…自分が地面に倒れている。  
ユリがその事実に気付くまで数瞬の時を必要とした。  
恐らく攻撃を食らったであろう部位より、全身、  
そう指の先まで痛みが染み込んでいる。  
集中し、気を練る事も出来ない。  
ただ、敗北したと言う事実。  
これから起こる『何か』に絶望を覚える。  
 
敗北した。それが信じられなかった。  
ただ、道を歩いていただけ。  
ファンと名乗る男に握手を求められ、それに応じた。  
手を軽く握り返したその瞬間、腰から下の力が抜けた。  
体を崩された。  
柔の類だろう。しかしその後が分からなかった。  
正中線の何処か、秘中か胸尖か?  
強打されたのだろう。体が動かなくなった。  
何も出来なかった。  
不意打ちだ。仕方が無い。そんな言い訳が頭を回る。  
(悔しい。悔しいよぉ…)  
涙があふれて来る。立ち上がろうと力を入れるが、  
体はユリを裏切り続けた。  
 
「ユリ・サカザキ。」  
男が懐から出したメモ帳を読み上げる。  
「極限流師範代坂崎琢磨の長女。  
格闘経験が無かった17歳、『B』の組織によって拉致。  
坂崎琢磨の長男リョウとその友人、ロバートガルシアに  
よって救出される。  
事件後、父の指導により極限流をわずか一年余りで習得。  
素質、成長率共にA。」  
読み終え、男は小さく笑った。  
「素質、成長率が優れていようと、鍛錬を重ねる事をしない。」  
男の笑いが少しずつ、大きくなっていく。  
「KOF2回戦、君には休場していただく。」  
ふう、と小さく息を吐いた。  
「大きな金額が動いていてね?ウチのボスが君たちを邪魔と判断した。」  
男が後ろへ振り向いた。  
いつの間にか数人の男達がいた。  
「運べ。」  
その短い指令を、男達は忠実に実行する。  
「君はそれ以外にも、一つ稼いでもらおうかな。」  
男の言葉の意味する所、それを知りユリの絶望は膨れ上がった。  
「い、いやだよ。いや、いやあぁぁぁぁ!!」  
 
泣き叫ぶユリの口に、男の一人が布を当てた。  
意識が遠のいて行く。  
あの男の声が聞こえた。  
「君が格闘をすることは2度と無い。仲間たちに再会す…」  
全てを聞き取れず、ユリの意識は眠りの闇へと沈んだ。  
・  
・・  
・・・・・  
「うっ、うう…」  
眠りから、覚醒する。  
薄暗い、何処かの倉庫だろう。  
何人かの人影が自分の周りを囲んでいた。  
 
「おい!目を覚ましたみてえだぜ。」  
「漸くかよ。待ちくたびれちまったぜ。」  
「目ぇ覚ましたら好きにしていいってんだろ。」  
 
男達が口々に好き勝手なことを喋る男たちに、恐怖を覚えながら  
ユリは部屋を見渡す。  
あの男はいなかった。  
(こいつらだけなら…逃げられる。)  
そんな希望。  
それすらを男達はすぐさま刈り取った。  
 
「逃げられるとか思うなよ。隣の部屋には、あの人が居るし、  
俺達は少しでもやばいと思ったら、発砲する。」  
「ユリちゃんと遊べなくなるのは、残念だけどよ。  
逃がさねえっつうのが、俺たちの仕事。そのついでに  
稼いでもらおうって訳だ。」  
 
自分の体が、第一の目的ではない。  
逃げようとすれば、躊躇無く発砲する。  
それが、ユリの恐怖を増幅させていく。  
 
「あ、あたしがいなくなったって分かれば皆が…」  
 
口が渇く。  
歯が噛み合わずに震える。  
(そう、皆が探してくれる。舞さんが、キングさんが、  
それに、お兄ちゃん、ロバートさん…)  
 
そんなユリの言葉を聞こうともせず、男達はユリに迫り、  
その身を包む服を剥ぎ取り始めた。  
 
「いや、いやだぁ、この、やめ、やめてよぉ!」  
 
まだ力の戻らない体で必死の抵抗をするユリ。  
その弱弱しい抵抗は、男達を苛立たせた。  
 
ゴヅッ!!!  
 
鈍い音と共に、頭が右に振られる。  
殴られ、目から火花が飛んだ。  
 
「ひぎっ!痛い、痛いよぉ!」  
 
気を練る。  
それが出来ない今、ユリはただの非力な女でしかない。  
痛みが直接脳に至り、それを全身に伝え、  
ユリの精神にひびを入れる。  
 
男がもう一度、腕を振り上げた。  
 
「ひっ!やめて、やめてください。お願いです。抵抗しないから  
言う事聞くから、だからっ」  
 
ゴッ!!!  
 
