「・・・はぁ、はぁ。」  
 
一人の少女が蹲っていた。  
顔からは血の気が失せ、ずっと肩で息をしている。  
長い髪に隠れて表情は窺えないが、床に落ちた汗の水溜りは彼女の苦悶を如実に表していた。  
 
「はぁ・・・ふぅ・・・。」  
 
少女は虚ろな目でずっと床を見つめていたが、やがて思い出したかのように身を起こした。  
だからといって立ち上がるでもなく、そのまま壁に背を預けさせる。  
髪が後ろへ流れ、幾分顔が露になる。  
長い前髪が張り付いたその顔は意外なほど落ち着き、大人びていたが、一方でまだ幼さを残してもいた。  
年齢的には高校生くらいなのだろうが、大学生と言われてもそう見えなくは無い。  
 
冴子、それがこの少女の名前だった。  
 
「・・・ふぅ・・・。」  
 
少女は半ば目を閉じかけていた。  
服に残った血痕は、彼女が負っているであろう傷の深さを物語っている。  
だから彼女が眠ろうとしているのか息絶えようとしているのかは明らかではない。  
だが何にせよ、傷ついた少女にはこの山小屋でじっと目を閉じる以外に選択肢など無かった。  
毛布も無い、粗末な小屋である。  
それでも外で眠ることに比べれば、どれだけ幸運か知れない。  
 
外には怪物がたむろしている。  
一見馬鹿げたことだが、事実なのだから仕方ない。  
何より彼女自身がその「事実」に深く関わっていた。  
 
(姫乃・・・眞子・・・。)  
 
心の中で呟くその名は、彼女にとって特別なものであった。  
 
大切な友人。  
そして自分がこの怪物たちの巣に放り込んでしまった被験者。  
 
どうか無事であってほしい。  
どうか、二人だけは・・・。  
 
少女がそんなことを思いながら意識を失おうとしていた、まさにその時だった。  
 
山小屋に、柱が生えてきたのだ。  
 
実はこの山小屋は見た目ほど襤褸くは無い。  
この手の山小屋にしては不釣合いなほど広いし、天井も高い。  
床も実はかなり補強されている。  
それなりの目的を持って造られた構造物なのだ。  
 
だがその床を簡単にぶち抜いて、高い天井につかえるまで柱は伸びていた。  
いや、それは柱ではなかった。  
普通の柱には吸盤などついてないし、くねくね動いたりもしない。  
・・・要するにこれは、ふざけた話だが、恐らくは巨大な蛸か烏賊の脚なのだ。  
 
――どんっ!!  
 
轟音とともに壁がぶち抜かれ、何かが進入してくる。  
巨大で丸く、凶悪な牙を多数生やしたそれは間違いなく口と思われた。  
 
こいつを自分は知っている。  
知識としてではあるが、その危険さも知っている。  
 
頭の中に鳴り響く危険信号が眠気を、疲労を吹き飛ばし、少女を無理やりに立ち上がらせた。  
 
クラーケン。  
「組織」によって陸生に改造されたダイオウイカ。  
こいつと比べたら、自分など巨人の前の蟻に等しい。  
 
「何か・・・武器になるようなものは・・・!」  
 
さっきまでの痛みさえ忘れて考えを巡らせる冴子に、地上の王は、無常にもその剛腕を振り下ろした。  
 
「――つっ!!」  
 
飛びのいた少女の影を馬鹿々々しいほどの質量が打ち抜いていく。  
補強された床が悲鳴を上げた。  
その悲鳴が未だ鳴り止まぬうちに別の腕が冴子に襲い掛かる。  
今度は真っ直ぐに突き刺すような動きであった。  
 
「くっ!」  
 
これもギリギリで避けた少女に、破滅は唐突に訪れた。  
次の一撃は点でも線でもなく、面に向けられたものであったからだ。  
体制を整えるより早く冴子は地面を薙ぐ腕に捕らえられた。  
そのまま吹き飛ばされて壁に激突する。  
 
