その日、寄生生物である田村玲子は、久しぶりに市役所に顔を出していた。  
といっても、彼女は別に市役所に勤めているわけではない。  
市役所で行われている寄生生物たちの「会議」に出席するためである。  
本来ならばもう少し体を休めておくほうが体にとっても良いのだが、  
あまり長いこと「会議」に参加せずにおいて、ほかの寄生生物たちに勝手なことを  
決められても後々面倒なことになりかねない。  
その辺は「広川」がうまくやってくれるだろうが、それでも監視の意味も含めて一応は  
話し合いに参加しておきたかった。  
 
きっちりと掃除された市役所の廊下を歩いていると、どこからかピアノの音が  
聞こえてきた。  
(・・・・?)  
ピアノは田村の知らない曲を時につっかえながら、ゆっくりと奏でられていく。   
(この脳波は・・・)  
田村はそのお世辞にも上手とはいえないピアノの音のするほうへ足を向けた。  
 
田村がその部屋に入っても、ピアノの演奏者は別段気にするわけでもなくピアノを  
奏で続けている。  
田村はその演奏が一段楽したと思われるときに声をかけた。  
「お久しぶりね、「後藤」さん」  
 
田村にそう言われ、後藤は首だけを田村に向けた。  
「・・・ああ、久しぶりだな。「田村」さん」  
「あなたこの前会ったときとずいぶん様子が違うわね・・・何かトラブルでも?」  
田村が知っている限り、「後藤」はもっとニコニコとした、愛想のいい顔であったはずだが、  
目の前にいるさっきまでピアノを弾いていた「後藤」は目つきが悪く、似ても似つかない  
容貌になっていた。  
「自分の運動性を確かめただけだ、問題ない」  
「そう・・・それならいいけど。それはそうとなぜ市役所の中にピアノがあるの?」  
「体の制御の訓練のためだ。「広川」に言って置いてもらった」  
(広川・・・どうも寄生生物に甘いような・・・)  
もっともそれを利用していろいろと計画を立てているのだが。  
 
「どうでもいいけど、スーツ姿でピアノを弾くのはいかがなものかしら」  
田村にそう言われると、後藤は自分の格好を見下ろした。  
「楽器を弾くのに格好など関係ないだろう。誰かに聞かせるために  
弾くわけでもないのだからな」  
「まぁそうだけど。それに誰かに聞かせられる演奏じゃないわね」  
「・・・下らんな、「田村」さん。訓練のために弾いているのだからうまい下手は  
どうでもいいことだ。それに慣れればいやでも技術は上がる」  
「そうね・・・ところで「会議」は?あなたは出席しないの?」  
「急な仕事が「広川」に入った。時間が少しずれるそうだ。あんたはもう少し「産休」だと  
聞いていたが、出席するのか?」  
後藤が手首をほぐしながら聞いてくる。  
「ええ、いつまでも休んでいられないしね」  
「そうか・・・本当に腹が平らになっているな・・・」  
後藤はそう言って、田村の腹を凝視した。最後に会ったときには、そこはかなり  
膨らんでいたのだが、今は何事もなかったかのようにへこんでいる。  
「あたりまえでしょう?もう産まれたのだから」  
大したことではないように田村は言う。  
「あんたも物好きだな・・・わざわざ人間の子供を産んで飼育するとは」  
「寄生生物に繁殖能力があるかどうかの実験の産物よ・・・まぁ、もうすこし  
育てないと実験体にもならないけど」  
田村はそう言いながら、ベビーシッターに預けてきた自分が産んだ  
赤ん坊の顔を思い浮かべていた。  
 
(結局本当にただの人間の子供だった・・・この寄生している体が年老いたとき、  
われわれは一体どうなってしまうのだ?)  
増えることもできず、ただ絶滅するのを待つだけなのだろうか?  
(それとも今後何らかの変異が起こり、寄生生物にも  
生殖能力が備わるのだろうか・・・)  
 
現に「泉」という少年の手に寄生した寄生生物には、何らかの変異が  
起こっていたという報告もある。  
(もしそうなら、「A」のように凶暴なだけの仲間より、優秀な仲間に生殖能力が  
備わるほうが種の未来のためにはいい・・・)  
 
例えば目の前でピアノを弾いていた「後藤」とか。  
何よりも「後藤」はほぼ全身が寄生生物である。そこから考えても、「後藤」に生殖能力が  
備わったなら、例え人間の女を「母」としても、寄生生物の仲間が生まれてくるかも  
しれない。  
(これも「実験」になるかもしれないな・・・)  
 
