草原の真ん中を、一本の道が走っていた。
森から伸びた道は真っ直ぐに草原を突っ切って、その先にある城門の前まで
続いていた。
その道の上を、一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)
を押して旅人が歩いていた。
旅人は白いシャツを着て、その上から黒いベストを羽織っている。黒髪の上に
鍔のある帽子を被っていたが、その帽子もベストもすべて泥塗れになっている。
帽子の下から覗く若々しい顔にも、泥がしっかりとこびり付いていた。
旅人はハンドルが曲がったモトラドを押して、道の先に見える門へと歩いて
いく。
城壁が近づいてきて、門の前に立つ入国審査官の姿がはっきりと見えるように
なった頃、モトラドが小声で言った。
「ねえ、キノ」
「なんだい、エルメス」
キノと呼ばれた旅人が、疲労で息を切らしながら答えた。
「ホントにあの国に入るつもり?」
「もちろん。エルメスのブレーキも修理しなくちゃいけないし、ボク一人じゃ
それはできないからね」
「……でもさ。変わった国みたいだよ?」
「今まで訪れた国で、何一つ変わったところのない国なんてあった?」
キノが問い返すと、エルメスは少し黙ってから、
「それもそだね」
簡単に同意した。
「そういうこと」
頷いて、キノは顔を前に向けなおした。
すぐ目の前に城門があって、満面の笑みを浮かべた審査官が両腕を広げて
歓迎の仕草を見せていた。
「ようこそ、旅人さん! 歓迎しますよ!」
審査官は、全裸だった。
キノが三日間の滞在を希望すると、審査官は、それは構わないのですが、
と前置きしてから一つの条件を持ち出してきた。
「服を脱げ、ですか?」
「……やっぱり」
エルメスが小声で呟いた。
キノはそんなエルメスの声を無視して、審査官に質問した。
「理由を聞かせてもらえますか?」
「一言で言ってしまえば、私たちの国では服を着ることは不道徳だとされて
いるからです」
審査官はそう言って、真面目な顔で説明を始めた。
「私たちの先祖は、どこかからこの土地にやってきた移住者だったと言われて
います。ですが、この土地には危険な風土病があって、特に乳幼児の死亡率
が非常に高かったのです。
もちろんご先祖さまたちは、治療の努力をしました。ですが、当時の技術では
完全な治療は不可能だったのです。仕方なくご先祖さまたちは、子孫を途絶え
させない為に次善の策を採ることにしました。たくさんの子供を生むことで、
死んでいく子供の数を補おうとしたのです。
……今では風土病の予防手段も発達し、昔ほど子供をたくさん生む必要は
なくなったのですが、セックスは重要な文化の一部になっています。そして、
服を着て過ごすことはセックスを拒むという意味にとられ、とても不道徳な
ことだとされているのです」
「……」
審査官の説明が終わっても、キノは何も答えなかった。
その隣で、エルメスが明るい声を上げた。
「なるほど。つまり、他の国とまったく逆の価値観を持ってるわけだ」
「そうですね。色んな旅人さんがいらっしゃるのですが、皆さんそう言って
いるようです」
審査官が頷いた。
エルメスは固まったままのキノの顔を見上げて、
「……で、さ。どうするの、キノ?」
と聞いた。
キノはやっぱり何も答えなかった。
「時々思うんだけどさ、キノって変なところで強情だよね」
キノに押されて大通りをゆっくりと進みながら、エルメスが言った。審査官
から貰った地図によれば、この先にモトラドの修理店があるはずだった。
賑やかな大通りだった。道路は清潔で、街の人の顔も明るい。公園からは
子供たちの笑い声が聞こえ、街路樹の下のベンチでは恋人たちが愛を囁き
あっていた。
そして、服を着ている人は誰一人としていなかった。
おままごとをする子供たちは、ゴザの上で裸のまま抱き合っている。
十歳過ぎくらいの少女一人を三人の同年代の男の子たちが囲んで、まだ皮の
剥けきっていない男根で秘裂と肛門と乳房を同時に弄んでいた。膨らみかけた
ばかりの乳房に押し付けられていた男根から白い液体が迸って、少女の顔を汚す。
少女は楽しそうに、顔にかけられた精液を舐めとった。
恋人たちは他人の目を気にした風もなく、甲高い喘ぎ声を上げて互いの身体を
求めあっていた。
「……変なところって?」
そんな中を、顔を伏せて歩きながら、キノが言った。
キノの肌は普段より赤く染まっている。それがはっきり分かるのは、キノが
街の住人と同様に全裸になっているからだった。
より正確に言うなら、帽子と靴と腰に巻いたパースエイダー付きのベルト、
それが今キノが身に着けている全てだった。帽子を目深に被っているせいで、
顔は周りから見えにくくなっていた。
「例えば、今回のこと。そりゃ修理は必要だろうけどさ、イヤなら無理して
三日間も滞在しなくてもよかったじゃない」
「それはダメだ」
きっぱりと、キノは頭を振った。
「一つの国には三日間。そう決めてるんだから」
「ふーん」
どうでもよさそうな声で、エルメスは唸った。
「でもさ。それなら、もうちょっと堂々と歩いた方がいいんじゃない?