「がはぁっ!!」  
 
肺から空気が搾り出され、目の前には星が飛ぶ。  
なけなしの体力さえ失った少女の運命は、最早一つしかなかった。  
 
大音響と共に一本の腕が山小屋の床をぶっ叩く。  
凄まじい衝撃に冴子の体はくの字に折れ曲がった。  
 
「――ぎゃああああぁぁっっ!!!」  
 
血の混じった唾液が飛沫となって宙を舞い、僅かに遅れて絶叫が迸った。  
それを合図に全ての腕が床を、そしてその上に横たわる標的を打ち据え始めた。  
 
「はがぁっ!!!おぁっ!!がっ!!ひぐっ!!」  
 
馬鹿々々しいほどの質量差に体はひしゃげ、手足がありえない方向に捻じ曲がる。  
奇妙に曲がった四肢で木の葉のように揺れるさまは、どこか人形を思わせた。  
 
「げっ!!!がぁ!!!・・・!!・・・・・・!」  
 
少女の反応は急速に失われ、すぐに全く動かなくなった。  
虫けらのように獲物を打ち殺すと、怪物は満足げにそれを摘み上げた。  
そのまま口に運ぼうとして、だが彼は、あることに気付いた。  
 
――仕留めたはずの獲物が息をしている。  
それどころか、何か言いたげに口を動かしてさえいる。  
 
クラーケンは訝しく思いながら、獲物を地面に投げつけた。  
そのまま先ほどに倍加するほどの打撃を加えていく。  
それは強化された床に埋めんほどであった。  
肉が飛び散り、首も背骨も折れ曲がった少女の姿は、まるで現代彫刻だった。  
 
だが、今度こそと獲物を摘み上げると、またもや同じ現象が起きた。  
ありえない角度に曲がった顔で、少女が何かを言おうとしているのだ。  
もしこの場に読唇術が使える人間がいるなら、その何かが人名であることに気付くだろう。  
 
姫乃。  
 
眞子。  
 
冴子は無意識に大切なその名を唱え続けていた。  
犯罪組織に拾われ、友などもう作らないしできないと思っていた彼女に、できた友。  
もう笑えないと思っていた自分に、もう一度笑顔を取り戻させてくれた友。  
 
だが無慈悲で強大な地上の王にとって、その名は何の意味もなさない。  
なさないが、目の前の事実は彼にある直感を抱かせるに十分なものであった。  
 
床の穴から地表を覗く大きな目が、心なしか細められたように見えた。  
 
大きな腕が器用に少女を裸に剥いていく。  
襤褸切れのようになった布は、ぶちぶちという音とともにあっけなく破られ、捨てられた。  
肌が露になると、少女の惨状はいっそう際立った。  
 
肋は半分以上が肉を破って飛び出している。  
両手足は指も含めて滅茶苦茶に折れ、右肘と右太腿でやはり骨が飛び出している。  
肌は一面内出血で、青黒い痣に覆われていた。  
背骨も奇妙な方向に曲がり、肛門からは黒っぽい血が垂れ、腿を伝って地面に染みを作っている。  
内臓でも破れたのだろうか?  
妙な方向に曲がっているのは首も同じで、口から流れ出した血が唇に赤く紅を塗っていた。  
 
スレンダーな体は、こうなる前ならさぞ美しかったのだろう。  
だがこうなってしまっては、そこに尋常な美など欠片も無い。  
というより、この状態で生きていること自体が異常であり、超常と言えた。  
 
冴子は組織の生物実験の観察者であった。  
反抗を防ぐための措置として彼女は、ある「モノ」を仕込まれていた。  
それは人為的に作られた特殊な寄生体であった。  
数日後に宿主を殺す。  
乱暴に言えばそれだけの意図で埋め込まれた寄生体は、だが宿主が死に瀕するに及んで変異を起こした。  
宿主の体を再構築して、蘇らせたのだ。  
 
おかげで冴子は銃で撃たれても死なず、この山小屋まで逃げ延びることができた。  
おかげで冴子は怪物の腕に叩き潰されても死なず、こうして傷ついた裸体を晒している。  
だがクラーケンにとって重要なのはそのような経緯ではない。  
こんなちっぽけな生命が、自らの力に抗堪している。  
現に今もその体は再生を続け、折れた首も徐々に戻りかけている。  
 
