ピラーニャとは本来臆病な生き物である。  
インディオの言葉で「ハサミ」を意味するその名前からは想像しがたいかも知れない。  
だが彼らは臆病ゆえに群を作るのであって、大型動物は滅多に襲わない。  
「凶暴なアマゾンの人喰い魚」というのは、要するにマスコミが作ったイメージに過ぎない。  
 
だがそんな彼らの中にも、一般のイメージに近い獰猛な種類がいた。  
ブラック・ピラーニャの亜種、ダイヤモンド・ブラック種である。  
テロ組織向けの軍事兵器として利用する上で、その獰猛さは魅力に映った。  
 
ダイヤモンド・ブラック種を中心に遺伝子を改造し、陸上でも群れて行動する猛獣を作る。  
一般的な生物・化学兵器と同じで、戦略的に与える効果は大きいと考えられた。  
実際の損害が小さくとも与える心理的効果は大きいだろうからだ。  
こんな化け物が見境なく人を襲いまくれば、標的国は間違いなくパニックに陥り、経済活動が麻痺するであろう。  
 
「そうやって、こんなイカれた代物が誕生した。」  
 
冴子の足元には「ファング」と呼ばれる生物兵器が転がっていた。  
腹と尾の鰭が発達し、水陸で素早く移動できるピラーニャ。  
通常のダイヤモンド・ブラックより体躯は大きく、発達した顎は人間の筋肉さえ容易く切り裂く。  
性格は極めて獰猛で、群になって見境なく人を襲う。  
 
「・・・まあ、意外とすぐに対応されて終わりかもだけどね。」  
 
言い終えると彼女は足元にあったファングの死体を蹴っ飛ばした。  
そうやって別のところに目を落とす。  
そこには彼女の友人が寝転がっていた。  
 
・・・ただ寝転がっているのではない。  
彼女は既に何者かに食い殺されている。  
その内臓は露出し、とても正視できたものではなかった。  
 
「何者か」というのが林道一帯に死体となって転がっているファングたちだろうというのは容易に想像できた。  
これだけの数のファングと戦い全滅させた人間は、余程の凄腕と考えられた。  
そしてその凄腕が誰なのかも何となく想像はつく。  
 
・・・だがそれも、彼女の友人にとっては何の救いともならない。  
 
冴子は眞子の傍らに跪いた。  
間近に見るとその死に顔が良く分かる。  
いつも凛としていた友人の最後の表情は、言いようのない悲しみと苦悶に満ち満ちていた。  
 
――どれ程の時が流れたろうか。  
雑木林に一陣の風が吹いた。  
 
「・・・ごめんなさい。」  
 
冴子はぽつりと呟いた。  
表情は前髪に隠れて見えなかったが、その声は掠れ、震えていた。  
そして静寂が支配する林道に、押し殺した嗚咽が染み渡っていった。  
 
ファングという生き物は、兵器としては大きな欠陥を抱えていた。  
何故か分からないが、日中の明るい時間帯しか行動しないのだ。  
それ以外の時間は暗いところで大人しくしている。  
眠っていることもあるし、そうでないこともある。  
 
――だがそれは、その時間彼らが無防備であることを意味しなかった。  
 
「・・・・・痛っ!?」  
 
帰らない冴子を案じて島を散策していた眞子は、少し林に分け入ったところで右足首に痛みを感じた。  
最初は何かの虫だと思った。  
だがその右足を見たとき、彼女はそれが虫によるものではないことを知った。  
同時に彼女は迂闊に林になど入った自分を心底呪った。  
 
彼女の右足はアキレス腱をざっくりと切り裂かれていた。  
そしてそのすぐ近くに、さっき右足を切り裂いたであろう犯人がこちらを見上げていた。  
半分以上草の中に埋没していたが、そのフォルムは魚でしかあり得なかった。  
 
「――ひぃっ!」  
 
引き攣れたような悲鳴が上がる。  
実は彼女は既に生物兵器に遭遇していた。  
もっとも、その時は冴子に連れられて何とか逃げ延びたのだが。  
だがこいつの異形は、そんな彼女をも酷く驚かせ、怯えさせるものであった。  
 
「――あっ!あああっ!」  
 
まともな単語も発せないほど狼狽しながらも、彼女は何とか振り向いて、片足で逃げようとした。  
 
だが彼女は知らなかった。  
 
ファングは不活性な時間帯でもテリトリーへの侵入者には容赦ないということを。  
そしてこの時彼女という侵入者を八つ裂きにすべく、何匹ものファングが草に隠れて忍び寄っていたということを。  
 
