「…まさかこういう事態に発展するとは、俺でも予想できてなかったッス」  
「仕方が無いだろう。奴の投入自体、試作段階なのに私が強引にこじ入れたのが最初だしな」  
「プププププ〜、それでどうすんのサ?ガルルたいちょ♪」  
「奴がああして暴走してしまった原因を探るのが先だ。回収はそれからでも遅くは無いだろう」  
「だ、大丈夫ッスかね…?それに奴が向かったペコポンには、未だケロロ小隊が…」  
「タルル上等兵、余計な詮索は無用だ。これより各自ゾルル兵長の動向解析にかかる」  
「了解ッス!」  
「そういえばガルルたいちょ、今度の新隊員補充…一人いいのがいるんだけど、キョーミある??」  
「それはまた別件で報告書を回してくれ。では解散だ」  
 
ケロン本星ケロン軍前線本部、新設ガルル小隊コミュニティースペース  
先ごろ初陣を迎えたばかりのこの部隊に、早くも問題が生じようとしていた  
さっきまで収集をかけてガルル中尉が話していたのは、ある日メンテナンス中にゾルル兵長が暴走し  
て、単独でペコポン…地球に向かった件についてだった  
ゾルルは軍の機密も背負っているだけに取り扱いがナーバスで、今回彼の回収にはガルル小隊が動く  
こととなったのだ  
隊長であるガルルは、この不測の事態に上層部の連中が右往左往する中で冷静さを保っていた。とい  
うのも、おおよそ頭のお堅い役人なんかには解らないであろう、ゾルルの暴走した理由をなんとなく  
悟っていたからだ  
「100年かかっても解りはしないだろう…科学者ごときにはな……」  
ひとり部屋に残ったガルルは、遠く星空を見つめた  
ゾルルが一人で向かった地球には、自分の弟であるギロロを始めとしたケロロ小隊がいるので不安は  
無かった。しかし、これはこれでちょっとした問題になるのは明白…また上の者にへつらう事になる  
のは目に見えていた  
 
 
 
『KOYUKI・ゾルル編』  
 
 
 
「んん…ッ!」  
「はぁ、は…ふぅ…」  
日曜のある昼下がり、とある古びた水車小屋で絡む影が二つあった  
桃色に染まった肌を動かし、一方の少女は体を畳に横たえた  
汗でびっしょりになった体は震えて目は虚ろだが、その視線はまっすぐ横の青い蛙に注がれている  
その青い蛙は、横の手ぬぐいを取って少女の顔に浴びせられた白い液体を拭き取った  
そして、二人はキスを繰り返す…  
東屋小雪とドロロ兵長。この二人の間には、かつて想いを伝え合ってからも様々な試練があった  
特に、この間ガルル小隊が攻め入ってきたときは小雪も一度消され、かなりの危機的状況に陥った  
しかし、それらを越えて二人の想いはさらに強まり、むしろ絆は深まったといっても過言ではない  
こうして今でも、余人に介入されない時間さえあれば、お互いを求めて乱れ合ったほどだ  
その回数は日ごとに増え、まるで新婚カップルの如く何度も行われた  
さらにもっと深い衝撃を求め、時には小雪とドロロが夜の公園でこっそりした事もある。また、小雪  
がドロロのアサシン兵術で快楽地獄のにかかったまま学校に行き、そのまま一日中ガマンしてた事も  
ある。さらにいろんな事もやってきたが、それを書くのは別の機会に譲ろう  
「ふはぁ〜…ドロロ、よかったよ!」  
「こっちも最高でござった。小雪殿はたぐいまれなる名器でござるな」  
「あはは、名器って…(汗)」  
日は明け夜は暮れ今日もまた、小雪とドロロは熱い熱い抱擁を交わし続けている  
とりあえず今は昼になったので、いったん休憩もかねて昼飯とあいなった  
小雪は台所に向かい、お昼の支度を始めた  
ドロロはまた再び愛の巣となる布団を片付け、食器の準備に回ってる  
まさに完璧な理想の夫婦像だ  
だが、この静かで情熱的な二人の休日に介入しようとする不穏な影が迫ってきているなど、二人は露  
ほども思っていなかっただろう  
 
