久しぶりに誘われたデートで舞い上がっていたのだろう、と七瀬美雪は思った。  
最近はどこに行くにもフミちゃんや佐木君が一緒で、二人きりで遊びに行くなんてことはめったになかった。そのせいか、「遊園地のチケットがあるんだけど」と言われて、やたら気合を入れてしまったのだ。  
いとこのお姉さんから貰った高価な白のワンピースに、色を合わせた帽子とハイヒール。メイクも薄くだが、時間をかけてしてみた。  
それなのに寝坊して遅れるなんて! 約束の時間を30分も過ぎてから起きるだなんて、一体人のことをなんだと思ってるのだろう。  
近くにあったベンチに腰掛けて待っていると、急激に眠気が押し寄せてきた。今朝、張り切って4時起きでお弁当を作ったのが災いしたのだ。  
こんなことならお弁当なんか作るんじゃなかった、と自己嫌悪を感じながら何とか睡魔と闘っていると、頭上から男性の声がした。  
「あの、すみません。今の時間分かりますか?」  
「…あ、ええと10時…」  
慌てて顔を上げ、腕時計を見ようとした瞬間、何か不思議な香りを漂わせた布が口元にあてがわれた。それが何であるかすら確かめる間もなく、一瞬で、美雪の意識は暗い闇の淵へと落ちていった。  
(ここ…どこ? あたし駅前のベンチで…、はじめちゃんは?)  
薄暗い部屋で、美雪は目を覚ました。記憶があいまいで、自分がなぜこんなところにいるのか分からない。  
「気分はどうですか」  
「…!」  
 
声のしたほうを向いた彼女は、そこにいた男を見て顔面を驚愕の色に変えた。  
「高…遠さん」  
「手荒な真似をしてすみませんでした。ですが、どうしても貴方が必要だったんです」  
「私が…?」  
その言葉の意味がわからない美雪が聞き返すと、高遠は逆に尋ねてきた。  
「私のモットーはなんだか覚えていますか?」  
「犯罪は、芸術…」  
以前、彼が言っていた事を思い出して答えると、高遠は満足そうにうなずいて、唇の端にわずかな笑みを宿した。  
「そう、私は今まで何件もの殺人を犯してきました。しかし、殺人以外の芸術犯罪に対する欲望もあるのですよ。そう、例えば…可憐な少女が強制的に嬲られ、汚される様を見てみたいとね」  
美雪はその高遠の言葉に恐れ、目を大きく見開いた。  
「怖がらなくても平気ですよ。ほら、そろそろ身体に変化が現れる頃でしょう」  
高遠に言われるまでもなく、美雪の身体は変わり始めていた。彼女には知る由もなかったが、さきほど嗅がされたのは、睡眠薬に遅効性の媚薬を混ぜたものだったのだ。  
身体の中心が炎にあぶられたように熱くなり、触れられてもいないのに、様々な部分にじわじわと妖しい感触が押し寄せる。  
(…これは、何。…助けて、はじめちゃん…お願いっ!)  
戸惑う姿を楽しみながら、高遠は彼女に近づき、肩に手をかけた。服の生地の感触を楽しむかのように優しくさする。わざと指先を少しばかり首筋に這わせると、小さくびくっと震えるのが分かった。  
 
そのままぺろぺろと唇を舐め、固く噛み合わされた歯列をも、濡れた舌の先端で丁寧に刺激していく。反応してわずかに力が抜けたのを見計らい、歯の隙間に舌を差し込んだ。  
「なっ」  
舌同士が無理やり絡められ、まともに喋る事も出来ない。美雪の口腔内に収まりきらず溢れ出た高遠の唾液が、口からつっと胸元へ垂れ下がった。  
「い…いやぁ…」  
「趣味のいいワンピースですが、汚れては大変ですよ」  
服を撫でていた手が、背中のファスナーをゆっくりと下ろし、空いているほうの手で器用にブラジャーも外していく。それをはらりと床に落とし、白く滑らかな肌とともに豊満な胸の膨らみが晒け出した。  
「やっ!」  
高遠は隠そうとする美雪の手を頭の上でとりまとめ、片腕で押さえつけた。一見非力そうに見える細腕に隠された驚くほどの力が、美雪を拘束する。  
そうして自由を奪ったまま、長く形のいい指で左右の胸に円を描く。円周は徐々に小さくなり、ついには時々桃色の突起をかりっと掠めた。  
薬で敏感にされた身体に、その刺激は拷問だった。  
「や…やめ、て…くださいっ」  
「そう言う割には気持ちよさそうですが?」  
言うと、くりっと勃ち上がりかけの乳首をつまみ、指の間で擦り合わせながら、もう片方をちゅうっと吸い上げた。  
「は…や、だあっつ…」  
 
