今日……? 
 「そう。今日……はぁ――はぁ、というよりも、“今”がいいんだけど――駄目……?」 
 
 
 駄目? ダメ? だめ……――――? 
 
 その言葉が脳内自動再生される。 
 「でも――真夜さん、衣装とか……場所――その、教会とか……色々な準備とか、どうしよう」 
 駄目な筈、無いじゃないか。 
 
 京介は、真夜を全肯定するのだ。 
  
 「………………」 
 岬真夜は、そんな京介を、ぽけ〜、としたようなはたまた夢見心地の刻の中な貌で聞く。 
 
 「――僕がいつも世話になっている人たちを呼んだりして……そうだ、リチャード父さんや、中原さんや、恵さんや、琉――」 
 「そんなのっ……駄目――!」 
 弾かれたように、真夜は腰を前屈させる。 
 「あたし達の――ンッ――結婚式には誰も要らないの……っ! あたし達を祝えるのは――あたしたち…だ、け…くはぁあッッ!?」 
 今度は、乱暴に一気に挿入する。 
 「ま、真夜さ……!」 
 「……こ、こういうのって、二人の昔をよく識っている人が呼ばれるんでしょ……? だったら――! お互い、生まれ変わる前ぐらい昔まで、くぁ――!  二人のことを分かってるのって、後にも先にも他の誰でもない、あたし達しかいないじゃない……っ! ね、ねえそうでしょ……?」 
 
 ――はぁ……はぁ……――。 
 
 切ない吐息の雨の下(もと)、京介は膣肉のぐいぐい挟み込むような締め付けに、どうにか歯を食いしばり耐える。 
 
 「あ、ああ……そ、そうだ、ね……う……く――!」 
 「だいたい――――!」 
 
 ああそうだ。その通りだ、でも、何か引っかかるものがある。喉奥に刺さった魚の小骨のような違和感は、水や食べ物が流れた瞬間消えるように熱い白濁がいいように注がれ煮えたぎる秘唇に包まれ、霧散せしめていく。 
 
 「あの頃の京介くんのコトを憶えてないのに、なのにあたしよりずぅっと京介くんの近くにいられた人たちなんかに祝って貰うなんて、絶対、嫌。嫌なの…っ」 
 「え……?」 
  ――だから、その一瞬の彼女の独白は、1/3も伝わらなかった。 
 「んぅん、はぁっ! ――い、衣装はね……っ!? 衣装はね、もう着てるじゃない……! 教会は……こ、此処…で! この部屋で、どう? くっ――?」  
  
 ――邪魔よ、小麦ちゃん。 
 
 今度は、よく見るいつものMugiロゴ刺繍が入った普段着で真夜の脳裏に訪れる。 
 
 物欲しそうな眼で、こちらを見上げる。何事か呟いているようだが、聞こえない。何も。幸いにも。 
 
 聞こえて、たまるか。誰にも邪魔はさせない。  
 
 ――あたしと京介クンは、今から、今から……! 
 
 真夜は腕を交差し、自身を強く抱きしめるように左右の白亜の袖を掴んで、悶えを噛み締めながら――、 
 
 「き、京介クンと初めて逢った時に着てたこのシャツこそ、あたしにとってのウェディングドレス……! あたしに相応しいの……! この部屋のある場所は……あたしと、京介くんしか立ち入りを赦されない、二人だけのい、いわば聖域――!! あっ、んぁあ……! だ、から――教会は……んん! 此処でいいよね――? いいでしょ、み、緑がいっぱいで、見渡しはいいしいつも暖かくて、一年中春みたいなとこなのよ……ちょっとだけ薬くさいけど、こ、此処だって京介くんの住んでるところと同じくらい、陽のあたる場所、よ…………」 
 だんだんと狂わされていく平衡感覚を、京介に身を倒し、首筋に腕を巻き付け、押しつけることで耐える。胸板でひしゃげる乳房と、肩口にある彼女の髪の毛の匂いや感触も心地よいと思う前に腰だけがグラインドされる。  
 「し、識ってるよ……初めて、目覚めた時も――花がいっぱい咲き乱れてて、奇麗、で……その中に真夜さ、んが――!」 
 嬉しい。今だって、今だって未だ、心も体も京介と繋がったままだと言うことを実感し、行為にも熱が篭もる。また爆発しそうになる。 「んくっ、あっ、あは、あっ、んッ! ――き、京介、京介くん、愛してる……愛してる――! あぁう、はぅ、あッ! ううあぁ!」 
 「ま、やさん――……だ、けど……! もっ、もっと大事な……僕はまだ、『指輪』を……!」 
 「いいのォ!! そ、そんなの要らないッ! あ、あたし、あなたさえ、京介くんさえ居てくれれば、それで――あぁっっ!! 他には何も――あたし、あたしね、今から京介くんの……あふぁあ!! ち、誓いのキス――しよ? ん、ん――ふ、ちゅっ、はぷ……」  
 下と上の唇で京介全部を味わう真夜、だけど今度は今までのように激しく、嬲り貪るようなことはしない。京介の唇を包むように押しつけ、ただ、ただじっくりと彼の甘さを確かめる。こうしている今も――いや、こうしている時が一番、心が引き合う。何もかものきっかけは、この唇だったのだ。王子様の目を覚ますには、いつの時代もキス、なのだ。それだけじゃない。 
 「――んふっ……ちぅうぅ……んん……っは……ん……」 
 