台所で小雪が大根を切っている音が聞こえる  
ドロロは、彼女が運んでくるであろう昼飯に舌鼓を打ちつつ待った  
「小雪殿、お膳は揃ったでござる」  
「うん、ありがとドロロ」  
そういえば小雪はここに脱いだ忍者装束がそのままだが、彼女はいつ代えの服を着たのだろうか?  
ささやかだが気になる疑問を抱えつつ、ドロロは縁側をなんともなしに見つめた  
…しばらくして小雪の料理が完成したらしく、足音が聞こえた  
ドロロは振り返って小雪を迎えるために声をかけようとしたが、その姿に唖然とした  
「じゃ〜ん!ドロロ、お昼ご飯できたよ♪」  
「こ、小雪殿?その格好は…??」  
「あは…ちょっとハズかしいけど、どうかな?」  
料理を持ってきた小雪は、なんと裸にエプロンの姿で現れたのだ  
この格好には面食らったのかドロロも終始無言のままだが、決して悪い意味ではない  
小雪が不安そうな顔で反応を待っていたので、ドロロは戸惑いつつ答える  
「むう…そういうのは破廉恥というもので…」  
「やっぱり、ダメカナ?」  
「いや、そういう訳ではないでござるが、ちょっと過激すぎると思って…」  
ドロロは目のやり場に困っているようである  
それを見た小雪はωの口で笑い、また台所の方へと下がってしまった  
首をかしげ、小雪の動向が不思議でたまらないといった感じのドロロ  
しかし、また元気よく出てきた小雪は、もっとおかしな衣装だった  
「じゃじゃ〜ん!ご主人様、お昼ご飯の用意ができました♪」  
「????」  
今度の姿はいわゆるメイド服だ  
さすがにドロロも目が点になっている。なんていうか、どう反応していいのか混乱していた  
「あれれ?またダメなのかな?」  
「…というか小雪殿、その珍妙な扮装はどこの国の奇祭でござるか??」  
「ドロロ、知らないの?最近はやってる、"めいど"ってヒトの服だよ!」  
小雪は自信満々に言い放ったが、ドロロにとってはチンプンカンプンだ  
そんなドロロの第一印象は"なんだか凄く動きづらくて、戦闘だと真っ先に命を落しそう"である  
ともかく解らないのでたまらなくなって、ドロロは小雪に話を請うのだった  
「"めいど"…?それはどんな人でござるか?」  
「あたしも実はよくわからないんだ。たまたま夏美さんと立ち寄った本屋で、これを本で見たの」  
小雪自身も、パッと見の知識だけでこの格好を用意してきたようだ  
ちなみにメイド服も裸エプ用のエプロンも、調達元はやっぱりクルルかららしい  
「確か"めいど"って人はね、ご主人様を敬って、身の回りのお手伝いをしてる人…だったハズだよ」  
「では、その"めいど"とは家政婦のことでござったか。実際よくわからないでござるけど」  
まだまだ勉強不足だな、という顔でドロロは頷いた  
そこは別に勉強しなくてもいい事だけど、なおも小雪のコスプレショーは続くのだった  
 