逃げる眞子に向けて、幾つもの黒い顎が襲い掛かった――。  
 
雑木林から転がり出た眞子は、だがその先は這って移動せねばならなくなった。  
左のアキレス腱も食い千切られたからである。  
機動力を奪った上で齧り殺す。  
自分たちより大きな動物を仕留めるため、ファング達が常用する戦術であった。  
 
「ああっ!ああっ!」  
 
髪を振り乱し、這い蹲って逃げる少女には、普段の毅然とした姿は微塵もなかった。  
だがどんなに惨めでも彼女は生き延びようとした。  
そんな彼女の背中に容赦なくファングの牙が降り注ぐ。  
太腿にも噛み付かれ、地面に流れた血がべっとりと跡を作っていった。  
 
――結局、林道を渡ることさえできずに眞子の体力は限界を迎えた。  
ごろりと横に転がると上体を起こし、何とか道横の木にもたれかかる。  
 
「冴子・・・姫乃・・・先に行くね。ごめん・・・。」  
 
言い残して目を閉じ、彼女は訪れるであろう死に身を委ねようとした。  
・・・だが、何も起こらない。  
目を開けてみると魚たちが半円状に陣を組み、彼女を取り囲んでいる。  
その数は十匹足らずといったところか。  
 
「・・・どういうこと?」  
 
彼らに言葉は通じないだろうが、疑問が思わず口をついて出る。  
その瞬間、彼らは一斉に眞子に飛び掛った。  
それはまるで彼女が落ち着くのを待っていたかのようであった。  
 
「きゃああぁっ!!」  
 
布を裂くような悲鳴が上がる。  
待たされた僅かな時間が、微かな生への期待が、眞子の覚悟を台無しにしていた。  
スカートの中に肉食魚が入り込んでくる。  
彼らは服を食い破り、上半身にも侵入してきた。  
 
「やめてっ!!やめなさいっ!!」  
 
眞子は必死になって侵入者を掴み、追い出そうとした。  
だがその手にも五月蝿いとばかりに牙が突きたてられる。  
指が千切れて血が流れ、彼女を更なる狂気へと追いやっていった。  
 
――やがて眞子の抵抗が収束した頃、ファングたちはすっかり衣服の中に入り込んでいた。  
魚類の冷たく、無機質な体が素肌に当たり、彼女に何ともいえない嫌悪感を与えた。  
少女は端正な顔をしかめ、少しでも気色悪さに耐えようと全身を硬くした。  
 
・・・だが彼女は知らなかった。  
これが嫌悪であるうちは、まだ良いのだということを。  
 
ファングたちは侵入の過程で何度も眞子を噛んだが、大きな傷はつけようとはしなかった。  
眞子が失血死するのにそう長くはかからないであろう。  
だが逆に言えば、それまではこの獲物で楽しむことができる。  
彼らはそう考えたのかも知れない。  
 
「――きゃあっっ!!?」  
 
眞子の体が怯えたようにビクっと震えた。  
一匹のファングが下着の上から股間に牙を立てたのだ。  
そいつが口を離すと、別の個体が同じように歯を立てた。  
そうやってかわるがわるに啄んでいく。  
齧るのでも、まして食い千切るのでもなく、何度も秘唇に穴を開けて少しずつ壊していく。  
敏感な部分に加えられる痛みと羞恥に、少女の息はたちまち荒くなっていった。  
 
「あっ!!くぅっ!!やめなさい!!やめ・・・ひゃぅっ!!?」  
 
突然ブラの上から左胸の先端を噛まれ、眞子は裏返った悲鳴を上げた。  
直後右胸にも歯が立てられ、やはり少しずつ啄まれていく。  
思わず胸を見やった彼女は、胸元から顔を覗かせる一匹のファングを発見した。  
彼は顔の真横についたその目で、確かに彼女の顔を見つめていた。  
 
その瞬間眞子の顔は茹でたように真っ赤になった。  
こいつは自分を視姦していたのだ。  
大事な部分を弄ばれ、怯え歪む表情を楽しんでいたのだ。  
その思いに堪えがたい怒りが駆け巡り、同時に泣きたいくらいに惨めで、恥ずかしくなる。  
 
「このケダモノッッッ!!!殺しなさい!!今すぐ殺しなさいっ!!!」  
 
眦に涙を滲ませ、眞子は凄まじい剣幕で怒鳴り散らした。  
だが彼はそんな彼女を見ても、当然のことではあるが、無表情のままだった。  
その姿に怒りを強め、眞子は更に罵倒しようと口を開いた。  
 