男は無言でユリの言葉を拳で遮った。  
三度拳を振り上げる。  
 
「うえっ、やめてよぉ。逆らわないって言ったじゃない。  
言うこと聞きますからぁ。ぐす、なぐらないでよぉ。うえええぇぇん!!」  
 
僅かに残ったプライドをかなぐり捨て、泣き出したユリに  
男達から小さく失笑が漏れる。  
心が折れたその瞬間。  
男達の勝利は確定し、ユリの行く末は固定された。  
 
泣きじゃくるユリに男が近づいた。  
 
「ひっ!!」  
 
身を縮めるユリに、男はゆっくりと言葉を吐き出した。  
 
「お前が逆らったり、抵抗する度に2回、お前を殴る。  
無意識に抵抗しても、逆らった後即座に謝ったとしても、2回殴る。」  
「わかったな?」  
「ひゃ、ひゃい、分かりました。だから、だからぁ、」  
「逆らわなければ殴らない。約束する。」  
 
男が僅かに微笑む。  
信用するしかない。抵抗せず、逆らわず、男達に媚を売る。  
(それしかないんだ。)  
ユリの思考は固定した。  
既に戦い、脱出するという選択は出せない。  
(この人達の言うことを聞いてれば殴られない。)  
(きっと褒めてくれる。それからお願いすれば聞いてくれる。)  
(ユリはいい子だったから、帰って良いよって。そう言ってくれる。)  
(きっと。きっと!!)  
 
自分の希望は現実になる。  
そう信じ込んだユリは、もう逆らう気は無くなった。  
恐怖は消えないが、それが最善の手と信じ込み男達の指示を待つ。  
 
気付くと男の一人が、カメラを担ぎユリに向けた。  
 
「さて、それでは格闘家ユリちゃんの転落日記の撮影を開始しまーす。」  
「最初に、ユリちゃんに幾つか質問をします。」  
「ユリちゃんは嘘偽り無く、質問に答えてください。」  
「今回ユリちゃんには、わが組織の尋問道具、嘘発見器を  
装着してもらいます。」  
 
何人かの男達が、ユリの頭・両腕に器具を取り付ける。  
 
「じゃあまずテスト。ユリちゃんは俺達が憎い。」  
「えっ、いえ、いいえ。」  
 
咄嗟に考え、男達の機嫌を損ねない答えを出した。  
その瞬間。  
 
ギャヂヂヂヂヂヂヂ!!!!!  
 
「ぎい!ああああああ!!ぎゃあぁぁぁ!!!」  
「止、止めて、止めでぇぇぇぇぇ!!」  
 
男が手を上げると電流が止まる。  
 
「分かったかなユリちゃん。嘘はつくなよ。」  
「は、はいぃぃ…」  
「それでは、ユリちゃんは処女か?」  
 
一瞬羞恥で頭が一杯になった。  
だが、先ほどの電撃をもう一度食らうかと思うと、体が震えた。  
 
「ち、違います。非処女です。」  
「じゃあ、何時膜は破れたのかな?」  
「ハ、ハイスクールに進学してからすぐです。」  
「相手は?」  
男はペラペラとメモ帳をめくり、何かを探す。  
 
「ロバート・ガルシアか?」  
「ち、違います。クラスの男の子で、その、ロバートさんとは  
そういう感じで無くって、あの、」  
「経験人数は?」  
「えっ!!あ、ああの…7人……です。」  
 
男達がざわめき、失笑する。  
「オイオイ」  
「その年にしちゃ多すぎだろ。」  
「遠慮するこたねえな。ヤリマンじゃねえか。」  
男達の失笑に赤面するユリ。  
そんなユリ相手に質問が続く。  
 
「オナニーは?」  
「えっ?」  
「週何回だ?」  
「ッッ!いっか、2回、ひぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」  
 
ギャヂヂヂヂヂヂヂ!!!!!  
 
「ひぎいぃぃぃ!!4か、4回ですぅぅう!4回オナニーしてます。  
4か、4回ぃぃぃぃぃぃ!れん、練習の後とかぁ、し、ひぎっ!  
試合の後とかえ、エロい気分に、気分になるからぁ!  
だから、だからぁ4かいいぃぃなんです。  
うそじゃ、ないれすぅぅ!う、嘘じゃ、  
止めでえぇ!!止めでええええぇぇぇぇ!!!!」  
 
