「いない…」  
ユリが雑踏の中、一人呟いた。  
 
KOFの終了から3ヶ月。次回KOFのチームの再結成を誓い、  
別れたチームメイトの舞から手紙が届いた。  
「日本に遊びに来ませんか?」  
そんな手紙。  
懐かしい。僅か3ヶ月、それしか経っていないのにユリにはそんな感情が  
胸に溢れる。  
即断だった。修行と口うるさい父を、兄とその親友を押し付け(当然騙した)  
次の日の昼には日本行きの飛行機へと乗り込んでいた。  
友人に会えるという事に胸をときめかせながら。  
その手紙の字が、舞の字にしては何処か歪んでいる事も気にせずに。  
 
そして待ち合わせ場所の都内某所。  
舞の姿はなく、1時間近く待ち惚けを喰らわされている。  
「いない…いないじゃん。1時間も経つのに!携帯も繋がらないし!  
もぉ!1人でどうしろってのよぉ。」  
プリプリと頬を膨らませながら、一人騒ぐユリに通行人が目を向けるが  
ユリは気にしない。  
(もう謝ったって簡単に許したげないんだから。ご飯奢って貰って、ケーキも  
ご馳走になって、それから冬物のニットを買って貰って、それから…)  
 
「ユリさん?」  
「ふぇ?」  
空想の最中、ユリは後ろからかけられた声に振り返る。  
声の主。笑顔の麻宮アテナが其処にいた。  
 
BAR「TRIM」。  
舞からの連絡を待とうとアテナがユリをこの店へと案内した。  
落ち着いた雰囲気の店内。間接照明の照らすカウンターで2人は並び  
アテナの頼んだ、2人には少々不釣合いなグラスを傾けた。  
ユリが初めて口にするタイプのアルコール。  
口に含むと柑橘類の香りと甘味、僅かの苦味が口に広がる。  
その口当たりの良さに顔がほころぶ。  
ユリはふと、自分をこの店に誘ったアテナに目を向ける。  
同じ様にグラスを傾け微笑むアテナと目が合い、そのアテナの笑顔に暫し見惚れる。  
可愛い、素直にそう思う。  
(アイドルかぁ。可愛いよね。)  
自分の顔をジッと見るユリに小さく首を傾げながら、アテナが口を開く。  
「どうかしました?」  
「あっ、ゴメンね。可愛いなぁって、アイドルなんだなぁって思って。」  
アテナの顔にスッと朱が挿す。  
「やッ!ヤダ。からかわないでください。」  
「あっ、ゴ、ゴメンね。変な事言っちゃって。」  
自分の発言が、酷く含むところがある様に思えて赤面する。  
気まずい。カウンターで二人、赤面した少女が並んで沈黙した。  
お互いチラチラと顔を向ける。  
そんな気まずさを払うようにアテナが口を開いた。  
「でも、ユリさん。評判が良いんですよ。お世話になってるディレクターさんとか、  
プロダクションの社長さんとかに。」  
「あっ、え、ヤダ。ええ?」  
自分の容姿について褒められた事が無い訳じゃなかったが、  
こういった又聞きであると気恥ずかしさが倍増する。  
 
「本当ですよ。言ってました。『マジでムカつく』って」  
「えッ?」  
一瞬耳を疑う。アテナの言葉は止まらない。  
「『あんだけ頭悪そうなら簡単に股を開いてそうだ』とか『一回泣くまで犯したい』  
とか。ふふっ。皆、結構好き勝手に言ってましたよ。」  
「何…言ってるの?」  
アテナの言葉に思考が付いていかない。続けられるアテナの言葉が耳へと  
流れ込んでくる。  
「でも、私がユリさんは多分処女ですよって教えてあげたら、皆喜んじゃって。  
日本に呼べ呼べって五月蠅くて、社長なんか犬として一生飼ってやるって。  
うふふ、私の都合もあるのにね。」  
ユリを見つめ、クスクスと小さく笑うアテナ。その笑顔は  
出会った頃からの笑顔と全く変わらない。  
優しく、見る者全てを癒すような笑顔、その微笑を湛える口から、鈴のような声で  
聞くに耐えない様な言葉が次々と吐き出されていく。  
怖い。今まで感じた事の無いタイプの恐怖。  
関わってはいけないとユリの全てが警告する。言われるまでも無い。  
ユリはカウンターから立ち上がった。  
「あ、あのね。そ、そろそろ舞ちゃんと連絡が付くかも知れないから行くね。  
また、あの、こっちから連絡するから。」  
一刻も早く離れたかった。この場から。この娘から。  
不思議そうな顔でユリを見上げるアテナを残し店を後にしようとする。  
「あ!ごめんなさい。舞さんには会えないです。」  
背後からのアテナの声に立ち止まった。  
言い切った。舞には会えないと。  
振り返る。アテナが嬉しそうに微笑んだ。  
 