人ではない彼に、ある感情、または衝動が芽生えていた  
人間で言うならそれは「畏怖」であったろうか。  
否。  
畏怖とはこのようにどす黒いモノを指すのではない。  
 
・・・何にせよ彼は、素直にその衝動に身を委ねることにしたのだった。  
 
「――ひっ・・・!?」  
 
声を出せるまでに回復した声帯が、怯えたような音を奏でる。  
一本の腕が全身に絡みついたのだ。  
そうやって螺旋状に獲物を巻き上げると、怪物は腕に思い切り力をこめた。  
 
「ぐげぇっ!!!えぇっっ・・・!!!」  
 
肺に残った空気を悲鳴に変えながら、少女の体はぐちゃぐちゃに潰れた。  
クラーケンは内心舌打ちした。  
あっけなく壊しすぎたからだ。  
この獲物は確かにしぶといが、短期的にはあまりに脆い。  
退屈な再生待ちの時間を勘案するなら、もっと慎重に事をはこぶ必要があった。  
 
「――ん・・・。」  
 
目が覚めてしばらく冴子は状況を把握できなかった。  
だがそれは、痛みと全身を覆う濡れた感触が嫌でも教えてくれる。  
 
「・・・あぁ、そっか。」  
 
明晰な頭脳は、その一言で現実を受け入れた。  
要するに自分はまだ死んでいないのだ。  
首も背骨も、折れた肋もどうやら引っ付いたらしい。  
もっとも両手足は未だ折れたままのようであった。  
 
――ぎゅっ  
 
と、彼女の目覚めを見計らったかのように巻きついた腕が、その圧力を強くした。  
今度は一気にへし折るのではなく、慎重に少しずつ締め上げていく。  
 
「ぐっ!!くぅぅ・・・!!」  
 
徐々に下半身に血が回らなくなり、充血した顔が真っ赤になっていく。  
口からは涎が吹き零れ、しだいにそれも泡に変わっていく。  
赤く、そして暗く変化する景色の中で、冴子は自分の骨が軋む音を聞いていた。  
 
――と、急に圧力が消失する。  
怪物がおもむろに締め付けを中断したのだ。  
低下した摩擦力を重力が上回り、少女の体が下へ引っ張られる。  
だが彼女は落下しなかった。  
腕は完全には離れておらず、そしてその表面には直径5cmに及ぶ無数の吸盤が付いていたのだ。  
 
「んっ・・・ぃぎっ・・・!」  
 
無数に分散された体重はそこまでの負荷とはならなかった。  
が、吸い付かれた箇所には乳頭などの敏感な箇所も含まれているのだ。  
ましてこの吸盤には、硬い鋸状の歯が付いていたのだった。  
 
「ぅん・・・!んん・・・!」  
 
なまじ神経が復活していたのが仇となり、冴子は細かい痛みと格闘する羽目に合った。  
胸に吸い付いた吸盤の中で乳首が無意識に硬化していくのがわかる。  
その反応は、彼女に暗い屈辱感を与えた。  
 
そんな少女を見透かしたように怪物は再び巨腕を収縮させる。  
山小屋に絞るような悲鳴が響いた。  
 
腕が解かれるのも何度目になるだろうか?  
最初は力が緩むだけだった腕は、開放の度に段々と冴子から離れようとするようになった。  
巻きつくのと逆方向に力が加わり、吸盤が食い込んだ箇所が強く引っ張られる。  
今回、その力は特に強かった。  
 
「くぁぁ!!痛っ!痛あぁぁ!!」  
 
締まった尻も、小ぶりな胸も剥がれんばかりに引っ張られ、目からは思わず涙が零れる。  
硬い歯が引っ張りに合わせて更に肉に食い込み、そこら中から血が垂れ落ちた。  
 
「ううっ!!うぅぅっっ!!」  
 
唇を噛み締めても責めが和らぐわけではない。  
その証拠に、限界を超えて引き伸ばされた少女の皮膚は何箇所かで破れ始めた。  
みりっ、という感じの嫌な音が響く。  
 
「ぎゃあっ!!ぎゃああぁ!!!あ゛ああっ!!!」  
 
生きたまま皮を千切り取られる痛みに、冴子は半狂乱になって叫び散らした。  
獣のような叫びも玉のような脂汗も緩和し得ない純然たる刺激。  
それは激痛と呼ぶのも生易しいほどであった。  
しかも吸盤が剥がれるたびに体重を支える箇所が減り、残った部位にはより強い力が加わるのだ。  
 