 時の風にさらわれ、夜にあやされ、凍り付いた心を融かしてくれたのも、この唇。総てはそこから魔法のように運ばれて、真夜を幸せにしてくれた。何回も、何回しても飽きることはないキス。それもまた、魔法のようで。 
  あの岩山でのキスが総ての始まりだとしたら、今は、きっと、新しい二人の始まりなのだ。 
 
 ――キスからはじまる――。 
  
 また……! 
 
 
 場面は暗転し、上映直前の映画館館内のような様相へ。 
 幕は閉じたまま。 
  
 『京介くん!』 
 『京介さん!』 
 『お兄ちゃん……!』 
 
 
 中原小麦のみならず、顕(あらわ)れた秋葉恵、時逆琉奈、彼に想いを寄せる者達の幻視は、宇宙を駈ける流星となって岬真夜という中心点をすり抜け、彼女ら三人……四人の中にある一つの強く、深い想いが一気に女神の中へ流れ来る。 
 
 ――何よ……あたしだって……! あたしだって……!! 
 
 ――じゅぷっ! ずっ! ぢゅ! ぐぷぅッ! ずっ、ずっ……!  
  
 二人のつなぎ目からする淫らな水音で、意識は愛しい人の前へ還ってくる。 
 
 「き――京介くんが、あたし京介君が居なくちゃあ……!! あたし、ふっ――う、もう、一人で歩けない、よ――あはあッッ!? あぁ、あなたがここにいてほしい……んはぁ、ひゃうぅ!!」 
 もしも時が止まり、色褪せない写真のように、全てがこのままだったとしたら。愛の速度なんか気にせずにあなたの、胸に抱かれていられるのに。抱きしめていられるのに。何ものをも、気にせずに。 
  
 ――ギシ……ギシ……ッ! 
 
 ベッドがもたらす音も、先ほどとは比較にさえならない。発火しそうなほどの摩擦熱を伴いながら、真夜は激しく、切なく京介の上で舞い踊る。 
 そんな、憂いのジプシーは強くしなやかな指先まで宙に躍らせ、今の映像を振り払うべく没頭するのだ。違う、映像じゃない。その奥に潜んだもの。太陽を克服した不死生物のように完全なる存在になった自分が、まだ――――。 
 「あっ! あぅ、はっ……ふ…あ、き…きもちいいよぉ……! き、きもち、い――あっ!! 京介すごいよぉおぉ!! お○んちんが、真夜の中でアバレ、て――!! も、う、ぅぁ、あたしおかしくなっちゃ、おかしくなっちゃあぁあ!!」 
 「ま、真夜――さ――!」 
 もう、喉もカラカラだ。ろくに声も出せず、意識ももうろくしてきたのに、なのに下腹の活力だけはいつまで経っても衰える気配はない。目の前で腰のばねによって、たゆんたゆんと左右それぞれに揺れ弾む美巨乳にまで見とれる始末。固く尖った突起が残像を残す様に何もかも後回しに、真夜に見とれる自分が居る。そしてそれに目敏く気付いたか、女神は、 
 「き、京介くん、お、おっぱい、揉んで……っ! さっきみたく、強く、くう、あぅう――!」 
 
 
 