そんなに内股だと安定が悪くなるよ?」
キノの肌がますます赤く染まって、
「……別にいいじゃないか」
憮然とした調子でそう答えた。
「まあ、いいんだけどね」
それで、一旦会話は終わった。
お互いに無言のまま、エルメスを押してキノが歩く。エルメスは興味深そうに
周りを見回していたが、キノは足下だけしか見ていなかった。
しばらくして、エルメスが言った。
「ところでさ、キノ」
「……なんだい、エルメス」
「何か水漏れしてるみたいだけど、大丈夫?」
「水漏れ?」
「そう。脚のところ」
自分の足を見下ろして、キノの顔色が変わった。
キノの両脚の、太股の内側辺りが透明な液体で濡れて、てかてかと光っていた。
滴はそのまま脚を伝って垂れ、白い靴下にまで筋を引いている。その上の方では、
股間の淡い茂みが露にぐっしょりと濡れて、キノの白い肌に貼りついていた。
茂みの中からは、痛々しいくらいに張った桜色の真珠が顔を出して、誘うように
小さく震えている。下から見上げる形のエルメスには、キノが足を動かす度に股間
の裂け目が息をしているかのように開閉し、その奥の真っ赤な柔肉を覗かせるところ
まではっきりと見えていた。
「うぁ……!」
突然、キノが思いっきりエルメスを突き飛ばした。
大きな音がして、エルメスの車体が横倒しになる。エルメスは小さく悲鳴を
上げた。
「うわ!……何するのさ、キノ!?」
キノはそれに答えず、両手で股間を隠すようにして後ずさる。キノの顔は、冗談
のように真っ赤だった。
そのキノの尻が、何か細いもので突つかれた。
「うわっ!?」
掠れ声を出してキノは振り返った。
そこには、五人くらいの子供たちが立っていた。一番年上の男の子は十二歳くらい
で、小さい女の子は八歳くらいに見えた。
そして、やっぱりみんな裸だった。
キノの尻をつついたらしい男の子が、目を輝かせて尋ねた。
「ねえ。お姉さん、ひょっとして旅人さん?」
「え……あ、うん。まあ……」
キノが答えると、子供たちからわっと歓声が上がった。
「ねえ、他の国ってどんなところ?」
「いつから旅をしてるの?」
「それってパースエイダーでしょ。お姉さん、使えるの?」
「……えぇと、ちょ、ちょっと待って……」
右腕で胸を、左手で股間を隠しながら、キノは戸惑った声を上げた。
子供たちは好奇心で目を輝かせて迫ってくる。
身を縮めたキノの身体に子供たちの視線が集中して、股間に当てた指の間から
抑えきれなかった蜜が溢れ出した。路上に落ちる滴の数が徐々に増える。右腕
の下では、小さな乳首が固く立ち上がり始めていた。
「はぁ……」
キノが溜息をついた。身体に篭った熱気が漏れ出したような、潤んだ調子の
吐息だった。
「あ、そっか」
子供たちの中で一番年長らしい男の子が、何かに気づいたように頷いた。
仲間たちの方に振り返って、宥めるように大きく両手を上下させる。
「おーい。みんな、落ち着くんだ」
子供たちの注目が、キノから男の子に移る。
「旅人のお姉さんに迷惑をかけちゃいけない。自分たちの都合ばっかり
押し通しちゃいけないって、先生も言ってただろう? お姉さんにも
楽しんでもらわなくちゃ」
男の子の言葉に、子供たちが頷いた。
それから男の子はキノの方を向いて、
「お姉さん。僕たちがお姉さんの相手をしますから、旅のお話をして
もらえませんか?」
「……あい、て?」
熱に浮かされたような声で、キノが言った。
「はい。……こんな風に」
男の子がそう言った瞬間、キノの身体が跳ねた。
「ひぁっ!?」
キノの太股を抱えるような格好で、女の子がしがみ付いている。その口が
キノの股間に吸いついて、秘裂から直接愛液を啜っていた。
「だ、だめ……」
キノの腕が弱々しく動いて、女の子の髪を掴んだ。
だが、それを引き剥がすより早く、後ろに回り込んだ少年が尻の谷間に指
を伸ばしてくる。子供の細い指がキノの尻を割り広げ、剥き出しになった尻
の穴に暖かくぬめった舌が侵入してきた。
