少女は、まずどうして自分がここにいるのかが気になった
自分は忍者で、仲間の骸や零夜叉たちと共に忍者として活動してきた
たまに特命の任務があるぐらいで、特に大きなことはなかった
しかし、そんな自分がこんな夜遅くに、どことも知れない公園で一人たたずんでいる
「…狐にでも化かされちゃったのかなぁ?」
少女は周りを見回した
本当にどうして用もないのに、こんなところへ来たのか
考えていたったしょうがないと思い、少女は里に帰ろうと踵を返した
ところが、どうも足腰の様子がおかしい
あとそれから、
「私、泣いてたの?」
心に何かぽっかりと、大きな穴が開いているような気がした
少女…東谷小雪はこの不思議な状況がさっぱり飲み込めずに、帰路へとついていったのだった
『KOYUKI・後編』
忍びの里に向かっていたはずの自分が、なぜか見ず知らずの森の中に入っていることに気がついた
しかも、森を出ようとしても足が勝手に道を知っているかのように、進んでいく
そして…たどり着いた先が、奇妙な水車小屋だった
「へぇ〜、このへんにもこんなところがあったんだ!」
小雪は驚き、早速中へと入っていった
好奇心旺盛な小雪は、ボロボロの廃屋同然なこの家にずかずかと立ち入っていく
そこで、妙な違和感に襲われた
どうも自分は、一回ここに来たような気がするのだ
確かに廃屋だが、どうにも懐かしさを感じてならない
「…おかしいなぁ?」
小雪は終始困惑した表情を見せていたが、そのうち早く忍びの里に戻らないといけないことを知り、
その水車小屋を後にしていった
「…ちょっと待ってよ???」
さすがにここまで来ると、小雪も困惑を通り越して疑惑へと変わってきた
自分は忍者の里へ向かっているはずなのに、この山はすっかり切り開かれ、ダムや材木のための森林
伐採が続けられていたのだ。いつも骸と遊んだお花畑も更地になって、そこに『吉崎カントリーゴル
フ場建設予定地』というでかい看板があるのみだった
「これって…どういうことなの??」
自分の記憶があいまいな期間がある…それも一年分だ
小雪はまるで浦島太郎のような気分に陥った。今まで普通に存在していたと思っていた忍びの里は、
一人の忍者も残さず消え去っていたのだ
「み、みんな!骸!零夜叉!!」
小雪は寂しくなった森林で、あらん限りの声を張り上げた
あても無く走り回り、忍びの里から半径2kmをくまなく探し続けた
…しかし、忍びはおろか、山々には人の手が入った形跡が残るのみだった
「ど、どうして…?」
小雪は山道で一人、へたれこんだ
もう空の向こうは明るくなり始めている
小雪は絶望に打ちひしがれ、一日に何本も通らないようなバス停を見つけて、そこをその日の寝床と
した
「なにが…あったんだろう?」
そのことが小雪の頭の中でずっと渦を巻いている
しかし、それは詮索しようとすればするほど、分からなくなっていった
「しかしナンだね、こんな辺鄙な山奥に町の女子高生がたった一人でさ」
「いえ…ここにはいろいろと思い出がありますから」
「おじさんにもね〜お譲ちゃんと同じくらいの娘がいるんだけど、都会に出たっきり音沙汰ないんだ
よ…まぁったくあの親不孝娘!」
「ふふ…」
地方バスの中
こんな路線に乗る人なんて、たかが知れている
さらにこんな田舎だと、乗客はひと月でも片手で数えられるくらいしか乗ってこない
そんな子の路線のバスに、一ヶ月おきに乗っては人里離れたバス停で降りる女子高生がいた
その女子高生の名は…骸
月に一度とはいえ、顔見知りとなったこのバスの運転手とは、目的地に着くまでの良い話し相手だ
骸は窓の外を見つめた…開発はどんどん進み、森は緑を失い、そのかわりにゼネコンだか無駄な税金
で作られた公共施設が建てられていく
骸は窓の暗幕を下げた
ここに来るまでに、骸はバスと電車を4回乗り継いで来た
そんなことをしなくとも、骸は忍者なのでそのほうがリスクがいいだろうに
しかし、骸は普通の生活を送ることを夢に見ていた
そして今では忍省は解体され、最後に棟梁から言われた任務…普通の生活を送ることに従事していた
