…きもちいい…いけない事をするのって、すごくすごくきもちいい。  
 
俺はおまえを強く抱きしめた。  
挑発に乗せられるなんて、バカのする事だと思っていた。  
だが、こんな余禄が付くならむしろ歓迎だ。  
仁木氏の挑発と、おまえの熱にあおられて、ストッパーがチリチリと焼き切れる。  
息も付けないほど深いキスをして、細い髪の毛に指を差し入れ、髪をすく。  
おまえはしらない。  
湧きでる冷たい泉にも、熱情が潜んでいる事を。  
 
ずっと、最後の一線を超えるのをためらっていた。  
それは、相手が17歳のコドモだからではなく、手に入れるのが怖かったからだ。  
一度手に入れたら、二度と手放せなくなる。…だが。  
大切な物を手に入れた瞬間に、誤って壊してしまったらどうすればいい?  
いつまでも続くと思っていた幸せが、足元からサラサラと崩れてしまったら?  
それは、砂漠で飢え乾いた人間に、一滴だけ水を飲ませる事に等しい。  
無くした時の喪失感…得た時の幸福が大きければ大きいほど、その反動も大きい。  
俺は永遠や運命を信じる気にはなれない。いつかは失う事を、覚えてしまったから。  
卑怯な理由を勝手につけて、まるで臆病者のように、ただ傷つくのが怖かった。  
表面は余裕を持ったオトナのふりをしていても、中身はまるでただのコドモだ。  
一番欲しい宝物を壊すのが怖くて、ショーウインドウから眺めるだけのコドモ。  
だが、おまえはそんな俺のココロの壁を、軽くとびこえて強引に内に滑り込んでくる。  
だれも、おまえを傷つける事はできない。  
ーーー降参する。  
おまえにだったら、傷つけられたい。  
 
「ん…せんせぇ…」  
甘い声。もっと聞きたい。だが、さすがにココで始めちゃ、焦った童貞野郎のようだと思う。  
しかたなく、俺はおまえを子供の様に腕に抱き上げた。  
 
「ひぁ!?先生?」  
「何でショ?」  
「なんでこの抱え方なんデスカー?せめてお姫様だっこをば…」  
「無駄。もうベットルーム」  
そう言って、俺はベットにおまえを降ろした。  
そうそう望み通りにはしない。どれだけおまえに夢中か、気付かせるなんてしたくない。  
「いいのか?俺はお前を抱くつもりなんだが」  
「…それこそ、あたしが一番望んでる事だよ…」  
強い光を秘めた眼で、おまえは俺を挑発してくる。  
まるでギリギリまで張ったピアノ線のように、互いの間に固く張り詰めた細い感情の糸。  
「途中でやめたりしないぞ。…泣いても容赦もしない」  
「いいよ…あたしに消えない証をちょうだい。先生だけのモノだという証を」  
おまえはいつもそうやって、無意識に俺から余裕を奪う。  
俺はおまえを、そのままゆっくり押し倒した。  
体が微かに震えている。  
いっそ今すぐ性急に、全て奪い取ってしまいたい。  
この世で一番大切な女。  
大切に、壊れないようにあつかいたい。  
一生他の男では満足できなくなるくらい、滅茶苦茶に狂わせてみたい。  
俺だけのモノだと印をつけたい。  
爪先や髪の毛の端まで、俺以外の事を考えないようにしたい。  
ーーーこんな事を考えていると知ったら、おまえはどんな顔をする?  
いや、たぶん、おまえはしなやかな強さを失わず、俺の全てを受け止めてしまうのだろう。  
頭の中で、ラヴェルのオンディーヌが鳴り響く。  
強すぎる熱を内にはらんだ妖精。  
愛しいひとの全てを欲して、自らすら滅ぼしてしまう水の精。  
蒼く澄んだ泉の中に、持て余すほどの激情がある事を…おまえはしらない。  
 
