「皆を応援してる。――だけど葉音、おまえを一番に」
その言葉に嘘は無かった。むしろ、これ以上ない真実だった。
「だっておまえにはふたつしか無いからだ。ピアノと、……あの人の」
本当は、それだけじゃない。
言いたくて堪らなかったその言葉を光は言わなかった。
伝えたいその気持ちに蓋をした。
葉音の、見えないけれど澄んだ瞳の向こうに、あの人への想いが見えていた。
自分は試験に失格した。同時に、このまま皆の傍にいる資格も失ったんだ。
きっと、葉音の傍にいる資格さえ。
だから、今は葉音には言えない。
いつか、もしももう一度葉音の傍にいられる資格を与えられたら、その時に―――
「葉音にはあたしがついてる。大好きだ」