「そうだな、星乃さんなんかいいと思うな」  
いつも語り合っている親友から、どういうタイプの女性が好きか?というよくある話題をふられて、柊明良は答えた。  
「えっ?そうなんだ。以外だなぁ」  
「そう思うかい?たしかに、あまり輪の中心に入っていくタイプじゃないし、きらびやかでもない。けど、俺が見る限りは、クラスで一番女性らしいのが星乃さんのいいところだな」  
そのあとの話題は、その親友が夏休みに恋らしい恋を何もできなかったこと。そのために、二学期からは生まれ変わって、より積極的な性格になる、という誓いをたてられた。  
柊は友情のために、自分の経験からアドバイスを教えてあげた。親友も感謝を示し、やってみる、とヤル気をみせた。  
(ま、うまくいくかどうかは、お手並み拝見ってとこだな)  
 
一年生のころも、柊と星乃は同級生だった。  
星乃はまだ学校にも、学級にも慣れておらず、うまく友達も作ることのできない不器用な女の子、というのが柊の感想だった。  
一学期の時、星乃とおなじ班になった時のことだった。  
清掃当番のために、音楽室まで足を運んだ。  
「やれやれ、めんどうくさい」  
教室に入ると、星乃がひとりで掃除をしていた。  
「他の奴らはどうしたのかな?」  
「あ、柊君、……じつは、みんな事情があるらしくて。その……帰ったみたいなの」  
「まったく、あいつら。……一人でやってたのかい?」  
「私は別に一人でもかまわないわ。掃除ってきれいにすることができるから好きなの」  
柊は星乃が笑った顔をはじめて見た。なんともいえない、初々しい香りのする笑顔だった。  
「柊君も、もし忙しかったら」  
「いや、俺は大丈夫だよ。とっとと、終わらせようか」  
そういって、用具置き場からバケツと雑巾を取り出した。  
「ア……うん」  
 
その日の夜は、音楽室で見た星乃の笑顔がつよく残っていた。  
(笑っている女の子の顔って、いいよな)  
以来、柊の心の中には、星乃のことが大きく占めるようになっていた。  
 
残暑が落ち着いてきたある日のことだった。  
柊は昼食後の眠気から、昼寝ができる場所を探して、体育館の倉庫までやってきた。そして、人が隠れるのにうってつけな場所、跳び箱の中に入って昼寝を始めた。  
昼休みがそろそろ終わるころ、柊が跳び箱から出ようとすると、誰かが倉庫に入ってきた。男と女のようだった。  
「こんなところで話って何?星乃さん」  
「突然ごめんなさい、あの、相原くんにお願いがあるの」  
親友と想い人の二人だった。だが、自分の知らないところで、あれほど気さくに話し合えていたことに興味をもった。  
「お願いって?」  
「……私のこと、好きって言ってくれた相原くんの、思い出を、つくりたい」  
わが耳を疑った。好きって?相原君の?つまり、すでに相原は告白を?  
「ほ、星乃さん?」  
「お願い、もうすぐ転校しちゃうから時間がないの。二人きりになれるうちに、どうしても、お願い」  
隙間から、星乃が相原の胸に飛び込んでいったのをのぞいた。  
そして、転校?柊は、衝撃の大きな出来事がいくつも同時に起こったので、とても頭で整理できかねていた。  
「星乃さん……わかったよ」  
「うれしい……ン」  
二人は固く抱きしめあい、強く口付けを始めた。  
男の手で制服のリボンを解かれ、スカートを外されていく。白い肌は、自分が思っていた通りの、絹のような光沢をもつ肌だった。今、別の男の手で、力強く胸を揉まれだしていた。  
「アア……アア……」  
「星乃さん、僕、ずっと、こういう風に、君とこうしたかった」  
「私も……ウン」  
星乃の体を身にまとうものは、すべて取り外された。そして、むき出しの部分に、男は顔をうずめた。  
「ヒィ……嫌、や、やめないで」  
顔を真っ赤にさせながら、前戯の続きを求めた。舌を中に入れられ、かき回されるたびに、喜悦の声をあげ続けた。  
 
相原も服を脱ぎ捨て、むき出しの男を挿入しようと構えた。  
「待って。……後ろから、して」  
「えっ?……あ、うん。わかった」  
星乃は壁に手をつき、尻を男に見せびらかせて、その瞬間を待った。  
「い、痛い」  
「星乃さん?」  
「ウン、大丈夫。動いてもいいよ」  
その後、倉庫中に肌と肌がぶつかりあう音が響きわたった。  
「あっ、あっ、あっ、あっ、あうっ」  
始めは下半身の貫かれる激痛に眉をひそめていた。しかし、体が慣れてくるにつれ、表情も和らいで、自然と星乃は、相原へ笑顔を見せていた。  
「気持ちいい、すごくいいよ相原くん。あっ、あっ」  
「星乃……さん、……うあああああっ」  
物語は幕を閉じ、観客も身動きできずに涙を流し続けていた。  
 
倉庫で独りぼっちになり、静寂が支配する中、柊は涙も枯れ、ひざを抱えながら頭を真っ白にしていた。  
彼女のことを思い出すと、また涙がでてくる。だが、自分が思い描いていた星乃像と、かなり違っていた。あれほど男に対して、自分の希望を出すような人ではなかった、と思った。  
(あいつが星乃さんを変えたんだろうな)  
自分の親友のことを考えると、柊は奇妙な感覚を感じた。星乃を掠め取った相原にも、自分以外の男に体を許した星乃にも、怒りや憎しみをもっていない。  
(そうか。俺は友情も恋愛も、どちらも取ろうと考えているから、失敗していたんだ)  
柊には、まだ相原のことを親友と呼ぶことができた。  
(変わらなければならないのは、俺の方だった)  
親友のことを見直すことができると、柊は跳び箱から脱出した。  
授業は大きく時間を費やしていた。柊は、授業に遅れる言い訳を考えながら歩き出した。  
 
  終  
 
 

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