この学長レースに勝ち残る為に何でもする事を誓っていたから  
ぼくは歌乃を切り捨てた  
自分でも自分が嫌になる  
何故、こんな事をしているんだろう。どうしてこんな酷い事をできるのだろう。  
あの時の歌乃の顔を忘れる事が出来ない  
まさか僕に裏切られるとは思ってもいなかったのだろう。  
だが、僕はそうした。勝ち残る為に幸子に乗り換えた。  
後悔はない。  
違う。違う。違う。  
後悔している。彼女の泣き顔を見たからじゃない。  
僕はあの時自分の醜さを知ったんだ。  
救いようのない自分の醜さを。  
あの時、部屋から走り去る彼女を何故、追いかけなかったんだ。  
あの時、彼女を追いかけて彼女に...................  
謝るのか?  
僕を許して欲しいと  
 
 
僕はあの時自分から断ち切ったんだ。彼女という救いの糸を  
 
 
唱吾は車を運転してマンションへ帰ってきた。もうそこには誰も待ってやしない。  
それは確かに自分が望んだ事だ。  
でも、あの笑顔が2度と見られない事は本当につらい。  
もし、時間をさかのぼりもう一度選ぶ事が出来るなら、僕はどうするだろう。  
『馬鹿な考えだ』  
唱吾は打ち消しエレベーターを降りる。  
部屋の鍵を開けようとして、鍵を差し込む、と、鍵はすでに開いていた。  
唱吾はしばらく鍵をみつめて、はっと、気が付き部屋に飛び込んでいく。  
「歌乃、歌乃か?」  
玄関を開け、リビングに飛び込み歌乃の姿を探す。  
どこだ。どこにいる。歌乃の部屋を探す。が、その姿はない。  
「は、はは......」  
唱吾は笑うしかなかった。  
自分は何を期待していたのだろう。  
僕は何をやっているんだろう  
膝からがっくりと力が抜けて、唱吾は廊下にへたり込む。その時  
「カチャ」  
洗面室の扉が開き、誰かが顔を出す。  
「歌乃!」  
唱吾は立ち上がり思わず叫んだ。  
「歌乃」  
呼ばれた相手はびっくっとして、唱吾の顔を見直す。  
「なんだよ。おっさんかよ。びっくりさせんなよ」  
歌乃ではなく、宝生光であった。  
 
「どうしてで君がここにいるんだ?」  
唱吾と光はリビングに戻って、光に聞いた。  
「試験落ちちゃっさ、あの人のとこの居づらくなって.....  
 出てきたのはいいけど行くとこなくてさ  
 本当困っちゃって  
 歌乃にたよちゃおかーなって  
 でも、ここに来たら歌乃にちょうど今から出かけるから  
 留守番頼むって言われて留守番してただけだよ」  
それを聞いて唱吾は  
「歌乃はいたのか?ここに」  
「え、あぁ、2時間くらい前かな。ここを出てったの」  
2時間か、あのとき、僕もすぐにここに帰っていたら彼女に十分に会えていたのだ。  
いや、歌乃は待っていてくれたのかもしれない。  
そして今度も僕はそれを選ばなかった。  
「歌乃がどうかしたの?」  
何も事情がわからなくて、心配になった光が聞いてくる。唱吾はありのままを話した。  
「僕は歌乃を切り捨てた。  
 彼女はANGELじゃなかったんだ  
 僕は幸子に、DEVILにかける事にした」  
光の顔に怒りが浮かぶ。  
「それであんた歌乃を捨てたの。あんたそれで平気なの  
 歌乃が何の為にピアノを弾いてたのか  
 なんであんな苦しい思いをして弾いてたのか  
 あんた判っているの?」  
光の言葉は唱吾の心に突き刺さる。  
判ってるのか。歌乃の心を?判っている。だけど、僕は切り捨てた。  
歌乃が苦しみの中でなぜ僕の為にピアノを弾いてくれた。それでも僕は幸子を選んだ。  
それがどれほど醜い行為か、唱吾自身がよくわかっている。  
 
「あんたがやったこと  
 歌乃が許しても、私が許さない!  
 なんで歌乃のことを考えてあげられないの!」  
光の怒りはもっともだ。水無月家の争いに何の関係もない歌乃や光達を巻き込んだのも自分たちだ。  
僕は彼女の苦しみにつけ込んで、この相続レースに参加させた様なものだ。  
そして、僕はとりわけ歌乃に救われたのに、それなのにただ、歌乃を切り捨てた。  
「馬鹿!! 大馬鹿野郎!!  
 なんで、なんでなんだよ!!!」  
光が泣きながら唱吾をなじる。  
唱吾には答える言葉がなかった。なにも今の惨めさを埋めてくれるものはなかった。  
唱吾はただ俯くしかなかった。  
「歌乃はあんたの事好きだって言ってたんだよ  
 私達があんなおっさんどこがいいのって  
 ひやかしても  
 ただ、にこにこ笑って  
 本当はとっても優しい人なんだって  
 だから、私があの人の望みをかなえてあげるんだって.......  
 なのに どうしてなんだよ!」  
光が唱吾を詰る言葉を通して、歌乃の心が唱吾の胸に迫る。  
自分が選んだ選択の愚かさに今更ながら気づかされる。  
そう、唱吾自身が選んだ愚かな選択、救いようのない愚かな選択。  
「わかっているよ。  
 僕がどうしようもないのは、僕が馬鹿なのは  
 でも、僕にはこうするしかなかったんだ」  
唱吾の言葉が光の怒りに火をつける  
光は唱吾の頬を打つ。  
パシシーーーーン  
 