里を離れて友達もでき、その新しい環境にも順応した
けど、やはりなにかしらの違和感は感じたままだった
どうあがいても自分は忍者であると思って、少し虚しい気分にもなった
しかし、これが自分の夢であり、そしてこれが時代の流れであるならば、それに逆らうことはできは
しないだろう。骸が今こんなところに来ているのは、その虚しさが後ろ髪を引っ張って、この地に
未練を残しているからなのかもしれない
「着きましたよ」
運転手のおじさんの陽気な声がバスに響いた
骸はハッと驚き、慌てて立ち上がった
代金を運賃箱に入れ、骸はバス停に降り立った
「次に下りでここに来るのは夕方の五時ぐらいだから、それまで楽しんでいってね」
「どうも毎回、ありがとうございます」
運転手は窓から手を振りつつ、そこを後にしていった
ふう…と一息ついた骸は、背中に背負ったリュックから、お昼の弁当を取り出した
ここに来るまで、朝イチに出立しても昼までになってしまうのは常だった
「…変わっていくのね」
さっきまで見えていた開発されつつある森は、ここからは見えない
しかし、バス停の前には『県立老人健康センター、9月からオープン』との立て札があった
骸はこれを睨むと、忍術を用いて谷底へと吹き飛ばしてしまった
それでも、骸の表情は晴れなかった
「…」
気を取り直し、骸はベンチに腰掛けて弁当の包みを解いた
ところが、
「…?」
どこからか妙な音が聞こえる…まるで腹が鳴っている音のような…
骸は辺りを見回したが、かなり近くに聞こえるというのに発信源が特定できない
「なんなのかしら…?」
気になって立ち上がった骸だが、その足を突然つかむ者がいた
骸はもちろん驚いて、バス停から離れて向かいの道路の端に離れた
「誰だッ!」
張り詰めた声で、骸はどこからともなく取り出したクナイをかまえた
しかし、そのベンチの下から伸びた腕は無反応だった
「…?」
骸は恐る恐る近づいてみたが、そこにいたのはもっとも意外な人物だった
「なっ…小雪!?」
「ほぇ…骸?」
二人はバス停でいっしょに昼飯を食べていた
骸が少し多めに作ってきたことも功を奏し、二人とも十二分に腹を満たす事ができた
「ぷはぁ〜!骸がこんなに料理が上手だったなんて知らなかったよ!」
「小雪も…どうしてこんなところに来てたんだ?しかもそんな忍者の衣装なんか着てさ…」
「うん、それなんだけど…」
今の骸の言葉も気になったが、とにかく小雪は今知り得ている自分が置かれた状況を、彼女に話した
骸は、黙ってそれを全て聞いた
「…って事なの」
「小雪…あんた」
「えっ?」
小雪の言ってることは嘘ではない
骸は小雪が記憶喪失か何かに陥ったのではないかと勘ぐった
しかし、忍者の里消滅の部分だけ知らないのは不自然だ
ともかく、骸は小雪の知らないことについて説明した
「だから今はね、忍者の里も他の忍者も、みんないなくなってしまったんだよ」
「嘘!そんなの嘘だよ!」
「小雪、お前本当に何があったんだ?ドロロも一緒じゃないなんて、どうしたんだよ」
「ドロロ…?」
ドロロという名前に、小雪が反応した
これは何かあるに違いないと思い、骸は小雪の頭に手を当てた
「な…なに、何なの骸?」
「静かに。私があなたよりも陰陽道の術が上手だったの、知ってるでしょ」
そう言って、骸は小雪の頭の中を、陰陽術で覗いた
「…これは」
骸が見た小雪の記憶…それには不自然に切り抜かれたような跡があった
まるで何者かに切り取られたような、妙な跡が…
しかし、こんなのは陰陽道でもできない技だ。できるのは全体的な記憶の改竄であり、本来なら部分
的な抹消は無理だ
「こんなことって…しかも、消してある場所はドロロに関するところだけ…か」
「ねぇ骸、その…ドロロって、何なの?」
小雪が不安そうな視線を投げかけ、骸は答えに詰まる
自分もドロロと過ごしたが、小雪ほど親しかったわけではない
「…お前の、初めての友達だ」
「友達?友達は零夜叉が…」
「そうじゃなくて、もうひとりいるはずだ…大切な友達が」