「ちょ、そこは……やぁっ!?」
普段の姿からは想像もできないような、弱々しい声でキノが喘ぐ。
年端もいかない子供二人に秘所を舐められている、という異様な状況。
しかし、街の住人は、その光景を微笑ましいものでも見るかのような穏やか
な様子で眺めていた。
「やあ、旅人さん。子供好きなんですね」
「こらこら、あんまり旅人さんに纏わりついて迷惑をかけるんじゃないぞ」
キノの耳に、そんな声が届く。
涙で滲んだキノの視界に、大人たちが笑いながら子供たちに声をかける
姿が映った。
それは、何でもない日常の光景だ。
そして、二枚の舌を秘裂と肛門に差し入れられて喘いでいるキノの姿も、
この街では日常の一つでしかない。
女の子が舌を抜き、代わりに指を二本、キノの秘所に差し入れた。
滾々と蜜を吐き出し続けるそこを指で大きく開いて、女の子は覗き込む。
「お姉さんのココ、すごくきれい……」
「ひ、ひらいちゃ、らめ……」
「え?」
キノが言うと、女の子は不思議そうな顔をした。
素直に顔を離すと、もう一本指を追加して、三本の指でキノの膣内を掻き
回す。
敏感な襞を一枚一枚撫でられる感触に、キノは不明瞭な叫びを上げて、紅潮
しきった身体をくねらせた。口の端から垂れた涎が散って、キノ自身の身体と
女の子の顔を濡らす。
年長の男の子がキノの腕をとって、自分の方に引き寄せた。
下半身に子供をしがみつかせたままのキノは、抵抗する様子も見せず前屈み
になる。
そうやって近づけたキノの胸に、男の子はむしゃぶりついた。
小振りな乳房を男の子の手が乱暴に揉みしだき、先端で震えている桜色の
乳首が歯と舌で愛撫される。固くなった乳首を甘噛みされるたび、キノの声
は一段と高くなった。
男の子の左手はキノの腕を掴んだまま、空いた左胸を右手で柔らかく撫で
まわす。触れるか触れないかの微妙な動きで丘の麓をなぞると、乳房は待ち
きれないように震えて、自分への刺激を要求した。
「焦らさないで……ねぇ、はやく……はやく……!」
切羽詰ったような声で、キノは男の子の右腕を掴んだ。
男の子が、にっこりと嬉しそうに笑う。
そしてその手が、キノの乳房を鷲掴みにした。手の中で柔らかい肉が
様々に形を変え、ぐにぐにと艶かしく蠢いている。キノのつつましい胸
は、男の子の手には丁度いい大きさだった。
指で乳首を摘み、固くなったその突起を乱暴に捻り上げながら、乳房
全体を、乳牛に対してするように搾り上げる。
「ひきぃぃぃっ!?」
敏感な部分をいたぶられる感覚に、キノの声に苦痛の色が混じった。
「だ、だめ……! つ、つよすぎて……そんなことしても、で、出ない
……!」
「出ないって、何がですか?」
「お、おっぱい……おっぱい、出ない、から……っ!」
「えー、残念」
乳首から口を離して、男の子が心底残念そうに言った。
「お姉さんのお乳、美味しそうなのに……」
「でも、お兄ちゃん。こっちはすごくいっぱい」
秘裂に口をつけていた女の子がそう言って、舌で陰核を舐め上げた。
キノが嬌声を上げ、秘裂から新たな蜜が溢れる。女の子はそこに口を
寄せると、さも美味しそうにキノの愛液を舐め取った。
「うん、こっちも」
尻にしがみついていた少年も、固くした舌で楽しそうにキノの肛門を
嬲っている。舌を深く付き入れ、直腸の内壁を舌で擦り上げるたび、
キノは尻をくねらせて激しい反応を見せていた。
少年の唾液とキノの腸液とが混じり合って、白い泡が飴色の排泄口
から漏れ出している。
「よーし、じゃあそろそろいこうか」
年長の少年が言うと、子供たちはキノの身体から一度離れた。
支えを失って、キノは地面に倒れこむ。横たわって荒い息をつくキノの
顔には霞がかかったようで、既に理性の色は残っていなかった。
顔にはほつれた髪がべったりと貼り付いて、半開きの口元からは涎が
たらたらと零れている。
汗と唾液と愛液と……色々な液体でキノの全身は濡れそぼっていた。