「嘘、嘘つき」  
光は泣いていた。瞳に涙がこぼれている。  
「気が済んだら、ここから出て行ってくれ  
 僕を一人にしてくれ」  
唱吾は光に背を向けた。唱吾も泣いていたけどその泣き顔を見られたくはなかった。  
「わかったよ。馬鹿!!」  
バタンと音を立ててリビングの扉が閉まり、走り去る音が聞こえる。  
唱吾はソファの背もたれに体を預け、天井を見る。  
自分の頬に流れる涙が不思議だった。自分にはもう涙なんて無いって思っていた。  
人に疎まれ、家族に疎まれていた自分を守る為に、泣くことを許さなかったのに  
その自分が歌乃を失って涙を流している。  
馬鹿な話だと思う。大切なものを失って、涙を取り戻す。まったく間の抜けた話だ。  
一人になってから、どれくらい時間が過ぎただろう。  
唱吾はそろそろと起きあがってサイドボードへ行く。  
唱吾は全く酒を飲めなかったが経理の責任者という立場柄、出入り業者が色々持ってくる  
ので、飾りに置いていた物だ。  
きっと、高い酒なんだろうが、唱吾にはよく判らない。  
唱吾は封を開け、グラスに酒を注ぐ。  
琥珀色の液体がグラスに満々と注がれるのを一気に飲み干す。  
喉が焼ける様で、ゴホゴホと咳き込む。  
それでももう一杯、グラスに酒を注ぎ、飲み干す。  
目が回り、足下がふらつき出す。地面が柔らかくなってくる。  
体中に熱を持ち出し、そして頭が朦朧とする。  
熱を持ち真っ赤になった手でさらにグラスに酒を注ぐ。  
ぐっとまた一気に飲み干す。呼吸が苦しくなる。  
世界がぐるぐると回り出し、足から力が抜けてその場に座り込む。それでもグラスに酒を注ぐ  
酒を飲み干す。そして琥珀色のボトルに手を伸ばし直接口に流し込む。  
意識が遠くなり、目の前の風景がぐるぐると回る。  
そのときリビングの扉が開き人が入ってきた。  
 
唱吾にとってその人は今一番会いたい愛おしい人だった。  
唱吾はその人影ににじり寄る。  
「かえって、かえってきてくれたんだなー  
 許してくれ、僕がすべて悪かった。  
 許してくれよー」  
足下に抱きつき唱吾は泣いた。もう離したくなかった。  
「僕には君が必要なんだ  
 君が好きだ  
 愛してる」  
歌乃は唱吾に何か言って、唱吾の手をふりほどこうとしているが、唱吾はもう歌乃を手放したく  
ない一心で歌乃の足をきつく抱きしめる。  
歌乃はバランスを失ってソファにしりもちをつく。  
唱吾はそのままずりあがり  
「愛してる  
 本当に好きなんだ」  
そう言うと歌乃にキスをする。  
そこで唱吾の頭の中が白くひかって意識がなくなった。  
 
朝の光の中、唱吾は目が覚めた。  
まだ頭の中がぐるぐる回っている気がして、気分が悪い。  
『ここはどこだ』  
僕の部屋じゃない。歌乃の部屋か?酒を飲んで正気を失ってそれから  
この部屋まで戻ってきたのか。  
とにかく頭がガンガンして気分が悪い。  
唱吾が寝返りを打つと腕に柔らかいものが当たる。  
「え」  
そう、女性の胸の柔らかな感触そのものだった。  
「何?」  
唱吾の二日酔いでぼけた頭で昨日の事を思い出そうとする。もしかして  
「歌乃?」  
唱吾は確かめようと振り返り驚いて声を上げる。  
「ひ、光君、どうして」  
唱吾の横で寝ているのは宝生光だったからだ。  
唱吾の横でスヤスヤ寝息を立てている。シーツの間から意外に豊かな乳房が見える。  
しかし、何でどうして裸なんだ?  
昨日光は出ていった筈だ。  
え、僕がキスしたのって歌乃じゃなかったのか?まさか光と?まさか?  
光が寝返りを打つ。唱吾の腕に光の乳房が当たる。  
唱吾は固まってしまう。とにかくマズイ、非常にマズイ  
二日酔いと横にいる光というので頭の中はほぼパニック状態に陥っている。  
『そうだ、とにかく確かめないと』  
唱吾はシーツの下の自分自身を見る。  
『はいてないぞ、パンツ』  
パンツどころかスッポンポンだ、唱吾の額に汗が浮かぶ。  
『とにかくこの場から離れよう』  
 