ちゅっちゅっと吸われた乳首は、先ほどとは比べ物にならないほど硬くなる。何度も繰り返すと、ますます声は大きくなった。  
「…はんっ…いゃぁっ…はぁっ」  
執拗に続けられる胸への責め苦で、美雪の身体はさらに熱くなっていた。特におへその下あたりは、何かに体内を這い回られているような感触が絶え間なく襲う。  
「おねが…やめてくださ…」  
「…仕方ないですね」  
胸から顔と手を離され、美雪はほっとした。しかしそれは、単にもてあそぶ対象を変えただけに過ぎなかった。高遠は、美雪のポシェットから携帯電話を取り出すと、着信履歴の一番上に載っている名前を呼び出した。聞きなれた幼馴染の声が流れる。  
「おう、美雪か? お前、どこにいるんだよ」  
「私の隣ですよ」  
「…高遠!?」  
さっきまであっけらかんとしていた一の声に動揺が走った。  
「久しぶりだね、金田一君。女性を待たせるのはマナー違反ですよ?」  
「今度は何だ? 美雪に何をしてる!?」  
「聞けば、分かりますよ」  
くくっと笑って、高遠は美雪への愛撫を再開しだした。胸の突起をくりくりと押しつぶすと、一の耳に電話越しに甘くすすり泣く美雪の声が届けられた。  
「ぁっ、はじめちゃ…はぁっ、たす…けてぇっつ…あっ、ゃあっ」  
「…美雪? おいっ、美雪に何してるんだよ、この変態野郎!」  
 
「変態とは失礼ですね。君だって私と同じじゃないですか。いつだって、彼女にこうしたいと思っていたはずでしょう? 私は君の望みをかなえてあげるんですよ」  
「…なっ」  
一が何か言うのも気にせず、高遠は美雪の唯一残された衣服に指をかけた。秘部を隠していた薄いレースの布が剥ぎ取られ、全てがあらわになる。  
「やっ、やだっ!」  
「きれいですね、七瀬さん。金田一君にも見せてあげたいくらいだ」  
柔らかな耳の中に舌をねじ入れ、息を吹きかけながら囁き、湿ったそこに指を這わせた。瞬間、美雪の身体がびくっと跳ねる。割れ目に沿って器用に指を動かすと、肩がひくひくと痙攣するように揺れ動いた。  
「…おや? どうしたんです」  
「なんっで…も、な…いで、す」  
美雪は唇をかみながら快感に耐え、なんとか虚勢を張ろうとしたが、もっとも敏感な芽を指の間に挟まれ、くりくりと左右に動かされると、声を押し殺す事はもう出来なかった。  
「はっ…い、やぁっつ…あっ」  
「気持ちいいんでしょう? 感じていると、素直に認めてしまいなさい」  
「そんなこと…はぁっ…ないですっ、…ぁあっ」  
顔を真っ赤に染めて必死に否定し、けれど確かに感じている美雪の姿に、高遠は目を細めた。あの金田一一の最愛の女性を、自分のこの手の中で壊してやったら、彼はどうするだろう?  
「そうですか。では、これならどうです?」  
さきほどまで指で辱めていたそこに唇を寄せ、べろっと全体を舐め上げる。美雪の背中が弓なりになり、手足ががくがくと震えた。  
 