だが代わりにその口から漏れたのは、布を裂くような悲鳴だった。  
 
「・・・いやだっ・・・そんな・・・そこは・・・」  
 
怒りさえ打ち消すほどの強い痛みに、彼女は恐る恐るスカートに目をやった。  
その体が再度攻撃され、大きく震える。  
新たに咬撃されたのは女の特に敏感な器官、クリトリスであった。  
 
「ひあああぁっ!!」  
 
3度目の咬撃に少女の腰がびくんと跳ねる。  
痛みによって充血した肉芽が硬くしこり、ますます敏感になった体に魚たちは次々と食いついていった。  
 
「痛い!痛い!痛いいぃっ!!」  
 
乳首に、クリに、陰唇に次々と牙を突きたてられ、痛みに全身が何度も硬直する。  
痛覚に脳を焼き尽くされながら、眞子は脂汗を流して悶え苦しんだ。  
 
「くうううぅっ!!」  
 
もう何回目か分からない陰唇への咬撃に、眞子は身を捩って悶えた。  
既に上下とも下着が切り裂かれ、胸も股間も服の中で剥きだしになっている。  
上と比べると下、つまり股間の出血は酷かった。  
と言っても所詮大きな動脈からのものではないため、彼女の死を大して早めてはくれないのだが。  
 
だが陰部を濡らす血液は、肉食魚たちにとってはかなりの滋味であった。  
一匹が噛み付く度に、別の個体は口の周りにある味覚神経で血の味を堪能した。  
それは上半身についても同様で、魚たちは痛みにのたうつ少女に何度もキスをくれてやった。  
 
「くっ!!ううっ!!」  
 
眞子は両目から涙を流し、震えながら陵辱に耐え続けた。  
だが彼女は気付かなかったが、その股間は既に血とは別の液体で濡れ始めていた。  
いや、気付かないと言うより敢えて気付かないふりをしていたと言うべきか。  
それを認めるのは彼女にとってあまりに酷なことであった。  
・・・例えそれは生理反応に過ぎず、何ら彼女の責に負うものでは無いのだとしても――。  
 
そしてその変化に捕食者たちは気付いていた。  
だからこそ彼らは攻勢を次の段階へと進めようとしていた。  
 
「くんっ!!」  
 
突然噛まれていない方の小陰唇に牙が立てられる。  
そうやって魚たちは両方の唇をホールドし、腹鰭を縮めて力を溜め込んだ。  
――そして次の瞬間  
 
「ひぎいいいいぃっ!!」  
 
小陰唇が両側に向けて思い切り引っ張られた。  
薄い襞が目一杯引き伸ばされ、眞子は痛みと共に切ない疼きを感じた。  
今まで閉じていた部分に外気が流れ込み、その冷たさが本能的な恐怖を煽り立てる。  
 
「やっ、やめなさぃっ・・・・・お願い・・・もうやめて・・・」  
 
強気だった彼女の声は既に弱々しく、最後の方は涙声になっていた。  
 
だがそんな声など聞こえないかのように  
或いは聞こえたからこそ  
ファングは怯える少女の中へと踊り込んでいった。  
 
「っきゃああああああああぁぁっっ!!!」  
 
それは長く、悲痛な叫びであった。  
 
「あっ!!ああっ!!あっ!!」  
 
目を見開いて自らの股間を凝視する眞子。  
スカートが邪魔でその部分は見えなかったが、それでも彼女の中には確実に何かが入ってきていた。  
何かとは即ち、肉食魚の胴体である。  
3分の1以上は入り込んだその胴体に膣が押し広げられ、狭い空間が埋め尽くされる。  
 
「いや・・・・・いや・・・・・」  
 
信じられないと言う面持ちで呟く少女は、だが直後嫌でもそれを信じねばならなくなった。  
侵入したファングが動き出したのである。  
 
「きゃあああっっ!!あっ!!うわああっっ!!」  
 
固い鱗に覆われた体が滅茶苦茶に動き回り、眞子は脳髄を直接掻き回されているような錯覚を覚えた。  
強い刺激に膣がぎゅぅっと収縮し、魚の体を締め付けて更に快感を増大させる。  
 
「んぎっ!!ぎっ!!んぐうぅっ!!」  
 
生きてきて未だ感じたことも無いような感覚に、眞子は歯を食いしばって抵抗した。  
気を抜けばそのまま流されてしまう。  
その先にあるものを想像すると、少女はおぞましさに発狂しそうになった。  
 
だがそんな彼女を見透かすように胸を責めていた連中が追い討ちをかける。  
乳首を咥えたまま、陰唇と同じようにぐいぐいと引っ張りだしたのだ。  
 
「ぅぎいいぃぃっっ!!!っううっ!!っぎいぃぃっっ!!!」  
 
乳首が引っ張られる度に灼けるような快感が炸裂し、少女の理性を奪い去っていく。  
小さな木製のドアを破城槌でぶっ叩き続けるような凄惨な宴。  
その中で内側からドアを抑え続ける眞子は、自分の限界が近いことをひしひしと感じ取っていた。  
 