それがいい、唱吾はそろそろと起きあがる。そろり、とベッドから出る。  
「ん。なんだ、起きたんだ」  
光が目をこすりながら起きあがる。  
唱吾はベッドから飛び出し、振り返る。  
「やーーー光君、おはよう  
 どうして君がここにいるのかな?  
 なんで、君裸なの」  
「おっさんこそ、大事なところ丸見えだけど!」  
「うわぁー」  
手近なシーツを取り隠そうと引っ張ると、そのまま光を覆っていたシーツを引きはがす事  
となり光の生まれたまま横たわる姿をあますところなく唱吾の眼前にさらけ出す。  
「うわぁー」  
唱吾は再び叫ぶとシーツを放り投げる。  
シーツが光の頭にかかる。  
「ご、ごめん」  
唱吾は部屋から駆けだし、自分の部屋に戻る。  
「どうなってるんだ。一体」  
唱吾の正直な感想だった。  
 
部屋に戻り、とりあえず、服を着る。  
『落ち着こう』  
そうだ、確かに裸にはなってはいたが、光と何かあったってことでもないだろう。  
うん。そうだ。そうに違いない。  
唱吾は服を着終えると歌乃の部屋に向かう。光はまだいるはずだ。  
ふーっと息を吐き  
「コンコン」  
ノックをしてドアを開ける。  
光も着替え終わっていた。窓が開けられ日差しの中で背伸びをしている。朝のさわやかな風が  
吹き込み朝日が美しい光の顔の照らし出す。  
 
「ごめん、あの......昨日何かあったかな?」  
「え」  
「いや、酒飲んじゃって何にも覚えてないんだ」  
「何にもって、昨日の事全部?」  
光が聞いてくる  
「全く、覚えてないんだ」  
「ひどい」  
「ひどいって」  
唱吾の顔が青くなる。僕がなんかしたのか?  
「本当に何も覚えてないの」  
光が唱吾の顔を覗き込む。  
「まったく.........覚えてない」  
それを聞くと光は顔を伏せてしまい、しだいに肩が震えだす  
「ひどい、ひどいよ  
 いやがる私を押し倒して  
 服を脱がせて乱暴したくせに  
 何が覚えていないよ!!!」  
顔を伏せた光からすすり泣きが聞こえて、唱吾の顔から血の気が引く  
「乱暴.......僕が?」  
なんてことをしちまったんだ。唱吾はそのままその場に膝まつき、土下座をする。  
「本当にすまない。何も覚えてないんだ  
 許してくれ  
 殴ってくれてもかまわない  
 警察にだって行くよ  
 許してくれ、すまない  
 出来る限りの償いはする」  
唱吾は土下座するしかない。  
 
光を傷つけるつもりもなく、ましてや歌乃の友人に手を出すなんて  
こんなことが歌乃にしれたらまた軽蔑される。どうすればいい  
ただただ、謝り続ける唱吾に  
「本当に償ってくれるの」  
光が唱吾に聞く  
「じゃ、しばらくここに泊めてよね!」  
「えっ」  
唱吾が驚いて顔をあげると、にこっと笑う光がいた  
「どう、泊めてくれるの?」  
「それは、構わないけど」  
「約束よ」  
「君は、君は嫌じゃないの?」  
「平気よ」  
「平気って、僕は君に酷いことしたじゃないか。どうして」  
唱吾の問いかけに、光はくすくす笑う  
「あのね、このアタシが酔っぱらいの一人や二人にどうこうされると  
 思ってるの。しかもあんたみたいなオッサンに!!」  
「え、それじゃ」 光を傷つけるつもりもなく、ましてや歌乃の友人に手を出すなんて  
こんなことが歌乃にしれたらまた軽蔑される。どうすればいい  
ただただ、謝り続ける唱吾に  
「本当に償ってくれるの」  
光が唱吾に聞く  
「じゃ、しばらくここに泊めてよね!」  
「えっ」  
 
