「ふぅ……んっ……」
鼻にかかったような甘い声が口を押さえる左手の隙間から部屋の中に漏れ出す。
その声が自分自身の物であることを少し後ろめたく感じながらもスカートの中へ
忍びこんだ右手を止めることができない。
「……なんで……こんな……っ……ふぅ……んんっ!!」
遠めには勉強机にうつぶせになって寝ているようにも見える姿勢、でもこの部屋に
入ってくる人がいれば私が何をしているのかはすぐにわかるだろう。
学園祭が終わり、私、栗生恵は相原光一と交際を始めた。
彼のことは大好き。もちろん私の学校での立場もあるからいつでも一緒にいるわけには
いかないけど、帰り道人目を忍んで唇を軽く重ねればそれだけで幸せな気分になれる。
でも、今日のキスはいつものキスとは違う大人のキス。今までにも何度かそんなキスを
したことがあったけど、そんな日は決まってモヤモヤした変な気分になる。
それでもいつもなら道場で身体を動かしているうちに普段の私に戻るのだけど、
今日に限って皆用事で出払ってしまっていた。だからと言うわけではないのだけれど、
私は今誰にも言えないような事をしている。
「んっ…………ふぅっ……ん!」
指先が私の女の子の部分を這う度身体が熱を増し震えるのがわかる。
「あっ……みんな……こんな事してっ……んあっ」
私は今までオナニーなんて事したことなかった。もちろん知識としては知っていたけど
別に興味はなかったし、それは彼との交際を始めてからも同じだった。
「こんな事……したくないのに……手……止められない…………」
でも、今私の身体は快感に正直に反応してる。そして自分の意志でそれを
止められないことが悔しい。心も体も強くありたいと願っていたはずなのに
その場の快楽に負けて手を止めることができない自分は情けないと思う。
「相原君……相原君が悪いんだから……」
理不尽な責任転嫁。今私の女の子の部分に触れてる手は私の手じゃない、彼の手なんだ。
そんな勝手な想像で自分を正当化しようと思っても、それはむしろより強い快感への
引き金となって私を蝕んでいく。
「相原くぅ……あいはらくんっ!んんんっ、はああっ!!」
右手はすでに私の物ではなくなってしまったかのようにに蠢き、私を責め苛む。
いつの間にかひどく湿り気を帯び張り付いた下着をもどかしげに下ろすと、
私の女の子がさらけ出される。想像の中の彼はその部分をじっと見つめると
直に手を触れ愛撫を始める。
「あ……ああ……んっ……ふっ……あいはらくん……好き……っ……好きぃ……」
私は想像の中の彼に何度も何度も自分の思いを告げる。その度に身体は熱を帯び、
右手の動きは激しさを増していく。
「あああっ!だめっ!それだめっ!!やめぇっ!!」
「やああっ……相原くっ!!も、やあっ!!」
もう左手で声を抑えることもできず、右手のなすがまま、想像の中の彼のなすがままになって
甘い悲鳴をあげ続ける私。指先は幾度となく私の一番敏感な部分をさすり、そのたびに
背筋に何かが走り息が詰まる。
「ひぃ……はっ……はぁ……あ……はら……ぁ……ぁぁぁ……」
全身が震えるのが分かる。つりそうな程足に力が入っているのが分かる。
背筋に何度も走る稲妻。息が出来ない。真っ白。
ああ、きっとこれが「イク」って事なんだ、そう思った瞬間、私は意識を手放していた。
「……ぅ……ぁ……」
まだ気怠い余韻に考えがまとまらないけど、どうやらそれほど長い間眠っていたわけでは
なかったことだけはどうにか把握できた。
「みんな帰ってくる前に身体洗わなきゃ……」
幸いにして家の中にはまだ誰の気配もないみたい。私は秘め事の跡を消しにお風呂へ行く。