距離を詰める。  
目の前の相手、チンピラのような風貌の男。  
喋り方、仕草、服装、どれを見てもその「チンピラ」と  
いう言葉が頭を離れない。  
ただ、その目。  
その蛇のようなその目、怒りに震え、自分に対して殺意を  
滾らせながらも、その芯は無機質な光を湛え崩さない。  
それが男を「チンピラ」と呼ばせるのを躊躇わせた。  
山崎。  
それが彼女、ユリ・サカザキの対戦者だった。  
 
ユリが油断無く、距離を詰める。  
山崎は左手をポケットに入れ、  
その逆手、右腕をだらりと下げたまま小さく左右へ揺らしている。  
闘う者の構えではない。  
ただ、山崎にとってはそれが当てはまらない。  
右手が、動く。  
 
「しゃぁ!」  
 
シバッッッ!!  
空気を裂き、その腕長からは想像も付かない距離まで伸びる。  
それはユリの、そのあどけなさすらを残すその顔に当たるその瞬間。  
僅か、小さく身を屈め、其れは当たらない。  
避けた其の身で大きく右脚を踏み込み、その脚に全体重を乗せ、  
残る半身を引き寄せる。  
 
脚の指先、地面にめり込むかのように負担をかけて、体勢を崩さない。  
軸足より半歩、左脚が前に出て、構えを完成させる。  
山崎との距離、実に一歩。  
其れは、ユリの、そう極限流空手の間合い。  
其れが完成した。  
闘いの流れが大きく変わった。  
 
「ハッ!!」  
 
短く息を吐き、拳を山崎の顔面に打ち込む。  
呻き、仰け反る山崎に打ち込んだその拳を素早く引き、練りこんだ気を  
掌に集め叩き付けた。  
更に大きく仰け反るが、山崎は倒れない。  
 
「ッッッ!んどりゃぁぁ!!」  
 
気力を振り絞り、体勢を立て直した山崎は懐から刃物。  
ドスを構えた。  
丹田、臍の真正面に据えて体全体を押し付ける。  
それは、ユリの細い体を抉る様、煌く。  
その武道に反する刃物はユリの身に届くことは無かった。  
手を返しその甲で、白刃の脇腹を叩く。  
山崎の体勢は大きく外側へ流れ、その凶器であった刃物は  
両腕から離れ、路地の壁へと叩き付けられた。  
一瞬、山崎の思考が止まる。崩れたその体勢を戻すのが遅れ、  
ユリのその前に、無防備な状態を晒す。  
ユリの体に練り上げた気が膨れ上がった。  
 
「芯!」  
 
水月にユリの拳が沈み込む。  
鈍い音共に、周りの空気すらをも震わせる振動が  
山崎の体を廻る。  
 
「ちょう!!」  
 
水月の直ぐ上、胸尖へと続け様に叩き込まれた拳により  
山崎の体はくの字に曲がる。  
その無防備に差出された顎に、体毎突き上げられた拳が吸い込まれ、  
その体が舞い上がる。  
 
「アッパー!!!」  
 
ベグン!!  
そんな鈍い音が山崎の首から聞こえ、大きく吹き飛んだ体は  
地面へと叩き付けられた。  
それと同時に、ユリの体も地面へと着地する。  
残心。  
油断はしない。  
構えを解かぬまま山崎を見つめ、小さく痙攣を繰り返すその状態に  
勝利を確信した。  
大きく息を吸い、吐き出す。1回、2回と繰り返した。  
 
「大丈夫。…余裕ッチ。」  
 
小さく言葉を吐いた。  
感情が高ぶった際、語尾に「ッチ」と付いてしまう。  
おちゃらけて見えるのだろう。父や兄の注意する姿が目に浮かび、  
苦笑いを浮かべた。  
 
(怒られちゃうからね。直さないとだめかな?)  
 