唱吾が驚いて顔をあげると、にこっと笑う光がいた  
「どう、泊めてくれるの?」  
「それは、構わないけど」  
「約束よ」  
「君は、君は嫌じゃないの?」  
「平気よ」  
「平気って、僕は君に酷いことしたじゃないか。どうして」  
唱吾の問いかけに、光はくすくす笑う  
「あのね、このアタシが酔っぱらいの一人や二人にどうこうされると  
 思ってるの。しかもあんたみたいなオッサンに!!」  
「え、それじゃ」  
「何もなかったわよ!!  
 昨日忘れ物を取りに帰ってきたら、あんたいきなり抱きついてキスしようとしたから  
 一発、アゴに喰らわしたらのびちゃって  
 ほっといて帰るのも可哀想かなって部屋に連れて行こうって思ったのが間違いだったのよ  
 あんた気分が悪くなってゲロゲロってなって  
 あなたの服だけじゃなくて私の服まで汚されちゃったのよ  
 それでまとめて洗濯機の中よ  
 あ、あなたの服は私が脱がしたんじゃないからね!」  
「何もなかったわよ!!  
 昨日忘れ物を取りに帰ってきたら、あんたいきなり抱きついてキスしようとしたから  
 一発、アゴに喰らわしたらのびちゃって  
 ほっといて帰るのも可哀想かなって部屋に連れて行こうって思ったのが間違いだったのよ  
 あんた気分が悪くなってゲロゲロってなって  
 あなたの服だけじゃなくて私の服まで汚されちゃったのよ  
 それでまとめて洗濯機の中よ  
 あ、あなたの服は私が脱がしたんじゃないからね!」  
「そうなんだ、良かった!」  
ほっと唱吾は胸をなで下ろす。  
 
「なによ!その露骨な喜び方は  
 普通こんな美少女となんかあったっていったら  
 喜ぶのが普通でしょ」  
「いや、君に済まないって、どうしようって思ったから...............  
 君を傷つけたと思ったから  
 でも本当に良かったよ何もなくて  
 本当騙すなんてひどいよ」  
「昨日の事全く覚えていないって言うからちょっとしたいたずらよ  
 それより約束よ、歌乃が帰ってくるまでこの部屋使わしてよね」  
「歌乃が戻ってくる.........」  
唱吾の心が現実に引き戻される。歌乃はここに戻ってきてくれるのだろうか?  
こんな僕の所に戻ってきてくれるのか?  
「うん」  
それだけいうと唱吾は部屋を出て行く。そんな唱吾を見送りながら  
「重傷ね、こりゃ」  
光はつぶやく。  
 
歌乃をあんなに思っているのに、どうして歌乃を裏切ったりしたんだろう。  
そんなに水無月家の財産や学長の椅子が欲しいの?どうして泣くほど好きな女を失ってまで手にいれたいの?  
譜三彦も同じなのかな?もうあいつは私の事をもう忘れちゃってるのかな?  
どうしようもない馬鹿だ、救いようがない。  
しかしどうしようもないのは私も同じだ。  
光は部屋を片づけ始める。  
昨日の二人の痕跡を消していく。  
唱吾はあの説明で納得したのだろうか?  
確かに唱吾に服を汚され洗濯したが、それが二人が裸で寝てた理由になるって思ってるんだろうか、本当に。  
あのときボロボロになって泣いてる男が、私の事を好きだ、愛してる、許してくれって抱きついてきた。  
それが人違いだって私には判っていても、私には彼を振り払う事が出来なかった。  
大切な友達の歌乃が、好きな男だってことも判っているのに、放っておけなかった。  
私は単なる身代わりだった。彼は何度も、何度も私の事を歌乃って呼びつづけていた。  
「好きだ、愛してる」って言っては私を抱きしめて、私は動けなくなった。  
私は大切な友達の好きな男の腕に抱かれた、  
そして私の友達を愛している男に抱かれた。  
大切な友達の歌乃のベッドの上で  
このことは私の胸の中だけにしまっておこうと、光は決めていた。  
 
 
その日から唱吾と光の生活が始まった。  
唱吾は朝大学に出かける為に光に  
「これが合い鍵だ、もしこの家を出て行く気になったら鍵はポストにでも放り込んでいってくれ」  
「判ってるよ、いつまでもやっかいになる気はねーし!ちゃんと行き先探すから」  
「そりゃ助かる」  
そう言い残して出て行こうとすると  
「オイ!朝飯食ってかないのかよ」  
「僕の分も用意してくれてたの?」  
テーブルの上にトーストやサラダやコーヒーが唱吾の分も用意してあった。  
「ま、居候の身だからね。これでも気はつかってんだから」  
唱吾は素直にテーブルに着く  
「いただきます」  
トーストを取り食べ始める。  
唱吾には不思議だった。今まで歌乃が座っていた椅子に光が座っている。  
なにからなにまで歌乃とは違う光がこの家にいて、それでも時間が過ぎていってしまう。  
唱吾が食べているとその姿を光が見つめられているのに気づいて  
「何、何かついてる、何か変?」  
「うん、似てるなって思って」  
「誰に」  
「あんたのお兄さんに」  
光は唱吾の中に譜三彦の影を見つけた。そんな光に  
「何を言ってるんだ、僕があいつに似ているって。冗談じゃない!  
 僕が水無月の中で一人だけ違うってこと位判ってるよ  
 それで僕がどんなに嫌な思いをした事か君には判らないだろう  
 まったく、面白くもない冗談だ  
 ごちそうさま」  
唱吾は席を立つ  
 