「ごめん骸、わたし…わかんないよ」
小雪は震える声で返した
不審に思った骸は、俯いている小雪の顔を覗き込む
「どうした、小雪…?」
「…どうしたんだろ」
小雪の頬に、一筋の雫が滴った
泣いている…
「その、ドロロって名前を聞くと……なんでだろ…涙が…」
「小雪…」
「そのひと…私の大事な、とっても大事な人だった気がするの…忘れちゃいけない、ずっと覚えて
おくべき人のこと…わたし、それがなんなのか…」
小雪は頭を抱えてうずくまり、骸が抱えおこす
「小雪…あんた」
「むくろぉ…」
骸の胸で小雪は泣いた
小雪を自宅に連れ帰り、できるかぎり小雪の力になるため、骸は陰陽道の力で記憶の修復を試みた
が、結局どれもが無駄に終わった
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「骸、もう力を使いすぎてるよ!」
「だい…じょうぶだ小雪。私も友達のためなら…はっ!」
陣の中に入った小雪の周りに護符を展開し、ありったけの法力で迫る
しかし結果はいつも同じで、小雪は元のままなのだ
「もう…いいよ」
「ダメだ!今度はそこに座って、小雪!」
「いいよ…ありがとう」
小雪は寂しそうな笑顔で、骸にそう言って別れを告げた
無理に引き止めるつもりはなかったが、骸は彼女の肩をつかんで止めた
「骸…」
小雪が振り向くと、骸は真剣な眼差しで彼女を貫いている
ちょっとだけ奇妙な間があって、骸はきっぱりと言い切った
「お前は私の友達だ…見捨てるなんて、出来ない!」
その勢いで、骸は小雪を抱きしめた
思わずきょとんとする小雪だが、すぐに骸の背中に手を回して答えた
「ありがと…骸」
骸の鼓動が小雪に伝わる…
この感覚に、小雪は何か懐かしいものを感じて顔色を変えた
確か…前にも…
「ねぇ、骸」
「何だ?」
「私と、寝て」
骸は小雪の言ったことに驚き、思わず吹き出してしまった
「な、何を言っているんだ小雪!」
「そうじゃないの、何か…何か思い出しそうなの!」
「…ドロロの?」
「そう!だから…骸、お願い!」
必死に懇願する小雪の視線に、骸は承諾するほかなかった
…しかし今のやりとりで、ちょっとだけ骸は嫉妬した
自分だって小雪のことが何ものにも変えがたいほどに大切だ
小さいころから一緒だったし、あの子のことなら何でも知っている
未知なる物には何にでも興味を示す旺盛な好奇心、ちょっとだけ変わっている恋愛思考、未成熟の
ままだが確かな忍術の腕、そして…どんな困難な状況や手強い敵が現れても、決して屈しない楽観論
者である事など…
そんな小雪が、記憶を無くしてまでも思い出したがっている想い人、ドロロ
そういう目で小雪を見た事は無いと言えば嘘になるが、骸は少し…ほんの少しだけど嫉妬したのだ
「小雪、いいんだね?」
「骸の…好きにして」
小雪が言いだしっぺなのに、責めるのは骸だった
どうしてなのかというと、小雪は自分が受けであったことは微かに分かる
だから、こうすればどうにかなるのでは…との発案ゆえだった
鉄フレームのベッドに横たわり、小雪は骸に裸身を晒した
勿論、骸も同じくその身には一切の衣類は着用していない
「思えばさ、お前の裸を見る機会って、あまりなかったな」
「うん…骸って、昔からそうだったけど、ホントにスタイル良かったよね」
「そ、そうか?」
「そうだよ!あたしなんかコレ、つるぺただし…」
「こういうのも好きなのがいるから、心配するな」
「それはそれで何かイヤだけど…」
記憶を復活させるためだとはいえ、なんにせよ性的な関係を親しかった人とするわけだから、双方
とも何も思わないわけがなかった
「んん…」
小雪より年上の骸は、もう別れたが好きな人がいて、その人は女性だった
こういった経験も済んでいるし、なによりも小雪より場数を踏んでいる骸は、彼女を蕩けさせるには
十分な力量を持っていた
忍者だったころ、年齢の差からか、性的な分野では骸が秀でていた
異性と同性の責め方の違いや、性交における知識では、さすがの小雪も負けていたのだ
「は、あぁ…あっ!」