「あ゛あ!!あ゛あ!!!あ゛あぁ!!!」  
 
冴子はいつしか小便を漏らしていた。  
小水を垂らしながら泣き叫ぶ姿には、普段の冷静で知性的な彼女の面影は微塵も無かった。  
その間にも吸盤は一つ、二つと剥がれ、ある箇所には赤い輪を刻み、ある箇所では皮を剥ぎ取っていく。  
 
やがて彼女を支えるのが右胸の一箇所だけとなった時、悲劇は起きた。  
皮膚が裂ける音と共に乳房の皮が破れ、ついに乳首を巻き込みながら剥がれ去ってしまったのだ。  
体重を支えるものが何も無くなり細い体が腕の間を滑り落ちていく。  
引き裂くような悲鳴は、すぐに重量物が激突する音に変わり、途絶した。  
 
「・・・あ゛・・・・・・あ゛・・・・・・」  
 
不幸なことに、冴子はすぐには気絶できなかった。  
白目を開いて痙攣しながら、数分間も痛覚の渦に晒され続けたのだ。  
血と小便の海の中で、白い体がぴくぴくと震えていた。  
 
再生し、目を覚ました後も地獄は続いた。  
怪物は今度は両手を縛り上げ、吊るした状態で何度も締め上げと弛緩を食らわせた。  
骨が軋み、皮が剥げ、少女の絶叫が響く。  
無数の吸盤が細い体に喰らいつき、白い体を赤い斑点で汚しぬいていった。  
 
――どれほどそれが続いたろうか。  
冴子から叫ぶ気力さえ失われた頃、怪物は彼女の両足に一本ずつ腕を絡ませた。  
そのままV字型に足を持ち上げると、その小さな雌の器官が露になった。  
触腕が乱暴に秘裂を擦り上げ、細い体がびくりと震える。  
 
次の瞬間、怪物は1本の腕を獲物へと近づけた。  
それはほかの腕とは明らかに違い、吸盤の代わりに肉球に覆われていた。  
交接腕、という単語が冴子の朦朧とした意識に水を浴びせる。  
見ようによって巨大なペニスにも見えるそいつは、先端に何かを持っていた。  
小さく尖った白い筒状の物体。  
直径は細かったが、長さは成人男性のペニスに匹敵するほどであった。  
その精莢と呼ばれる精子のカプセルは、通常のイカのものより桁違いに大きかった。  
 
「――ぁ・・・・・・ゃ・・・・・・」  
 
少女の声に、今までとは違う怯えの色が混じった。  
構わず怪物は別の腕で冴子の秘唇を割り開いていく。  
ピンク色の膣口がぱっくりとその姿を覗かせた。  
次の瞬間白杭が膣にあてがわれ、ゆっくりと少女の奥へと挿し込まれていった。  
 
「ん!・・・くぅっ・・・!!」  
 
冴子は両目を硬く瞑り、歯を食いしばって耐えようとした。  
理由は分からないが、何か抵抗しなければならない気がしたのだ。  
それは今同じような危険に晒されているかもしれない友への誠意だったのかも知れない。  
 
だがそんな思いなどとは関係なく、白い凶器は更に少女を貫いていった。  
彼女の思いとは裏腹に体は一方的な略奪に反応し、収縮した膣からは液体が染み出していく。  
既に大部分が埋没した精莢はより深い挿入を求めてのたうちまわり、湿った孔の中をびちゃびちゃと掻き回した。  
或いはそれが破壊を免れるための生理反応だったのだとしても、その水音に少女の心は深く傷つけられた。  
 