「なんだよ、そんなに怒る事無いだろ」  
「後はよろしく」  
バンとドアを閉め出て行く。  
「いってらっしゃーい.......やっぱり、兄弟ね」その姿を見送って光はつぶやく  
もちろん、その容姿が似ていない事は誰が見ても一目でわかるけど  
でも、ふとした仕草がやっぱり似ているって思う、あの人に  
どうして、こんなに違う唱吾に譜三彦の姿を探しているんだろう。  
私はあの人の所に戻りたいんだろうか。  
残りのパンを囓る。  
『これからどうしよう』と途方に暮れる  
テーブルにアゴをのせフーっと深くため息をつく。  
「仕事探さないと」  
起きあがり光も出かける準備を始める。あてはない。でも何もしない訳にはいかない。  
ここで立ち止まってしまう訳にはいかない。  
光はいつものスカジャンを羽織ると街へ出かけていった。  
 
夕方になって両手に買い物袋をぶら下げて光が帰ってくる。  
仕事はなかなか見つからず、気が重い帰宅だった。  
「ただいまー」  
夕日が差し込む部屋の中は誰もいなくて静まりかえっている。譜三彦と一緒の時は大抵は  
譜三彦は家にいて光をお帰りって迎えてくれていたのに。  
「おかえりなさい」  
自分で自分に声を掛ける。  
「さて始めますか」  
光はキッチンに向かう。冷蔵庫に食材をいれて食事の準備を始める。  
 
唱吾はその夜遅くマンションに帰りついた。光のいるマンションに帰りにくかったって単純な  
理由だったのだが、扉を開け玄関に入ると、光の靴があるのをみる。  
『そうか、光君まだいるんだな』  
「ただいま」  
小声でつぶやく。歌乃がいる頃からの癖だった。夜遅く帰ると歌乃によく怒られたっけ。  
スリッパをはき静かにソロソロと自分の部屋に向かう。そこに  
「何時だと思ってんの!」  
リビングの扉が突然開けられて光が唱吾に怒鳴る  
「え」  
唱吾はびっくりして立ち止まる。  
「もう、待ってる方のみになってよ」  
「待っててくれって、誰も頼んでないぞ」  
「あ!そういうこと言うかな  
 遅く帰ってきた人が、待ってる人間に頼んでないとか言うかな!  
 悪い事したのはどっちかな」  
「だから、僕は」  
「悪い事したときには謝るって学校で教わりませんでしたか?」  
光は美人だけど怒ると怖い。唱吾は思わず謝ってしまう。  
「........ごめん」  
「そうよね。素直に謝るのが普通よね」  
光は腕組みをしてツカツカと唱吾の所までやってくる。  
「晩ご飯は?」  
「まだ、だけど」  
「用意してるあるから  
 早く食べましょう」  
光は言うとリビングに行く。唱吾は光の後ろ姿を目で追いながら以前に歌乃と同じような  
会話をしていた事を思い出した。  
 
歌乃も僕に同じように怒って、そして僕にご飯食べようって言ってくれたっけ。  
「どうしたのよ、ぼっとして」  
歌乃との事を思い出していた唱吾に光が声を掛ける  
「いや。なんでもないよ」  
「さぁ、早く食べようよ。私もお腹すいちゃったし」  
「君もまだ、食べてないの?」  
「だから言ってるでしょ!待つ方の身になってよって!」  
「だから、僕は頼んでないって!」  
「あーまだ言うの!そういう事!」  
「ごめん」  
リビングのテーブルには夕食の準備がしてあった。二人は向かい合って席に着く。  
「すごいね。本当にこれ君が作ったの?」  
「まあね。これでも料理には自信があるのよ」  
「へー、人は見かけによらないね」  
「どういう見かけよ」  
また光の顔が怖くなる。唱吾はこれ以上へたに口を開くと墓穴を掘りそうな気がして  
「いただきます」  
と手を合わせて、食事を始める。  
「おいしいよ」  
唱吾は少し驚いていた。水無月家は食事も専門の家政婦が作りおいしい物を小さな時から食べな  
れている唱吾からしてもかなりレベルが高い出来であった。  
「でしょ。うん」  
うれしそうに光がいう。唱吾は光を見ておかしな事に気が付いた。  
 