「まだ始まったばかりなのに、小雪…こんなに濡れてるな」
「やだぁ…骸のえっち♪」
「…ホント、可愛くなったよな」
骸はかけっぱなしの眼鏡をはずして、小雪の顔に近づいた
小雪はキスなのかと思って、ドキリとした
「…小雪」
「な、なぁに?」
「こう言うとドロロに悪いけど…」
「えっ?」
「もし…もしドロロの事に踏ん切りがつければ、私と一緒に暮らさないか…?」
とうとう、我慢できずに言ってしまった
僅かな嫉妬心が妙な後押しをしたのだろうか
でも、こんな申し出など結果は分かりきっている
だが、それでも骸は頭の片隅で小雪のことを想っていたのだが
「…骸」
「…」
「ごめんね」
そう、当たり前といえば当たり前だ
小雪は今、忘れたとはいえドロロの事が好きだ
記憶は無くなっても、その思いは不滅だったのだ
「…そうだな」
「ほ、ほんとにごめんね…わたし…」
顔を下げ、虚ろな表情を見せる骸に小雪は謝罪する
しかし、骸は微笑んで小雪の頭に手をのせた
「いいんだ」
「…骸」
結末のわかりきった告白だった
でも、言っただけでも骸はよかったと思った
私は小雪が好きだった
小雪はドロロが好きだ
それだけのことじゃないか
それでも、それでも骸はその身を焦がす想いを消しきれなかった
自分はなんて未練がましいのだろう
骸は、心配そうな顔をしている小雪を引き寄せて、無理矢理キスをした
あれから、半ば強引に情事は続いた
骸のドロロのことを思い出させようという考えは、もう忘れかけていた
小雪も押し寄せる快感には抗えず、貪られ続けた
もう骸は小雪の全身を嘗め回しただろう
ベッドの上はバケツで水をかけたかのように、汗と涎と愛液とでびしょ濡れだ
忍者だった事が功を奏し、体力のあった二人は休み無く絡み合った
そうこうしている内に、二人は21回目の絶頂を迎えていた
「はぁ゛…ああぁあッッ!!!」
「ひぁ!…あぃ……ぃ…」
69の体勢で、二人は互いの花弁をむしゃぶり続けた
もう顔は、相手の愛液でドロドロである
「こゆ…きぃ……」
「むくろ、だいじょ…ぶ?」
「うん…だから、もっと……」
「むくろぉ…」
「こゆき、おねがい…いまだけでいいの…わたしと、わたしとひとつに…」
「むくろ…あぁあッ!」
それは、虚しい願いなのかもしれない
骸はチラッとだけ、残酷な事を思った
"このまま小雪の記憶が戻らなければいいのに…"
しかし、小雪はドロロが好きだから、このままでいいはずがない
けど、今は小雪にしてあげられる事は無い
やれる事といえば、今のように快楽に興じさせる事ぐらいだ
「ひゃあぁぁぁああぁッ!!!」
「小雪…指が4本も入ったよ…?」
「あ、あ、あ、あああッ!!」
小雪の秘部に骸の指が詰め込まれた
今までの交情で小雪の体は完全に蕩け、その花弁からは愛液が糸を引いてボタボタと滴っている
「むくろ…だめェ……おかしくなっちゃうよぉ…」
「零れているのが勿体無いな…よし」
「きゃうっ!!?」
骸は、小雪の花弁に口を当て、思いっきり啜った
ずるっと淫らな音を立てて、小雪の秘部は吸引された
「い…ああぁあぁぁぁぁッッ!!!」
「ッ!」
69の体勢が維持できず、小雪は絶頂の叫びと共に骸の体に落ちてきた
密着している汗ばんだ二人の体は、動くたびにグチュグチュと水音を立てた
「…小雪、一人でイッた回数は…覚えてる?」
「はひ…ぅ……40からあとは…わか……ない」
「私は30ぐらいだったかな…?」
「むくろ…あたひ、きょお……も、ダメぇ…」
「…もう夜の3時か」
「ごめ…おやす…み……」
「…」
さすがにここまでくれば限界だったか、小雪はそのまま骸の体の上で眠りについた
骸は小雪を退かすと、一緒に裸のまま布団に潜り込んだ
「…あのころと一緒だな」
あのころ…それは10年前だった
夜、眠っている骸のところへ、小雪が涙ぐんでやってきたことがあった
どうも、怖い夢を見たので一緒に寝てほしいというのだ
骸は、馴れ合い厳禁の掟を重んじて拒否したが、小雪の泣き顔を見て妥協してしまい、結局一緒に
寝たのだった
「…こゆき」