「舞さんを、犯したいって人も多かったんであげちゃったんです。  
一寸乱暴に使われすぎちゃったみたいで…  
でも、酷いんですよ。舞さんたら、ユリさんに手紙を書いたら開放するって言ったら、  
すごい喜んで書き始めたんです。後ろから突かれたまま書かせたから、変な字に  
なっちゃいましたし…」  
言葉を切って、上目遣いでユリを見上げる。  
言って良いものかと悩んでいるように見えた。  
「あんな人がチームメイトじゃ、ユリさんが可哀相です。」  
背筋が凍りついた。たった今見せた気を使う素振り。  
ずれている。それがユリの全身へと悪寒を走らせた。  
「ッッ!ま、舞ちゃんは、舞ちゃんは…どう…したの、…あれ?…」  
唐突に視界が歪む、胸から込み上げる様な吐気が襲い、意識が分散するような感覚。  
目の前のアテナに対する恐怖と嫌悪感が消えていく。  
(あれ、私、なんで…アテナちゃん?舞ちゃん…なんだっけ?)  
同じくカウンターから立ち上がり、ぼうっと立ち尽くすユリにアテナが囁いた。  
「私の部屋に……行きましょう?」  
耳元で囁かれたその言葉に、ユリがコクリと頷いた。  
 
混濁した意識のまま、手を引かれ店を後にする。  
(何してるんだろ。私…)  
(何処に行くんだっけ?アテナちゃんの部屋?舞ちゃんて?何だっけ?)  
(待ち合わせ…してた?お酒のんで、アテナちゃんに……)  
(何か、酷いこと言われたんだっけ?ええと…)  
「着きましたよ。ユリさん。」  
アテナの呼び声で自分がベットに腰掛けている事に気付く。  
(何時、こんなトコに来たんだろ?)  
「隣に…座ってもいいですか?」  
(?いいよ。座りなよ。)  
ふっと、顔を綻ばせたアテナが隣に腰をおろした。  
自分に笑顔を向けるアテナに胸が騒いだ。  
(・・・わかんない)  
「こうやってユリさんとお話できるなんて嬉しいです。」  
語りながらユリの脚へ、その間へと指を這わせる。  
触れるか触れないか。その微妙な感覚にユリは体を震わせる。  
「可愛い…」  
耳元へ口を近付け、囁きながら耳朶を嘗め上げる。  
「ユリさんの、胸、私に見せてください…」  
(…胸?…アテナちゃん、私のオッパイ見たいんだ…)  
「恥ずかしいですか?」  
着込んだローゲージニットの裾に手を伸ばしたままモジモジと  
間誤付くユリに尋ねる。  
コクリと頷く。恥ずかしいだけなのか?  
頭を掠めたそんな疑問は四散していく。  
 
裾を捲り上げていく。シンプルな白の下着がアテナへと晒された。  
はぁ、と息を吐きユリの下着に見惚れるアテナ。  
「外します、ね。」  
アテナの震える手がホックへ伸びる。  
アテナが緊張しているのが可笑しくて、クスクスと笑いが漏れてしまう。  
手を止め不安そうに、アテナがユリを見上げた。  
(いいよ。ブラ外しても。女の子同士だもんね。恥ずかしくないよね?)  
安心したよう微笑み、再びユリの下着へと手が伸ばされる。  
パチリ。  
ホックの外される音と共に、ユリの包まれていた胸が晒される。  
その膨らみに、頂点に微かに色づく櫻色に、視線を釘付けにしているアテナが  
可笑しくてまた笑ってしまう。  
(ゴメンね?舞ちゃんみたいに大きくないよ。)  
(舞ちゃんのオッパイ大きいよねぇ。私もアレくらい・・・・・・?)  
頭の隅に押し込められていた疑問が再び浮かび、ふと天井を見上げる。  
白く高い天井は何も答えないが、疑問を大きく膨らませる。  
「舞・・・ちゃん、は?」  
声が出る。それが自分の声であることに気付き、  
それが意識を急速に覚醒させていく。  
自分は何をしているのか?慌てて肌蹴ていた胸を隠した。  
意識が潰された、薬や酒とは違う何か、その恐怖がユリを目の前のアテナから離れさせる。  
「どうしたんですか?」  
不思議そうな顔のまま自分の顔を覗き込むアテナを、以前のようには見ることが出来ない。  
「は、離れてよ。コッチにこないで。」  
「怒ってるんですか?あの・・・いきなりこんな事・・・したから。」  
友人の、恋人の機嫌を伺うような視線。  
少しもおかしくない、年頃の少女の当たり前の不安に対する態度。  
それが怖い。  
逃げ出そうと体を動かそうとするが、体が動かない。  
 