やがて子宮口に先端が達すると、精莢は一度大きくその身を縮ませた。  
次の瞬間、尖った先端は少女の奥へと突貫した。  
同時に精莢のトリガーが引かれ、内容物がぶちまけられる。  
 
「・・・ぅっ!!・・・!!・・・・・・っ!!!・・・」  
 
文字通り撃たれたような衝撃を、少女はただ歯を食いしばって噛み殺した。  
股間からどろりとした液が垂れ、吐き出す息に小さな震えが混じる。  
だが直後、冴子はそれが序章に過ぎなかったことを教えられた。  
顔を上げて、見てしまったのだ。  
さっきの腕が、白くうねる何十本もの精莢を握っているのを。  
 
哀れな贄は限界まで目を開き、声も無くそれを見つめていた。  
 
「・・・あ!!・・・ぎっ!!」  
 
結束された幾十もの凶杭が大事な部分に突き刺さっていく。  
怯えを噛み殺そうにも、最早歯の根も合わなかった。  
そのまま白束は狭い洞窟を拡張しながらゆっくりと埋没していく。  
侵略者がのたうつたびに膣壁は波打つように押され、少女は下腹部が隆起するような錯覚を覚えた。  
 
「・・・ぅ・・・ぁくぅっ・・・・・・!!」  
 
冴子はいつしか両手を白くなるほど握り締めていた。  
体の芯に覚える切なさと、それ以上の痛み。  
抗いがたい何かに少女は必死に抗しようとしていた。  
 
――が、それさえも所詮風を前にした蝋燭のようなものであった。  
 
再び子宮口に至った精蟲達が、無理やりに先端を埋めていく。  
だが今度はこれで終わりではなかった。  
自らの半身をもっと奥まで届かせようと、交接腕が直接侵攻を始めたのだ。  
 
「・・・!!あ、あ・・・!!」  
 
押し当てられた巨大すぎる一物。  
そしてそれがもたらすであろう致命的な破壊の予感。  
それは少女を恐慌に突き落とすのに十分であるかに思われた。  
だがそうならなかったのは、性格とか訓練のおかげとかそういうことではなかった。  
 
怖くないわけではない。  
現に震えは既にピークに達し、呼吸の乱れは酸欠を引き起こしつつある。  
それでも、脳のどこかに確信があった。  
自分は破壊されたがっている。  
永遠に殺され続け、贖い続け、救われたがっている。  
それが贖罪とは勝手なことだとも思うが、とにかくそれを望んでいることに疑いはなかった。  
 
そして怪物は、地上の王は、単純な一撃によって彼女の望みを叶えた。  
 
「ぐぎゃあああああぁぁっっ!!!!」  
 
冴子を言葉の通り引き裂きながら、巨腕がその先端を埋めていく。  
陰唇があっさりと拡張の限界を超え、破壊に巻き込まれた膣肉がごっそりと削げる。  
それらは鮮血に混じって粥と化し、白い陰茎に濃赤色の化粧をほどこしていく。  
破壊者はそのまま突き進むと少女の奥口を殴りつけた。  
衝撃で子宮壁に突き刺さった精莢が、そうでないものと共に一斉に精を吐く。  
 
この世のものと思えない絶叫を上げながら、少女は体をがくんがくんと痙攣させた。  
 
馬鹿げた液量にも関わらず、結合部が塞がっているため、逆流して血と共に噴き出したのは僅かであった。  
液体はその代わりに子宮をぱんぱんに膨らせ、更に子宮壁に開いた穴から腹腔内に噴出した。  
急速に敗血症が進み、血圧が下がって目の前が真っ暗になる。  
 
――そうして少女は、束の間の死の眠りに付いた。  
 
「あぎぃっ!!」  
 
再生し、頬を打ち抜く痛みで目を覚ますと、少女の目の前には巨大な口が鎮座していた。  
怪物はその口から大きな舌を生やすと、獲物の腹から胸にかけてべろりと舐め上げた。  
その舌は表面がヤスリ状で、冴子は体を削られているような痛みを感じた。  
 