 わざわざ京介の腕を強引にひっつかみ、艶光りする双乳へと導き、掴ませる。ぷにゅぷにゅ柔らかく弾力溢れるあの感触が掌全体から伝わる。 
 「――!」 
 「あっは……ん、くっ――! そ、そうよ…! 潰しても、いいから――! す、好きにしてもいいよ……このムネだってみんな京介くんのモノなの、オモチャみたいにして、あっ、吸ったりしてもいいの……き、キスだってしたり……!」 
 と京介の背中を抱き寄せて、乳を押しつける。いつしか、その熱心すぎるアプローチにあてられたか、真夜の求めるままに応じるまま。 「……くっ! ふぁうぅ!! んっぁぅ……ち、ちくびも! もっと、烈しく吸って……其処だけじゃなくて、あたしの躯にキスして、京介の唇でいっぱいにしてぁあ!! あぁっ、くは、はんんッッ!!」 
 強く強く抱きしめ、京介の舌が、唇が真夜の乳首に、乳肌に、腰に這い寄せるがままに任せ、血管が浮き出る怒張に貫かれる歓びを味わう。 
 「はぁ――はぁ――あ、あたし……! あたし、は今から京介くんの、年上のお嫁さん……妹じゃなくて……はぁ、はぁ、お嫁さんになるの――」 
 
 ――もう、すべてが、どうでもいい。このわくちん界や地球、二つの世界のことも何も、かも。二人だけで遠く、静かな場所へ。 
 
 「あたし京介くんの、子供が欲しいの……!! ね、最初の子は男のコがいい? それとも女のコがいいか、な――あふっ!、はぁぅ、そ、そして、この世界で一緒に暮らすの……沢山の子供たちに囲まれて、ぬいぐるみ抱いて、美味しいお料理をあたしがいっぱい作って、暮らしはささやかだけどいつまでも、いつまでも笑いが絶えなくて、みんなが笑顔で暮らせる……そんな、暖かい家庭を、京介くんと、一緒にっ! い、いィ――! いっしょにぃいぃィッッ!!」 
 
 
 ――ずっ! にゅちゅ、にゅるぅ、ちゅぐ、ずちゅ! 
 
 「真夜さん、真夜さぁ――ん……!!」 
 無心に不乱に二人は頂へ登り詰めようと、快楽の奈落へ向かうべくベッドに折り重なるように抱き合い、水音を飛沫かせ互いの腰だけがぶつかり合い、原初の真っ白さに立ち返ろうとする。そして、そこから新しい世界へ、未だ見ぬ地平へ足を踏み入れるのだ。少なくとも、この時、この瞬間の二人はそう頑なに信じていた。いたのだ。 
 
 「き―――きょうすけェえぇぇえッッッ!!!」 
  
 「ま―――や………ッッッ!!!」 
 
 ――ドクンッッッ!!! 
 
 真夜にとっては三度目の、京介にとってはあろうことか五度目にして、全霊とも言うべき衝撃が迸り、光って唸り、轟き叫ぶ。 
 頭の中で弾けた、宇宙開闢にも匹敵する爆熱は、 
 
 ――え――!? 
  
 瞬時にして浮遊感と、底の見えぬ闇色の世界へ落ち込む。いや、暗黒なのはコンマにも満たぬ瞬刻だけだ、其処から、圧縮された膨大な情報がダウンロードされるように真夜に流れ込んでいく。 
 彼女はやっと此処で、気付く。再び魔力が制御できなくなっていることに。女神の圧倒的な魔力は、一人の人間に過剰に入れ込みすぎた所為で、彼女の識らぬ内に留めなくなっていたのだ。その前兆は既にあった。まずは、自分と同じ思慕を抱いた小麦、次に恵、琉奈と。 
 
 「――う…………あぁ……ッッ!!」 
 
 
 流れてきたそれは。 
 想いの丈だった。無数に織り込まれたものが脳内で解(ほつ)れ、広がっていく。 
  
 中原小麦の想い。秋葉恵の想い。時逆琉奈の想い。彼女らだけではない。 
 
 総ての想いは京介へと手繰り寄せられていく。それらは、誰よりも京介を必要とする想いの丈だった。 
  
 京介を才覚をその慧眼で見抜き、駆け出しの頃から暖かくまるで実の父のように見守ってくれた巨大芸能事務所JUNESリチャード・ヴィンセント社長、今の実の両親、いつも良くして貰っている桐原プロダクションの面々、共に笑い合う、たまにしか会えない仲間達、共に認め合う同業者達。そして、アイドルとして伊達京介を切望する、大勢のファン達の想い。『伊達京介』を取り巻いている無数の人たちの、彼を強く求める気持ちが、大挙して真夜の中に押し寄せてきたのだ。それは、これまでの彼の人生に関わってきた総ての人たちとの縁(よすが)にして、彼とこの世界とを繋ぐ結び目がそれぞれの形をとったモノ。 
 