じわりと、意識が何かに染まった。  
 
「何で・・・そんな事、言うんですか?」  
悲しみを含んだ瞳がユリを捕らえ、その顔が近づく。  
「ヒィッ!」  
「ユリさんは、、私を拒まないですよね?」  
ユリの胸へ手が伸び、柔らかく添えられる。  
「ママも、私の能力を怖がって、化け物って…」  
「あんなジジイに、私を預けて何処かに行っちゃいました。」  
悲しげに俯く。顔を上げ、再び瞳を覗き込まれる。  
 
じわり。  
 
意識を染めていく「何か」に抵抗ができない。  
「分かりますか?この能力。私の『気持ち』を直接頭に送り込むんです。」  
「そうして、感覚を共有する事もできるんです。」  
ユリの胸から手を離し、己が秘部へと手を潜り込ませる。  
「こんな風に。」  
クチュリ。  
その指が蠢き、小さな水音を立てた。  
「ひゃぁ!」  
触れられていない秘部に、快感が走り声が漏れる。  
「感覚を共有して遊んであげると、皆夢中になっちゃうんですよ。」  
「業界のオジサマ達なんか、私のアソコを夢中になってしゃぶり続けるんです。」  
アテナの指が自らの秘部を激しく掻き混ぜ、その快感はユリへと送り込まれる。  
 
「ッッッ!ああぁぁ!!」  
「・・・本当は、ユリさんもお世話になっている人のプレゼントにしようと  
思って呼んだんです。」  
「でも、ユリさんが私の事を好きって言ってくれたから・・・」  
「ハァッ!ハァ・・・ハァ、そ、そんな事・・・言ってないよぉ・・・」  
「言いました!バーで、私のこと可愛いって言ってくれたじゃないですか。」  
アテナの顔が近づく。  
ユリの唇に暖かい吐息が当たる。  
「アレは私の事を好きって事ですよね?」  
紅い舌がユリの唇をゆっくりと舐め上げる。  
「何でぇ!?ち、違ッ、ふむぅっ!!」  
言葉を唇で塞がれた。アテナの舌が、ユリの舌を求めて蠢く。  
同姓に口腔を蹂躙される嫌悪感に、一瞬眉を顰める。  
数瞬後の快感。  
舌を吸われる快感、吸う感触。  
矛盾した感覚がユリの口腔内で暴れ、舌が数十枚になったような感覚に、  
同姓との接吻である事の嫌悪感を吹き飛ばされる。  
息をすることも忘れ、お互いの舌を貪る。  
「んむうぅぅ!んん!んおぉぉ!!んむ、ぷあっ!」  
2人の呼吸の限界で、唇が離れる。  
肩で大きく息を吸うユリ。その涙で溢れた瞳が、陶然とアテナを見詰める。  
「私の事・・・愛して、くれますよね?」  
「わた、私ぃ、私、ハァ・・・ハァハァ・・・」  
アテナの手が、ユリのデニムキュロットの股間に当てられ、  
空いた手を自らの秘所へと伸びる。  
ユリの股間を撫で上げると同時に、大きく肥大した自らの陰核を捻り上げた。  
「ああぁっ!いっ!がぁ、あああああぁぁぁ!!!」  
ぷしゃあぁ・・・  
ユリの許容を超えた快感が襲い、全身を弛緩させる。  
力が抜け、失禁し、股間部の布に大きく染みが浮かんだ。  
快感に麻痺した頭に、アテナの声が聞こえた。  
「お漏らしだなんて。脱がないといけませんね。」  
 

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