骸は、汗だくで寝ている小雪の頬に、軽くキスをして眠った
奇妙な生活が続いた
それから小雪は3日ほど骸の家で世話になった
忍者服しかもっていなかった小雪には、ユニ●ロで好きな服を買ってあげたが、その服はドロロと
一緒に暮らしていたときに小雪が着ていたものと同じ、水色の服だった
朝から夕方は骸の学校があるが、夜になると二人の時間だ
一晩に達する絶頂の回数は余裕で二桁に及んだが、忍者だった骸や小雪にとっては苦痛ではない
そのうち、小雪は骸との生活に慣れていき、確かに心では想っているものの、ドロロの事は自然に
脇へと追いやられてしまい、まるでかつての忍者の里での生活が蘇ってきたようだ
しかし、そんな生活にも終わりの時が来てしまう事となった
「…でさー、あの時骸ったら!」
「フフ…」
その日は日曜で、朝から一緒に小雪と骸は街に繰り出していた
小雪は骸に買ってもらったアイスキャンディーをおいしそうに食べている
傍から見たら姉妹に見えるかもしれないような光景だったが、骸はどこか儚げな笑顔だ
「ねぇ、骸は今日ずっとおかしいけど、どうしたの?」
「え?そうかな…?」
「そーだよ!」
「…かもね」
骸はおもむろに小雪を抱いた
「!?」
「…」
「ちょ、骸!こんな街中でハズかしいよ!」
「…」
「む、骸?」
骸は、小雪を抱きしめながら、泣いていた
抱かれつつ小雪は骸の顔を見上げた
いったいどうしたのだろうと思う小雪を、骸はそっと下ろした
「あ、ごめんね…小雪」
「どうしたの、骸」
「…ちょっと公園行こ?」
小雪と骸は、昼下がりの公園にやって来た
ブランコに乗り、小雪は元気にこいでいるが、骸は普通に座っている
「でさ、話ってなんなの?」
「…」
「骸ってば!」
骸はうつむいたままボソリと言った
「終わりにしようよ、小雪」
「え…?」
骸の口から出た言葉は、衝撃的なものだった
この生活に慣れ始めていた小雪はショックを受けていた
「ど、どうして?!」
「…ドロロだよ」
小雪は、忘れかけていたその名前にハッとした
骸は続けた
「私さ、考えてたんだよ。このまま小雪がドロロを忘れて、私とずっと一緒に暮らしていくのがいい
のか。それとも、わたしと別れて…好きな人、ドロロと暮らすのがいいのか…ってね」
「骸…」
「小雪と暮らせて…私はとても楽しかった。小雪の体を貪って…私はとても気持ちよかった。でも、
本当にそれでいいのか…って思ったの。確かに私は幸せだったけど、それで小雪の人生を狂わせるな
んて私には出来なかった」
「…」
「だから小雪、あなたは幸せになってほしいの」
骸は泣きながら言っていた
微かに声を震わせながら、それでいて平然さを装って言い切った
本当は別れたくない
ずっとこの手に抱いていた
でも…それは間違っている
だから…
「骸…あたし………ッ!!」
「…小雪?」
その刹那、小雪の様子が一変した
「ドロロが…ドロロが呼んでる!」
「小雪!?」
そう、それは日向家でクルルが記憶消去のバックアップを起動した瞬間だった
「骸…今までホントにありがとう」
「小雪、あんた記憶が…!」
「あんな事言ったけど、骸の事も好きだよ…」
「小雪…」
今すぐドロロの元に行かなければならない
その衝動が小雪の体を駆け巡ったが、目の前の骸を見逃せなかった
「骸…あたしの大好きな骸、ほんとにほんとにありがと…大好きだよ」
小雪は骸にキスをした
多分…これが最後の触れ合いだろう
最後だから、名残惜しく、10分ぐらいキスしていただろう
昼間なので人の目もあっただろうが、気にはならなかった
…そして小雪はそっと口を離した
「じゃあ、行くね?」
「…………………………小雪ッ!!」
去っていこうと背を向けた小雪を、思わず骸は抱きしめた
「…む、骸」
「小雪…こゆきっ!」
背中から抱きしめられて、小雪は骸と一緒に泣いた
「一週間も掃除サボって、どこにいってたのよ!?」
夏美がケロロを掴みあげて、ケロロはどう説明してよいのやら困っている
タママは桃華と再会して、とても嬉しそうだ
その光景を、ドロロはモアの傍らで見ていた