それは人間というよりも、粘液まみれの白い肉塊、とでも言った方が近い
ような有様だった。
少女の一人が、自分の尻に手を伸ばす。
「んっ……んーーーっ!」
力んだ少女の手の中に、直径三センチ程の白い管が落ちてきた。管には
幾つもの節があって、ぬるぬるとした光沢を持っている。そしてその先端
は、少女自身の尻穴の中から這い出していた。
「あ、心配しなくてだいじょうぶです、お姉さん。この虫はアナルセックス
用に開発されたもので、人体には無害ですから」
緩慢な動きで身をよじる虫を手に、少女が艶っぽい笑みを浮かべた。
その先端、イソギンチャクのような細い触手を備えた頭部を舌で湿らせ、
少女はキノに近づく。そして、ぐったりとしたキノの足を一本抱え上げると、
ひくひくと物欲しそうに痙攣している尻穴にその頭をあてがった。
「う……うぁ!? や、やぁぁぁぁぁっ!?」
虫が潜り込み始めた瞬間、キノは大きく目を見開いて絶叫した。
だが、虫はそんなキノの反応に頓着することなく、ゆっくりと尻穴へと
身を沈めていく。虫が身体を進めるにつれ、その節ばった体がキノの括約筋を
強制的に開閉させる。
少女は虫とキノの結合部に顔を寄せ、舌で虫の身体を湿らせることに没頭
していた。虫が動くたび、虫の後ろ半分を沈めた少女の直腸にも刺激が走り、
うっとりとした表情に朱を走らせていく。
「ふぁ……ひ、広がる……ひ、拡げられてるぅ!」
「いいよぉ……お姉さんのお尻、すごくいいのぉ!」
同調した痙攣を見せながら、キノと少女の喘ぎが唱和する。
残った子供たちはキノの身体に群がり、思い思いの場所にまだ幼い男根を
突きつけた。一本は口に、二本は胸に、そして一本は秘裂に。
子供とはいえ生臭い男の臭いが、キノの口の中いっぱいに広がる。キノは
それに舌を絡めると、口を窄めて一心に吸い始めた。
舌先で尿道を刺激し、先走りの液をたっぷりと味わう。カリ首を刺激すると
男根はキノの口の中で跳ね、小さな口腔で好き放題に暴れまわった。
その一方、乳房には男根が押し付けられ、柔らかい肌に粘液の跡をつけて
いく。男根の先端が乳首を押し潰すと、キノは身体を揺すって自分から胸を
押し付けていった。桜色の乳首が粘液に汚れ、固く痛々しいまでに勃起して
いる。
そして、虫が身をくねらせている尻穴の隣、愛液で濡れながら大きく口を
開いている秘裂に、年長の少年が男根をねじ込んだ。
「――――っっっ!!」
男根でふさがれた口からくぐもった声を上げ、キノの身体が折れそうな
ほど強く反り返った。
少年が乱暴に腰を前後させるのに合わせて、キノは自分から尻を押し付けて
いく。
少年の怒張と、少女の虫と。前後の穴を同時に貫かれて、キノは声も出せず
に涙を流して身もだえた。柔肉を男根に抉られるたび、キノの視界が真っ白
に染まっていく。
「お、お姉さん……! 僕たち、もう……!」
「わ、わたしも……お尻、お尻でイッちゃうのぉ!」
子供たちの声が高まり、それぞれの動きが速さを増す。
小刻みに震える動きに合わせるように、キノも大きく身体をくねらせて
応え――
「「う、うぁぁぁぁっ!」」
キノの身体が強く痙攣するのと同時に、少年たちは一斉に溜まった欲望を
吐き出していた。
キノの顔と胸に、白い粘液が降り注ぐ。目の焦点を失って恍惚とした表情
で、キノはその白濁を身体に受け止めた。
一拍遅れて、キノの膣と肛門を貫いていた男根と虫が引き抜かれる。膣内に
溜まった精液が秘裂から零れていくのを感じながら、キノは、虫の体が勢い
よく抜かれていく感覚に、二度目の絶頂を迎えていた……
「……ところでさ」
失神同然の姿で地面に横たわっているキノを見ながら、エルメスは呟いた。
「なんか忘れられてるように思うのは、気のせいなのかな?」
答えは返ってこなかった。
「せめて、起こしてもらえると助かるんだけどなー」
答える者は誰もいなかった。
「……」
エルメスは溜息をついて、それきり黙りこんだ。