光の指に絆創膏が貼られていた。そうだった。  
「君は指が.....」  
光は人差し指の神経をマザーに切断された筈だ。  
「まさか、指一本使えないだけでこんなに不自由になるなんて思わなかったな  
 私が包丁で怪我するなんてドジな事するなんて考えもしなかった  
 たった指一本なのにね」  
寂しそうに光は自分の指を見つめる  
「病院には行ったのかい?  
 指の神経も治るのかもしれない」  
特Aクラスでも技巧派と言われた光がそんなつまらない怪我をする  
唱吾はそんな光が心配で聞いてしまう。  
「いいのよ、私は」  
「よくないよ」  
「いいのよ」  
「よくない」  
「いいって言ってるでしょ。放っといて」  
光が怒る。しかし今度は唱吾は一歩も引かない。  
「放っておけない。水無月のことで君が傷を負う事はないんだ  
 譜三彦兄さんが君を放っておいたとしても  
 水無月家の一人として僕にも責任がある」  
光の顔に強い怒りが浮かぶ。  
「あなたに何が判るの  
 私の何が判るの?あの人の何が判るのよ  
 勝手な事言ってるんじゃないわよ  
 この指は私が選んだ  
 私が選んだ道なのよ」  
光の瞳に涙が浮かぶ。  
 
「でも、君は」  
唱吾が反論しようとするのが光に怒りの火をつける。  
光は唱吾の頬を打つ。  
パシシーーーーン  
「どうして判った様なこというのよ」  
光は泣いて、涙がこぼれている。  
光は席を立ち、バタンと音を立ててリビングの扉が閉まり、走り去る音が聞こえる。  
「また、殴られたな」  
唱吾は一人残されたリビングで光の事を考えていた。  
 
 
翌朝、光は朝早く目が覚めてしまった。  
昨日の唱吾とのケンカでよく眠れずにいた。唱吾は自分の事を考えてくれてああ言ってくれ  
た事は解る。でも、あんな言い方をされたら光の事を全部否定しているのと同じだし、譜三  
彦と自分の関わりを否定された様な気がした。  
また、なんか言われたら文句を言ってやろう決めて、部屋を出てリビングにはいるとキッチ  
ンに唱吾はいた。  
「おはよう」  
唱吾は既に起きていた様だ。  
「おはよう、もう起きてたんだ」  
「うん、昨日はごめん  
 あんな言い方して悪かったよ  
 許してくれ」  
気が張っていた光は機先を制されてしまう。  
「え、私の方こそ、ごめん」  
と、つられて、謝ってしまう。唱吾は笑って  
「よかった、許してくれて」  
その笑顔を見て、まったく似ていない人の事を思い出してしまう。  
本当にどうしてこの人をみてあの人を思い出すのだろう。  
私は本当にどうかしていると光は思った。  
 
唱吾が光に声を掛ける  
「朝ご飯、準備しようと思ったんだけど」  
目玉焼きが真っ黒に焦げ付いたフライパンを光に見せる。  
「何やってくれてるのよ!  
 こんなになるまで  
 どいて、私がやるから」  
「ごめん」  
「もう、余計な仕事作らないでよ」  
「ごめん」  
光はクスッと笑う  
「いつも、おっさん謝ってばっかりだね」  
「そうかい?癖だな」  
唱吾も笑う。歌乃といた頃から始まった癖だ。  
「ここはいいから、テーブルへ行って!シッシッ」  
「シッシッってひどいな。目上の人を敬う態度が出来ていないな」  
「目玉焼きの一つも作れない人にはこれくらいでちょうどいいの!  
 席について。おいしい料理作るから」  
唱吾は素直に席に着く。光はテキパキと料理を作りテーブルに並べる。  
「さぁ、食べましょうか」  
「本当に君は料理の天才だな!凄いよ」  
「オッサンが出来なさすぎるだけ。これくらい普通だろ」  
「いや、僕は結構おいしいもの食べてきたけど  
 この料理の出来は凄いよ。おいしい!」  
「そう」  
「君をお嫁さんに貰える男は幸せだろうな。こんなうまい料理毎日食べられるなんて」  
「えー、照れるな。それじゃ私をお嫁さんにしてくれる?」  
唱吾は口の物を噴きそうになり、手で口を押さえる。  
 
「よしてくれよ。冗談は」  
「そうよね、歌乃に叱られちゃうからね」  
「そういう問題じゃない  
 歌乃とはそういう関係じゃない  
 ただ.....」  
「ただ.....何よ」  
「彼女は僕の天使だったんだ  
 そして天使を裏切ってしまった。僕は最低のバカだってこと  
 それだけだ」  
光はそういう唱吾を顔を見つめて  
「ぎゃははぁ」大声で光は笑う。笑いすぎて文字通りお腹を押さえて笑い転げる  
「何がおかしい」  
「だってオッサン、その顔で真顔でそんなこと言うんだもん  
 僕の天使?  
 寒い、寒すぎ。歌乃にも同じ事言ったの?君は僕の天使だって」  
「言えるわけ無いだろう!僕がそんな事言えてたら、こんな事になってない」  
「じゃー何で私の前じゃ言えるのよ?そんな寒い事」  
唱吾も光の顔を見つめる  
「どうして,だろう。君には気を遣わなくていいのかな?君にならなんでも話せる気がする」  
唱吾に顔を見つめられて光は自分の顔がどんどん赤くなっていくのが判る。  
「早く食べてよ。ごはんさめちゃうでしょ」  
「うん」  
何とか光はその場をごまかす。本当にどうしちゃったんだろう、こんなオッサンに赤くなる  
自分が信じられず、チラチラ唱吾を盗み見る  
 