「良かったでござる…」
「ドロロ!」
そんな彼の耳に、非常に懐かしい声が聞こえてきた
もちろん、それは小雪の声だ
小雪は忍者服に着替える間も惜しんで、そのまま普段着で到着した
「小雪殿!といやっ!」
ドロロは小雪のいる屋根へ、一息でジャンプして辿り着いた
もう、こんな瞬間なんて無かっただろうと思っていた再会に、二人は高まる思いを抑えられなかった
「おかえり…ドロロ!」
「ただ今…で、ござる…!」
今度はドロロの声が揺らいでいた
そして、その場はケロロの合図で再びいつもの生活が始まっていくのだった
その後、記憶が戻ったので特に説明する事は無かったが、しかしその場の勢いでパーティが催された
ケロロは冬樹と、ギロロは夏美と、クルルはサブローと、タママは桃華と、そしてドロロは小雪と、
その場を十二分に楽しんだ
パーティが打ち上げられたのは、もう時刻が次の日になっていたころだった
皆、それぞれの家へと帰宅していく中で、小雪は夜道をドロロと歩いていた
「…つまり、拙者がいなかった間は、骸殿の所でお世話になっていたでござるか」
「うん。骸はね、私のことが好きだったって」
「え?」
小雪は、この一週間の出来事を全部ドロロに話した
もちろん、自分と骸の関係もだ
「それは私とドロロの関係みたいな意味で…好きって事だよ?」
「骸殿が…小雪殿を…」
ドロロは意外な話だったので、素直に驚いた
小雪は、骸と住んでいた日々を思い出していた
「一時的にとはいっても、私は骸と愛し合っていた」
「小雪殿、それは…」
「でも、終わらせたのは骸なんだ。私とドロロの関係をふいにしたくないって」
「…そうでござったか」
「だから…」
小雪は、骸が自分をそうしたように、ドロロを抱き上げた
「小雪殿…」
「骸の想ってくれた分も、私はドロロと幸せになるよ!」
自信を持って、小雪はドロロにそう言った
ドロロも、話を聞いて同じ気持ちだったろう
久しぶりに帰ってきた水車小屋は、クルルのバックアップで元通りの家に戻っていた
内装もドロロと別れたときのままだ
「なんだか、あまり実感が無いよね…元通りだから、けっこう時間が経ってたのに」
「そうでござるな…では、小雪殿」
「ん?」
ドロロは荷物を下ろすと、別れの日のままの布団へと移動した
そして、正座して深々と礼をした
「…ふつつかながら、改めて拙者と添い遂げて欲しいでござる」
「ドロロ?」
「一応これからも一緒だから、改めて挨拶を…と思って」
「あ、そっか…じゃ、あたしも♪」
そう言って、小雪もドロロの前の布団へと座した
ドロロと同じく正座して、こちらも礼をする
「それがし、東谷小雪!ふつつかながら、改めて生涯の伴侶になりたく…こんなんでいいかなぁ?」
「まぁ、いいと思うでござるが…?」
妙な雰囲気の中で、二人の新しい生活の幕が上がった
が、なぜかこの挨拶を小雪は納得しなかった
「なんか違うのよね〜?」
「こ、小雪殿?」
「…ね、ドロロ」
「なんでござる?」
「どうせ布団の上だからさ、はじまりは…ね♪」
「…あいわかったでござる」
あの日とは違って、三日月だから月明かりは少し暗い
部屋の中は行灯も点けず、本当に真っ暗だ
その一角で、布団に潜って蠢く二人の影があった
「ん…ん…」
小雪は、ドロロの唇をついばんだ
ドロロも躊躇無く頭巾を取っ払い、小雪を全力で受け入れた
待ちわびていたこの瞬間、二人はとにかく堪能する事に専念した
サイズの違う唇と舌がくんずほぐれつ絡み、涎が顎を濡らした
「ちゅ…んちゅ、う…」
「むぅ……ふ…」
「…くッ…んっ…」
「くぷ…んんっ!」
呼吸なんてしている暇は無いと言わんばかりに、二人のキスは濃厚だった
舌を絡めあうなんて普通だ。歯がぶつかろうが気にしない。互いの唾液を飲み込むのさえ構わない
ともかく相手を…欲しい…
小雪もドロロもその事しか頭に無かった
「ぷふぅッ…ふぅ…」
「はぁ…」
口と口の間に糸が引いた
でも、拭わずに二人は次の行動に移る
もはや暗黙の了解のレベルだ
ドロロは小雪の服を脱がせると、上半身だけ裸にさせた