看護婦、チャイナ、体操着&ブルマ、スク水、SMボンテージ、なぜか全身タイツ等々…  
その中で最後に出てきたのは、どこかの学校の制服だった  
「小雪殿、その格好は…」  
「これはね、前に話した私と同じ声の人から借りた高校生の制服だよ。ちょっと大きいけどね」  
その黄色の制服は、ちょっと小柄な小雪にしてみればダボダボで、かなりサイズが違っていた  
まぁ、これを着ていたという小雪と同じ声の人は、高校生でかなり大柄らしいので無理もない事だが  
しかし、その姿が逆にグッと来るものがあった  
ブカブカで中途半端にズレた制服からのぞく白い肌、なんとか引っかかっているに過ぎないスカート  
からチラリと見える桃色のお尻…なんとも甘美だ  
それがついにドロロの心の琴線に触れたのか、ようやくまともな反応をしてくれた  
「…なかなか似合っているでござるよ、小雪殿」  
「ほんと?やっとドロロにそう言ってもらえたよ〜!」  
小雪はホッと安心した笑顔で、ドロロに微笑んだ  
これで小雪が納得し、ようやく昼食となった  
制服があまりにもダボつくので、仕方なく上半身だけ裸になって箸を取った  
見られてるのがドロロなので小雪は安心して裸体を晒してはいるが、そのドロロにとってはむしろ落  
ちつかなかったことだろう  
…とにもかくにも、このなんとも形容しがたい食卓は10分そこら談笑して、すぐに終わった  
二人はまた快楽を共有したくて、ずっとうずうずしていたのだ  
まさしく新婚夫婦がセックスレスに陥るが如く、二人はのほほんとお互いの肉体を触れ合った  
だが、あまりに愛し合う事に熱中するあまり、二人は背後に不穏な影が近づいている事を悟り切れな  
かった  
「ドロロ、こんどはどんなコトして遊ぼっか?」  
「その制服は借り物でござろう?なら汚してはまずいから…」  
「俺ガ斬リ刻ンデヤル…」  
「!?」  
 
小雪の背後で、突然どこかで聞いたような雑音交じりの声が聞こえた  
二人はとっさに身を翻し、臨戦態勢をとるが、見ると…そこにいたのは予想外の人物だった  
「ど、ドロロ…この人は!」  
「なぜお前がここに!?ゾルル!」  
「…ソンナ事ハ問題デハ無イ」  
ゾルル兵長…どうしてこんな男がここに突然現れたのだろうか  
かつては例の"24時"事件でまみえたものの、不発に終わったこの二人の闘い…  
まさか、あのときの屈辱を晴らしに、わざわざここまで来たというのだろうか?  
相手の行動が読めず、ドロロと小雪はヘタに動くこともかなわなかった  
「ゼロロ…貴様ノ女、俺ガ貰イ受ケル…」  
「なっ!?」  
そう言ったのが早かったか、ゾルルは目にも止まらぬ速さで小雪に当て身を喰らわせると、風のよう  
に走り去っていってしまった  
「し、しまった!!」  
あまりに咄嗟の出来事で、ドロロはゾルルを捕捉しきれなかったのだ  
こうなったらケロロたちに連絡しているヒマは無い  
ドロロは大急ぎでゾルルの気配をたどり、そして追跡を開始した  
 
 
…某埠頭、某倉庫街、某大型倉庫  
小雪は誰も使っていないような、さびれた倉庫の一角にいた  
どことなくカビ臭く、嫌なニオイが鼻をつく  
光は上の換気口からわずかに入ってくるだけで、ほぼ暗闇と言っても差し支えないだろう  
目を覚ました小雪は、時間が経つにつれて自分がどんな状況下なのかを理解し始めた  
まず、体には何も着ていないようだし、両腕は拘束され、これは小雪の力をもってしても解けない…  
鉄の枷みたいだが、おそらくゾルル持参の拘束具だと思われる。足腰は…立たない。これもゾルルが  
なにか細工を弄したようで、どうやっても動いてはくれなかった  
ゾルルはいつも気配を殺しているため、いま奴がどこにいるのかを知る事は困難だった  
「…どこ?」  
小雪はそんな絶望的な状態でも、強気な姿勢を崩す事は無かった  
どこにゾルルが潜んでいるのかは解らないが、小雪は視線をまっすぐにして凛々しく言った  
「わたし、くノ一だよ?どんな酷いコトされても、それなりには大丈夫なんだから!」  
…返事は無言だった  
だけど小雪は、その表情を固定させていた  
広がる闇と対峙する裸体の少女は、今とても危険な目に遭遇していた  
 