深く角度を変えて、何度も口づける。  
指で髪をくしけずり、耳をなぞり、うなじや背中を辿りながら少しづつ服を脱がす。  
一気に剥ぎ取ってしまわないのは、少しでも長く、おまえの全てを味わいたいから。  
ところどころ、弾けるような反応が返ってくる。  
反応した場所にキスを落として、服で隠れそうな場所には消えない証をつけていく。  
見ると、おまえはきつく瞼を閉じて、眉間にしわを寄せている。ヘンな顔。  
ぐい、と顔をこちらに向けさせる。  
「…眼、開けたら?」  
「むぅ…無理デス」  
「ふうん…。さっきはさんざ、ヒトの事挑発しといてねぇ…」  
くすくすと、わざと耳元で笑う。余計眉間にしわがより、真っ赤になるのが面白い。  
「そんな事でアンタ、これから先に進んでダイジョウブ?」  
とからかうと、大きい眼を見開いて起き上がった。  
「あ…あた、あたしだって、ちゃんとできるモン!」  
こんな反応が返ってくるから、俺はおまえをからかうのをやめられない。  
おまえの指が、ぎこちなく俺のシャツのボタンを外す。そろそろと肌を辿る指がふるえている。  
「…指震えてますヨ。もっと思いっきり触ってもかまわないですが?」  
むぅ、と恥ずかしそうに怒った顔で、おまえが俺のシャツを脱がしていく。  
おまえは下着姿のまま、俺の裸の胸を指でなぞり、思い切ったように舌を這わせてきた。  
小鳥がついばむように、胸や肩にキスを落としてくる。  
…端からみたら、エロオヤジがいたいけな娘さんを仕込んでるみたいなんだろな。  
とぼんやり思う。そのまま動きが止まった。  
うつむいたまま、これからどうすればいいのか考えているようだ。  
「ハイ、無理はその辺でやめたら?」  
と体を入れ替える。ブラのホックをプツリと外すと、真っ白い肌が目に痛いほどだ。  
薄い胸の頂きにある淡い桃色の尖りに、濃い色を与える様に嬲る。  
「…んくっ!…ふ…っ!ん…」  
一生懸命声を出すまいとしているのを見ると、もっと声を上げさせてみたくなる。  
隆起した胸の蕾。その先端を、舌と歯と指で強弱をつけて刺激する。  
 
もう片方の手で、背中や脇腹、みぞおちのくぼみをじわじわとなぞる。体が跳ねた場所には、舌先で舐め上げてから証をつける。  
雪のような肌に咲く、紅い花びら。俺だけが見る花びら。  
実は、キスマークを女に付けるのは初めてだ。  
今まで、そんなマネをするのは、下手糞か幼稚なオトコのする事だと思っていた。  
本気になった相手は年上の人だったので、幼稚なオトコだと思われたくなかった。  
遊び相手に痕跡を残す気はない。  
初めて所有の証を付けてみて、心が揺らぐほどの歓びを感じる事に驚く。  
俺がどれだけ、コイツに本気なのかを知る。  
いとおしい。くるおしいほど。あいしてる。かけがえのない。たいせつな。ひと。  
口に出したら陳腐になる言葉に変えて、ひとつひとつ証を刻む。  
そのたびに、押さえきれない声と跳ね上がる体。  
「…もっとちゃんと、声、出して。せっかく防音なんだし」  
「んふ…っ!…せ、せんせぇの…え…っち!…あぅ!…ひゃ!…んんっ…」  
下着の上からおまえの秘裂に触れると、濡れているのが良く判る。  
足を閉じないように押さえ込んで、指先で花芽をいじると一層声が高くなる。  
プレジャーズの香りに混じって、雌の匂いが微かに漂う。  
ーーー早く欲しい。  
しかし、このまま挿れる訳にはいかないのも知っている。  
初めての女は面倒だ。それが惚れた女に限っては特に。  
遊びだったら相手が痛かろうが関係ないが…できれば、おまえには感じて欲しい。  
俺と同じぐらいの快感を、感じて欲しい。  
俺はおまえの最後の下着を取り去った。ぴたりと閉じられた足。  
「…足、開いて」  
「ダメ。…は、恥ずかしいモン…」  
「時々大胆なマネする癖に、こういう時は恥ずかしいんだ?」  
涙目でコクコク頷くおまえ。  
いつもだったらおまえの涙に弱いのに、今日はもっといっぱい泣かせてみたい。  
「…じゃあ、服着てオウチ帰る?」  
「……それはイヤ」  
「じゃ、足開いて。閉じちゃダメだ…」  
少しづつ自分で足を開くのが、一層淫靡さをあおる。  
 
