RRRR……
電話が掛かってくる。秋人はなんとはなしに受話器を取った。
「This is Hayama」
「ぷはははは! なにがディスイズよ。にあわねー!」
突然の笑い声と罵倒が聞こえる。すぐに誰だかわかる。
「わっちゅあねーむぷりーず」
「うっさい。私私♪」
「どうしたんだこんな夜中に」
ロスは既に深夜あたりであった。
「いやー聞きたいことがあって、そっちが夜の方が答えやすかなーって」
「ふーん。で?」
「えっとさ……羽山って私でオナニー…したことある?」
「ぶっ」
突然の質問に思わず吹き出す。
「い、いきなり何聞いてるんだよ!?」
「いやね、今相談のってる子にJちゃんっているのよ。その子がね好きな子思ってついつ
いオナニーしちゃうんだって。それでね、自己嫌悪みたいになっちゃうっていうから……」
「へー」
「でね……Jちゃんの気持ちわかろうと思って、あんたでやってみようとしたの」
「え…」
「でもね、すっごいドキドキしたけど恥ずかしくてやっぱり出来なくて」
「あ、あぁ」
「あんたはどうなのかなーって思って。あんたエロ大魔神じゃん」
「だれだ大魔神だ。あー俺はないな」
「そ、そうなんだ……」
「おめーの色気のないボディじゃ勃つものも勃たん」
「お……おーっ?! おめー自分の彼女になんてこというてけつかるかなー!?」
「事実だ」
「こ、こいつは……」
「ただ……」
「ただ?」
「会ったらしようと思ってる事はいろいろとシミュレーション済みだ(キラーン)」
「あ、あんたはぁ…受話器ごしにキラーンって擬音聞こえたぞ!?」
「ふふ……」
「ちょ、ちょっとちなみに何しようとしてるのかお姉さんに教えてみ?」
「そうだな…まずは当然キスから……」
「ふんふん……」
「……なんかも結構いいかなって思ってる」
「う……それは無理…」
「出来るって……それで…」
「あーもー! 羽山のエロキングー!」
「んだよ。こんなの掴みだぜ」
「はぁ……さすが変態の国ロスアンジェルスに住んでらっしゃる……」
「想像した?」
「そりゃまぁ……」
「ドキドキしたか?」
「……今もすっごく」
「ひょっとしたら濡れてるかもな」
「え?」
「確認してみろよ」
「えぇ? 今?」
「あぁ」
「うう……」
うめき声を上げながら手をそっとパンツの中に入れてみる。この間試みた時とは
くらべものにならないくらい濡れていた。
(あぁ想像だけでこんなに……私って想像力たくましいのかな……。
とてもじゃないけど羽山には教えられない…)
「どう?」
「………ノーコメント」
「おめーそりゃ濡れてるって公言してるようなもんだ。そうか濡れちゃったか」
「濡れてる濡れてる言うなーっ!」
「俺が言ったことするの想像してそうなってるだよな?」
「そりゃまぁ……そうだけど……」
(うーだめだ。なんか今まで以上にどきどきしてる)
「そのまま触ってみなよ…」
「え?」
「恥ずかしくてできなかったんだろ? オナニー」
「今でも恥ずかしいって」
「でもまぁJちゃんの気持ちを考える上でもいいじゃん。一人じゃきっと無理だぜ?」
「それは……そうかも……だけど……」
「ほら。濡れてるんだろ? 濡れてるところ触ってみろよ」
「えぇ……なんかこんなのやだよ……」
そう言いつつも紗南の手がおずおずと自分の秘部へと延びる。
「んっ……」
「触ったか?」
「………うん」
「どう?」
「熱い……かも」
かもではなく十分熱くて濡れているのだがはっきりと言いたくない心境なのであろう。
「そのまま撫でてみろよ。俺がしてると思って」
「んぁ……だ、ダメだよ……羽山ぁ………」
「何がダメなんだ?」
「羽山が撫でてると思うと……なんかすごく……」
「感じちゃうんだ」
「………うん」
「俺に触られたいんだな」
「それはだって……興味ないわけじゃ……ないし…」
「俺も紗南の触りたい」
「ん……あ……だめ……」
自分の秘所が濡れておりそれを触っているのを悟られてるのがどうにも恥ずかしいと
感じながらも手がとまらない状況に戸惑いを隠しきれない。
「気持ちいいか?」
「あっ……んっ……気持ちいいよぉ……羽山ぁ…あっ」
「そうか……紗南エロい声でてるぞ」
そういう秋人の声もうわずっていた。
「だって……あっ……やっ……」
テレビの中ではもちろん、普段の会話でも聞けない紗南の艶やかな吐息に秋人も
興奮してきてしまう。
「俺も……紗南の声で興奮……してるかも…」
「ん……そうなの? あっ……それじゃ……勃つもの…勃った?」
「……あぁ」
若干の照れを含みながら秋人が肯定する。
「んふ……それじゃ……いっしょにしよ? オナニー」
「なんだかカッコわりーけど……」
そう言いながらも紗南の声に興奮が収まりきらなかった。自分のモノを出して
握ってしまう。
「ん……」
「羽山もしてる……?」
「あぁ」
「二人でオナニーしちゃってる……エロいね私たち……んっ」
「………」
二人の荒い吐息がお互いの鼓膜を刺激していった。
「あっ……んっ……んぁ!」
「くっ……はぁはぁ……紗南……」
「羽山ぁ……好き……だよ……羽山ぁ」
快感の高ぶりが言葉を紡ぎ、言葉が心を愛撫していく。
「紗南……俺もう……」
「羽山……イキそうなの?」
「あぁ……」
「いいよ……出して……んっ! あっ……」
「紗南っ」
射精感が限界にたっしてとっさにベッドよこにおいてあるティッシュに手を伸ばす。
びゅくん! びゅびゅびゅっ! びゅるるるっ!
ティッシュに覆われた途端激しい脈動と共に射精が始まる。
「ん……」
「羽山……出ちゃった?」
電話越しの秋人の射精を感じ取って聞く。
「あ、あぁ」
決まり悪そうに秋人が答える。
「そっか。気持ち……よかった?」
「わざわざ聞くな……」
「最初にいろいろ聞いたのそっちじゃん。私は羽山がイッて嬉しかったよ」
「…………」
(恥ずかしい。恥ずかしすぎる……。からかうつもりしかなかったのにまさかこんなことに
なるとは…)
「日本に帰ってきたら……さっきいったこといっぱいしようね♪ それじゃねー」
プッ
機嫌良さそうに電話を切った。
「あいつ……結局相談のことどうなったんだ……」
紗南が再びJちゃんの悩みについて思いをめぐらすのはしばらくしてからのことであった。