 ――この人、たちは………。 
 
 真夜は。 
 
 思いを募らせる者達、共に笑い合い、認め会える者達、暖かく見守る者達、彼に憧れ、熱い視線を送る者達。 
 
 
 
 
 
 
 血よりも濃いものによってつくられたそれらは、今や完璧に結ばれた真夜の自由を押しつぶそうとしている。鎖を断ち切ろうとしている。だけど、わくちん界の住人が人間界ではその力を発揮できないと同じように、人間界から流れ来る力も、此処では薄皮一枚にも満たない脆弱なものだ。ましてや自分は此処を統べる者。わざわざ魔力で障壁を張るまでもない。 
 
 ――この人達は、もしも京介くんがいなくなったら…………。 
  
 行為の真っ最中であろうとも、決して悟られないようにしていたこと。畏れていたこと。 
 少したりとも自分から京介を奪ったり、遠ざけようとする何かに、憎悪を抱く自分。京介が必要なのは自分だって同じ――自分こそ、誰よりも必要なのに彼への気持ちを残したままで永劫とも言える時間を過ごしたこと、かつて彼との間にどんな出逢いがあって、どんな苛烈な時間が過ぎ去ったことなど誰も気づきもしないで、波がさらっていくように自分から全てを奪っていこうとする存在を、頭の片隅に認めることすら度し難かった。小麦の幻視に、彼を求める者達の幻視に奪われるのではないかと危惧して、不安を烈しいSEXの中に紛らわそうとした。見せつけてやりたかったのだ。自分たちの結びつきを。誰にも、邪魔はさせない。だから今此処で京介に関わる縁を消し飛ばして、復讐を遂げることも、出来た筈………――――。 
 
  
 ――きっととても、とても悲しむだろうな…………。 
 
  
 だけど、真夜は。 
 
 優しすぎた。何処までも、この期に及んでさえ優しすぎたのだ。 
 
 あの頃、自分はその意志に関わらずといえど、目の前の大切な人を一人にしてしまったから。悲しませてしまった、から。 
 
 ――もう、あんな想いは……させたくない……誰も……泣かせは、しない! 
 
 今一度、心を静める。波が、止んでいく。かわりに、湧き出る力を感じる。それは、自分の心から溢れ出るもの。自分の手で、生み出したもの。 
 
 ――んふふ。京介くん、可愛いなぁ、かわいいな……。 
 
 目の前に居る、汗にまみれた自分を見上げる青年を慈しむ。 
 
 「真夜、さ……」 
 
 何とも言えない表情で、あたしを見る。 
 
 ――だけどもう、あたしだけの人じゃあ、無いんだね………。 
 
 その透き通った、無邪気な眸に映るあたしは、ああなんで、なんで………! 
 
 「泣いて、るの………?」 
 
 泣いてるんだろう? あたしを慰めてくれようとして、指で涙を拭ってくれる。だけどあたしは。 
 掌から、ぼうっとした熱さを持った何かが立ち上るのを感じる。 
 嗚咽を抑えようと両手は拳を固めてしまう。だけど、拳では何も掴めないことをあたしは識ってるから。 
 震える指を彼の左右の頬へ。 
 
 
 彼が彼であることを取り戻す前を、遙かに凌駕する力が込められた水色の光に吹かれあたしの蒼い髪の毛もふぁさぁ、と舞う。 
 
 「真夜さん、どうして………」 
 
 今から起こることのその意味を、彼は糺(ただ)そうとしない。 
どうして、とは裏腹に表情は和んでさえいるのだ。それに、今の京介くんならばあたしのこの渾身の力を消し飛ばすことすら容易いのだから。かつて全ての運命に決着を付けた時よりも強大な力が未だ眠っているのが感じられるのだから。 
 
 ふっ、と笑いかけてくれる。ああ、やっぱり、彼は……! 彼は……!! 
 