「やめてえぇ!!もうゆるしてえぇ!!」  
 
涙を流しながら加虐者たちに許しを乞う少女。  
だがそんな彼女に死刑判決を突きつけるように、膣内のファングが目一杯奥まで潜り込んだ。  
そのまま子宮口にがぶりと歯を立てる。  
 
「――きゃああああああっっ!!!!ひあっ!!あっあっ!!・・・ぁああああああぁぁっっ!!!!」  
 
辺りに響き渡るとてつもない絶叫。  
秘裂から大量の愛液をしぶかせ、昇り詰めた体が滅茶苦茶に痙攣し、跳ね回った。  
 
 
・・・やがて興奮から覚め、理性が戻ってきた時、少女は自分がされたことを理解した。  
両目から一筋の涙が零れ、顔がくしゃりと歪み、眞子は小さな子供のように声を上げて泣き始めた。  
 
「うわああぁん・・・!ひっ、ぐすっ・・・わあああっ・・・」  
 
涙と鼻水が混じり合い、顎から垂れて胸元のファングに降り注いだ。  
泣いても泣いても涙が溢れて止まらない。  
 
どんなに強がってみても自分だって女なのだ。  
尊敬できる優しい人と、まではいかなくとも、時には素敵な恋に憧れもした。  
自分だって女なのだ。  
よりによって魚に犯されて達してしまうなんて、そんなの、あんまりだ。  
 
「汚れちゃったよぉ・・・ひくっ・・・私・・・汚れちゃったよぅ・・・」  
 
女としての自分は終わってしまった。  
少なくとも彼女はそう考えた。  
失った物の重みを涙で埋め合わせようとするかのように、少女はただひたすらに泣きじゃくった。  
 
・・・だが、少女に哀れみを投げかける者はこの場にはいなかった。  
少なくとも魚たちはその者では無かった。  
それを裏付けるように、彼らは傷ついた少女に更なる陵辱を加え始めた。  
 
「ひいいいぃっ!!!」  
 
苛め抜かれ、尖りきった乳首が強く引っ張られる。  
痛いくらいの快感が電流のように走りぬけ、少女は海老のように体を反り返らせた。  
未だ痺れの残る膣口が絶頂の快感を思い出してひくひくと動く。  
再び暴れ始めたファングの胴体が濡れそぼった膣壁を打ち、愛液を跳ね散らかしてびちびちと鳴った。  
その音はあまりにも卑猥で、眞子は掌だけになった両手で懸命に耳を覆った。  
 
「嫌ぁぁ!!もう嫌だぁぁ!!もぅイきたくないよぉぉ!!!」  
 
髪を振り乱しながら駄々をこねる子供のように泣いて哀願し続ける。  
だが次の瞬間、彼女は嘆願の言葉さえ失うことになった。  
 
――突然陰核の皮が剥かれ、歯を立てて思い切り引き伸ばされたのだ。  
 
「――っあ゛あぁあああああぁぁっっ!!!!」  
 
再び高みに達した体がガクガクと震え、口が酸欠の金魚のようにぱくぱくと開閉する。  
魚を咥え込んだままの膣口は、この時を待ち望んでいたかのようにぎゅうぎゅうと収縮を繰り返した。  
40  
「ぜえっ・・・!はあっ・・・!はあ・・・はぐうううっっ!!!」  
 
乱暴な絶頂に涙を吹き零し、必死に息を整えていた眞子は、急に目を見開いてがくんと仰け反った。  
秘唇をこじ開けて、さらに2匹のファングが押し入ってきたのだ。  
一体でも狭かった膣は無理やりに拡張され、遂にみりみりと破れた。  
 
そうやって体を埋めた魚たちが、力の限りに暴れ始める。  
激痛に脳が真っ白になり、その空白化した意識空間を快感が埋め尽くしていく。  
この時眞子は悟っていた。  
今まで自分がされてきたことは、所詮前戯に過ぎなかったのだということを・・・。  
 
「・・・っああぁっ!!!・・・あっ!!」  
 
大きく体を震わせ、眞子はもう10回を数えようかという絶頂を受け入れた。  
 
「・・・ああ・・・ああぁ・・・」  
 
眉をハの字に寄せ、少女は静かに涙を零し続ける。  
弱々しく打ちひしがれた彼女は、だが一分も経たないうちに次の絶頂に追いやられた。  
どれだけ嫌だと思っても無理やり達させられ、涙の一滴まで陵辱されていく。  
 