ふと、尻の穴に違和感を感じる。  
恐る恐るみやると、そこには例の精莢があてがわれ、尖った先端を突き立てようと蠢いていた。  
 
「――ひっっ!?」  
 
思わず息が詰まる。  
先ほどの恐怖に加えて、今度狙われているのは通常性交に用いない、排泄のための穴なのだ。  
だが怪物が彼女の思いなど気にするはずも無かった――。  
 
「う゛ああぁっ!!」  
 
尻を貫く異様な感覚に、少女は上擦った悲鳴を上げた。  
一本だけとはいえ、もともと進入を予期していない穴への挿入は痛みと強い異物感を伴った。  
その異物感が徐々にせりあがってくる。  
精莢が蠢きながらより深く潜り込んできているのだ。  
 
「やっ!!あっ!!あっ!!」  
 
不浄の穴を強奪され、痛みと不快感、そしてむず痒いような感覚に何も考えられなくなっていく。  
必死に首を振ってもがいても、何の助けにもならなかった。  
 
やがて全身を埋めた精莢がぴたりと動きを止める。  
その直後、身を硬くした冴子を衝撃が突き上げた。  
 
「きゃああぁぁっっ!!!」  
 
絹を裂くような悲鳴と共に、宙吊りになった体がびくんと仰け反る。  
ぽたぽたと滴り落ちる白濁は、だが只の号砲に過ぎなかった。  
 
直後彼女は、痺れの残る尻穴に別の尖ったものが押し当てられるのを感じた。  
その数はおよそ7本。  
くねくねと動く先端は、やがて入り口を探し当て、結集して一本の太い杭となる。  
直後襲い掛かった激痛に、冴子は獣のような咆哮をあげた。  
 
「あ、あ、あ・・・・・・!!!」  
 
絶叫が終わっても痛みに息ができず、言葉も紡げない。  
痺れた思考は、さらに別の精莢が結合部をつついていることにも、気づかなかった。  
――それが実際に尻を貫くまで。  
 
「・・・ぁ!!ぁが・・・あぁぁ・・・!!」  
 
仰け反る体とくぐもった悲鳴。  
突き刺さる精莢数が追加される度、それは繰り返された。  
 
「・・・!!!・・・・・・!!!」  
 
16本目の精莢が尻を貫いたとき、冴子はもう碌な悲鳴も上げられなかった。  
声を出すだけで何かの均衡が崩れそうになる。  
両足は怪物の腕に巻かれてそれぞれしっかりと固定され、いかなる逃げも打てそうになかった。  
限界まで拡張された尻穴からは赤い筋が走っている。  
後一本でも追加されたなら、括約筋がぱちんと切れそうなほどであった。  
 
それを知ってか知らか、怪物はそこで本数を増やすのをやめ、代わりの遊びを始めた。  
太い杭を出し入れし始めたのだ。  
沈め、引き抜き、捻りながらまた沈める。  
痛みから逃れようと、抽送に合わせて獲物の腰が動きまわり、滑稽だった。  
 
「・・・!!・・・!!・・・!!」  
 
冴子は今にも泣きそうな顔で、それでもどうしようもなかった。  
抗おうにも刷り込まれた痛みの恐怖に、体が勝手に逃げ回ってしまう。  
怪物の動きが早まると、それに合わせることさえ困難になっていった。  
 
――そして終わりは突然に訪れる。  
ふとした拍子に精莢のトリガーが引かれてしまったのだ。  
腹の中が爆発したような衝撃に彼女は声にならぬ絶叫を上げ、白目を剥いた。  
 
「ぅぁぁ・・・!!・・・ぅぁ・・・ぁ・・・・・・」  
 
体中が小刻みに震え、次第に反応が鈍くなり、意識が闇に沈みかける。  
だが哀れな少女に休息は許されなかった。  
 
怪物の交接腕、それ自体が窄まりに押し当てられ、その巨体を埋め始めたのだ。  
 
「・・・ひぁ・・・・・・!!!」  
 
みちっ、という音と共に今度こそ括約筋が断裂する。  
巨腕はそのまま遡上し、腸が裂け、腹腔内がぐちゃぐちゃに掻き壊される。  
そして侵略者が胃まで破裂させたころ、激痛のパルスがようやく全身を駆け巡った。  
 