 「泣かないで真夜さん。大丈夫だから……もう、準備は出来てるから――」 
 
 と、頷いてくれる。京介くん、あなたは――。 
 「で……でも、京介くん、あたしを……!! 解ってるの!? あたしは、あなたを……あなた、を……!!」 
  自分でも知らないうちに、涙声に。でも今はそんなこと、気にも出来なかった。出来るはず無かったのだ、だって。 
  
 「うん、解ってる。真夜さんの心はいつだってお見通しだよ。それに、一つだけ言えるのは――」 
 
 彼は、言ってくれたのだ。 
 
 「真夜さんのしてくれることに、間違いなんてないから」  
 
 
 何ものをも疑わない視線で、あたしだけを見て。そして、 
 
 だから、大丈夫――と、笑ってくれた。から……。 
 
 「あ……ぅあああ……京介、くん――!!」 
 
 視界が蒼く滲んだ……と思った時には、もう掌からのグラデーションは彼を包んでいた。息を呑む暇もなく。力を御しきれなかったと思う間もなく。 
 
 「――だ、ダメよ!! 京介くん、まだよ……まだ……!!!」 
 あたしももう、何にも解らなくなる。一度溢れ出した力は、押さえなど効かず、然るべき消去が始まる。思わず退かそうとする両手を、彼は消えかけた手で押さえつけ、 
 
 ――これでいい、と。 
  
 あの時より速く効果が顕れているためとうに声帯は消失したはずだというのに、その声は確かに聞こえたのだ――首を横に振りたくって、まだ、まだ……!! と半狂乱になって叫んでも、力は止め処なく溢れるままで、消えかけとは思えない力で抑えられてあたしの手は、動かない。どうして、動かないの………!? 
 
 ――ぽた……ぽた……。 
 
 彼とは対照的に烈しく左右に首を振るあたしから流れた、真紅の涙が流れ落ちる……けど……もうそれは、彼の貌を透過して、シーツを淡く染めただけで。 
 
 
 
 
 「い――いやぁあぁぁッッ!! 京介くん、行かないで、何処にも!! あたしのこと忘れないでッ!! 京介くんからあたしが居なくなっちゃう、そんなの厭あぁ――――!!?」 
  
 決意が、急激に萎んでいく。駄目、やっぱり、あたしには、あたしは、もう―――その時。 
 ぎし…っと幽かにベッドが軋む。それは、京介くんの音。今にも透けて消えそうなその躯と、重さでまたあたしを抱きしめて、くれる。 
 「あ! ぁあぁああ………き、京介………もう、こんなに、軽く…………!」 
 絶望に目を見開き、反射的に包み込もうとする腕までも、震えて。歯がカチカチと無機質に、鳴り言葉も、途切れ途切れに。 
  
 ――真夜さん、大丈夫、だから……。 
 
 「え――――?」 
 
 ――僕が、ついてるから。 
 
 そんなあたしを、ぎゅ、としてくれたの。それにはまだ、確固たる重さも感じられて。そうされただけで、あたしの中に渦巻いてる不安も、不浄も魔法みたく消え失せて。ああ、京介くんは、最後の最後まで……。 
 
 震えない腕で、抱きしめ返してあげる。 
 
 「あたしの………『王子様』……!!」 
 
 
 
 
 伊達京介くん。 
 あの頃は、あたしのお兄ちゃん。年上だけど、あたしは妹。 
 おかしいよね。 
 今は、タレントさんで、あたしはこの世界の女神様。 
 おかしいよね。 
 あたし達って、おかしいよね。 
 だけどあなたは白馬に乗った王子様で、あたしのことを魔法で護ってくれる。たちどころに癒してくれる。そう、好きな人がしてくれることは、いつだって魔法。あたしの王子様は魔法使い。また、流れ込んでくる。小麦ちゃん達の意志が。 
 ……そうだよね、こんな誰にでもやさしくて、かっこよくて……素敵な人だもの。早く逢いたいよね……だいじょうぶ。もうすぐ、帰してあげるから、ね――? 心配しないで、ね――? 
 
 そして。 
 
 あたしは……なれたかな。もう、なれたよね?  
 