田村はパイプいすから立ち上がり、後藤の近くまで歩いてきた。  
「時に「後藤」さん、「セックス」をしたことがあるか?」  
「・・・そういう発言は「セクハラ」とやらではないのか?「田村」さん」  
後藤は体ごと田村に向き直り、睨むようにして言った。  
田村はその視線を受けてもまったく怯むことなく続ける。  
「「後藤」さん、試してみないか?」  
「何の意味があるのだ、そんな行為」  
寄生生物に生殖能力はないと証明したのは、他ならぬ田村自身だ。  
「そうね・・・「経験」にはなると思うわ・・・「食事」するときにこの経験を  
使う機会があるかもしれない」  
田村はそう言うと、ピアノの前に座ったままの後藤の足の間にひざまずいた。  
そのままズボンのチャックを下ろし、萎えたままの性器を取り出す。  
「止めろ」  
「別に噛み付いたりしないわ・・・それとも怖いのか?」  
挑発するような田村の言葉に、後藤はむっとしたように言い返した。  
「そんなわけがないだろう。ただ無意味なことを俺の体を使って  
やるのは止めろと言っている」  
「無意味じゃないわ。さっきも言ったでしょう?ちょっとした「経験」よ。  
怖くないなら少し黙ってて」  
そう言うと、田村は後藤の性器を口に含み、やさしく刺激を与えていく。  
後藤はそんな田村の姿をじっと見ていたが、やがておもむろに口を開いた。  
「そういえばあんたが産んだ人間の子供は誰の子供なんだ?」  
「ん・・・もう死んだ仲間との子供よ・・・彼とセックスするときも・・・こうやって・・・」  
やがて後藤の性器が十分に勃ち上がって来ると、田村は自分のスカートの中に  
手を入れ、スカートの中から下着とストッキングを脱ぎ去り。後藤の体に  
またがるようにして立った。  
「本当はもっといろいろやるのが決まりらしいが・・・別にいいだろう?」  
田村にそう問われ、後藤は無表情に頷いた。  
「ところでどんな感じがした?」  
田村自身も少し興味はあったが、何よりも「快感」を感じているかどうかを  
確認したかった。田村自身は感じたことはないが、性行為は特に雄に強い  
快楽をもたらすという話だった。  
(これで「快感」を感じてくれればしめたものだが・・・・)  
もしかしたら性行為の経験回数によって体質が変異するかもしれないのだ。  
そのためにも、性行為をするにあたって「後藤」が嫌がる理由は作りたくはなかった。  
「・・・別段不快、というわけでもなかったが・・・形容しづらいな。なんでもいいから  
早く終わらせてくれ」  
(不快ではない、か・・・)  
 
「分かった・・・そう急かすな」  
田村はそう言うと、ゆっくりと腰を沈めていく。  
「っ・・・すまないが・・・腰を支えてくれないか、「後藤」さん」  
後藤は特に反発するでもなく、言われたとおりに腰を支えた。  
一切慣らしていなかったので体は痛みを訴えていたが、田村は  
それを無視してさらに腰を沈めていく。  
やがて後藤の性器が全部入ると、田村はふぅ、と一度大きく息をついた。  
「・・・どんな感じだ?」  
もう一度同じ質問を後藤にすると、後藤は少し考え込むようなそぶりを見せた。  
「さっきとはまた・・・違う・・・変な感じだ・・・」  
(へえ・・・)  
これは・・・「見込み有」か?  
「そうか・・・では動くぞ」  
田村はそういうと少し強引に腰を動かし始めた。  
(やはり射精の瞬間が一番なのか?まあ、射精させればいいことか)  
 
「・・・くっ・・・う・・・」  
「・・・なんだ。ずいぶんと「可愛い」反応だな、「後藤」さん」  
「何だこれは・・・体が・・・おかしいぞ・・・貴様何か・・・」  
後藤は少し苦しそうな表情を浮かべると、田村の腰を支えている手に力をこめる。  
「少し痛いぞ、「後藤」さん。女の体はもっと丁寧に扱うものだ。それにそれは  
たぶん・・・「快感」だろう。どうも人間の雄は性行為で快感を感じるらしいからな・・・」  
「なんだと・・・俺が・・・人間と同じ反応を・・・うっ!」  
短く呻いた後、後藤は簡単に達してしまった。  
 
「・・・もう終わりか?意外と「早漏」だな、「後藤」さんは」  
田村はややぐったりしている後藤にそう声をかけると、事務的な  
手つきで後処理を始めた。  
 
「・・・「早漏」とはどういう意味だ?」  
「言葉の通りだ・・・「広川」に聞けばたぶん教えてくれるだろう」  
あえて言葉の意味を教えず、自分の身支度を調えていると、  
後藤が苦々しげに呟いた。  
「何事も慣れだ・・・今日は「経験」が足りなかっただけだ・・・  
慣れさえすれば・・・」  
「慣れさえすれば・・・何だ?私に翻弄されずに済む?・・・そう  
したいのなら「勉強」すればいい。「広川」あたりに頼めば「教科書」を  
貸してくれると思うぞ・・・一般的かどうかは分からないがね」  
無表情で何を考えているかよく分からない広川の顔を思い出しながら、  
さり気に失礼なことを言う。  
「さて・・・今日は疲れてしまった。「会議」には出ずにこのまま帰るわ・・・  
「後藤」さん、体調に何か変化があったら知らせて頂戴ね。それと、今度また  
やるつもりならもっと汚れても良いような格好にしたほうがいいわよ。クリーニング代も  
かかるしね」  
「待て・・・「広川」が教科書を持っているとは・・・?」  
「借りたかったら「エロ本貸してくれ」といえば貸してくれるんじゃないかしらね?」  
(このままセックスに興味を持ってくれたらいいのだが・・・)  
寄生生物を人間より大切にしている広川が聞いたら、それこそ卒倒しそうな台詞を  
後藤に教え、田村は部屋を出た。  
 
 

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