真っ暗な闇の中にピアノの音が聞こえている。  
なにも見えてはいないのにピアノの音だけがはっきりと光の耳に響いている。  
『そうだ、この旋律は』  
光にはこのピアノの旋律ははっきりと聞き覚えがある。この曲は選抜試験の課  
題曲。あの時の曲......。  
光の指は自然にその旋律を指が追いかける。  
『どうして?』  
なぜだろう、ただその旋律が繰り返される。すると徐々に真っ暗だった視界に  
徐々に明るさが取り戻されていく。  
深く立ちこめた霧の中に旋律を紡ぎ出す自分の姿がテレビでも見ているように  
見えてくる。そして周りに立ちこめた霧もだんだん薄らいで周囲もはっきりと  
目に見える。  
『私だ.....?どうして』  
ピアノを奏でているのは他ならぬ光自身だから。  
まるで幽体離脱でもしたかのように、ピアノを弾く自分の姿を外か  
ら眺めている。本当に不思議な気分だ。  
光が旋律を紡ぎ出す指の先には糸が繋がっている。その先にはご丁  
寧に錘まで。そうあの時そのままに。  
『これってまさか』  
光が周囲を見渡すと、視線の先には器一がそして律子もいる。周り  
には特Aクラスのメンバーがみんな揃っている。  
 
もちろん唱吾もいる。第2回の選抜テストの会場。ピアノがずらりと並びあの  
旋律を紡ぎ出している。  
『夢....?』  
違うよね。これ夢なの?  
旋律と共に一人、また一人と脱落していく。  
「ねぇーぇ、いつまでやっても同じじゃない。みんな一斉にやめようよ!」  
歌乃が言う。  
「そうね、みんな同時なら文句はないわ」  
聖香が同調する。  
「私もそれでいいよ」  
ピアノを弾く光の口から言葉が出てくる。  
『嘘!皆終わる気なんてないの!止めちゃ駄目!』  
光はピアノを弾く自分自身に叫ぶ。しかしピアノを弾く自分には聞こえ  
ていないようで、ただピアノを弾き続ける。  
「いい。1.2.3!」  
歌乃のかけ声と共にピアノの前の光とノッティがピアノを弾くのをやめる  
が後のメンバーはかまわずピアノを弾き続けている。  
「騙したのかよ!汚ねーぞ!」  
ピアノを弾く私は怒鳴るが、歌乃はペロリと舌を出し笑っている。  
「能登君、光さんご苦労様でした。試験終了です。」  
ピアノを弾いていた光は怒って席を立ち、会場を出て行ってしまう。  
そうだった。私はここで出て行ったのに.....  
私はここに居なかったのに、幻を見ている私はここにとどまり続けて  
いる。試験の行方を見守り続ける。  
 
 

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