そんな考えが浮かぶ。  
武道に置ける「礼」の部分。それが自分には足らなく見えるのだろう。  
兄や父はそういう部分で固い。  
 
(技名がふざけてるとか、言葉遣いが悪いとか固いよぉ。)  
(その点ロバートさんは、話しやすいなあ。)  
 
兄の親友の顔が浮かんだ。  
お金持ちなのに、自分や兄と同じ目線で話してくれる。  
ひょうきんで、なぜか使う関西弁はそんな彼のキャラクターを  
より親しみ易くさせていた。  
チクリ、と心が痛んだ。  
(ロバートさん…)  
ロバートが自分を好きなのか?  
『B』の組織に拉致された時、兄と共に危険を顧みず助けに来てくれた。  
それは、ユリの中のロバートに対する感情を、大きく愛へと変えた。  
だが、ユリは気づいてしまった。  
ロバートの自分に対する感情。それは妹に対する愛情であると。  
ロバートは、ユリの自分に対する感情をどう受け止めているのか?  
溜息が口をついて出た。  
 
その時、視界の隅に光る物を捕らえた。  
ユリは、視線を大きく其方に向ける。  
 
(なんだろ?)  
 
2、3歩其方に歩み寄り、先ほどの闘いで弾き飛ばしたドスであると  
気付いた。唯何と無く手に取ろうと身を屈めたその瞬間。  
 
シバッッッ!!  
空気を裂くあの音共に後頭部へ衝撃が走った。  
視界が雷光の様な火花によって遮られる。  
山崎であろう攻撃の主を確認できない。  
 
(何で!起きて?ヤバイ!ヤバイよ!!)  
 
腹部へ衝撃が続く。恐らくは前蹴りだろう。  
防ぎきれず倒れこむ。山崎の声が聞こえた。  
 
「相手が!倒れたら!殺す気で!!トドメだドボキャラァァ!!!!」  
 
頭部への衝撃が、地面と挟まれる形で増幅した。  
意識が薄れる。この敗北は致命的だと、頭に警鐘が鳴り響いた。  
 
 
激痛。吐気を催し、視界は歪み定まらず、抵抗する気力が  
地へと流れて落ちていくような脱力感。  
山崎の追撃を辛うじて防いでいた十字に組まれた両腕が脱力し、その十字が崩れ切った。  
それに合わせ、山崎の追撃も止む。  
油断を少しもしていない。残心。武道に置ける基とも言える。  
唯、自分と違うのは、殺す気でいる事。自分の残心とは格が違った。  
体が震えだす。それは痛みのせいなのか、それとも恐怖なのか、  
この段階のユリには、分からなかった。  
すぅ、と視界が閉じた。ほんの一瞬、ロバートの姿が見えた、気がした  
 
…完全に気を失ったユリを見下ろし、山崎は満足げに笑う。  
梃子摺らされた。その思いが山崎を苛立たせた。  
みぞおちとその直ぐ上、恐らく急所だろう。ひどく痛む。  
顎も同様で、諤々になっていた。数日後に更に痛み出すだろう。  
よく立ち上がることが出来た。不思議に思う。  
KOF。  
この大会に出てから自分の能力が格段に上がった様な気がする。  
以前の自分であれば、あの強烈なアッパーの後、立つ事は出来なかっただろう。  
強くなっている。その事実に歓喜する。口が開き、邪に満ちた笑みが浮かぶ。  
 
ズキリ、と顎が痛んだ。  
こんな小娘に梃子摺らされた屈辱を思い出す。  
倒れているユリの体に目を向ける。  
大きいわけではないが、女を主張する膨らみ。  
ピッチリと、汗を含み、脚線と女特有の丸みを見せるスパッツに欲情を覚える。  
(楽しませてもらうか。)  
唇を少し舐め、気絶したユリの力の抜け切った腹部を  
 
「起きろ!ゴラァ!!」  
 
蹴り上げた。  
 
…腹部に物凄い衝撃を受け、急激に覚醒させられる。  
呼吸が整えられないまま回りを確認する。目の前に山崎が立っている。  
 
(えっ?私、気絶してた?)  
 