ぷしゃあぁぁぁぁぁ!!  
耐え切れずユリは失禁した所で男が手を上げ、  
電撃を止めさせる。  
 
「嘘つくんじゃねぇ!この豚がっ!!」  
「次は止めねえぞ!!そのまま死んじまえ!!!」  
「あ…ぎいぃ…ひ、っひぃ……」  
 
激昂する男を制止、一人がユリに歩み寄る。  
顔を顰め、全員に向かい手を振る。  
 
「気絶してる。暫くは目覚めそうにねぇぞ」  
「マジかよ。オイ!またお預けじゃねえかよ!!」  
「何やってんだ!馬鹿!」  
「豚が嘘つくからじゃねえかよ!!おれのせいじゃねえ!!」  
「落ち着けよ。取り合えず豚が目覚める前にメシにしよう。  
目覚めてからたっぷりと、遊べばいいじゃねぇか。」  
 
口々に不満を垂らしながらも、男達は休憩に入る。  
ユリにとっての地獄の第一歩が、漸く踏み締められた。  
 
 
ユリが目を覚ました時、その四肢は  
安物のパイプ椅子に縛り付けられていた。  
きつく縛り付けられてはいない。  
ただ抵抗する気を無くしたユリには、それで十分だった。  
強制されたその四つん這いの体勢を、ユリは受け入れた。  
力無く項垂れる。  
 
(…何でこんな事になっちゃったんだろう。)  
(あの時でさえこんな事されなかったのに。)  
 
あの時、『B』の組織によって拉致されたあの時、  
監禁はされていたが、こんな暴行を受けることは無かった。  
Mr・BIGは、父タクマを『使う』ため、自分を傷付ける様な事はしなかった。  
しかし今回は違う。  
さっきの様に自分を弄ぶだろうし、自分を解放する心算は  
…無いのだろうか。  
現在の自分の置かれている境遇に体が震えた。  
 
(…大丈夫だよ。お金、賭けてるって言ってた。)  
(私のチームが負ければ、きっと…解放してくれる)  
 
チームメイトの顔が浮かんだ。  
 
(皆、私の事探してるよね。舞ちゃん、ご免ね。)  
(KOF張り切ってたのに…)  
(お兄ちゃん…ロバートさん…)  
(私……)  
 
「君のチームは失格になったよ。」  
 
男の声がした。  
慌てて顔を上げる。何時の間に其処にいたのか。  
あの男が、立っていた。  
悠然とユリを見下ろし、言葉を続けた。  
 
「メンバーの欠員に寄る不戦敗。」  
「君のチームメイトは必死に君を探している」  
 
言葉を切る。  
 
「君とは、正面から闘ってみたかった気もする。」  
「ただ、君が……」  
 
言葉を切り、男が振り返った。  
一人男がドアを開け、部屋に入ってきた。  
 
「ハンザキさん。パデットさんが呼んでます。」  
 
男、半崎は、小さく息を吐いた。  
半崎の癖だろう。「すぐ行く」と短く答えた。  
 
「あの、それで、この女は…」  
「ああ、好きにして構わない。」  
 
ユリの絶望を更に深める言葉を残し半崎が去っていった。  
 
「な、何でぇ。負けたんでしょ?私の事、解放してくれないの?  
だ、誰にも、喋らないからぁ、ここから出してよぉ…」  
「うるせえ!少し俺と遊ぶんだよ!」  
 
へへへ、と男がだらしなく笑い、ユリへと近づいてくる。  
泣き叫び、抵抗したかった、が、そんなことをすれば  
また、殴られるだろう。  
そんなのは御免だった。  
 
「あ、あの、殴らないでね。私、いい子にするから。」  
 
引き攣った笑みを浮かべ、精一杯媚を売る。  
殴られぬよう、身を縮め、自分の雌の部分を押し出す。  
男はそんなユリに、答えずに、  
四つん這いになっているユリの後ろへと進む。  
 
 
パシィィィィィィィィン!!  
 
「ひっ!!」  
 
ユリの尻を目掛けて、平手を打ち下ろす。  
 
パシィィィィ、バシィ、パシィン、パシ、バシィィィン!!  
 
休むことなく何度も続けて打ち下ろされる平手。  
殴られることに比べれば痛みは少ない。  
肉体の痛みより、精神。  
それを痛めつけられていく。  
もう、限界だった。  
 
「いっ痛、痛いよぉ、グスッ、痛いよぉぉ!!  
やめてよぉ、お尻叩かないでぇ!うえぇっ…  
私にHするんじゃないのぉ?変だよ!もう叩かないでよお!  
殴らないでぇ!犯してよぉ!!ぐすっ、痛いのもういやあぁぁ!!  
普通にしてよぉ。何でもするからぁぁ…ううっ。  
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」  
 