「それでね、実は光君に今日付き合ってもらいたいんだ」  
「え!デート?」  
「違うよ、病院だよ」  
「そ、そうよね。病院っておっさんどっか悪いの?」  
「違う。君の指を片岡先生に診て貰おうと思うんだ。  
 君がこの特Aクラス選抜に賭けていたのも、譜三彦兄さんとの事を大切にしているのも判る  
 でも、これからの君の長い人生に、君だけに水無月のことでそんな傷を負わせる訳にはいかない  
 確かに治るかどうかも判らない  
 それでも医者に診て貰うだけでも診て貰って欲しい  
 頼む。僕の勝手なお願いだけど聞いてくれないか」  
唱吾は光に頭をを下げる。  
光にはそれ程唱吾が何故自分の事を気にしてくれるのか判らなかった。  
「どうして、私の事をそんなに気にしてくれるの」  
「僕は歌乃を切れ捨てた。ただ歌乃の思いを裏切ったんだ。  
 水無月家の全てを手に入れる為にね  
 人を傷つける事も裏切る事も平気なはずだったのに  
 歌乃の涙を見て、自分の醜さを知ったんだ  
 自分の醜さを誰かを助ける事で、許されたいんだと思う」  
 
「誰に?」  
「自分にさ。自分勝手で醜い自分から許されたいんだ  
 ごめん。僕何を言ってるのか」  
「あなたの為に私が診て貰わなきゃいかないの?」  
「ごめん」  
「いいわ、診て貰う。あなたの為に」  
「本当に」  
唱吾は安心して背もたれに体を預ける。そこへ光が  
「でも一つ条件があるの」  
「何、何でも聞くよ」  
「ご飯、残さないできれいに食べてよね」  
「え」  
唱吾は微笑む光を見てすごくきれいな女性だなと改めて思う自分に気づいていた。  
 
「誰に?」  
「自分にさ。自分勝手で醜い自分から許されたいんだ  
 ごめん。僕何を言ってるのか」  
「あなたの為に私が診て貰わなきゃいかないの?」  
「ごめん」  
「いいわ、診て貰う。あなたの為に」  
「本当に」  
唱吾は安心して背もたれに体を預ける。そこへ光が  
「でも一つ条件があるの」  
「何、何でも聞くよ」  
「ご飯、残さないできれいに食べてよね」  
「え」  
唱吾は微笑む光を見てすごくきれいな女性だなと改めて思う自分に気づいていた。  
 
光は唱吾は一緒に病院に来ている。  
「片岡先生には君も会った事あるだろう」  
「うん」  
「いい先生だから、安心して相談すればいいよ」  
看護師に案内されて診察室に入ると、片岡医師が迎えてくれた。  
「こんにちは、唱吾さん」  
「お世話になります。先生」  
「で、このお嬢さん?」  
「はい」  
唱吾に促されて光は片岡医師の前に座り  
「よろしくお願いします」と頭を下げる  
「気を楽にして、ちょっと指を診せて貰える?」  
「どう、動かせない指も触れば感じるかな?」  
片岡医師の診察が始まる。  
「光さん、少し目を閉じて貰える」  
光が目を閉じると、針がついた器具を滅菌用バーナーで焙り熱して、人差し指に当てるが  
ピクリとも指は動かない。そこで、針を動かし中指に当てた瞬間に  
「熱い!」  
手を引っ込め光は声を上げる  
「何すんだよ」  
少し怒って文句を言う。  
 
「ごめんなさいね。手を診せて」  
確かに人差し指の反応は全くない。片岡医師は考えを巡らす  
『どういうことだろう。見たところ外傷や電流斑もない  
 唱吾さんに聞いた状況で、こうまで完璧に神経の切断が出来るものだろうか  
 あの時辰巳由貴さんが命を落とした経過も不可解だし  
 それを具体的に説明するには.......』  
片岡医師の考え込む姿を見て唱吾が声を掛ける  
「先生、どうなんでしょう」  
片岡医師は看護師にいくつかの検査の指示を与えながら  
「もう少し時間をかけて検査しましょう」  
光に笑顔で話しかけるが光は  
「治る見込みは無いって事でしょ」  
険しい顔で人差し指を見つめながら言う  
「違うわ。私はあなたの指が元に戻る可能性は十分にあると思うの  
 ただ、それを私の思いつきでなく確実なものにする為に検査が必要なのよ」  
笑顔で片岡医師は続ける  
「あなたの事、心配している人もいるし私も全力を尽くすつもりよ」  
片岡医師の言葉に光は唱吾を振り返る。唱吾は顔を赤くし  
「いや、僕は.....  
 先生、本当に光君の指は治る可能性あるんですか」  
「ええ、本当よ。ただ今は可能性としか言えないの  
 それを確実なものにしたの。その為の検査よ」  
「そうですか。よろしくお願いします」  
唱吾が頭を下げるのを見て、光もつられて頭を下げる。それをみて片岡医師は  
「本当にお似合いのカップルね」  
と笑う。それを聞いて二人は同時に  
「そんなんじゃありません」  
「そんなんじゃねーよ」  
と声をあげるが、あまりにも声が揃いすぎて二人は顔を見合わせる  
 