自分が気絶していた事を知り、体勢を立て直す、が、体力が回復したわけではない。  
膝立ちになるも、立ち上がれずに山崎に顎をつかまれる。  
山崎の顔が近づいた。  
 
「手前のせいでよぉ、顎が諤々になっちまったぜ!」  
「お返しをよぉ、くれてやる!!」  
「ぎいぃ!!」  
 
顎を掴んだ腕の力が強まる。  
ぎりぎりと、締め付け、力を下方向へ掛けた。  
カクン、と顎の力が抜ける。  
 
「はがっ、ふぁおはぁ!!ふぁおはぁぁ!!」  
(痛っ、顎がぁ、はずされ…た。)  
 
顎の間接が外された。山崎は大きく開いたその口腔へ指を差し入れ、  
顎の痛みに混乱し蠢くその赤い舌を掴み取った。  
捕らえた其の舌を強く握り、口腔から口外へと引きずり出す。  
指に舌を押しつぶされる痛みに顔を顰めながらも、山崎を睨み付ける。  
しかし、その眼光の弱々しさは隠せず、ただ、山崎を苛立たせるだけだった。  
 
「手前がよぉ。先刻何つったか、覚えてるか?」  
「いがぁ、ふぁ、があ、いっ!」  
 
舌を更に強く握る。  
 
「よゆうっち、とか!言ってくれたなオイ!!」  
「いっぎぃぃぃぃぃ!!ぎいぃ!」  
「もう一度言ってみろや!」  
 
その引きずり出された舌に、ドスの白刃が当てられる。  
恐らくは何人もの血を吸ったであろうその刃は鈍く輝き、  
ユリの舌を切り落とすのに、何の躊躇いも無いように感じた。  
恐怖に目が開く。  
プツッ、小さな音を立て、ドスの切っ先が僅かに埋まる。  
 
「!!!!!ッ、がっ、あ、ああ。」  
「動くと切れるぜ。」  
 
涙が溢れ視界がぼやける。小さな痛み、刺された事のショックを抑え、  
体を動かさない様にする。体が震えだす。  
 
(コイツ…刺す…の?私を、殺…)  
 
体の震えを止めようとする。恐怖を抑えようと必死になる。  
勇気を振り絞り、山崎を睨もうとする。  
しかし、震えは止まらない。  
恐怖は留まらず、勇気は溢れない。  
睨もうとするその眼光は、先刻より弱く、許しを請うようにしか見えない。  
その全てを捉え、山崎は笑い、ドスを離した。  
立ち上がりボトムのファスナーをさげ、既に大きく屹立したその肉棒を  
ユリへと差し出した。  
 
ユリは、その怒張からあわてて目を逸らす。  
顔が火照るのが分かった。心臓の鼓動が早くなる。  
この事態になる事を想像しなかった訳ではない。  
只、それを認めたくなかった。  
ユリの慣れぬ反応に興奮を覚え、その恥辱の一言が山崎から発せられた。  
「咥えさせてやる!」  
その言葉を確認することも出来ず、ユリのその閉じることの出来ない  
口腔へと、その怒張が喉まで突き入れられた。  
男性器を口に含まされた事の嫌悪感に震え、喉を圧迫する性器に呼吸が出来ない。  
「ぐう、むうぅうぅぅ、おぐむ、んんん!!」  
(呼吸が、息が、できないよぉ。苦し、)  
頭を掴まれ、逃げられぬ様に固定された状態に混乱する。  
「苦しいか?」  
「んっ!」  
必死で頷く。  
「終わらせたきゃ舌を動かしな!」  
何を言われているか、考えてる暇などなかった。羞恥を感じる暇も。  
ただ、自分の口腔を圧迫する異物から解放されたかった。  
ガムシャラに舌を動かす。  
喉の奥で山崎の肉棒が締め上げ、その幹は稚拙だがガムシャラな  
舌技に擽られる。  
快感に山崎の顔が緩んだ。絶頂が近づいていた。  
乱暴に髪を掴み、腰を打ちつけ始める。  
「うむんんんんんんん!!!おげぇ!んむ、ぐううぃぉ!」  
「ぐおぉ!」  
山崎が呻き、腰を更に押し付け、精液が吐き出される。  
大量の精液が直接、胃の中へ流し込まれていく。  
 