 あなただけの――。 
 
、――僕の、『お姫様』。 
 
 刹那にも満たない一瞬だろうと、あたしは幸せを実感できる。 
 綺麗。あたしは思わず見とれてしまった。あたしは、腕の中で揺らめく京介くん――蒼い陽炎のような、ひとときでも嬉しかった。 
  
 「京介くん、もう朝は来たのよ。夢はもう醒めるの。じゃないと、仕事に遅れちゃうよ……? ねぇ、あなた、起きて――」 
 
 ――ああ、もうそんな時間か、真夜――。 
 
 
 「ええ。遅刻したら、大変なんだから。だけど、朝ご飯だけはちゃんと食べなきゃ駄目だよ。朝ご飯は健康に一番大事なんだから」 
 
 ――ああ、それに結婚前からの約束だもんな。「死んでも残さない」って。 
 
 
 「なぁに、それ。それじゃああたしのご飯不味いみたいじゃない! もう、朝っぱらからあなたはイジワルなんだからっ――」 
 
 ――ごめんごめん、冗談だよ冗談。そんなに叩かないでよ。さてと、悪いけどそろそろ起こしてくれないかな。まだ、だいぶ眠たくてさ……。 
 
 「いいけど、お土産、買ってきてね? 子供達にも――それと、あたしにも。欲しかったぬいぐるみ、あるでしょ? あれお願いしたいな……」 
 
 ――ああ、確か今日は、僕たちの結婚記念日だったっけ――? 
 
 「もう! あなたってば忘れちゃったの? 昨日あんなにいっといたのに、駄目だよ」 
 
 ――ははは、大丈夫だよ、念のためさ。だけど真夜、 
 
 「なぁに?」 
 
 ――あんなモノでいいのかい? その、ぬいぐるみのことなんだけど……折角の結婚記念日なんだし、もうちょっとするモノでも……。 
 
 
 「いいの! あたし前からあれ欲しかったの知ってるでしょ? それにあんなに可愛いんだし。たしかに男のコにはちょっと分からないかも知れないけど……だけど、本当はね。あたし――」 
 
 ――ほんとうは? 
 
 「本当は、あなたがあたしの側にいてくれれば、それでいいの……だから毎年、あなたが一緒にいてくれるだけで、あたしいつも幸せ――今年も一緒だよね? あなた……」 
 
 ――ずっと、さ。来年も、再来年も…………。 
 
 「うん………!」 
 
 ――ねえ真夜、そろそろ……。 
 
 「うん――――」 
 
 その時の自分は穏やかな笑顔をつくっていられたと信じて、あたしは頷く。そこで二人だけの、あるべき日常の一コマが終わりを告げる。名残惜しさは、不思議とない。それよりも腕の感触がすっかり無いことに気付き、言葉を喪(な)くす。 
 
 ――岬、真夜さん。 
 
 耳元で、声がする。薄れゆく蒼さは、もう形を成さない。だけどぼやけた影のようになった彼でさえも、たまらなく愛おしくて、笑って、見送れると思ったから。 
 
 「還ろう、京介くん」 
 
 
 ――アリガトウ。 
 
 「あ……――」 
 
 最初、なんて言ったのか、聞き取れなかった。だってその瞬間、蒼い影となった彼は、空気と同化するように、萎んで消えたからだ。 
 
 とうとう腕はすり抜け、あたし自身の肩を掻き抱く。顎を乗せた肩もないから、あたしは俯いてしまう――。 
  
 「……………………………」 
 
 そうしてるだけで夜が終わると思ったけれど――実際は一分も経ってないと思う――ころん、とあたしの傍らに転がってくる、一個のぬいぐるみ。 
 これは、憶えてる。忘れもしない、あたしと京介くんが初めて言葉を交わした時の――あたしが戯れに抱いてたヤツだ。あの日のことは昨日のことのように思い出せる。此処は何処と訊かれ、あたしの部屋よと教えてあげた時のあのきょとんとした貌さえ。 
 クローゼットから転がり込んだか……位置関係からして有り得ないけど、そんなことは、いい。 
 
 「もう………」 
 
 今日一日だけで何度流したか知らない涙。 
 識らなかった。あたしがこんなに泣き虫だったなんて。 
 
 
 
 
 
 
 その彩(いろ)はもう紅くはない。見慣れた透明の滴が黄色い毛皮に滴り落ちていく。きっと、もう二度と、あの彩を見ることはない。血を流した時以外は。けど今はあたしの躯の何処を切り裂いて溢れる血の色を確かめようと、あたしは何の感慨も抱かないだろう。 
 だって、冷たい刃が皮膚に入り込む熱い感触を味わったところで、この心の痛みには敵わない――痛い? どうして。 
 