「――っぎゃあああああああああああぁぁぁっっっ!!!!」  
 
断末魔としか形容できないような少女の叫びだった。  
その音量に喉が破れ、外れるほど開かれた顎からは赤い泡が吹き出る。  
直後その泡の奥から白っぽいものが覗くと、肉片と共に勢いよく飛び出した。41  
それは少女が文字通り串刺しにされた瞬間であった。  
 
そのまま怪物の腕が往復を始め、滅茶苦茶になった体内を更に蹂躙していく。  
体が内側から膨れあがり、腰骨と背骨が砕け、圧迫された肋骨は外に向かって飛び出した。  
 
「・・・・・・・・・!!!!・・・・・・!!・・・・・・・・・」  
 
急速に暗転する視界の中で、冴子はただ全身を滅茶苦茶に痙攣させ続けた。  
そうして何度目かの死が訪れた――。  
 
「・・・ぉ・・・!ぁぉぉ・・・・・・」  
 
触腕に無理やり引きずり出された舌に、怪物の舌が絡む。  
もっとも巨大な舌が口中を暴れ回る様は、ディープキスには見えなかった。  
純粋な破壊、または捕食。  
ヤスリ状の舌に削られ、口から飛び散る鮮血はそのような単語しか連想させなかった。  
 
そうやって柔らかな口肉を味わいながら、怪物は獲物の股穴を犯し続けた。  
少女が貫通されて死に、蘇生した後はずっとこの調子であった。  
何百本めになるか分からない精莢が種を吐き、拡がりきった両穴から血の混じった白濁がごぼりと噴き出す。  
 
「ぉ・・・ぉ・・・ぉ・・・」  
 
もうずっと冴子は小さく呻くことしかしていない。  
下腹部を引き裂かれても。  
生きながら舌を削り食われても。  
何リットルもの汚液に腹中を犯されても。  
少女の苦痛は、ここに来て完全に飽和していた。  
 
――それに飽いたのだろうか?  
怪物は突然動きを止めた。  
そうして遊びつくした獲物を宙にぶら下げると、床に開いた穴から大きな目で見つめる。  
口から血を、股から精液を垂れ流す少女は全身酷く傷ついていたが、それでもまだどこか美しさを残していた。  
そしてそれを見る視線は明らかに未練を残していたが、やがて彼は思い切るように獲物を口に運んだ。  
ぐったりとした白い肢体に、次々と巨大な牙が突き立っていく。  
 
「・・・ぁ!・・・ぁぁ・・・・・・ぁ・・・ぁ・・・」  
 
弱々しく鳴きながら何度か震え、冴子は動かなくなった。  
怪物はその瑞々しく柔らかな肉を細切れに噛み砕きながら、舌のヤスリで磨り潰していった。  
 
 
「・・・ぁ・・・・・・ぇ・・・?」  
 
次に生き返ったとき、少女はそこがどこか分からなかった。  
辺りは酷く生臭く、床は不自然に柔らかい。  
何かの液体が不規則に体に滴下してきて、それが当たった場所がやけに熱い。  
熱さはすぐに痛みに変わり、徐々に体の表面から内部へと侵入してきた。  
 
――要するに、実も蓋も無い言い方をすれば、彼女は怪物の胃の中で再生してしまったのだ。  
肉片からここまで戻ったのだから、消化の速度よりは再生が速いのだろう。  
だがそれは、この先少女がずっと酸のプールに浸り続けることを意味していた。  
 
「う・・・ひっく・・・うわぁああぁぁん・・・!!」  
 
端正な顔をくしゃくしゃに歪めると、少女は子供のようにわんわんと泣き出した。  
ここまで酷いことをされて、あげく食われた先でまで生き返って溶かされ続ける。  
そんな自分に、自分の運命に心底絶望し、冴子は只々泣き続けた。  
そこには普段の落ち着きも、知性を帯びた佇まいも何もなく、ただひたすらに惨めで、哀れだった。  
 