「骸殿とは何度も…でござるね」
「うん…」
「それでは、拙者も骸殿に負けぬよう、全力で小雪殿を悦ばせるでござる」
「あはは…期待してるよ!」
「では…」
「ん…」
ドロロの小さい指が、小雪のピンクの点に導かれるように向かっていった
親指と人差し指でトップを摘むと、ドロロはそこを思いっきり吸い上げる
こうすれば普通は痛みを感じるだろうが、最初にやったとき以来、ドロロは小雪を悦ばせるすべを
熟知していた。ちょっとだけ強引なのが小雪の好みの感度なのだ
「うぁっ…あぁ、ムネぇ…いいよぉ…ううっ!」
「…ちゅく…ん…」
小雪の胸全体を嘗め回すように、ドロロはとろとろにしていった
すでに胸の刺激のみで、小雪はイきそうだ
「はッ!はぁッ…あぁッ!」
「つぷ…ん」
「くはぁ…あ、あひぃっ!!」
ドロロは一気に舌をヘソへ、ヘソから股間へと瞬間的に移動させた
一緒に半ズボンもずり下げて、下着まで取り去った
ここまで喘げば当たり前であるが、その股間部はぐっしょりと濡れていた
「こんなに…感じて…」
「ドロロ…もう、いいよ?」
「えっ?まだ速…」
「いいの…速く欲しいの!もう…もう待ちきれないの!」
小雪は必死に懇願している
ドロロは素直にその言葉に従ったが、そうは言っても早くしたかったのはドロロも同じだった
ドロロのいきり勃つ雄が、小雪の花弁の入り口へ押し当てられた
びくびくと脈動しているのが、小雪にも分かった
「すごいね…ドロロ。私の膣内に挿入たくて、ドロロのこれ…こんなに欲しがってる」
「小雪殿も腰がヒクついているでござる…そちらも来て欲しくて堪らないといった感じでござるか」
「うん…だから…」
「小雪殿…」
「ドロロ…来て」
「…小雪殿」
ドロロはゆっくりとすることなく、ズブっと一度に根元まで突き入れた
その衝撃で、小雪は頭が背中に着くのではないかというぐらいに、大きく仰け反った
「ひぎぃぃぃいいいぃッッッ!!!!」
「グ…ううっ…!」
「凄いぃ…ぎちぎちに……奥までぇ…ドロロの、いっぱい…」
「…ッ」
「あれぇ…ドロロ?」
激しくガンガン動いてくるのを予想していた小雪だが、なぜかドロロは動いてこなかった
不審に思って、小雪は寝ている体を起こした
「ちょ…マズ…」
「どうしたの?」
「こ、小雪殿…どうやら、強く突き入れたのがいけなかったのか…もう……出そ…!」
「ありゃりゃあ…」
詰まるドロロに苦笑する小雪だが、このままではどうにもならないので、小雪はある考えを思いつく
「ねえドロロ…こうなったら射精してもいいからさ、思いっきり動いてもいいよ?」
「えっ?で、でも…」
「大丈夫!まだこれだけで、私たちの夜は終わらないよ?」
「…そうでござるな」
ドロロは意を決して、達しそうな自分を奮い起こした
小雪も額に汗を浮かべて、ドロロの責めに身を投じていった
「ぐうぅっ…!」
「ひゃはッ、ど…ドロロ!速い、速いよ!」
「っ…小雪……ど、の…」
「いっぱい…こんなに、いっぱい…ああ゛ぁあぁッ!!」
小雪の膣内を満遍なく満たした肉塊が、ぎちゅぎちゅと音を立てて動き始めた
ドロロは限界が近いので、激しく小雪を突き動かしている
それにつれられる形で、小雪も急速に限界に近づきつつあった
「ドロロぉ…これっ!あたし、もぉッ…イッちゃうかもッ!!」
「で、では小雪殿…拙者と一緒に…?」
「うん…いくよ?一緒に…いっしょに……ドロロとイくよぉ!!!」
この小雪の一声で、二人の間から会話は消えた
もう、性交による快楽を味わう事だけに二人は従事することにした
ドロロは決して達しまいと、ギリギリのところで踏ん張っていた
一緒に小雪と絶頂を共有する…それがドロロの考えだったからだ
小雪も同じような事を考えていて、速くドロロに追いつきたくて、自分から腰をくねらせていた
まるで快楽のジレンマだ
一方は限界を我慢しているのに、もう一方は追いつこうとして我慢している相手を煽っている
しかし、そんなことで折れてしまうドロロではなかった
彼も小雪を共に最後へいざなうために、気を配っていたのだ