赤くはれ上がった臀部、泣きじゃくるユリ。  
それは男にとって、最高の興奮を与えた。  
男は屈み、ユリに顔を合わせ、精一杯の笑顔と猫撫で声で  
話しかけた。  
 
「なあ、ユリちゃん。もう痛い思いしたくないよなぁ。」  
「ぐずっ、やだよぉ、叩かないでぇ…痛いよぉ。」  
「じゃあ、痛くなくなるおクスリをあげるよ。」  
 
男が注射器を取り出し、ユリに見せ付ける。  
ユリは涙で溢れた瞳で注射器と男を交互に見詰める。  
既に思考が働かなくなっている。  
 
「これさえ打てば、痛い事は無くなる。俺達とも仲良くできる。  
そしたら外に出れるかも知れないよ?」  
「痛く…なくなる?」  
「そう。」  
「…仲良く?」  
「なれるとも!」  
「外に……出れる?」  
 
(…なんだ。簡単なんだ。おクスリ貰って、この人達と仲良くなって、  
それだけで外に、皆に…)  
 
男に顔を向ける。  
目が合うと軽く微笑む。  
 
「…下さい。」  
「ん?」  
「…おクスリ打って下さい。」  
 
男が微笑んだ。  
悪魔の微笑み。ユリがそれに気づく事は無い。  
 
「舌を出せ。」  
 
男の言うとおり、舌を出すユリ。  
注射器が曝け出された赤い、その舌へと近づき、  
 
プスッ。  
 
その痛みに顔を顰めるユリ。  
針が刺さり、その液体がユリへと注ぎ込まれていく。  
数秒後、その症状が現れた。  
舌が燃える様に熱くなり、痺れる様な感覚が舌を中心に  
全身へと広がり始める。  
舌を動かす。  
それだけで、全身を快感の小さな波が広がっていった。  
 
(何これ?気持ち良い?し、舌が、舌がぁ!  
わかんない。何で?舌が!)  
 
その感覚に驚きを隠せず、男に救いを求めるように  
視線を向ける。  
その涙と鼻水を垂れ流し、恍惚とした表情のユリを眺め、  
男は無言で己が怒張した肉棒を、差出した。  
 
「咥えろ。」  
 
躊躇など無かった。  
顔の前に突き出された肉棒に、しゃぶりつき、  
その小さな口に収まった男の熱き欲望の塊に  
その快感を生み出す赤い小さな舌を必死に擦り付ける。  
 
「んっ!ぷぁっ!んう!…ジュパッ!」  
 
部屋中に淫猥な音を響かせ、激しく舌を動かし快感を貪る。  
舌を擦り付け舐め上げる度に、ユリの体は小さく痙攣した。  
亀頭に舌を押し付け、男の尿道へと舌を差し込む。  
 
「うおっ!射精すぞ!」  
「うぶぁ!射精してぇ!精液ぃ。顔に!舌に!舌にのせてぇぇ!!  
イカせて。イカせてぇぇぇ!!」  
 
ぶびゅ、ぶびゅう、どぷ、どびゅうぅぅぅ!!  
 
男はユリの口から射精を始めた肉棒を抜き取り、  
その顔を目掛けて精液をぶちまける。  
その大半は大きく開いたその口へ注ぎ込まれ、  
精液が舌に当たる度、ユリの体は痙攣し、大きな絶頂の波が  
ユリを襲った。  
 
「うぶっ!ぷあぁ!イクぅ!イクぅぅぅ!!  
気持ちいい!もっと舌にかけりぇぇ!精液のせて。  
何度でも、私の口に突っ込んでぇ!気持ち良いよぉ!舌がぁ!!  
私に精液かけてぇ!!精液!!精液いぃぃぃぃ!!!」  
 
大量に降り注ぐ精液を、顔と舌で受け止め絶頂を繰り返す。  
もはや人間の尊厳すらかなぐり捨て、精液を求めるユリは  
既に人間の扱いをされない。  
 
その顔は、精液の受け皿でしかなく、  
その体もまた、男達の欲情を誘い、欲望を受け止める肉でしか  
なくなる。  
パイプ椅子に四つん這いで固定されたユリ。  
その様相は、ただ精液を注ぎ込まれる肉の塊。  
精液専用の肉便器。  
やがては何も考えず、男達が溜まった精液を排泄しに来るのを  
じっと待ち続ける便利な穴。  
そんな風に男はユリを作り上げていく。  
 
全てを出し終え、男は一息をついた。  
新たな性感帯での絶頂の余韻に浸るユリを眺め、  
男は満足げに微笑んだ。  
やがて他の仲間も来るだろう。  
それまで少し休もう。  
男はその場に座り込んだ。  
 
・・・・・  
・・・・・・  
・・・・・・・・・・  
『先日19日に行方不明になったK.O.F  
出場選手ユリ・サカザキ選手の行方は今だ分かりません。  
当局は誘拐の疑いがあるとして対策本部を設置、  
その行方を全力で』ブツッ!  
 
テレビが消された。  
その薄暗い部屋で、男は小さく息を吐いた。  
ただ、それだけ……  
 

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