『さっきまでとっても怖い目に遭ってたような・・・。』  
 
きらりは足元の体重を移動させたとき、ぐにゅっとした何かを踏んづけているのに気づいた。  
『ああんっ。』  
『何?』  
誰かが喘ぐ声を聞いてきらりは慌てて下を見た。そこには肌色をした物体が横たわっていた。  
 
『うううっ。』  
『せ、星司くん!?』  
それは、亀甲縛りにされ横たえられた星司だった。全裸で股間は前張りで隠されていた。  
 
『な、何やってるのこんなとこで?一体誰がこんなことを?』  
『今助けるから。』  
『ダメだよきらりちゃん。撮影の途中だよ。』  
『え?撮影?』  
きらりは、まず自分自身に意識を向けた。  
ハイヒールのロングブーツに網タイツ、かなりきわどく食い込んだレオタードのようなものを着ていた。  
股間はもとより、ヘそを大きく出し、トップは隠れているものの胸の上部の露出はかなり大きい。  
それにサイズが小さいせいかかなり窮屈だ。そして、頭に帽子をかぶり全身黒ずくめ。  
しかもなぜか、ぴっちりした肘近くまである長手袋をはめた手にはムチまで握り締めている。  
一般にボンデージと呼ばれるファッションだが、きらりには知る由もない。  
『何この格好?』  
 
『カーット!』  
『ノンノンノン。どしたのきらりちゃん?』  
『ここは、ムチでビシビシッとやってから、かかとで踏んづけて「女王様とお呼び」で決まりなのーん。』  
『さあ、もう一回やってみるのー。はいテイク2スタート!』  
 
頭の中には疑問符が渦巻いていたものの、きらりは身構えた。  
撮影をスタートされた以上従ってしまう、芸能人としての性だった。  
 
ぴし!  
『あっ!』  
ヘロヘロのムチが座った星司の背中を軽くひっぱたき、星司は軽くあえいだ。  
 
『ノー!カーットカーット!!それじゃダメなのー。』  
『こうするのー。』  
監督は、きらりからムチをひったくると、星司に向けてそれを振るった。  
 
ヒョン  
ムチは目にもとまらない速度で空を切ると、星司の背中にその痕を刻んだ。  
『ぎゃ!』  
ヒョンヒョンヒョン  
『ぎゃはっ!』  
ムチの振るわれた痕が赤く腫れあがっていく。  
 
『ああああ・・、や、やめて!!星司くんが・・・。』  
その光景を見て、きらりは思わずふたりの間に飛び込んだ。  
 
『監督!なんでこんなひどいことをするんですか!?』  
『なんでって?芸術的作品のために決まってるのー。』  
『だからって、こんなこと!』  
 
監督と対峙するきらりに背後から星司が声をかけた。  
『そのとおりだよ。きらりちゃん。』  
『星司くん?』  
『忘れちゃったの?約束したよね?』  
『約束?』  
『どんなことがあっても役を演じきるってこと。』  
 
きらり自身に全く覚えがないが、どうやらそういう約束になっているらしい。  
そして、そうすることがみんなのためであり、きらりのためとなることを星司から延々と諭されるのだった。  
 
『テイク3!』  
『月島きらりいきます!』  
 
ヒュン、ピシ、ヒュン、ピシ  
『ああああっ!』  
きらりはムチを振るったあと、座った星司の肩に背後からかかとを乗せた。  
『(星司くんゴメン!)女王様とお呼び!』  
 
『ノー!全然なってないのー。もっと素早くムチを振るって欲しいのー。』  
『それにもっと本気でやってくれないと困るのん。』  
『(ダメだ。本気になってないのを見透かされてる。)』  
『やり直しなのーん。』  
 
ビュン、ビシ、ビュン、ビシ  
『ぐぁああっ!』  
『(ああああ、星司くんが傷だらけになっていく・・・。)』  
『女王様とお呼び!』  
 
『さっきより良くなったけど、まだまだ足りないのー。やり直し。』  
 
説得を受けてようやくやる気になったきらりだったが、  
心優しいさからつい星司のことを気遣ってしまい、なかなかうまくゆかずリテイクばかり。  
その間、きらりの意図とは反対に、どんどんと星司の傷は増えていった。  
 
『ゴメンね星司くん、あたしのせいで。ほんとゴメン』  
『ううん僕は平気だよ。気にしないで思いっきりやってね。』  
傷だらけになりながらも、星司はにっこりと微笑んだ。  
 
『何だろうこの感覚・・。胸がキュンとした感じ。』  
その星司の微笑みに、きらりはいままで感じたこともないときめきを覚えた。  
そして、その効果が目に見えて現れ始めた。  
 