そのころドロロは小雪を求めて埠頭までは辿り着いたものの、そこから先のゾルルの足取りが掴めな  
くなり、かたっぱしから倉庫をアサシン鑑定力眼でサーチしていた  
といっても、この倉庫街はかなり大きくて、大規模な倉庫だけでも200棟にも及ぶほどだ  
そこから小雪が拉致されている場所を探すのだから、並大抵の苦労ではない  
だからと言って愚痴を零している時間は無い…ドロロはひたすら走り続けた  
 
「!」  
突然、自分の体に絡みつく"何か"の感触を感じ、小雪は仰け反った  
その"何か"は蛇のように彼女の体を這いずりまわり、不気味な感覚のみを小雪に与え続けた  
単体ではないらしく何本も存在するようだ  
脇を、股間を、腹を、足首を、耳を、"何か"はヌルヌルと這いまわり、小雪はその都度身をよじった  
「な…ヤダ!何なの、コレ?!」  
暗闇からは当然答えは返ってこず、それがこの"何か"をより一層不可解な存在にしている  
"何か"は次に小雪の口元へと寄ってきて、無理矢理口内へと侵入しようとしていた  
首を振って入りこむのを懸命に阻止しようとするが、敵わずズルリと口の中に入っていった  
こうなったら噛み切ってやろうする小雪だが、妙に弾力のあるので文字通り歯が立たない  
粘っこい"何か"はその体からさらに粘液を出し、小雪の口を蹂躙し始めた  
「んっ…や、はむッ!…ん…」  
さらに別の"何か"が、今度は彼女の乳首を狙いに蠢く  
まるでバイブのように微弱に振動していて、小さな小雪の胸をヌルヌルと刺激している  
そしてまた2本の"何か"が背中を撫でながら、後ろからヘソや秘部を嘗めまわした  
「…!!ひッ、いぃ…ぃ…!…んあ゛ッ!!」  
図らずも濡れていた小雪の花弁は、何の抵抗も無く"何か"迎え入れた  
ズブズブと子宮口まで達して、ドロロの比ではないほどに暴れている  
こんな予想外の事態に、小雪の頭の中は混乱の極みだった  
さっきから自分の体を貪っているこの触手状の"何か"とは何なのか?  
ゾルルはどこで何をしているのか?  
だが、それらの疑問はすぐに解決してしまった  
「気分ハドウダ」  
「はぁ…はぁ………えっ?」  
ようやく姿を現したゾルルだが、その股間から得体の知れないモノがいくつも伸びているのだ  
それらは無数に躍動し、そして全てが"何か"と連動している  
「ソウ、コレハ察シノ通リ、私ノ雄ダ」  
「そ、そんな…こんな触手みたいに」  
「私トテ完全ナ殺人兵器デハナイトイウ事サ」  
「こんなことをして、いいと思ってるの…?」  
「…」  
つい最近"24時"事件が解決したばかりなのに、こんなことをしてしまえばどんな波紋を呼ぶのかは  
想像に難しくなかったが、それでもゾルルは責めを止めず、小雪は抵抗する事もままならなかった  
 
枷は外され、触手によって四肢の自由を奪われた小雪は、倉庫の壁へと押し付けられた  
未だにゾルルの雄は彼女の口と膣をくわえて離さない  
想定外の快感が小雪を襲い、尚それでも必死に抵抗を続けた  
「やッ…い、ひぁ…ぁあ…うぐっ!!」  
「…」  
その片目に鈍く光る赤い燐光を湛え、ゾルルは微動だにせず小雪を蹂躙している  
触手は全部で12本…それぞれが妖しく動き、彼女を嘗め回していたが、性的経験がドロロ以外に皆無  
にせよ、あの小雪がここまで相手の快感に飲み込まれてしまう事などありえない。彼女だって腐って  
もくノ一なのだから、どうにか脱出する術ぐらいはあったはずだ  
しかし問題は、触手から発せられる粘液状の液体だった。今や小雪の体中にドロドロと付着している  
これこそ、実は相手の感覚を麻痺させる神経媚薬だったのだ  
現在の小雪にとって、肌を撫でられただけでも凄まじい快感が脳天を突き抜けていく…それはかつて  
ドロロに施されたアサシン兵術の比ではなかった。半強制的に体へ快感を叩きつけるため、精神的な  
反動が半端ではなく、小雪は自我を保とうと必死で持ちこたえていた  
「(こ、このままじゃあ…あたし、おかしくなっちゃうよぉ……)」  
 