 「もう………誰も淋しくないよ……」 
 
 我ながら幽鬼のような、自慰じみた科白。 
 「誰も、哀しい想いなんかしない……あたしみたいに恨みに思おうとすることもない。京介くんも――あたしといたこの時間を忘れ去るだけ、だから……! 目が覚めたら忙しくても賑やかで、眩しい一日が始まるから、誰も、悲しくなんかないよ……これで何もかも元通りになれる。癒してあげられるの、に……あなたが我が儘なあたしの夢を沢山叶えてくれて、結婚までしてくれて、あたしも幸せになれたのに……誰も傷つかなかったのに、へ、変だね、あたし――」 
 最後の最後で『岬真夜』より、『女神マヤ』であることを選んだ。 だから誰の前でも笑っていなくちゃならない。 
 それで、いいのに。 
  
 「なんで………泣いてるのよぉ………!!」 
 
 抱きしめる誰かが欲しかった。今すぐ背中抱いててくれる誰かが欲しかった。でも、溢れる涙に濡れ、心の紅に染まったこのあたしを、慰める誰かはもう居ないから。 
 はじめから、無かったことにすれば、良かったのだから。 
 来なかった。地上の人間などは此処に。誰も、来なかった。今日もまた、平穏無事に一日は終わり、朝を迎えるのだ。 
 
 
 
 「駄目、なのに……あたし泣いてちゃあ駄目なのに……これはみんなが笑っていられる結末なのに――――!!」 
 あたしはそれを抱いて泣きじゃくるしかなかった。膝を折って背を丸めて、頬にそれを擦りつけるしか残されていなかった。 
 「京介……京介………えぇ――――!!!」 
  
 あたしは、あたしは…………!!! 
 
 躯も、心も哭(な)くことしか赦されはしなかった。 
 嗚咽する思考で、かろうじて判るのはそれは彼が本当に還ってきてくれた刻とは、確実に違う涙――――。 
 
 「うあぁああぁあぁぁぁ……――!!!」 
 
 ――風は揺れ、カーテンはそよぎ、光が射し込む。唐突に――じゃない、朝の足音は、確実に聞こえてきたはずなのに。 
 
 陽光にベッドの下に退かされた大きなカエルのぬいぐるみがてらされ、永い闇に閉ざされたこの部屋までも朝日が訪れる。暖かい。今日もいい朝だ。こんな素敵な夜明けを、あたしは彼と迎え――――。 
 
 ――泣かないで、真夜さん。 
 
 「……!?」 
 思わず、あたしは貌を上げる。聞こえてきた声に頬の涙を拭うことを忘れて。 
 
 「――京介くん!? 京介くんなの!? ねえ!」 
 
 ――今日もいい朝だね。僕たちで迎える初めての。 
 
 
 あたしはそれにいても立ってもいられず、ベッドから窓に向かって走る。左手には、涙で湿ったあのぬいぐるみ。カーテンと窓を開けると。 
 
 「――綺麗…………!」 
 
 頬が、弛む。あたしは、笑っていた。だってそこは春のように暖かくて、肌に語りかける滑らかな風。咲き乱れる花と緑の匂い、カプセル蜂、錠剤亀、カリュー虫といったこの世界に息づく、大切な生き物たちの謳(うた)。 
 あたし、好きだった。この世界が。 
 
