「ただいま〜あ〜もうびしょびしょ!」  
帰宅しようとしていた矢先に突然降った予想外の雨。当然、傘など持っていなかったので、ずぶ濡れになりながら帰ってきたのだ。  
外はまだ激しい雨が降っている。お兄ちゃんはまだ帰ってきてない。あのお兄ちゃんが傘を用意しているとは思えないので、つい心配してしまう。  
お兄ちゃん、大丈夫かなあ?  
それはともかく、今、私は玄関先でずぶ濡れでいる。このままだと風邪を引いてしまうので、何とかしなくちゃならない。  
私は早速玄関から家に上がった。そしてこの冷え切った身体を温めるべく、お風呂場に向かう。  
お風呂、沸いてるかな?  
私は湯船のお湯に腕を入れてみた。都合よく、ちょうどいい具合に沸いている。  
よかった。それじゃあ、入ろうっと!  
私は一気に全部脱いで、全て洗濯機に放り込んだ。そして、そのまま浴室に入り、軽く身体を流すと、そのまま湯船に飛び込んだ。  
「ふう〜極楽極楽」  
私の身体は、一気に暖まる。やっぱり、お風呂は最高!暖かくて、気持ちがいい。  
あまりの気持ちよさに、ついウトウトとしてしまう。  
ああ、なんだかもう・・・頭がぼーっとしてきちゃうよ・・・  
「ん〜むにゃむにゃ・・・」  
私のまぶたが重い。もう・・・お休みなさーい・・・zzz・・・  
 
そういえば、小さい頃は、よくお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ったっけ。  
お父さんやお母さんも一緒だったけど、私たち二人は、同じ部屋に、裸んぼうでいるという、今では考えられないことをやっていたのだ。  
時には、それに摩央お姉ちゃんまで加わるということもあった。  
もし・・・今、その当時と同じことをやったら、どうなるだろう?  
想像しただけで、思わず・・・いや〜ん♥  
あの時は恥ずかしくなかったのに、今では、すごく恥ずかしい。  
やっぱりこれが、第二次性徴なのかなあ?  
お兄ちゃんも私も、少しずつ大人になってきている。それによって、お互いに異性を意識してしまうから、恥ずかしくなってしまうのだ。  
 
もう、昔には戻れない。  
 
本当は、昔みたいに、お兄ちゃんとずっと一緒にいたい。一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりしたい。  
でも、それは、社会のルールに反する。やってはいけないことなのだ。  
どうして、兄妹では恋人同士になっちゃいけないのだろう?どうして、結婚できないのだろう?  
お兄ちゃんは、時が経つにつれ、男性として、かっこよくなっていく。そんなお兄ちゃんを見ると、私は思う。  
恋人同士になりたい。  
でも、それは許されない。だから、私もいずれは、お兄ちゃんから卒業して、新しい恋人を見つけなければならない。  
でも・・・そんな男の人などいなかった。お兄ちゃんが、あまりにもいい男過ぎて、他の男が皆、カボチャに見えてしまう。  
寝ても覚めても、考えているのは、お兄ちゃんの事ばかり。  
あまりにも、いい男に育ってしまったから、私は・・・・・・もう、お兄ちゃんの事ばかり考えている。  
なるちゃんや、摩央お姉ちゃんが、羨ましい。  
彼女たちは、本物の兄妹(もしくは姉弟)ではないから、お兄ちゃんとは、堂々と恋愛もできるし、結婚だってできる。  
でも、私は・・・本物の、妹。お兄ちゃんとは、恋愛も、結婚もできない。  
こんなに、大好きなのに。こんなにも・・・・・・愛してるのに!  
 
私は、なるちゃんになりたい。  
そうすれば、おにいちゃんにアタックして、恋人同士になって結ばれることもできるから。  
でも、それは、はなっから無理なこと。  
どうやっても、私はなるちゃんにはなれない。菜々は、菜々なのだ。  
 
本当は、どこかに素敵な人を見つけて、恋人同士になれればいいのかもしれない。  
でも、私には無理。  
それは、お兄ちゃんが、あまりにも素敵だから・・・・・・  
 
私はまどろみの中で、そんなことばかり考えている。  
その時、ふと私の耳に、お兄ちゃんの声が聞こえた。  
「菜々!菜々!」  
私はうっすらと目を開けた。すると私の目の前に、お兄ちゃんがいる。  
「えっ!?」  
私は瞬きを数回した。湯船の中に、私の真ん前に、お兄ちゃんがいる。  
「きゃあああああああああああああっ!!!」  
「お、おい菜々!そんなに大声出すなよ!」  
「ど、どうしてお兄ちゃんがここにいるのよ!」  
「仕方ないじゃないか。雨でずぶ濡れになった身体を温めようと風呂に入ったら、先にお前がいたんだから。」  
「で、出てってよー!」  
「そうはいかないな。だって、お兄ちゃんも寒いんだ。」  
「わ、わかったわよっ!じゃあ、私が出て行くから!」  
そうして私は立ち上がった。すると、お兄ちゃんは私の身体をじっと見ている。  
「お、お兄ちゃん!目をつぶってよ!」  
「ちぇ、わかったよ・・・」  
私は急いで、浴室から出て行く。その後ろで、お兄ちゃんの声が聞こえた。  
「菜々も、女らしい身体になったなあ。」  
私は洗面器をお兄ちゃんの頭に投げつけた。  
「いてっ!」  
「お兄ちゃんの馬鹿っ!」  
私は浴室のドアをビシッと閉めた。  
そう、私とお兄ちゃんは・・・実の兄妹。だから、これ以上は・・・許されない。  
 
思えば、これが運命だったのかもしれない。  
 
おしまい  
 
 

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