「…マダ壊レナイノカ」  
そんな時、小雪の眼前へゾルルがぬっと顔を出した  
彼の無表情な顔は、彼女に十二分の恐怖を与えるには十分すぎるものだった  
「…ひっ……ぅ…?」  
ゾルルは小雪の口から触手を引き抜いて解放した  
「はぁ…ふぅ…ふ…うぅ……」  
「…ナゼ壊レナイ」  
赤い燐光がさらに光を増して接近する  
輝きが減った瞳を上げて、小雪はできるかぎりの反論をした  
「壊れるわけには…い、いかないの」  
「ナゼダ…」  
「あたしは、ドロロと幸せに暮らすんだから…ずっと、ドロロと一緒に!」  
大声で自分の旨を訴えて、小雪は身をよじって膣内に突き入れられたままの触手から脱した  
その気迫に圧倒されたのか、ゾルルが少しだけ引き下がったが、その禍々しい目の光はそのままだ  
「アクマデ抵抗スル気ナノカ…」  
「するよ…あなたなんかに、あたしは負けな――――ッッッ!!?」  
もう一度宣言しようとしたが、どうしてか小雪は弓なりに仰け反り、絶句した  
さっき膣口から触手を外したのだが、ゾルルは次に彼女のうしろを強引に責めはじめたのだ  
まだドロロとはアナルでした事は一度も無く、入り込もうとする太い触手による激痛に顔を歪めた  
「痛ッ!!や、やだぁ!こんなの…耐えられないってば!!ひぐっ…ッあ!」  
「コウナレバ前ト後、スベテニオイテ蹂躙シツクシテクレル…小雪、覚悟シロ」  
「やだ、よぉ…こんな、痛くて……壊れちゃうよ!」  
だが、その激痛もゾルルの精神媚薬によって打ち消されていく…  
小雪が堕ちるのも、時間の問題だ  
 
「斬ッ!!!」  
その刹那、突如窓ガラスを突き破り、蒼い影が小雪を束縛していた触手を一寸刻みにバラバラにした  
バランスを失ったゾルルは背中からコンクリートの地面に落ちたが、すぐに起き上がった  
触手の支えが失われて、よろけた小雪を蒼い影が捕まえ抱きしめる  
「?!」  
「…遅くなってすまなかったでござる」  
「ど、ドロロ!」  
土壇場で彼女を救ったのは、やはりドロロだった  
待ちわびた救援に、小雪は満面の笑みで答える  
…だが、それを面白くなさそうに見ていたゾルルは、触手を収納して腕の刃を展開した  
小雪を安全な場所に控えさせ、ドロロはゾルルをキッと睨んだ  
その顔からは、あの優しそうだった"ドロロ"の面影は一切ない…今だけ彼は"ゼロロ"に戻っていた  
「ゾルル殿…この狼藉は寛容なる拙者の心でも、もはや許せる許容を超えた!」  
「…!」  
 