「んんっ!」  
ぷくっと充血したそれを舌全体を使って丹念に舐め、唇に挟んでちゅぅっと吸い付く。高遠の口の中に、甘い汁がじわじわと染み出していく。  
「はぁっ…あ、ぁんっ、あぁっ」  
「そろそろ限界でしょう。…私が嫌だというなら、彼の姿で抱いてあげます」  
過剰な快感にぐったりとする美雪の前で、高遠はどこからか取り出したマスクや鬘を手早くつけていく。見る間に視線の先に、美雪のもっとも大切な人、金田一一の姿が現れた。  
「美雪、大丈夫か?」  
発せられた声・口調までも、一のものに酷似している。変装のプロの彼にとっては、このくらい造作のないことだった。  
「俺が楽にしてやるからな」  
一の姿を借りた悪魔はそう言うと、再び秘所に這わせた指に小刻みな激しいリズムを刻ませつつ、まだ誰一人受け入れた事のないくぼみに人差し指を一本だけそっと差し込んだ。  
鋭い痛みと鳥肌の立つような嫌悪感が美雪を襲い、彼女は悲鳴を漏らした。  
「…ぃ、たっ…や…痛ぁっ…」  
しかし高遠は中に入れた指を深く沈ませると、上下に激しく動かした。内部をかき回され、さらなる苦痛が美雪に押し寄せる。  
「やだっ…いっ…ぁあっ、いゃぁっ」  
高遠は、苦しむ表情を楽しむかのように、きっちりと固く閉ざされたそこを無理やり広げ、わずかに作った隙間に指をもう一本ねじ込んだ。狭い入り口から飲み込まれた指は、窮屈な内部でそれぞればらばらに周囲の壁を刺激した。  
「やめ、て…も、いやっ、は…じめちゃ…」  
 
目に涙を浮かべて懇願する美雪に、高遠は満面の笑みで優しく尋ねた。  
「俺の事、好きだろ? 美雪」  
「あなたなん、か…いくら顔や声を似せても…はじめちゃんじゃ、ない。…私が、好きなのは…、本物の…はじめちゃんだけよ」  
吐き捨てられた台詞に高遠は眉をぴくりと吊り上げ、マスクをべりべりと顔からはがして、床に放り投げた。マスクを脱ぎ捨てたその顔は、先ほどまでの温厚そうな表情とは一変した、冷酷な殺人者のそれだ。  
途切れ途切れに、しかしきっぱりと言い放った美雪の前髪を乱暴に掴み、頭をぐいっと上に向けさせると、その怯える顔の目の前で高遠は口を開いた。その声や口調も、既に高遠自信のものに戻っていた。  
「そんなに彼がいいというのですか! 探偵気取りのあんな坊やが?」  
「そうよ…。あなたなんか、はじめちゃんとは…比べ物にもならない」  
その言葉に、高遠の目が蛇のように残忍なものに変わった。  
「しかし私は、少なくとも彼より優位な立場にいるんですよ。…ほんの少し力を加えるだけで、彼のもっとも大切な貴方に最大の恥辱を与える事も出来るのですから」  
高遠は真剣なまなざしで、美雪の両腕と肩を床に押しつけた。  
「いやっ…やめて!」  
身体をよじり、何とか逃げようとするが、押さえられたままではろくに動く事も出来ない。美雪の脚の間に、高遠の猛った切っ先があてがわれた。その気色の悪い感触と恐怖に息を呑み、目をぎゅっとつぶる。  
「挿れますよ」  
 
かすかに笑いを含んだ声とともに、そこに力が込められようとしたそのとき、部屋の外から誰かの叫び声が聞こえた。ガンガンと扉が叩かれる。  
「ゲーム・オーバーですか。…仕方ない。次の機会を楽しみにすることとしましょう。」  
舌打ちしながらそう言うと、高遠はぱちんと指を鳴らした。次の瞬間、彼の姿はそこから消えうせ、代わりに一輪のバラの花が残されていた。  
それと同時に激しい音がして扉が開かれ、ばたばたと急ぐ足音が部屋の中を鳴り響いた。  
「美雪! どこだ?」  
「はじめ…ちゃん…」  
助けを呼ぶ小さな声を聞きつけ、美雪のもとへ駆け寄った一は、そのあられもない姿を目にして、顔を青ざめさせた。  
一が無言で自分の着ていたジャンパーを脱いでかけてやると、美雪の両目から幾筋もの涙が流れ出た。  
「怖かった…、怖かったよ…」  
溢れる涙をぬぐう事もせずに美雪は言った。  
「うん」  
その震える肩に腕を回し、一はぎゅっと美雪の身体を抱きしめる。触れている手のひらから、彼女の暖かな体温が伝わった。  
「でも…」  
「ん?」  
「はじめちゃんなら、きっと助けに来てくれるって思ってたよ」  
こんな事のあった後ですら弱々しく笑うと、美雪は一の胸にもたれかかり、瞳を閉じた。  
その小さな身体をさらにきつく抱きとめ、一は囁いた。  
「…ああ。お前に何があっても…、きっと俺が守るから」 (了)  
 

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