ビクビクと震えながら間断なく流し込まれ、ユリの呼吸も限界に達する。  
羞恥と、それ以上の呼吸困難により真っ赤に染まっていた顔が  
少しづつ、青黒く染まる。  
(もっ止め、離して、息が、死ぬ、死ぬぅ)  
限界、意識の失われるその瞬間、  
ぐぽっ!  
口腔を圧迫していたモノが引き抜かれる。  
悲鳴を上げていたユリの肺が呼吸を求め、暴れる。  
「ひ、ひゅうぅ、がはっ!はぁはぁはぁ、はう、」  
「くく。見れた顔じゃねえなぁ。」  
涙、鼻水、涎、でグシャグシャになって必死に肺に酸素を送り込もうと  
必死になっているその様は、ユリの整った顔を大きく歪ませていた。  
ただ一つ、涙に溢れた瞳の奥に微かに光る反抗の色が  
彼女の格闘家としての誇りを守っている様に見えた。  
顎を外され、強引に精液を流し込まれ、其れでもまだ反抗の色を  
見せるユリに、山崎は無意識に笑いがこぼれた。  
 
徹底的に『壊す』。  
 
どす黒い感情のまま、ユリの顎へと手を伸ばし掴む。  
グキン。鈍い音。それがユリが言葉を取り戻した合図だった。  
 
 
…鈍い音。自分の言葉を取り戻した合図。  
しかし言葉を発することが出来ない。  
肩で大きく息をしているのが精一杯でこの男に何も言えない自分が  
腹立たしい。  
(あんな、事を…くやしい、よぉ…)  
 
グスッ。  
鼻を啜る。息苦しさからの涙から、屈辱と羞恥の涙へと変わる。  
自分のあの男を睨む目は弱くなっているだろうか?  
胸倉を掴まれ持ち上げられる。その逆手でユリの汗を含んだスパッツを  
下着毎、膝まで擦り下げる。  
「なっ!いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!」  
脚をバタつかせ抵抗するが、膝で止められたスパッツで思うように抵抗できない。  
そんなユリに構わず、山崎はその恥丘を、そして其処に密やかに根付いた  
恥毛をまじまじと観察し始めた。  
「やめてよ!何見てんのよぉ!うっ、うぅぅ、ぐすっ!」  
この男は、自分を徹底的に侮辱する。  
涙が止まらなくなる。  
どさっ。  
地面へ投げ出される。  
脚とスパッツを掴まれ、動きを制されたまま、まんぐり返しへと  
固定される。  
ユリのその秘部が、山崎の目に曝け出される。  
汗で肌に張り付いた恥毛、その下にユリの年齢からすれば  
何処か幼い、硬さを残す女性器が晒される。  
「う、うわあぁぁぁ!やぁ、ま、まだ、グス!誰にもぉ、うぅ、」  
「ああ、道理でなぁ。ガキくせぇマ○コだと思ったぜ。」  
無遠慮に、ユリの秘部へと指を這わせる。  
その乱暴な手付きに顔を顰める。  
「いだあぁ、イッッ!!」  
(もうやだよ。なんで?コイツにやられるの?犯され…る?)  
(私の…初めて、処女が…コイツに?)  
(いや…だよ。やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ。)  
思考がとまる。そんなユリを嘲笑うかの様に山崎がその一言を発した。  
「挿入れるぞ。」  
短い、現在のユリにとって、最も残酷な言葉。  
「ひぃ!」  
山崎の少しも衰えていない怒張が、ユリの未成熟な秘部へと近づけられる。  
 