『テイク20。スタート!』  
 
『はあはあはあ。』  
きらりはムチを構えた。今までになく息が荒いことに当人は気づかなかった。  
ヒュヒュヒュヒュ、ヒョンヒョンヒョン  
ムチが目にも止まらぬ速度で星司を打ち据えた。  
『ひぃぎゃあああああ!』  
 
そのひときわ大きな叫び声に、きらりの鼓動が高鳴った。  
王子様のようにきれいな星司の横顔が、苦痛に歪んで叫び声をあげている。  
その様子を見てボーッとした感覚に襲われたきらりは、そのまま躊躇することなく星司を背後から蹴り倒し、背中を思いっきり踏み抜いた。  
『ぐぎゃああああああ!』  
 
『女王様とお呼び!・・・あはぁっ。』  
さらなる叫び声に呼応するように決められた台詞を吐き、ポーズを決めると、思わずその快感に溜息が漏れた。  
 
一瞬の静寂のあと、監督の声が響いた。  
『カーット!!非常に良かったのー。とっても色っぽかったのー。スンバラシイ。』  
周囲のスタッフからも拍手を受け、きらりは我に帰った。  
星司もあれだけの苦痛を受けながらも、にこやかな微笑みできらりにエールを送った。  
きらりは顔を赤らめていた。  
 
『ありがとうございます。』  
皆に礼を言いながらきらりは気づいた。自分の股間が少し濡れていることに。  
 
『じゃあ、次。今度は、きらりちゃんが星司くんに電気アンマをするシーン。』  
『電気アンマって?』  
『こうするのー。』  
監督はきらりの手を引っぱり、仰向けになった星司の前に立たせると、右足を星司の股間にあてがわせた。  
『そのまま体重をかけて、マッサージするのん。』  
『えええーっ?』  
 
『きらりちゃん僕は大丈夫だよ。また思いっきりやってね。』  
『星司くん・・・。』  
にっこりと微笑む王子様の笑顔に、きらりの頭がくらりとした。  
思わず平衡感覚を失い、星司の股間を前張りの上から踏んづけてしまった。  
 
ぐにゅっとした感触がブーツ越しに伝わってくる。  
『うくうっ。』  
『(やだ、この下に星司くんのおちんちんが・・・・。)』  
きらりは、自分の顔が赤さを通り越して、茹っていくのを感じていた。  
 
『さあ、どうしたの?続けてきらりちゃん。』  
『はぁはぁはぁ。(もう一度・・・。)』  
もう一度やってみたい欲求に、きらりは息苦しくなった。  
『くはぁっ。』  
星司が喘ぐと、ぐにゃりとした心地よい感触がブーツ越しに伝わってきた。  
 
胸の鼓動が高鳴り、頭のくらりとした感覚がいっそう加速し、きらりは何も考えられなくなった。  
くにゅくにゅとした心地良い感触を味わうべく、何度も何度も右足に体重を加えては緩める作業を続けた。  
 
『あっあっあっ・・・。』  
『はっはっはっ・・・。』  
漏れ出る息遣い。それらはさらに加速していく。  
星司の股間が硬く膨らんでいくたびに、きらりが加える振動も速く強くなっていく。  
2人は荒い息遣いでハーモニーを奏でることに夢中になっていった。  
 
星司が背中を大きく仰け反らせたとき、ハーモニーは終焉を迎えた。  
『くうううっ。はあっ、はっはっはっ・・・。』  
先に最高潮を迎えたのは星司だった。膨らんだ股間が次第に硬さを失ない縮んでいく。  
 
『カーット!』  
『今度は一発OKなのん。スンバラシイ。』  
 
いまだ興奮覚めやらぬきらりを監督の声が正気に引き戻した。  
我に返ったきらりは肩で息をしていた。そして、自身の股間から液体が染み出しているのを感じていた。  
『やだあたしったら・・・。』  
 
『きらりちゃんとっても良かったよ。思わず感じちゃった。あはぁっ。』  
いつもと違う王子様の微笑みを受け、ついにきらりは立っている事ができずがくりと膝を付いた。  
 
『あっあっあっ、あっあ・・。』  
陰部は小刻みに痙攣していた。きらりはその痙攣の周期に呼応するように喘いだ。  
股間から温かいものが広がっていき、網タイツをとおしてブーツの中に流れ込んこんでくる。  
きらりはそのすべてを出し尽くすまで、身も心も濡れていく感触にしばらくの間浸っていた。  
 
 
『なあに?こんどはSに目覚めちゃった?』  
『きらりちゃん素晴らしいのレス。この調子でどんどんとイクのレス。』  
 
「ズバババッ。」  
『ひぐっ!』  
 
 
(つづく)  
 

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