「あなた達の仲がいいのはよくわかったから、光さんは検査の方ちゃんと受けてね」  
「だから、そんなんじゃないって」  
光がそういうと  
「あら、そうなの?唱吾さんの事嫌い?」  
あらためての片岡医師の問いかけに光は言葉が詰まる。前までならすぐに『好きじゃない』って  
即答できたのに、今はその答えに詰まる自分がいるのに戸惑っている。  
言葉が出ない事が自分の気持ちを表してる様な気がしてまた気が重くなる。それを見て唱吾は  
「本人がいる前で嫌いだって言いにくいモンです、それに彼女は譜三彦兄さんが好きなんです」  
それを聞いて光は少し腹が立った。唱吾は自分の事を何にもわかってない  
「違う」  
「え、何が」  
「あんたの事嫌いじゃないし、譜三彦の事も関係ない」  
「そうなの?」  
唱吾は光の言葉の意味がよく判っていない。それは傍にいた片岡医師にさえ伝わったのに。  
「まぁ、いいじゃない。すぐに検査にとりかかりましょうね  
 少し時間がかかるから唱吾さんはいったん帰って後で光さんを迎えに来てあげて」  
唱吾は片岡医師に「よろしくお願いします」と頭を下げ診察室を出て行った。  
 
後に残された光に片岡医師が  
「唱吾さんって決して悪い人じゃないのよ」  
「それは判ります」  
「私、水無月家との長い付き合いもあってあの子の名付け親なのよ。小さな赤ちゃんだ  
 ったのにあんなも立派な大人になって.....私も歳をとるのも無理ないわね。  
 彼の母親があんな事になって、私もいろいろ相談にも乗ってきたけど、もう、あの子も  
 私より、別の誰かの支えが必要なときかもしれないわね  
 今、水無月の家の事でもかなりの問題がある様だし  
 できたら、 あの子の事支えてあげてね」  
「私、そんな」  
「無理にとは言わないけど。でも、少しだけ、ほんの少しだけ  
 あの子のこと見ていてあげて  
 ごめんなさいね。勝手な事言って  
 さあ、検査をしましょうか。あなたの指が元に戻る様に頑張りましょう」  
片岡医師が唱吾の事を大切に思っている事が光にもよく判った。  
光に片岡医師が優しく微笑む。  
それは光に母親の事を思い出させる優しいものだった。  
 
随分と長い時間がかかってやっと光の検査が終わった。  
『何だか病院って疲れるな』  
もちろん慣れない検査で疲れたのもあるがなんだかそれ以外の事でもどっと疲れが来た気がする。  
たくさんの他の患者や見舞客とで人が溢れているロービーにまで出てきたとき、光は受付の  
ソファーの端で小さくなって眠っている唱吾を見つけた。  
『待っててくれたんだ』  
そっと唱吾の側に行き彼の横に座る。ずっと待っていて、待ちくたびれて眠ってしまった  
のだろか。唱吾の静かな寝息が聞こえる。  
どうしてこの人は私の事をこんな風に思ってくれるのだろう。  
いや、本当の理由は光にも判っている。  
私はあの時と同じように歌乃の単なる身代わりなのだ。歌乃を失った寂しさを私で埋め  
ているだけ。それは判っているのに  
『私は単なる身代わり、それでもいい』光は心の中でつぶやく  
少し唱吾の肩に寄りかかり頭を預ける。唱吾の体の温もりが伝わってくる。  
そのとき唱吾も目を覚ます。唱吾は肩に頭を乗せ寄り添う光に驚く。  
「光君」  
「少しだけこうさせていて。お願い」  
唱吾の温もりが少し光を安心させる。光は寄り添う腕に力を込める抱きしめる。  
「どうしたの?」  
心配そうに尋ねる唱吾に  
「お願い。何も聞かないで」  
それを聞いて唱吾はいつもと違う光の様子にどうしていいか判らずただ動けずにいる。  
光は唱吾の存在を確かめる様に唱吾の腕を抱きしめ続ける。  
人のざわめきが行き交うロビーの片隅で静かに、静かに二人の間を時間が過ぎていく。  
 

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