お昼休み。  
私は早速、家庭科室へと向かった。  
大好きな先輩・・・菜々ちゃんのお兄ちゃんに、私の最高のおうどんを食べさせてあげたくて。  
「先輩・・・・・・待っていてくださいね♥」  
私は急いだ。一刻も早く、うどんが作りたくて、うずうずしている。  
そして私は、勢いよく家庭科室のドアを開いた。  
・・・・・・あ、あれ?  
 
家庭科室には、なぜか先輩がいる。他には、誰もいない。  
「やあ、なるみちゃん。」  
「せ、先輩、どうしたんですか?」  
先輩は、家庭科室のテーブルの上で、白い塊を両腕でこねていた。  
「よいしょ。よいしょ・・・ふう、うどん作りって、なかなかしんどいね。」  
「先輩?」  
「ははっ、見てのとおりさ。僕も、うどんを作ってみようと思ってね。」  
「そうだったんですか。じゃあ先輩、一緒にやりませんか?」  
「うん。なるみちゃんも、自分のうどんの団子を持っておいで。」  
「は〜い!」  
私は早速、冷蔵庫で寝かせておいたうどん団子を持ってきた。でも、憧れの先輩と、一緒にうどん作りなんて、何だか夢みたい。  
「じゃあ先輩、始めますよ。」  
私は楽しくて仕方がない。こうやって、先輩と一緒に、うどんが作れるなんて。  
でも、やっぱり先輩は、男の人なんだなあ。力があるから、あっという間にコシの強いうどん団子ができてしまう。  
「いいなあ・・・先輩、力持ちで。」  
「ははは。ところでなるみちゃんは、どうやってこねるの?」  
そう。私は、おじいちゃんや先輩とは違って、女の子。力が弱いから、先輩みたいに腕ではコシの強いうどんができない。  
「先輩、私の場合は、こうするんです。」  
そして私は、うどん団子をビニール袋に入れて、それをさらにもう一枚のビニール袋に入れた。そして縛って密閉した。  
そしてそれを床に置いて、私は裸足になった。  
そして私は、両足で交互にうどんを踏んづけていく。  
どん、どん、どん、どん・・・  
「先輩、私の場合は、うどんをこうやって踏んづけて、コシを強くするんです。」  
「へえ、なかなか堂に入ってるねえ。それじゃ、僕もやってみようかな。」  
 
そう言うと、先輩は私と同じように、うどん団子を2重のビニールで包み、それをテーブルの上に置いた。  
「あれ?先輩、足で踏むんじゃないんですか?」  
「僕は体重が重いからね、それだとオーバーキルになっちゃうんだ。」  
「じゃあ、どうやって・・・・・・」  
私はそう言いかけて、思わず眼を剥いてしまった。何と先輩は、そこでズボンのジッパーを開けて、中からでっかい・・・え、えっと・・・言葉に出すのも恥ずかしいモノを  
取り出したのだ。  
「きゃあ!せ、先輩!何てモノ見せるんですか!!!」  
私は思わず顔を背ける。女の子に見せるようなものじゃないよ、先輩・・・  
「なるみちゃん、僕は、こうやってこねるんだ。さあ、見ててごらん。」  
すると先輩はその巨大なモノの先っぽを大きく真上に持ち上げた。そして先輩が手を離すと・・・  
 
びと〜ん!  
 
その巨大なモノが、勢いよくうどん団子を打った。  
「ははは。なるみちゃんが見てるから、いつもよりも硬いや。」  
「せ、先輩!そ、そんな恥ずかしいこと言わないでくださいよう・・・」  
「さあ、どんどん打つよ!それっ!!!」  
 
びと〜ん!びと〜ん!びと〜ん!  
 
私は呆気にとられて、ずっと先輩の作業を見ている。  
先輩のモノが、すごい勢いでうどん団子を打ちつける。そして、そのたびにうどん団子は、輝くような光沢を放つ。  
すると先輩は、そのうどん団子を、床に置いた。  
「それでは、フィニッシュ!」  
先輩はテーブルの上に背中を向けて立ち上がり、思いっきり上にジャンプした。先輩の身体はそのまま空中で旋回し、うつぶせになって落ちてくる。  
そしてそのモノの先に、うどん団子があった。  
 
びっと―――――――――――――――――――ん!!!  
 
「さあなるみちゃん、できたよ。」  
そう言って先輩は、熱いうどんを私に差し出した。  
「え、ええっと・・・」  
「どうしたんだいなるみちゃん?」  
「せ、先輩・・・あんなことして、何ともなかったんですか?」  
フィニッシュのムーンサルトプレス。さすがにあんなことやったら、無事じゃすまないんじゃないかなあ?私はそう思う。  
「もちろんさ。もし何かあったら、なるみちゃんが困っちゃうだろ?」  
「せ、先輩!そ、そんな恥ずかしいこと言わないでください!!!」  
しかし、このうどん・・・・・・ものすごいコシの強さ。おじいちゃんのうどんよりも、ずっと強い。  
「やっぱりうどんは、腰の強さが大事だね。」  
「せ、先輩・・・もう・・・」  
 
 
そして、時が過ぎ・・・・・・  
 
今、私と先輩は、晴れて夫婦となっている。  
おじいちゃんはすでに退役し、優雅な年金生活。  
お店は、私が継いだ。そして、夫と二人で、このお店を盛り上げるべく、奮闘している。  
信じられないことに、お店の評判は、おじいちゃんの頃よりも、飛躍的に上がっている。  
(もちろん、おじいちゃんの頃の評判が悪かったわけではない。今の評判が、すごすぎるのだ。)  
中でも、特にうどん自体のコシの強さが大評判になっている。  
お昼時は、連日超満員。おかげで、身体を休める暇もない。  
それだけではない。連日、マスコミの取材もひっきりなしに訪れる。  
「すみません。うちは、取材は一切受け付けておりません!」  
取材の申し込みは、いつもそうやって断っている。  
さすがに、あんなのは見せられないわよ・・・・・・  
 
今朝も早くから、うどん打ちが始まる。  
びと〜ん!びと〜ん!びと〜ん!!!  
 
びっと―――――――――――――――――――ん!!!  
 
朝はうどんを仕込み、夜は私に子供を仕込む。  
それでいて、少しも音を上げない。ものすごい体力。そして、ものすごい精力!  
 
思えば、これが運命だったのかもしれない。  
 
おしまい  
 

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