「……やめて、」  
「ああぁん?」  
「やめて…ください。お願い…します。」  
それへの恐怖が頭を走る。止まらない。  
「やめてください!は、初めてなんです!シタ事ないんです。  
し、処女なんです!怖いんですぅ!初めてはぁ、  
好、好きな人にあげたいんです!!好きな、人にぃ、うぅ」  
「いいじゃねえか。くれてやれよ。」  
光が見えた。気がした。山崎のその次の言葉までは。  
「俺の使い古しをよぉ!!」  
強引に、その濡れてもいない秘所へ、山崎の怒張が捻じ込まれた。  
「いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」  
「いだいぃぃぃぃぃ!!痛いよぉ!!」  
キシキシと音がする様に、山崎の肉棒が自分の中へと入ってくる。  
痛みと嫌悪感にユリの全てが悲鳴を上げる。  
悲鳴が、痛みに耐えようとする顔が、溢れる涙が、それらは全て  
山崎の快感へと変わる。  
昂った山崎が更に激しく腰を動かす。  
それに合わせ、ユリの秘所から粘膜が排出され始める。  
「濡れ始めてんじゃねえか。このド淫乱が!」  
 
傷つけられぬ様、人体が判断し快感とは別の粘膜。  
人体の当たり前のシステム。山崎もそれを知っていた。  
ただ、ユリに屈辱を与えるため、口汚く罵る。  
ユリには、その思惑を見抜くことが出来なかった。  
(なんで、濡れるの…?)  
(気持ちよくなんて…無いのに…)  
(こんなヤツに…痛いだけなのに!!)  
(もう…いやだよ…。)  
山崎の腰が素早く、小刻みに動かし始める。  
痛みも合わせて、素早く、小さく、ユリを襲う。  
「いぃぃ、痛いぃぃぃ!!!止めて、ひぎぃぃ!!もっと、ゆっくりぃ!」  
「ひぃ、グズッ!死ぬぅ!死んじゃうぅ!!」  
「出すぞ!くれてやる!手前に!俺様の精液を!!」  
耳を疑う。  
(中に?何を?…精液?)  
山崎が小さく痙攣し、腰を一際突き上げた。  
ドクドクと、自分の中へ、何かが流し込まれた。  
「いやぁ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!  
な、中にぃ、精液…赤ちゃ…出来ちゃう。」  
目の前の下卑た顔が笑う。  
「止まらねえなぁ。こりゃ確実に種ぇ、仕込まれんなぁ」  
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!いやだぁ!妊娠…したくない!  
やめてよぉ!!うあぁぁぁぁぁぁ!!」  
堪えろと頭の何処かで声がしたような気がした。  
泣き言はこの男を喜ばせるだけだと。  
それに従えない自分を、不甲斐ないと思うことは、もう出来なかった。  
 
再び、山崎が腰を動かし始め、ユリの中を抉り始めた。  
 
「ぐうぅッ!」  
もう何度目になるだろう?  
再び、山崎がユリの中へと放出した。  
しかし、ユリがそれに反応することは無かった。  
うつろな瞳は宙を見つめ、体は山崎を受け入れるが、これも反応が無い。  
山崎がユリから今だ衰えぬ怒張を引き抜く。  
ゴポリ。  
そんな音を立て、注ぎ込まれた精液が逆流する。  
軽く息を吐き、人形のようなユリへと目を向ける。  
これ以上は無理だろう。ユリの精神が完全に壊れかねない。  
「今日の所はな。」  
ニヤリと笑い、懐からピルケースを取り出し、その中のアンプルと  
注射器を用意する。  
「最高級、高純度の『オクスリ』だ。」  
力無く垂れ下がるユリの腕へと、注射器の針を近づける。  
一人の人間を破滅させかねない薬を、何の躊躇も無く投与する。  
プスッ。  
「う…?」  
小さく反応する。今はそれだけ。  
徐々に反応を示すだろう。  
この女で稼ぐ。KOFの出場選手だ。大抵の好事家は飛びつくだろう。  
調教し、ビデオを撮影し、売春させるか、それとも売り払うか?  
「うあぁ!」  
薬の効果が出始めたのだろう。  
ユリの体が反応を始める。  
そんなユリを担ぎ上げ、山崎は『その手』の知り合いにユリを渡すため  
移動を始める。  
「稼いでもらうぜぇ。手前にはよ」  
ニヤリと笑う。  
その蛇の様な目が、冷たく月を映した。  
 
 

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