俺はそのまま、おまえの秘裂に顔を埋めた。  
「ひゃぁん!…せ、せんせ…ダメッ!…汚い…きたないよ…あうぅ!…」  
おまえの言葉を無視して、花芽を舐める。体が踊って、秘裂の奥から蜜が溢れてきた。反応を見ながら、内にも舌を差し挿れる。  
声が切れ切れに高くなりはじめる。もっと鳴けばいいのに。  
花芽を吸い上げたり舌で強く潰したりしながら、蜜がしたたる内壁に指を入れて慣らす。  
おまえの声が、段々すすり泣くように高くあがる。  
その耳にもよく聞こえるよう、水音を立てる。  
「…あぁん!…うぁ!…あぁぁぁ…せ…せん…せ!…も…やめ…てぇ!…」  
反応を返す内壁に向かって指を増やして刺激し、花芽を同時に舌でころがす。  
中から蜜がどんどん湧き出てくる。内側が収縮してきて、そろそろ限界が近い事が判る。  
蜜が血の色にならないのが不思議なくらい、入り口が真っ赤に充血して、もっと欲しいとふるえている。内壁の反応の良い場所を擦り上げると、一層甘い悲鳴が上がる。  
花芽に軽く歯をあてた瞬間、おまえの体がガクガク揺れ、ぐったりと崩れた。  
とろとろと蜜が流れ落ち、シーツを濡らしていく。薄紅に染まった肌が、いつもより…。  
「…大丈夫か?」  
頬に零れた涙を拭いながら、おまえを柔らかく抱きしめる。  
「…ん…だいじょぶ…」  
イッた後のけだるさを含んだ声で、粗い息を吐きながらぼんやりとおまえが答える。俺は自分のズボンと下着を脱いだ。ぐったりしたおまえに寄り添い、肌をあわせる。  
屹立した自分自身を秘裂にあてがって蜜で馴染ませると、抑えるようなくぐもった声が上がった。  
「…力、入れないで。…避妊はするけど、最初だけ…このまま挿れてもいいか?」  
おまえが頷くのを確認して、少しづつゆっくり沈めていく。  
途中、少し引っ掛かる感触があった。初めての印だ。  
なるべく痛くないよう、少しづつ馴染ませる。何度か馴染ませてから、ようやく再奥まで納めた。おまえの顔がゆがむ。  
「痛い?」  
「…ちょっと…だけ。…でも…あんまり、痛くない…みたい…」  
嘘つきめ。こっちがこんなにキツイのに、おまえが痛くないはずがない。  
 
少しだけ、反応を伺いながら動かす。眼で大丈夫か確認すると、おまえがコクリと頷く。  
徐々に徐々に激しく突き上げる。だんだん甘い声が出るだけになってきた。頃合いを見て自身を引き抜く。  
「…あ…」  
おまえのちょっと残念そうな声に、後ろ髪が引かれる。  
「…ちょっと待ってなさい。高校卒業前におめでた、なんて嫌デショ?」  
「…先生のコドモなら…欲しい、な…」  
「言うと思った。…嫌なんだよ、そーゆーの」  
ベットの脇の引き出しを漁りながら答えた。ゴムを見つけて振り返ると、おまえが泣きそうな顔をしている。  
「どうしたんでスか?お嬢さん」  
「…子供がコドモ欲しいなんて、おかしいって思ってるんでしょ?」  
ああ。いつも不安なんだもんな、おまえは。  
本当は俺にも不安な時があるなんて知ったら…いや、余計な事は言うまい。  
「お前が大事だから、変なキズ残したくないんだろうが。…そんなにスネないの」  
額にキスして、最大限の譲歩。  
あっという間に機嫌が直るのが、可愛らしいと言うか…。  
包装を破ってゴムを付けると、興味津々といった感じで見ている。  
「あの…あたし、やったげようか?」  
「駄目。これは慣れないヒトがやると、破れたりしちゃうから。ま、そのうち徐々に覚えてネ」  
クスリと笑ってからかうと、おまえは真っ赤な顔でにらみ付けてきた。  
「じゃ、仕切り直し…」  
組み伏せて、ゆっくりともう一度屹立したモノを納める。嬌声があがるのが耳に心地よい。  
「もっと…声、出して?」  
耳朶に唇を寄せて囁き、そのまま甘く噛む。恥ずかしがってる顔が、さらに自身を煽る。指先で、おまえの弱い所をなぞりながら動く。  
今度は、中を探りながら反応の激しい箇所を見つけ、そこを重点的に責める。  
おまえの腕が、背中に回ってしがみついてきた。甘い声と熱い吐息が部屋に満ちる。  
俺が動くと、おまえの水の音がする。  
もっともっと聞かせて欲しい。このままずっと、おまえの中にいたい。  
 
角度を変えながら責め続けると、段々おまえの中が収縮してくる。声も切れ切れに高くなってきた。終わるのを少しでも遅くしたくて、自分の昂った熱を御すようになだめる。  
「カエ…好きだ」  
そう告げると、中が一層キツク締まった。  
「ふっ!…せんせ…あた…し…もっ!…好き……ぃ!…」  
目が落ちやしないかと心配になるくらい、ポロポロとおまえから涙がこぼれる。  
好きだと何度もうわ言のように呟きながら、俺の背中に爪を立ててくる。  
そのまま、終わりへと向かっていく。  
このままもっとつながっていたい。終わりの無い場所へいきたい。  
俺がどんなにおまえを愛しているか…おまえをどんなに大切におもっているか。  
 
ーーーいとおしめばいとおしむ程。  
            このいたみを、おまえはしらない。  
<END>  
 

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