「・・・ころして・・・もう殺してぇ・・・」  
 
いつからか少女はイってない時間帯はそればかりを口にするようになっていた。  
そんな彼女の意思などお構い無しに股間の突起が引っ張られ、膣が収縮して魚たちを締め付ける。  
それを合図に「次」がやってきて、力なく泣き、なす術も無くまた「次」を受け入れる。  
もはや眞子には抵抗する言葉さえ無くなっていた。  
ただ一方的に陵辱され、魚たちの望むままに達し、口を開けばただ死を願い続ける。  
 
そんな願いを聞き届けたのか。  
或いは壊れ切った少女に飽きたのか。  
ともかく彼らは長かった遊びを終いにすることに決めた――。  
 
「ぐふうっ・・・!!?」  
 
幾つかの牙が腹に突きたてられる。  
そのまま腹筋が切断され、ピンク色の内臓が外気に晒された。  
同時に膣内のファングたちも子宮に牙を立て始める。  
 
「あがあっ!!!がはあっっ!!!」  
 
顎たちが鋭利な刃物のように眞子の中を切り刻んでいく。  
雑菌の混じった血が体腔内に満たされ、あっという間に敗血症が引き起こされた。  
 
「あ・・・っ!!!・・・っぁ・・・・・ぁ・・・」  
 
凄まじいという言葉さえ生ぬるいほどの圧倒的な激痛の中、視界が急速に闇に覆われていく。  
途切れていく意識の中、眞子の脳裏には懐かしい笑顔が浮かんでいた。  
 
「ひめ・・・の・・・・・さ・・・え・・・・・こ・・・・・」  
 
親友の名を呼び終えると眞子は大粒の涙を流し、同時に大量の血を吐いた。  
そのまま彼女の体は活動を停止し、2度と動くことはなかった。  
 
 
眞子の内臓は奇麗で柔らかく、魚たちにとっては最高の御馳走であった。  
胸元のファングは最後まで少女の顔を見つめていたが、涙を流して少女が事切れると、仲間たちの晩餐に合流していった。  
 
腹一杯になった彼らがその顎を休めるのは、その後一時間近く経ってからのことであった。  
 
「どんな人が好き・・・かぁ。」  
 
冴子は苦笑しながら答えた。  
 
「特にタイプはないけど、強い人かな。私より先に死なない・・・って、えっと、姫乃はどうなの?」  
 
「んー・・・。やっぱり優しくて、大切にしてくれる人かなぁ。『先に死なない』なんてロマンチックなんだね。」  
 
「・・・いやまあ、うん。」  
 
姫乃の言葉に冴子ははぐらかすように生返事を返した。  
学校帰りに姫乃の部屋に集まるのは、彼女たち3人の恒例行事だった。  
その3人の最後の一人、眞子に冴子が問い返す。  
 
「そういう眞子はどうなのよ?」  
 
どういう話の流れだったか忘れたが、元々は眞子が振ってきた問いかけであった。  
だが当の本人は問い返されても  
 
「いや私は・・・恋とかそういうのは、あまり興味が・・・」  
 
などと言うばかりで、何とも歯切れが悪い。  
だがそれでも冴子が問い詰めると、観念したように小さく答えた。  
 
「えっとその、強いて言うなら・・・私もあの・・・・・優しい人・・・かな。」  
 
 
「・・・その後色々とからかったら、顔を真っ赤にして怒ってたよね。」  
 
そう言うと冴子は力なく笑った。  
涙で頬を濡らしたそれは、恐らくこの世で最も悲しい種類の笑顔であった。  
それがゆっくりと掻き消えた時、冴子は小さく言った。  
 
「ありがとう。眞子に会えて私は幸せだった。人生の中で、一番に幸せだった。」  
 
 
結局眞子を埋めてやることさえせずに冴子は立ち去った。  
感傷に流されて彼女を弔ったなら、自分の存在が周囲に気付かれかねない。  
それは何よりも、眞子の死を無駄にすることになってしまう。  
 
「・・・でも大丈夫だから。私は貴方を弔うから。」  
 
顎に力を込め、冴子は誰にともなく呟いていた。  
 
「貴方を死に追いやった連中を、1人残らず同じ目に合わせてやるから・・・。」  
 
低く呟きながら、彼女は鬼気迫る様子で歩き続けた。  
上下の歯が凄まじい力で噛み合わされ、いつしか犬歯が下唇に食い込んでいる。  
 
――それでも冴子は、人食いの魚のような形相で、その顎に力を込め続けた。  
 
 

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