だが一方で、彼女はどこか納得していた。  
親友の顔が浮かぶからだ。  
声が聞こえるからだ。  
 
 
「ほら眞子ちゃん。」  
 
「いや、そこは姫乃が・・・」  
 
あの日、自分の机の前で押し問答していた二人。  
不審に思って声をかけてみると、  
 
「ミステリアスな感じの人だなって思って、一度声をかけてみたかったんだ。」  
 
と返ってきた。  
そうやって高校で初めてできた友達。  
二人は元々友達で、そこに自分が加わった。  
よく遊んだ。  
姫乃の家に溜まって延々とくだらない話をした。  
買い物もした。  
三人だけで海へも行った。  
 
巻き込むまいとどこかで思いながら、思えば自分はいつも二人と一緒だった。  
 
 
――そして自分は二人を裏切った。  
自らの目的を優先させ、楽観的な観測で二人を地獄へと突き落とした。  
自分に生きている資格は無い。  
汚され、殺され、喰われてなお死ねないなら、このまま永遠に苦しめばいい。  
苦しんでいる間は二人の顔を、あの無邪気な声を忘れていられるのだから・・・。  
 
いつしか消化液は量を増し、冴子の体は半分近くその中に浸かっていた。  
下半身を浸した消化液は膣の中にまで流れ込んでくる。  
 
(・・・このまま子宮が溶けてしまえば、仔イカを産む心配も無くなるのかな?)  
 
自分で思いついたことが無性におかしくて、少女は引き攣れた笑い声をあげた。  
苦しむ自分が滑稽で、壊れていく自分が心地よい。  
 
そんな真っ黒な自虐に魂を染められながら、冴子は狂ったように笑い、泣き続けた。  
 
――何が起こったのかは分からない。  
ただ消化液の水位が少女の胸にまで達した頃、胃壁が唐突に収縮し、彼女を外へと放出した。  
その以前に怪物がやたらと暴れ回り、胃の中で盛大に跳ね回った気がする。  
だが絶望の中で半ば発狂していた彼女からすれば、それさえも何かの勘違いかもしれなかった。  
 
だが一つ分かることがある。  
人生とはつくづくうまくいかないものだ。  
苦しみたいと思った矢先に、救われてしまった。  
怪物は片目を失ったようで、暴れながらどこかへ逃げていった。  
 
(私は・・・本当に何もできないんだ・・・)  
 
後に残された冴子は、立ち上がる気力もないままぐったりと寝転がっていた。  
焦点の合わない目から静かに涙が流れて跡を作る。  
汚され、壊され続けた体がやけに痛く、重かった。  
 
 
――どれほど時が経っただろうか。  
急に、どこかから悲鳴が聞こえた。  
切羽詰ったその声は、本当は聞こえた気がしただけだったのかもしれない。  
 
だがその悲鳴を聞いた冴子の中に、小さな疑問が芽生えた。  
そしてそれは時と共に大きなものとなっていった。  
即ち、『あれは眞子か姫乃の悲鳴でなかったか?』と。  
そうではないと考えようとしても、疑念は後から後から湧き出て心を埋め尽くしていく。  
それは胸を蛇のように締め付け、鼓動が急速に早まっていった。  
 
(・・・私は、何をしているんだろう?)  
 
思えば馬鹿なことだった。  
端から自分には目的があったはずだ。  
それを捨てることは、巻き込んでしまった二人への冒涜だ。  
自分がどんな酷い目にあったところで、そのことは変わらないはずだ。  
逆にそれを引き合いに自分を責め続ければ、それで二人は何かを得るのか?  
 
・・・要するに自分は、自己嫌悪を盾に刻まれた傷を紛らわせようとしていただけではないのか?  
 
(そうだ。泣くのは・・・後で良いんだ。)  
 
そう考えると、もう居ても立ってもいられなかった。  
 
冴子は歩き出した。  
体はさすがに治りきらず、足取りもまだおぼつかない。  
だが彼女の目には光があった。  
彼女の目には覚悟があった。  
 
傷ついた体を引き摺りながら、悲壮なまでの決意を胸に、少女はまた、歩き出した。  
 
 

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