「あぁっ!は…うああぁぁぁッ!!」
「…こゆ…殿、も…もう拙者は…拙者は…!!」
「ひぐぅっ…あ、あたしもッ…ドロロッ、好きだから…い、い、一緒にぃ!!」
「ずっと…いつまでも一緒にッ…小雪殿!」
「ドロロぉ、好きだよ!いつまでも…いつまでも好きだよ!!」
「せっしゃ…もう…うぅっ!」
「忘れないから!記憶をなくしても、ドロロのことはずっと忘れないから!」
「こッッ…小雪殿ッ!!!!」
「ドロロッ………イくうぅぅぅううぅぅッッ!!!!」
まるで胎内で爆発が起こったかのように、小雪の膣にドロロの白濁が叩きつけられた
小雪はビクビクと体を震わせ、堪能するように絶頂を味わい、そして3分ほどして布団に倒れこんだ
ドロロは体を硬直させ、まるで自分の全てが小雪に吸い取られていくような錯覚を覚えつつ、果てた
呼吸さえままならないほど、二人はこの行為を全力で体感したのだ
しばらくはまどろむ視界に酔いつつ、徐々に正気を取り戻していった
「はっ…はァ゛…あぁあ…あひぃ……うッ」
「うぐぅ…ぅふ……はぁ…、あぁ…」
「どろ…だい……じょ…ぶ?」
「こ…きどの…も、だいじょ…でござ……か?」
「う…ん…」
「せ…しゃも…」
言葉を紡ぐことさえままならない二人だが、それでも必死で話した
小雪は愛する事と性欲がいっぺんに満たされて、その顔は蕩けたままでくにゃっとなっている
ドロロもまた同じく、今の疲弊して上気している彼なら、タママの可愛さにも勝てるかもしれない
ともかくドロロは残った力で雄を引き抜き、小雪の側に這いずって来た
そして、その小さき手を小雪の手と合わせて、ぎゅっと握った
それにあわせて、小雪も手を握り返した
「ドロロ…」
「小雪殿…」
見つめあった二人は、もう一度だけキスを交わした
まるで全ての体力を使い果たしたかのような二人だったが、しばらく休憩すると再び交わりはじめた
もはや二人の仲を引き裂く事柄もなにも無い…あの時で最後だと思って、昇りに昇りつめた感情が一
気に爆発したかのように、行為は何度も続けられた
二人が限界を迎えたのは日の出の直前…最初の一回からほぼ6時間は経過していた
ここまでくると性的快楽がどうとかではなく、もはや愛し合う事のみが二人の間で至福を産んでいた
「綺麗な朝焼け…だね、ドロロ」
「太陽も、拙者たちの門出を祝ってくれているようでござる」
「うん…」
小雪は、ドロロと一緒に布団に包まり、縁側から見える日の出を見つめていた
今日は小雪は学校ではないので、このままいちゃついて一日を過ごせるかもしれない
「小雪殿、ひとつ提案があるのでござるが…」
「なぁに?ドロロ」
二人はもういつもの調子に戻っていた
だが、どこかが決定的に違っていたが、それをいちいち指摘するのは野暮というものだろう
「今日から山に篭らぬか?」
「どーしたの、急に?」
「拙者…いままでのように影の薄いままではいけないと、前々から思っていたのでござる」
「それで?」
「だから、山篭りでもって存在感を誇示できるように、強化修行といきたいのでござる!」
「んふふふ…♪」
小雪はドロロに疑いの視線を向けつつ、嬉しそうに微笑んだ
戸惑ったドロロは少々言葉がまごついた
「小雪殿?」
「そんな事言って、ほんとは誰にも邪魔されないで私と二人きりになりたいんでしょ?」
「えぇ!?…どうしてそれを?!」
どうやら図星だったようだ
確かに、日ごろのドロロを見ていたら影が薄いとか言い出しても不自然ではないが、このタイミング
で言ったのなら、その心中はすぐに察せるというものだ
「やぁ〜っぱり♪」
「わかってたでござるか…でも、小雪殿も学校があるし、そういえば夏美殿も」
「いいよ」
「…えっ?」
小雪は裸のまま、ドロロを抱きしめた
布団の中で抱きしめてるという立地条件自体、あの別れの日の夜とまったく同じだ
が、今はもう違う
「ドロロの行くところは、私も一緒に行くよ…」
「小雪殿…」
「…好き」
「…拙者も、好きでござる」
もう何度目か分からないキスを、二人は静かに……
【THE・END】