 ――やっぱり、真夜さんは笑った顔が一番だね。 
 
 「京介くん……」 
 
 ――これからも、そのままのあなたでいてほしい。それから、真夜さん、また逢えて、嬉しかった。ありがとう。 
 
 ……京介くん、今度はちゃんと、聞こえたよ。 
 
 「あたしも……――あたしからも……ありがとう、京介君……」 
 
 ――……。 
 
 そっか、もう……――。 
 
 朝の挨拶、しなきゃね。 
 
 
 「――おはよう、京介くん」 
 
 
 「……ん――――」 
 
 もう、朝か――眠い目を擦って、伊達京介は朝の伸びをする。 
 ああ、今日もいい朝だ。春の日差しはやっぱり心地よくて、目が醒める時に頭に響いた声も忘れそうだ。 
 
 「――おはよう、京介くん」 
 
 アレは一体、誰の声だったんだろう。それに、夢を……永い永い、夢を見ていた気がする。とても、懐かしく、暖かい、夢。 
 
 そんなことを想いながら、京介は傍らの目覚ましのタイマーを解除した。そういえば目覚まし無しで起きられたのも久しぶりだ。仕事の疲れもあっていつもは目覚ましどころか、時に母に起こされることさえあるというのに。何か今日はいいことありそうだ――と案の定、母が来た。 
 「大丈夫、今日はちゃんと起きられたよ」と彼なりに少しだけ口を尖らせたものの、念のためよ、と言う。心配性だけど、気だては良くてスケジュールが不規則になりがちな自分の仕事を快く応援してくれる、いい母だ。  
 そうだ、こんないい朝だから母さんにも見せてあげよう。空気も入れ換えなければならないし、と京介は薄いカーテンの窓へ。 
 その前に。これを忘れてはいけない。枕元のそれを、そっと首に掛ける。チェーンのひんやりとした肌触りもいいものだ。 
 「今日もいい天気だ――」 
 
 振り返って、彼は言った。 
  
 「窓を開けようか、母さん」 
 
 
 部屋の中瞬く間、空気は春の朝ならではの清浄さで溢れかえる。カーテンははためき、京介は朝の風を感じる。髪はそよぎ、頬を撫でられ、弛んでいく。気持ちいい。 
  
  ――ああ、今日もいい朝だ。 
 
 
 無地の生地のような朝は夜色に染まり、明日を繰り返し、矢のような日々の中刻は過ぎる。 
 彩(いろ)とりどりな季節は幾つも流れ、その年は去りゆき、また始まる。春が、芽吹く。 
 
 
 ――その日は、息せき切って京介は駈けていた。事務所への路を。 
 「うぅ―――拙いな、遅刻だ、遅刻」 
 久しぶりに余裕ある早起きだったからって、朝ご飯に時間掛けてたのが拙かった。しょうがない、今朝は好きな和食だったのだから。 
 以前――もう去年か。妙な夢を見た時のこと、目覚まし無しで起きられたように今回もまあ大丈夫だろうと高をくくったのも拙かった。 さて今日の予定といえば、『FAKE』シリーズの最新作、劇場版『FAKE ーStay Nightー』の出演にあたり、共演者各事務所での顔合わせ。まずはいつも通りJUNESへ向かい、一路桐原プロダクションへ。普段から親交深いところだが一番共演者が多いだけに、遅れるわけにはいかないのだ。それに今回は大々的に募った主演女優オーディションにて見事、ヒロインに抜擢された新人との初顔合わせでもある。 
 今、全力疾走している彼は、それ故に首から大切なものが落ちたことに気付かなかった――。 
 
 背後の角から歩いてきた影が足下に転がるそれを見とめ、拾い上げる。朝日にキラキラと反射する様に、彼女は目を細めた。 
 
 「あ、あのー! もしもし、これ……!」 
 
 ――呼びかけに、振り向く京介。少し鼻にかかった、ハスキーな声、だ。 
 
 「――ん……?」 
 桜の花びらが、一瞬、視界を掠める。可笑しい、確かに季節はもう春だけれど、未だ桜が咲き誇るには早いはず。思わずごしごしと目を擦る。そして、現れたのは手首からそれを下げた女性。 
 
 「今、落ちましたよ? これ――大切なものなんでしょう? とても……伊達――京介くん」 
 
 と、彼女は……風になびく蒼い髪と瞳が印象的な彼女は指に絡めた十字架のペンダントを差し出して言う。季節の上では春だが、まだまだ冬の残滓が残るからか、ブラウンで統一された帽子に大きなジッパーの付いたジャケット。が、下はハーフパンツと動きやすそうだ。 
 「ふふ――」 
 
 ――あ…………。 
 
 そして、微笑んでくれる。太陽を背にした彼女はとても、綺麗だと思った。その笑顔に比べたら、何で自分の名前を知っているのだろうという疑問は、なんてちっぽけなんだろうと。そして、ロザリオのことも。だから京介は同じくらいの笑顔でこう、答えた。 
 
 「は――はい! とても、大切なものです!」 
  
 彼女は、また可愛い八重歯を見せて、笑ってくれた。 
  
 
 
End. 

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