くわっと羅刹のような顔にゾルルが一瞬怯えた隙に、ドロロは腰の小太刀を抜いて肉迫した  
その怒りの一閃は、ドロロの小太刀とゾルルの刃を両方とも破壊するほどの威力だ  
体勢を保てずに倒れそうになるゾルルだが、なんとか持ち直して構える  
お互いに武器を失い、二人の闘いは素手の勝負に移行した  
折れて持ち手だけになった小太刀を投げつけて牽制し、ひるんだ所を蹴り上げるドロロ  
しかし、ゾルルはその一打を刃のあった硬い右腕で受け止め、逆の左腕で反撃を加えた  
パワーはドロロ以上であるゾルルは、次に殴った腕で彼を持ち上げ、コンテナへと叩きつけたのだ  
だが、それは彼が仕掛けた空蝉であり、ドロロは空振りしたゾルルの後頭部を肩に抱え、反動をつけ  
て反対側に放り投げた  
「ッッ…!」  
「ドロロ!」  
「まだまだ、こんなものでは終わらないでござるよ…」  
ゆらりと腰を上げたドロロに、ゾルルは思わず"恐怖"を感じてしまった  
このゾルルの過去に何があったのか、それを知る事は今のところできないだろう  
だが、彼を突き動かしていたのがドロロに対する巨大な復讐心だった事は、間違いない事実だ  
「ぜろろ…殺ス!!」  
「そこまでだ」  
次の瞬間、あのどこかで聞いた切れる声が、その場の空気を凍りつかせた  
そして崩れ落ちるように倒れたゾルル…の後から現れたのは、麻酔銃を手にしたガルルだった  
 
その最も意外な訪問者に、ドロロと小雪はまたも驚いた  
ガルルは外に向かって合図をすると、さっきドロロが壊した窓から光が差し込み、倒れたゾルルを回  
収していく  
呆気に取られている二人に、ガルルはこの事件の経緯について説明を始めた  
「…まず、ここまでの混乱を招いてしまったことについて、深く謝罪したい。事の発端は、ゾルルが  
身体の検査としてメンテナンスを受けていた最中、想定外の暴走が発生してしまった事にある。この  
暴走の理由についてだが、おそらくは今まで彼が使用していなかった性的機能が稼動した事から考え  
るに、何かしらの性的欲求があったものと考えるのが妥当か…奴も男だったという事さ」  
「あの〜…要するに何がどうなってたでござるか??」  
困惑しているドロロたちを気遣い、ガルルは簡潔に述べた  
「ゾルルも、性欲を持て余していたのかもしれない…」  
「????」  
何が何やらわからないドロロと小雪を倉庫に残し、ここに来た事は内密にと付け加えて、ガルル達は  
去っていった  
 
 
もう周辺はオレンジ色の光に包まれ、太陽が海の半分に顔を残している  
ドロロは家から持ってきた普段着を小雪に着せて、家路へとゆっくりと歩いていった  
幸い小雪の体には目立った外傷も無くどうにか無事だったが、まだ少しだけ動揺しているみたいだ  
心の傷にはなっていないだろうと思いつつも、ドロロは心配だった  
「小雪殿…」  
「ん…なぁに、ドロロ?」  
「拙者がもう少し早く来ていれば、小雪殿をあんな目に合わせずにすんだのに…」  
目を伏せ、ドロロはとても申し訳なさそうな顔で謝った  
そんな彼を見て、小雪は薄笑いを浮かべながら抱き上げた  
「えっ?」  
「ドロロ、あたしは大丈夫だよ。むしろドロロがそんな顔してた方がイヤだけど」  
「小雪殿…しかし」  
「それにさ、ドロロがああやって素手で戦う姿を見たのって初めてだったからさ、すっごくびっくり  
しちゃったんだ♪ホントにカッコよくて素敵だったよ!」  
そして小雪は、またいつものωの口で微笑んだ  
まだ不安な要素は残っているものの、この場は一応ドロロも安心して微笑み返した  
この先この二人には、こうした過酷な障害が多く待ち構えていることだろう  
しかし、それでも二人は繋いだ手を離さない…それが彼等の選んだ道ならば、喜んで突き進んでいく  
辛いことがあっても最後はこうやってお互いに笑顔を向け、平和に日々を過ごしたい  
「ねぇ、ドロロ」  
「なんでござ………!」  
夕日を背景にキスを交わしつつ、二人はそう思っていた  
 
 
 
【THE・END?】  
 

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